第64回中日理論言語学研究会
日時:2025年6月1日(日)
場所:同志社大学大阪サテライト・オフィス
ご報告:
関係者の皆様へ:
先にご案内させていただきました第64回中日理論言語学研究会は、6月1日(日)に同志社大学大阪サテライト・オフィスで開催され、40名の方々にご参加いただき、成功裡に終了いたしましたことをご報告申し上げます。
「語言類型学視角下的漢語研究」をテーマに、本シンポジウムは、言語類型論の理論的枠組みに依拠し、中国語における構造的多様性およびその通時的変遷を再検討することを目的として開催されました。3件の基調講演を通じて「マクロな類型的俯瞰 → 跨言語的な比較検討 → ミクロな統語現象の分析」という段階的かつ有機的な研究展開を図りました。
劉丹青氏(深せん大学・中国社会科学院語言研究所)は、「中国語の形態・統語的類型特徴の概要」において、語順、屈折度、文法化方略といった主要な類型論的パラメータを軸に、中国語の全体像を体系的に整理するとともに、南北方言および少数民族漢語における構造的変異とその変化経路を対照的に分析しました。これにより、方言分布と類型的変化との交差点における研究基盤が提示されています。
彭広陸氏(吉林外国語大学)は、「『求心型』言語と『遠心型』言語ー日本語と中国語を例に」において、新たに「求心/遠心」言語モデルを提起した。日本語が「遠くから近くへ」、中国語が「近くから遠くへ」といった線形的なコード化の方向性を有することに着目し、中心語指向性および情報構造のパッケージ化戦略の差異を通じて、東アジア言語における深層統語構造の対照的特徴を浮き彫りにしました。
任鷹氏(神戸市外国語大学)は、「同構動結構文の統語的表現から見る中国語の構文的特性」において、同構動結構文を実証的な事例として取り上げ、中国語統語構造の基盤が形式的な配価論理ではなく、情報構造に依拠することを論証しました。特に、「使役/自動」構文の生成根拠が、事象役割の末尾強調(final prominence)メカニズムと深く関係している点を明らかにし、中国語が本質的に語用的動機づけに基づく「語用型」言語であることを示唆する知見が得られています。
本シンポジウムは、構文論・語用論・言語類型論の交差点における中国語研究の新たな展開を提示するものであり、今後の理論的深化および実証的拡張に資する基盤的議論を提供する場となりました。フロアからも多くの質問やコメントが寄せられ、活発な議論が交わされました。非常に盛況な会となりましたことを、改めてご報告申し上げます。
次回の第65回中日理論言語学研究会は、9月末に開催予定です。詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を公開いたします)
劉丹青(深せん大学・中国社会科学院語言研究所):
「漢語的形態句法類型特徴撮要」(PDF)
彭広陸(吉林外国語大学):
「向心型語言与離心型語言ー以日語和漢語為例」(PDF)
任鷹(神戸市外国語大学):
「从同構動結式的句法表現看漢語句法結構的特点」(PDF)
※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第64回研究会発表論文集」を明記すること
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