コウモリは“鼻または口”(1つの送信器)と“両耳”(2つの受信器)といった非常にシンプルな超音波センシングシステムと巧みなセンシングテクニックを用いることで,周囲空間を把握し,地形環境にも左右されずに柔軟で優雅な飛行を実現させています[1].
私たちの研究チームでは,これまでのコウモリのエコーロケーション行動の実験で得た結果や発見から,彼らの超音波センシング運用を応用した“コウモリロボット”の開発に取り組んでいます.
コウモリが放射する超音波構造を模擬できる高性能なセンサや,リアルタイムでの高速信号処理システム,また近年注目されている機械学習など,様々な新しい知識や技術を学び,ロボットに実装していきます.
そして,“コウモリ独自のセンシングテクニックやアイデア”を搭載すると,どのような結果や効果が得られるのか?コウモリロボットを用いた評価・検証実験を通して,これまで発見できなかった彼らの巧みなセンシング戦略の真髄に迫ります[2].
コウモリのエコーロケーション行動を工学的に評価することができれば,少ないセンサ(1送信2受信器)で高精度な空間把握を実現できる新たなソナー技術の発展に繋がり,車の自動運転や自律飛行ドローンなどのセンシング技術に貢献できると考えています.
コウモリの偉大さの発見と工学分野への応用を目指し,日々新たなロボットの開発・実験が推し進められています.(株式会社村田製作所,広島大学理学部と共同研究)
[1] Hase, K., "Bats enhance their call identities to solve the cocktail party problem." Communications
Biology 1, 39, 2018.
[2] Yamada et al., "Ultrasound navigation based on minimal designed vehicle inspired by bio-sonar strategy
of bats." Advance Robotics, in press.
[1] Yoshino-Hashizawa, Kazuki, et al. "The distress context of social calls evokes a fear response in the bat Pipistrellus abramus." bioRxiv (2023): 2023-06.