第68回中日理論言語学研究会

日時:2026年9月27日(日)
場所:同志社大学大阪サテライト・オフィスおよびオンライン


ご報告:
先にご案内させていただいた第68回中日理論言語学研究会は、2026年9月27日(日)に同志社大学大阪サテライト・オフィスにてシンポジウム形式で開催され、50名の方々にご参加いただき、成功裡に終了いたしましたことをご報告申し上げます。

今回のシンポジウムでは、「言語と会話」をテーマに、日本語・中国語の反語や「長い文」発話など、会話に現れる一見周辺的な現象を手がかりとして、言語と会話の関係について議論が行われました。とりわけ、文法を固定的な体系として捉えるのではなく、実際のコミュニケーションとの関係から捉え直すことが、三つの発表に共通する課題となりました。

まず、井上氏は、日本語と中国語の反語文を比較し、反語には、問いそのものの成立を退ける「却下の反語」と、話し手とは異なる答えがありうるなら示すよう聞き手に求める「挑戦の反語」があることを指摘しました。さらに、日本語では「〜というのか」「〜だろうか」などによって話し手の疑いや聞き手への働きかけが形式的に示されるのに対し、中国語ではそれらが必ずしも形式上区別されないことを明らかにしました。
続いて、高山氏は、従来の「主体(話し手)が文を作り出す」という考え方を再検討し、反語に見られる対話性をもとに、「提起態」と「応答態」から文と主体を捉えるモデルを提示しました。この立場では、主体があらかじめ存在して文を作るのではなく、対話の中で一定の位置と資格を占めることによって主体が成立するとしています。これにより、平叙文・疑問文・命令文・感嘆文などの文の意味タイプだけでなく、資格・責任・権利といった社会的要素も文法研究に取り込める可能性を示しました。
最後に、定延氏は、現代日本語の「長い文」発話を分析し、それを初めから一つの長い文として計画されたものと見ることに疑問を呈しました。実際の会話では、話し手は発話全体をあらかじめ決めているのではなく、意味的なつながりを頼りに、語・句・節などを小刻みに積み重ねており、文・節・句・語の区別も発話の途中では必ずしも確定していないことを指摘しました。発話計画そのものが流動的であり、談話は文だけから成るのではなく、文以外のさまざまな要素から構成される多元的なものであると論じました。
討論では活発な意見交換が行われ、文法を「文」という完成された単位だけから捉えるのではなく、話し手と聞き手の相互作用、発話が組み立てられていく過程、そして「提起」と「応答」という会話の働きから捉え直すことの重要性が示されました。反語、主体、「長い文」という異なる現象を扱いながら、三つの発表はいずれも、言語の形式や文法が会話・コミュニケーションと密接に結びついていることを示すものであり、大変有意義なシンポジウムとなりました。

次回の第69回中日理論言語学研究会は、2027年1月に開催予定です。詳細は追ってご連絡申し上げます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。





<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を公開いたします)



井上優(日本大学):
「反語文の形式と意味」(PDF)


高山善行(福井大学):
「文と主体の関係を問い直す―対話性基盤の視点から」(PDF)


定延利之(京都大学):
「日本語の「長い文」発話に見る態度性」(PDF)





※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第68回研究会発表論文集」を明記すること