第56回中日理論言語学研究会

日 時:2022年10月30日(日)
開催方式:zoom(オンライン)


ご報告:

関係者の皆様へ: 先にご案内させていただいた第56回中日理論言語学研究会は10月30日(日)、Zoom オンラインにおきまして61名の方々にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。

伊藤さとみ氏は「中国語の語気副詞“可”の多義性とその音声的特徴」について、“可”の多様な意味機能を記述し、それらの意味機能は、VERUM演算子として分析できる可能性を示しました。さらに、一部の意味機能の差異は音声実験によって裏付けられることを報告しました。下地早智子氏・松江崇氏は共同で、「直進する時間・循環する時間:“前/后”“上/下”の時間指示用法における認知的対立」について、中国語の時間表現には水平軸を用いる時間表現(H系)と垂直軸を用いる時間表現(V系)」という2つの系列の時間表現があることを記述する一方、H系が主体参照に基づくメタファーなので、認知者自身の移動事象体験として時間を把握しているのに対して、V系が環境参照に基づくメタファーなので、認知者が環境に生じる変化を外から観察することによって時間を認識していることを提案しました。楊凱栄氏は「日本語はなぜ連体修飾を多用するのか―中国語との比較を通じて―」について、日本語の連体修飾節の使用に対し、中国語では少なくとも「連体修飾タイプ」「連動文タイプ」「文頭に現れるタイプ」「二つのイベントで対応するタイプ」があることを観察し、日本語で連体修飾節が多用される原因については、多方面(文法構造や認知、意味機能)からみれば、少なくとも9つの要因が関わっていることを明らかにしました。
フロアからも多くの質疑がなされ、大いに盛り上がった会となりました。次回の第57回中日理論言語学研究会は、来年1月22日(日)にオンラインで開催予定です。詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

それでは、今後ともご指導・ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。




<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を一部公開いたします)


伊藤さとみ(お茶の水女子大学):
「中国語の語気副詞“可”の多義性とその音声的特徴」(PDF)


下地 早智子(神戸市外国語大学)・松江 崇(京都大学):
「直進する時間・循環する時間:“前/后”“上/下”の時間指示用法における認知的対立」(PDF)


楊 凱栄(東京大学・専修大学):
「日本語はなぜ連体修飾を多用するのかー中国語との比較を通じてー」(PDF)






※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第56回研究会発表論文集」を明記すること