第58回中日理論言語学研究会

日 時:2023年05月14日(日)
開催方式:zoom(オンライン)


ご報告:

関係者の皆様へ: 先にご案内させていただいた第58回中日理論言語学研究会は5月14日(日)、同志社大学大阪サテライト・オフィス及びZoomオンラインにおきまして、65名の方々にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。

今回の研究会では「感嘆と名詞発話」というテーマをめぐり、シンポジウム形式で研究発表を行いました。冒頭で研究会代表の沈力氏にご挨拶をいただき、定延氏にテーマの重要性と本研究のいきさつについてお話をいただきました。

高山氏は、「なんて暑い日なんだろう」という感嘆文の考察から、規範と事態のギャップが 〈 感嘆 〉 を生じさせる源泉となるとし、感嘆文はギャップの理由に合理的説明を与えようとする思考の流れと関係づけることができることを提案しました。感嘆文には感情的側面だけではなく、思考的側面も重要であることを指摘しています。井上氏は、中国語では副詞「好」と「多」が名詞句感嘆文を構成できるのに対して、「非常」や「很」は構成できないという事実を取り上げ、「好」と「多」が計量的な意味を含み、名詞句感嘆文は属性の程度の超過具合を「量」として述べる必要があると指摘しています。また、なぜ日本語は中国語より名詞句感嘆文が成立しやすいかについて、日本語では「形容詞+名詞」が述語的(属性叙述的)に使用することができ、名詞句感嘆文も形容詞文に近い性質を持っているため、「想定を超えるコトがある」という気持ちの文として使用できる一方、中国語の名詞句感嘆文は、「好」「多」のような計量的な意味を含む程度副詞により「想定を超える属性を有するモノがある」という気持ちを表すものであり、それ自体は述語性を持たないため、日本語の名詞句感嘆文よりも使用が制限されるという見解を示しました。定延氏は、「ネズミ!」のような「名詞一語文」は文なのか語なのかについて、語用論的・韻律的根拠を取り上げ、「名詞一語文」は文ではなく「名詞(語)」であると結論づけています。語用論的根拠としては、文発話と認められているものはサポート不要であるが、「名詞一語」発話にはサポートが必要であること、韻律的根拠としては、広く文発話と認められているものは発話態度によっては末尾の音調が下降するのに対して、「名詞一語」発話は一般には下降調イントネーションを担わないことを指摘しました。
次回の第59回中日理論言語学研究会は10月にハイブリッド形式にて開催予定です。詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。なお、研究会の中途におきまして、音声マイクに不具合が生じ、皆様にご迷惑をおかけしてしまいました。この場をお借りして、お詫び申し上げます。

それでは、今後ともご指導・ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。




<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を一部公開いたします)



シンポジウム:「感嘆と名詞発話」

高山 善行(福井大学):
「感嘆文をどう捉えるか−推論との関係を中心に」(PDF)


井上 優 (日本大学):
「日本語と中国語の名詞句感嘆文」(PDF)


定延 利之 (京都大学):
「名詞一語発話は文発話か」(PDF)






※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第58回研究会発表論文集」を明記すること