7.5 多端子対回路網の電力比の最大化
$N$個の信号発生器(電流源),および内部インピーダンス
$Z_1, Z_2, \cdots, Z_n$
を 接続した$N$端子対回路網を考える.信号発生器で消費される電力
$P_{gen}$
と負荷に消費される電力
$P_{load}$
との比を最大化するためには,信号源の電流
$I_1, I_2, \cdots, I_N$
を調整する必要がある.両者の比 $\varepsilon$ は,
\begin{gather}
\varepsilon = \frac{P_{load}}{P_{gen}}
= \frac{\VECi{I}^*_T [\Re \ Z_{load}] \VECi{I}}{\VECi{I}^*_T [\Re \ Z_{gen}] \VECi{I}}
\label{eq:MoM-10-27}
\end{gather}
ここで,$\VECi{I}$は端子電流$I_i$を要素とする列ベクトル,
$[Z_{load}]$
は負荷回路のインピーダンス行列,
$[Z_{gen}]$
は信号源のインピーダンス行列を示す.
$[Z_{gen}]$は次のように対角行列(diagonal matrix)
\begin{gather}
[Z_{gen}] =
\begin{pmatrix}
Z_1 & 0 & \cdots & 0 \\
0 & Z_2 & & \vdots \\
\vdots & & \ddots & 0 \\
0 & \cdots & 0 & Z_N \\
\end{pmatrix}
\end{gather}
となるが,
$[Z_{gen}]$
が任意の行列でも適用できる.したがって,
$\varepsilon$
の最大値は,すでに述べたように次の方程式の最大の固有値によって与えられる.
\begin{gather}
[\Re \ Z_{load}] \VECi{I} = \varepsilon [\Re \ Z_{gen}] \VECi{I}
\end{gather}
最大値
$\varepsilon$
のときの電流
$\VECi{I}$
は,対応する固有ベクトルによって与えられる.