2007中日理論言語学研究国際フォーラム報告

 


2007年9月1日、2日に北京大学において「中日理論言語学研究国際フォーラム」が開催された。

1日目の午前には影山太郎氏、沈家煊氏、三原健一氏による基調講演がおこなわれた。影山氏は「出来事の世界とモノの世界--事象叙述と属性叙述--」、沈家煊氏は「On Sentence Formation by Compounding in Chinese」、三原氏は「いわゆるナ形容詞の結果述語を巡って」というタイトルでそれぞれ講演をおこなった。午後には「ことばは世界をどう捉えるか--事象表現の対照を通して--」と題したパネルディスカッションにおいて、岸本秀樹氏(「部分達成を表す事象構造について」)、由本陽子氏(「複雑述語の形成に伴う事象構造の合成と項の実現」、酒井弘氏(「数量表現による事象限定と動詞連続構造」)、胡建華氏(「Exhaustivity in Quantification」)、沈力氏(「中国語の結果構文と事象構造」)がそれぞれ研究発表をおこなった。パネルディスカッションでは会場から多くの質問やコメントが続出し、盛り上がりのある議論となった。

2日目は午前と午後にわたり、分科会が開催され、ワークショップ「新漢語の創出」を含む64の研究発表がおこなわれた。「日本語学」、「中国語学」、「中日対照研究」、「言語教育」のセクションに分かれ、活発な意見交換がおこなわれた。

両日ともに参加者は100名を越え、専門領域を異にする言語学者の交流が可能になった。中国語あるいは日本語を主な対象とする研究者、中日両言語の比較・対照をおこなう研究者、あるいは、方法論として言語現象の記述や新たな言語事実の発掘を中心とする研究者、理論中心の研究者などが一同に会し、中国語・日本語に対する様々なアプローチの妥当性が議論され、中日両言語に関心・興味を持つ研究者にとっては有意義な学術交流の場となった。今後は、中日理論言語学研究のさらなる発展・進化を目指すため、このような交流をより充実させていくことが期待されるところである。

この国際フォーラムは北京大学外国語学院日本言語文化学部及び中日理論言語学研究会によって主催され、日本国際交流基金北京事務所、日本学術振興会科学研究費(基盤研究A)「データ科学の新領域の開拓--文化財データ解析--」、日本学術振興会科学研究費(基盤研究B)「中国語と日本語の対照に基づく事象表現の総合的研究」の共催、北京大学出版社、高等教育出版社、外語教学與研究出版社・商務印書館、カシオ株式会社や多くの出版社の協賛により開催することができた。この場を借りて、ご協力を賜った全ての関係者の方に対し、深くお礼を申し上げたい。

 

    
中日理論言語学研究会事務局