第53回中日理論言語学研究会

日 時:2021年09月19日(日)
開催方式:zoom(オンライン)


ご報告:

関係者の皆様へ: 先にご案内させていただいた第53回中日理論言語学研究会は9月19日(日)、Zoomオンラインにておよそ40名の方々にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。
本研究会では、言語類型論から見た「語」の本質をめぐり、シンポジウム形式で研究発表を行いました。冒頭で、沈氏から趣旨説明があり、テーマの重要性や言語類型の異なる言語(中国語と日本語)の間に見られる「ボタン掛け違い」のような対応関係についてお話がありました。
続いて、複統合的言語について、渡辺氏はスライアモン語では「語根」と「接辞」をどのように判別すべきかについて発表し、堀氏は「語」は自立性を持つものでなければならないという角度から、音韻的自立度と形態的自立度の尺度を提案し、「音韻語」と「文法語」という観点からハイダ語の記述を試みました。膠着的言語について、由本氏は日本語と英語の複合形容詞の記述を通して、日本語には「主要部の項構造を基盤とした語形成」と「非主要部の語彙情報から項を受け継ぐ語形成」という2種類の語形成パターンがあることを主張しました。下地氏は、沖縄伊良部方言の語形成を、音韻的基準と形態的基準を立てて記述し、普通の合成語-複合語(type1)-句の3段階があることを明らかにしました。孤立的言語について、沈氏は、中国語の述語形式に関する部分削除規則(PDR)や部分移動規則(PMR)を提案し、この2つの規則でテストした結果、形態素は構成機能をもつ単音節であること、語形成に関して「合成語(語彙的複合)-連続語(統語的複合)」の2段階があることを主張しました。
最後にディスカッションを行い、発表者同士の意見交流やフロアからの質疑応答が行われ、大いに盛り上がった研究会となりました。お忙しい中、ご発表・ご参加いただいた皆様に心より御礼を申し上げます。

なお、次回の第54回中日理論言語学研究会は2022年2月20日に開催予定です。詳細は追ってご連絡させていただきます。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

それでは、今後ともご指導・ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。




<発表者及び発表題目(敬称略、順不同)>
(発表概要(PDF)を一部公開いたします)


シンポジウム:「言語類型論から見た「語」の本質」

1.複統合的言語の語形成について
渡辺己(東京外国語大学AA研):
「スライアモン・セイリッシュ語における語形成についてー特に語根と語彙的接尾辞を中心にー」(PDF)

堀博文(静岡大学):
「ハイダ語(北米先住民言語)の「語」についてー動詞を中心にー」(PDF)


2.膠着的言語の語形成について
由本陽子(大阪大学):
「日英語の複合形容詞の形成メカニズムと意味解釈について」(PDF)

下地理則(九州大学):
「南琉球宮古語における複合と語性(wordhood)」(PDF)


3.孤立的言語の語形成について
沈力(同志社大学):
「形態素は意味を持つ必要があるのかー中国語の述語形式の形成を中心に」(PDF)






※著作権は発表者にあり、引用される場合「中日理論言語学研究会第53回研究会発表論文集」を明記すること