2ポート校正
SOLT校正
測定ポート1と2を直接接続したときの透過係数\(S_{21}^{\mathrm{(T)}}\),\(S_{12}^{\mathrm{(T)}}\)は,
散乱行列\([S_a]\)と\([S_b]\)の縦続接続より求められ,
\begin{gather}
S_{21}^{\mathrm{(T)}} = \frac{e_{10} e_{32}}{1-e_{11} e_{22}}
\\
S_{12}^{\mathrm{(T)}} = \frac{e_{01} e_{23}}{1-e_{11} e_{22}}
\end{gather}
測定ポートの直接接続(スルー)
これとSOL校正を行えば,\(e_{10} e_{32}\),\(e_{01} e_{23}\)は次のようにして求めることができる.
\begin{gather}
e_{10} e_{32} = S_{21}^{\mathrm{(T)}} (1-e_{11} e_{22}) \label{eq:thru-1} \\
e_{01} e_{23} = S_{12}^{\mathrm{(T)}} (1-e_{11} e_{22}) \label{eq:thru-2}
\end{gather}
このようにして得られた誤差回路パラメータ
\(e_{00}\),\(e_{11}\),\(e_{10}e_{01}\),\(e_{33}\),\(e_{22}\),\(e_{23} e_{32}\),\(e_{10} e_{32}\),\(e_{01} e_{23}\)を用いれば,ディエンベッディングによって被測定素子のSパラメータを求めることができる.
後述するTRL校正でも同様である(2ポート校正).さらに,測定系内部のポート0--3間のアイソレーションも含めた全誤差回路定数を評価するものをフル2ポート校正という.
TRL校正
TRL(thru-reflect-line)校正は次の3つの接続状態で測定を行い,校正するものである\(^\dagger\).
スルー(Through):ポート1,2を直接接続(あるいは短い伝送線路を介して接続)し,測定する.
反射器(Reflect):ポート1,2に反射の大きな(未知数)終端負荷を接続し,各々,測定する.通常,ショートに近いか,オープンに近いかがわかっていて,反射係数の大きさが1に近いものが用いられる.
伝送線路(Line):ポート1,2を短い伝送線路(スルーで用いたものとは長さの異なる伝送線路)を介して接続し,測定する.
反射器の反射係数や伝送線路の長さが正確にわかっていない場合でも適用できるのがTRL校正の大きな特徴である.
\(\dagger\) G. F. Engen and C. A. Hoer,
“Thru-Reflect-Line: An improved technique for calibrating the dual six-port automatic network analyzer,”
IEEE Trans. On Micr. Theory and Tech. , vol.27, pp.987-993, Dec. 1979.
TLS校正(TSD校正)
TRL校正の反射器(Reflect)のかわりに短絡器(short)を用いた校正を,TLS(thru-line-short)校正という.
伝送線路(line)をdelayと呼ぶときには,TSD(thru-short-delay)校正という.
短絡器(short)を用いるため,\(\Gamma_L=-1\)とおいて求めれば,次のようにして\(e_{11}\),\(e_{22}\)を決定できる.
\begin{gather}
e_{11} = -\frac{S_{11}^{(R)} - x_2}{S_{11}^{(R)} -x_1}
\\
e_{22} = -\frac{S_{22}^{(R)} + y_2}{S_{22}^{(R)} +y_1}
\end{gather}
それ以外は,TRL校正と同じである.
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