第57回中日理論言語学研究会

日 時:2023年01月22日(日)
開催方式:zoom(オンライン)


ご報告:

関係者の皆様へ: 先にご案内させていただいた第57回中日理論言語学研究会は1月22日(日)、Zoom オンラインにおきまして43名の方々にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。

彭広陸氏は「姿勢表現再考―中日対照を中心に―」において、現代中国語の姿勢動詞は方向補語の助けによって姿勢の変更を表す場合が圧倒的に多いのに対し、現代日本語の姿勢動詞にはそのような用法が少なく、他方で、日本語の完成相では姿勢の変更を、継続相では姿勢の継続を表すことができるのに対して、中国語の完成相のみでは、姿勢の変更を表すことが難しい傾向があることを報告し、両言語の姿勢表現の相違は、日本語は「動詞枠づけ言語」、中国語は「動詞枠づけ言語」と「衛星枠づけ言語」という言語類型論的相違に帰するということを主張しました。鴨井修平氏は「西日本諸方言におけるアスペクト形式の文法化」において、中国語のアスペクト形式「着」が、事実確認を標示するムード形式に変化しているのに対し、西日本諸方言のアスペクト形式「ヨル」は文法化によって卑罵性を標示する待遇形式に変化していることを記述し、アスペクト形式の機能重複とアスペクト形式への評価がアスペクト形式の待遇化を引き起こす動機であるという仮説を提案しました。益岡隆志氏は「寺村秀夫と現代日本語文法研究」において、寺村の主著『日本語のシンタクスと意味』を中心に展望を試み、現代日本語文法研究の流れの一端を示しました。益岡氏は、最初に寺村が登場した時代背景に触れ、寺村がめざしたものは何であったのか、そして『日本語のシンタクスと意味』の趣旨はいかなるものであったのかについて議論し、最後に『日本語のシンタクスと意味』に関わる2つの具体的な問題を取り上げました。
フロアからも多くの質疑がなされ、大いに盛り上がった会となりました。次回の第58回中日理論言語学研究会は、5月14日(日)に開催予定です。開催の形式も含め、詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

それでは、今後ともご指導・ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。




<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を一部公開いたします)


彭 広陸 (北京理工大学):
「姿勢表現再考―中日対照を中心に―」(PDF)


鴨井 修平 (同志社大学大学院生):
「西日本諸方言におけるアスペクト形式の文法化―ムード化と待遇化を分ける動機の相違―」(PDF)


益岡 隆志 (関西外国語大学):
「寺村秀夫と現代日本語文法研究」(PDF)






※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第57回研究会発表論文集」を明記すること