6.10 ビームモードによる1次ホーンの設計例

1次ホーンの軸長を与えた設計

【例題1】鏡面上の曲率半径R¯,鏡面の開口径D,エッジレベルLe[dB], 1次ホーンの軸長Lが与えられた場合,鏡面上のビーム半径 ω, ホーンの開口面におけるビーム半径 ωh, ホーン開口径 Dh, ホーン開口面からビームウエストまでの長さ zh, ホーン開口面から位相中心までの長さ Lc, ホーン開口面から鏡面までの距離 dを求めよ.

略解  鏡面上のビーム半径 ω,ビームウエストでのビーム半径 ω0 は, (1)ω=D28.69Le(2)v=kω22R¯(3)ω0=ω1+v2 ホーン開口径 Dh,ホーンの開口面におけるビーム半径 ωh は, (4)Dh=2ωhΩ0(5)ωh=ω01+vh2(6)vh=kωh22Rh(7)Rh=L これより,vhを消去すると, ωh2=ω02(1+vh2)(8)=ω02{1+(kωh22Rh)2} これを解けば, (9)ωh422Rh2k2ω02ωh2+4Rh2k2=0(10)ωh2=2Rh2k2ω02(1±1k2ω04Rh2) ここで,ωh2は実数ゆえ,Rh=Lより, (11)1k2ω04L20 軸長Lは正ゆえ, (12)Lkω02 軸長の最小値Lminは, (13)Lmin=kω02 これは最適1次ホーンの軸長と一致する. これより軸長が長い場合には,同じ軸長の解が2つ存在し, 式(10)のプラス符号のときホーン開口径が小さく, 逆にマイナス符号のときホーン開口径が大きくなる.
 ビームウエストからホーン開口面までの長さ zh, ホーン開口面から位相中心までの長さ Lc, ホーン開口面から鏡面までの距離 d は, (14)zh=Rh1+1vh2Lc=R¯d=R¯(zzh)=R¯(R¯1+1v2Rh1+1vh2)=R¯(1v2v2+1)+vh2Rhvh2+1(15)=R¯1+v2+Rhvh21+vh2(16)d=R¯Lc 特別な場合として,Rhのとき(導波菅開口), ωh=ω0vh=0 より, Lc=R¯1+v2(17)=ω02ω2R¯(18)ω2=ω02(1+v2)
1次ホーンの設計例(軸長を与えた場合)

既存のホーンアンテナを1次放射器として用いる場合

【例題2】ホーンアンテナの開口径 Dh,軸長 L,鏡面の開口径 D が与えられている場合,鏡面上の波面の曲率半径 R¯,ホーン開口面から鏡面までの距離 d,ホーン開口面から位相中心までの距離 Lc,鏡面の焦点距離 frを求めよ.

略解  ホーン開口面での波面の曲率半径 Rh およびビーム半径 ωh は, (19)Rh=L(20)ωh=Dh2Ω0 ビームウエストでのビーム半径 ω0,ホーン開口面からビームウエストまでの距離 zhは, (21)ω0=ωh1+vh2(22)zh=kω022vh ここで, (23)vh=kωh22Rh 鏡面上のビーム半径 ω は, (24)ω=D28.69Le ここで, (25)ω0=ω1+v2(26)v=(ωω0)21 ホーン開口面から鏡面までの距離 d は, (27)v=2kω02(zh+d)(28)d=kω022vzh また,鏡面上の波面の曲率半径 R¯,鏡面の焦点距離 frは, (29)v=kω22R¯(30)R¯=kω22v=fr ホーン開口面から位相中心までの距離 Lc は, (31)Lc=R¯d
13GHzで1次ホーンを設計した場合
30GHzで1次ホーンを設計した場合

鏡面とホーンとの距離を与えた1次ホーンの設計

【例題3】鏡面上の波面の曲率半径 R¯,鏡面の開口径 D,エッジレベル Le[dB], ホーン開口面から鏡面までの距離 d が与えられた場合,鏡面上のビーム半径 ω, ビームウエストでのビーム半径 ω0, ホーン開口面から位相中心までの長さ Lc およびビームウエストまでの長さ zh, ホーン開口面におけるビーム半径 ωh, ホーンの開口径 Dh および軸長 L を求めよ.

略解  鏡面上およびビームウエストでのビーム半径 ωω0,位相中心までの長さ Lc は, (32)ω=D28.69Le(33)v=kω22R¯(34)ω0=ω1+v2(35)Lc=R¯d ホーン開口面からビームウエストまでの長さ zh は, v=2kω02(zh+d)(36)zh=kω022vd ホーンの開口面におけるビーム半径 ωh,ホーン開口径 Dh および軸長 Rh は, (37)ωh=ω01+vh2(38)Dh=2ωhΩ0(39)vh=2kω02zh(40)Rh=kωh22vh=L
距離 d/D=1,波面の曲率半径 R¯/D=1.15
距離 d/D=1,波面の曲率半径 R¯/D=1.65

開き角を与えたホーン単体の設計

【例題4】ビームウエストでのビーム半径 ω0,開き角半値を θとして, α=tanθ=Dh2Lが与えられた場合, ホーンの開口径 Dh, ホーンの開口面におけるビーム半径 ωh, ホーンの軸長 L(=Rh)を求めよ.

略解  ホーンの開口面におけるビーム半径ωhは, (41)ωh=Dh2Ω0=2αL2Ω0=αLΩ0 一方,ビームウエストでのビーム半径 ω0 より, (42)ωh2=ω02(1+vh2) (αLΩ0)2=ω02{1+(kωh22L)2}(43)=ω02+ω02(k2Lα2L2Ω02)2 {(αΩ0)2ω02(kα22Ω02)2}L2=(αΩ0)2{1(ω0kα2Ω0)2}L2(44)=ω02 これより, (45)L2=(Ω0ω0α)211(ω0kα2Ω0)2 よって,ホーンの軸長 L(=Rh) は, (46)L=Ω0ω0α1(ω0kα2Ω0)2 したがって,ホーン開口径 Dh,ビーム半径 ωh は, (47)Dh=2ωhΩ0(48)ωh=αLΩ0 このとき, (49)1(ω0kα2Ω0)2>0 よって,開き角の上限は次式によって決まる. (50)α<2Ω0ω0k 開き角半値 θ は任意に与えることはできない(物理的にこれ以上開き角が大きくなることはない). また,ホーンの軸長を最小にする条件 (51)dLdα=0 より次式が得られる. (52)12cα2=0 ここで, (53)c=(ω0k2Ω0)2 よって, (54)α=12c=122Ω0ω0k=2Ω0ω0k このとき,最小となる軸長Lminは, (55)Lmin=2Ω0ω0α=ω02k=2πω02λ これは,最適ホーンであり,vh=1 ゆえ, (56)ω0=ωh1+vh2=ωh2 よって, (57)Lmin=πωh2λ これは先に求めた結果と一致する.

1次パターンのtパラメータを与えた1次ホーンの設計

【例題5】鏡面上の波面の曲率半径 R¯,鏡面の開口径 D,エッジレベル Le[dB], 開口面の位相遅れおよびフレネル領域で生じる位相項によって定義した t パラメータ (58)td=Dh28λ(1Rh+1d) を与えて1次ホーンの形状,鏡面からの距離を設計せよ.

略解  まず,鏡面上のビーム半径 ω,ビームウエストでのビーム半径 ω0 は, (59)ω=D28.69Le(60)v=kω22R¯(61)ω0=ω1+v2  式(58)を変形すると d は, 8λDh2td=1Rh+1d1d=8λDh2td1Rh=8λtdRhDh2Dh2Rh(62)d=Dh2Rh8λtdRhDh2 ここで, (63)Dh=2Ω0ωh,     Rh=πωh2vhλ これより,DhRh を消去すると, d=(2Ω0ωh)2πωh2vhλ8λtdπωh2vhλ(2Ω0ωh)2=(Ω0ωh)2πvhλ2tdπvhΩ02(64)=πωh2(2πtdΩ02vh)λ また, ωh2=ω02(1+vh2)(65)=ω21+v2(1+vh2) より,ωh を消去して, d=πω2(2πtdΩ02vh)λ1+vh21+v2=R¯2πtdΩ02vhπω2λR¯1+vh21+v2(66)=R¯v2πtdΩ02vh1+vh21+v2 いま,vh2πtdΩ02とおくと, (67)d=R¯vvhvh1+vh21+v2 また, (68)vh=vdR¯(v+1v)d=R¯v+1v(vvh)(69)=R¯vv2+1(vvh) これより,d を消去すると, R¯vvhvh1+vh21+v2=R¯vv2+1(vvh)1+vh2=(vvh)(vhvh)=vvhvvhvhvh+vh21=vvhvvhvhvhvh(v+vh)=vvh1(70)vh=vvh1v+vh ここで, 1+vh21+v2=1+(vvh1v+vh)21+v2=(v+vh)2+(vvh1)2(v+vh)2(1+v2)=(1+v2)(1+(vh)2)(v+vh)2(1+v2)(71)=1+(vh)2(v+vh)2 より, (72)ωh=ω01+vh2=ω1+vh21+v2=ω1+(vh)2v+vh また,式(67)の vh を消去して,d は次のようになる. d=R¯vvhvh1+vh21+v2=R¯vvhvvh1v+vh1+(vvh1v+vh)21+v2=R¯v(vh)2+1(1+v2)(1+(vh)2)(v+vh)(1+v2)(73)=R¯vv+vh さらに,Rh は, Rh=πωh2vhλ=v+vhvvh1πω2λ1+(vh)2(v+vh)2(74)=R¯vvvh11+(vh)2v+vh ここで, (75)ω=D28.69Le(76)v=kω22R¯(77)Lc=R¯d ただし,D は鏡面の開口径,R¯ は波面の曲率半径(焦点距離f),Le [dB]はエッジレベルを示す.
 特別な場合,導波菅開口では,Rhとすると,vh=0(78)vvh1=0(79)v=1vh