17 分子間力

分子間に働く引力や斥力も量子化学的に考察する必要がある。
ここでは,中性分子の間に働く分散力を考察し,その他の分子間力について概観する。

17.1 van der Waals 力

配向効果 --> 双極子 - 双極子相互作用  oc r-6
誘導効果 --> 双極子 - 誘起双極子相互作用  oc r-6
分散効果 --> 電荷分布の揺らぎに起因する  oc r-6    London 力

van der Waals の状態方程式   
a は分子間力に関係し, b は排除体積に関係する   V -2    → r-6

17.2 分散力の理論

2 つの水素原子が独立に存在するときの全系の波動関数   Y(1,2) = fA(1)fB(2)
摂動のハミルトニアン   
A と B を結ぶ軸は z 軸, x1 は A を原点としたr1 の x 座標, x2 は B を原点としたr2 の x 座標とする

17-1
17-2
17-3
ここで次の式を利用する
 17-4
R ≫ x1, R ≫ x2 等々の条件で考えると
17-5
17-6
 17-7

摂動のハミルトニアンを書き直す

 17-8
一次の摂動エネルギー
17-9
Y は偶関数,ハミルトニアンは奇関数なので,一次摂動エネルギーはゼロ
二次の摂動エネルギー
17-10

17.3 水素結合

X-H...Y 型の結合(...
X は電気陰性度の強い原子(O, N, F 等)
H は X と直接結合
Y は外側に広がった電子分布を持ち電気陰性度が強い(O, N, F, Cl 等)

pict
水素化合物の融点と沸点

演習問題

  1. 中性分子の間にはたらく分子間力にはどのようなものがあるか述べよ。
  2. 分散力とは何か。
  3. 摂動法を用いて,基底状態にある 2 つの水素原子間にはたらく原子間力が,距離の 6 乗に反比例することを示せ。
  4. 水素結合について説明せよ。