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「偏らず、思い込まず」/2003年度文学部就職情報(秋号)

前回に引き続き手前味噌で恐縮だが、今年度秋学期より文学部教員5名で「データで読み解く文化と社会」という学際科目を新設した。京田辺校地で1〜2回生を中心に300余名が受講しており、うち文学部生が6割を占めている。文学部生といえば、他の文科系学部生と比較しても「数字は苦手」「数学など社会に出てから役に立たない」という意識が強く、かなり早い段階から距離をおいてしまっている。中学レベルの簡単な数式でさえ「難しすぎる」「よく分からない」という声が多かったのには、正直驚いた。

文学部のカリキュラム自体は、数字や数学的なアプローチを捨て去ったとしても対応は十分に可能だろう。しかしながら就職市場では、文学部生が「文学部は就職に不利?」と気に病むほど出身学部は重視されていない。だが裏を返せば、出身学部に関わらず個人の力量が問われるということである。数字(データ)から完全に逃れられる職場などまずない。また、それらに基づく論理的なものの見方や考え方は、仕事をする上でもはや必要不可欠である。他学部出身者と同じ土俵で「普通の就職」を目指すならば、様々な業務に対応するための訓練可能性において、極端な偏向を示すのは、やはり不利である。

もちろん数字や数学的なアプローチは、文学部における学びの段階から、その研究対象が曖昧なものであるがゆえに強い力を発揮する側面を持つ。前述の学際科目において、3学科全てから担当者を輩出できたのも、その汎用性を示唆する好例だろう。さらにマーケティングや視聴率分析など、学生が理屈抜きに憧れる仕事をしている方々の講演を通じて、それらがいかに数字(データ)と不可分であり、大学での学び方がいかに将来的なキャリア形成を左右し得るのか、その事実を見据えるきっかけになればと願っている。

そういう意味で、何でも積み重ねることができる、偏りのないしっかりした土台を築いた後は、余計な思い込みを捨てることが必要である。理科系の業界紙やソフトウェア会社の人事担当者に「文学部生の御社への就職は難しいですか?」と尋ねたところ、あっさり否定された。業界紙とはいえ読者の多くは文科系出身者であるし、SEなどの職種であれば、素養さえあれば入社後にきちんと訓練するからというのがその理由であった。先入観に捕らわれなければ、間口も、その先も、存外に広いのかもしれない。

私に与えられたテーマは、実は「ITで近未来の仕事は?」というものであったのだが、ITだろうが何だろうが、4年間で築くべき土台に変わりはなく、それが将来的な選択肢の幅を広げることに直結するように思う。数あるチャンスを生かすためにも、最初から諦めざるを得なかったり、途中で息切れしたりするような学び方をしないでほしい。



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