2019中日理論言語学国際フォーラム報告

 


2019年3月2日開催されました第49回中日理論言語学研究会『言語生態科学国際シンポジウム―黄河流域の方言伝播―』は、30名の方にご参加いただき、成功裏に終わりましたことをご報告申し上げます。

本シンポジウムは日本学術振興会科研費基盤研究B(海外調査)「黄河流域方言混合地帯における言語伝播の実態解明―地理情報科学の手法を用いて―」(代表:沈力,課題番号:15H05156)、同志社大学言語生態科学研究センターとの共催により、開催にこぎつけることができました。この場をお借りし、ご協力を賜った全ての関係者の方々に対し、厚く御礼を申し上げます。
冒頭に同志社大学言語生態科学研究センター所長の影山太郎氏からご挨拶をいただき、午前の部「黄河流域における中原官話と晋方言の混合」と題したシンポジウムが開催されました。Xing向東氏が黄河を挟んで秦晋両省の方言的特徴が均一していること、劉勲寧氏が黄河流域へ影響し続けている中心方言は、洛陽ではなく長安(西安)であること,沈力・川崎氏が入声舒声化字数の統計およびGIS分析を通じて、秦晋黄河流域の諸方言から歴史的痕跡が3層あることを観察し、その3層は西南部の関中地域から影響された結果であることを論じました。全体の質疑応答の時間では、会場からのコメントや質問が続出し、活発な意見交換がおこなわれました。

午後からも引き続き研究発表がおこなわれ、第一部では、黄河流域の方言記述に関して,白雲氏,白静茹氏,趙変親氏,史秀菊氏がそれぞれ研究成果を発表し,第二部では、言語伝播の理論的研究について、徐丹氏は生命科学の手段から,平田昌司氏は文献言語学の角度から,岩田礼氏はデータサイエンスの角度から,太田斎氏は言語地理学の角度からのアプローチについて議論し、終了時間が延長になるほど議論が盛り上がりました。
本シンポジウムでは、言語現象の記述・発掘を中心とする研究者と言語研究の方法開発を中心とする研究者,データサイエンスを中心とする研究者が一同に会し、中国の方言に対する様々なアプローチとその妥当性を議論することができました。中国語・日本語の両言語に関心・興味を持つ研究者にとって、学術交流を促進する貴重な場になったのではないかと考えている次第です。今後も中日理論言語学研究のさらなる発展・進化を目指し、このように有意義な交流を一層充実させていく所存です。発表概要は本ホームページの「49回研究例会」を参照していただければ幸いです。


それでは、今後とも、ご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

    
中日理論言語学研究会事務局