12 水素分子〜その 2〜分子軌道法
前の節で用いた分子軌道法を水素分子に応用する。
一電子近似の分子軌道法では,一つの電子が入りうる分子軌道を計算し,そこにエネルギーの低い順に 2 つづつの電子をうめていく。
SCF 的に一電子の感じる有効ポテンシャルを考える必要があるが,最も簡単な近似としては,電子間の反発を全て無視することが考えられる。
(副読本 pp. 134 〜 141)
12.1 水素分子のSCF 近似ハミルトニアン( 1 電子近似)
第 0 次近似としては SCF ポテンシャルがゼロ(あまりよい近似ではない)
12.2 分子軌道法
電子間相互作用を無視した場合,一電子の波動関数は水素分子イオンの場合と全く同じである。
よってそこに 2 つの電子が入ると
この関数は電子のラベル交換について対称なので,スピン関数は必ず反対称でなければならない。
12.3 原子価結合法との比較
計算結果 |
平衡核間距離 |
結合エネルギー |
VB |
0.086 nm |
3.14 eV |
MO |
0.085 nm |
2.68 eV |
実験値 |
0.074 nm |
4.74 eV |
MO の波動関数(軌道部分)を展開すると次のようになる
2 つの電子が一方の核に属するのはイオン結合的であり,ひとつの核に 1 つづつの電子が属するのは共有結合的である。
この式を見てわかるように,電子間相互作用を無視した分子軌道法では,共有結合とイオン結合の寄与が 1:1 であ る。
12.4 分子軌道法の改良
Configuration Interaction 異なる電子配置の一次結合で波動関数を作り,変分法を適用
基底関数の問題
演習問題
- 水素分子について。
- SCF 近似ハミルトニアンとは一般にどのようなものか。
- 水素分子に対する SCF 近似ハミルトニアンはどのような形に書けるか。計算不可能な部分は文字のまま残してよい。
- 電子間の反撥を無視した場合 LCAO-MO 法による水素分子の基底状態について。
- どのような軌道か。関数形を書け。
- 電子はどのように軌道を占有するか。
- 系全体の波動関数とエネルギーとを求めよ。
- スピン波動関数はどのようになるか。
- 電子間の反撥を無視した場合 LCAO-MO 法による水素分子の第 1 励起状態について。
- 電子はどのように軌道を占有するか。
- 波動関数とエネルギーとを求めよ。
- 電子間の反撥を無視した場合 LCAO-MO 法による水素分子の基底状態について。
- エネルギー準位及び各種積分の表式から,エネルギーの核間距離依存性を図示せよ。
- 結合エネルギーを求めよ。
- 基準振動数を cm-1 で予測せよ。
- 電子間の反撥を無視した場合 LCAO-MO 法による水素分子の基底状態について,イオン結合の寄与と共有結合の寄与の割合はどの程度か。
- Configuration Interaction とは何か述べよ。