第60回中日理論言語学研究会

日 時:2024年01月21日(日)
開催方式:zoom(オンライン)


ご報告:

関係者の皆様へ: 先にご案内させていただいた第60回中日理論言語学研究会は1月21日(日)、同志社大学大阪サテライト・キャンパスにおきまして40名の方々にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。

記念講演におきましては、郭鋭氏が「制約格配置的語義、語用因素」を中心に、自然言語の格配置の形成には意味的要素と語用的要素はいかに制約しているのかを考察しました。

また、記念シンポジウムでは、「日中対照研究から何が見えたのか」を中心に、4名の発表者の方々に話題提供をしていただきました。
彭広陸氏は、外国人向けの中国語教科書にある指示詞の用法、主語の使用・不使用、移動動詞の使い方などを中心に、会話文における「視点」のあり方に焦点を絞ったうえで、日本語との対照を通して、中日両語における「視点」の相違を究明しました。鄭雅云氏は、日本語の過去形「た」には過去に発生した事態に対する話者の何等かの態度を表すという事実と関連して、台湾華語の「有」にも過去に発生した事態に対する話者の問題視する意識を表すことを指摘しました。雷桂林氏は、日本語の不定語は「何かご用ですか。」のように問いかけに用いやすいのに対して、同じように不定語を用いた中国語の“ni214 you214 shen35-me shi51 ma?”は相手を突き放すなどのニュアンスを伴います。これは事態を空間に位置付ける中国語と時間に位置付ける日本語の違いによるものだと指摘しています。町田茂氏は、中国語の名詞には数量表現が、性質形容詞には程度副詞が、動詞には様々な状語がしばしば付加され、また、短い文の使用範囲は限定的で、疑似現在からの現場報告では連動構造や「長句」が多く用いられることを指摘しています。この背景には広義のmoodに応じてrealityのある表現を選択するという動機付けが存在し、この統語論を越えたもう一つの緩やかな文法規則の存在が「中国語らしさ」の根源になっていると提言しました。
第60回の記念大会にふさわしく、大いに盛り上がった会となりました。次回の第61回中日理論言語学研究会は、5月19日(日)に開催予定です。詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

それでは、今後ともご指導・ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。




<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を公開いたします)




郭 鋭(北京大学):
「制約格配置的語義、語用因素」(PDF)


彭 広陸 (北京理工大学):
「中国語教科書における「視点」のあり方―日本語との対照を通して―」(PDF)


鄭 雅云(京都大学):
「日本語との対照から見えてくるものー台湾華語のモーダル助動詞[有(you)]の「過去性」ー」(PDF)


雷 桂林(桜美林大学):
「中国語と日本語における不定語使用のメカニズム」(PDF)


町田 茂(山梨大学):
「日本語から見た中国語の「中国語らしさ」」(PDF)






※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第60回研究会発表論文集」を明記すること