伝送特性の計測誤差

測定誤差の要因

 伝送特性を測定するとき,次のような誤差がある.

スカラー誤差補正

 振幅測定による周波数レスポンス誤差の補正をスカラー誤差補正と呼び,次のような方法がある.

ベクトル誤差補正

 振幅・位相を測定して演算処理することによって,システマティック誤差を除去でき,被測定素子(DUT: device under test)のSパラメータを高精度に求めることができる. これをディエンベッディング(de-embedding)という.このような誤差は標準器を用いて計測評価され,校正,あるいはキャリブレーション(calibration)と呼ばれ,次のような方法がある.

1ポート校正

2ポート校正

ネットワークアナライザの基本構成

 高周波回路素子のSパラメータ等の周波数応答の測定によく用いられている計測装置がネットワークアナライザであり, 主な構成は次のとおりである. このように一つの装置としてまとめられているのでベクトル誤差補正が行い易い.

誤差回路

 測定ポート1,2内部に誤差回路(error box, error adapter)を考える.散乱行列は, (1)(b0b1)=[Sa](a0a1),     (b2b3)=[Sb](a2a3)
誤差回路とDUTの縦続接続
散乱行列要素を, (2)[Sa]=(e00e01e10e11),     [Sb]=(e22e23e32e33) とおき,各々,Rマトリクスに変換すると, (3)[Ra]=1e10(e00e11+e01e10e00e111)1e10[Ra](4)[Rb]=1e32(e22e33+e23e32e22e331)1e32[Rb] ここで, (5)(b0a0)=[Ra](a1b1),     (b2a2)=[Rb](a3b3) ネットワークアナライザの測定値の散乱行列[Sm]を, (6)(b0b3)=[Sm](a0a3),     [Sm]=(S11(m)S12(m)S21(m)S22(m)) とすると,Rマトリクス (7)(b0a0)=[Rm](a3b3),     [Rm]=(R11(m)R12(m)R21(m)R22(m)) は次のようになる. (8)[Rm]=1S21(m)(S11(m)S22(m)+S12(m)S21(m)S11(m)S22(m)1)

ディエンベッディング

 この測定値のRマトリクス[Rm]は,誤差回路[Ra][Rb],被測定素子の[R]を用いて次のように計算できる. [Rm]=[Ra][R][Rb](9)=1e10[Ra][R]1e32[Rb] これより,被測定素子のRマトリクス[R]は, [R]=(R11R12R21R22)=[Ra]1[Rm][Rb]1(10)=e10e32[Ra]1[Rm][Rb]1 したがって,被測定素子の散乱行列[Sが次のようにして得られる. (11)[S]=1R22(R12R11R22R12R211R21),     (a1a2)=[S](b1b2)