11 水素分子イオン
水素分子イオンは,陽子 2 個と電子 1 個からなる分子で,通常の条件下では安定に存在しないが放電管の中には存在している。
この系は,電子が元来 1 つしかないので,原子価結合法を用いて化学結合を説明することは不可能であり,全く別の考え方が必要になる。それは,分子全体に拡がった電子軌道(分子軌道)が存在しているという考え方である。
ここでは, LCAO 近似とよばれる近似を用いて,水素分子イオンの分子軌道を考察する
(副読本 pp. 129〜133)
11.1 水素分子イオンに対する近似計算〜分子軌道法Molecular Orbital Method 〜
Hamiltonian
水素原子の基底状態
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LCAO (Linear Combination of Atomic Orbitals) 分子軌道
係数は変分原理と規格化条件から計算
波動関数とエネルギー (gerade 偶, ungerade 奇)
Coulomb 積分
共鳴積分
原子価結合法のときとの違いに注意する。
積分は回転楕円座標で計算できる。
平衡核間距離 |
0.132 nm |
(厳密解 0.106 nm) |
結合エネルギー |
1.76 eV |
( 〃 2.79 eV) |
11.2 結合性軌道と反結合性軌道
結合性軌道と反結合性軌道
演習問題
- 水素分子イオンに対する分子軌道法計算に現れる積分について,回転楕円体座標を用いて以下の表式を確かめよ。 核間距離を R, ハミルトニアンを とする。
- 重なり積分
- Coulomb 積分
- 共鳴積分
- 分子軌道法による水素分子イオンについて。
- 結合性軌道,反結合性軌道とはどのようなものか。
- 結合性軌道,反結合性軌道の波動関数の概略図を,分子軸に沿ってプロットせよ。
- 結合性軌道,反結合性軌道の軌道について,電子密度の概略図を,分子軸に沿ってプロットせよ。
- エネルギー準位及び各種積分の表式から,エネルギーの核間距離依存性を図示せよ。
- 結合エネルギーを求めよ。
- 基準振動数を cm-1 で予測せよ。