IPEの果樹園2021

今週のReview

1/11-16

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2021年の復活 ・・・ブレグジット幻想と労働党 ・・・パンデミックと世界秩序 ・・・欧州・中国の投資協定 ・・・アメリカの復活 ・・・議事堂襲撃と煽動者、共謀者

[長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 2021年の復活

NYT Dec. 31, 2020

Things Will Get Better. Seriously.

By Paul Krugman

この数か月は、政治、経済、パンデミックの地獄が続くだろう。しかし、2021年のどこかで、事態は改善し始める。良いニュースが伝わると、多くの人々が思うより、ずっと早く、ずっと長く、状態は改善するだろう。

今、政治の姿はとんでもなく悪い。ドナルド・トランプだけでなく、日増しに、共和党は想像していたものよりももっと悪い政党であることを示している。2大政党の一方が、彼らが敗北した選挙を正当なものと受け入れない。

しかし、他面では楽観主義を支持する理由がある。科学がわれわれを救済する。驚異的な速さでワクチンが開発されたことだ。

私は、いったん、人びとが外出しても安全であると感じれば、貨幣を支出すると思う。マコーネルや共和党はじゃまするだろうが、オバマ政権のときとは違うだろう。そして、技術分野の前進を私は楽観している。

PS Jan 4, 2021

A Global Recovery’s Leading Variables

JOSEPH E. STIGLITZ

COVID-19は消え去る、とドナルド・トランプ大統領が何度も予告したが、そんなことは起きない。ロックダウンによる生産と雇用の大きな落ち込みは、この100年間で2番目か3番目に規模である。たとえワクチンが使用されても、回復には時間がかかる。

予測するコモは難しい。1つの理由は中国だ。2008年の世界金融危機では、中国が世界経済の回復に重要な役割を果たした。しかし、今回は、危機後の成長は限られている。貿易黒字の増加は世界経済への支持がより小さいことを意味する。また、発展途上国や新興国は、先進国のような大規模な支援策を取れない。

世界経済の回復には、USEUの経済が十分に成長し、しかも、発展途上諸国への支援を与える必要がある。

USは大統領選挙後の不確実さが解消されていない。バイデンの超党派的な対策が機能するか、まだわからない。ヨーロッパはパンデミックの衝撃に対して歴史的な7500億ユーロの復興基金に合意した。しかし、第2波が襲う中で、その規模は十分でなくなった。

IMFKristalina Georgieva専務理事は、世界経済を再生するため、5000億ドルのSDRs発行を提案したが、トランプ政権が反対した。悪意以外に何の理由もない。バイデン政権はこれを認め、債務の組み換えにも指導力も発揮するべきだ。

COVID-19危機は、世界の指導者たちが「なんでもする」と表明するにふさわしい緊急事態である。バイデンの選挙キャンペーンは「より良い社会に向けた再建」であった。危機の前よりも、持続的で、公平で、能力の高い社会を築くべきだ。


 ブレグジット幻想と労働党

The Guardian, Fri 1 Jan 2021

The one good thing to come out of Brexit: a bonfire of national illusions

David Edgerton

保守党の右派は歴史的勝利を得た。UKは独立国家になり、限定的だが、EUと通商条約を結んだ。しかし、彼らは失敗した。ヨーロッパは摩擦の無い新しい貿易相手になるのではない。少なくとも、サービスに関する摩擦と障壁がある。UKが重大な規制を緩和すれば、EUの報復にあうだろう。

UKは経済主権を取り戻したが、それがEUをおとなしくすることはなく、自らを傷つけた。新しいブリティッシュ国民の偉大さを示すという指導者たちは、現代の経済を理解していない「自由貿易」論者だった。

ブレグジットは、的外れな見せかけ、主権を得たら世界の不条理を吹き飛ばせる、という紙上の政治だった。離脱を決めた国民投票から4年以上たつが、まだ具体的な計画はない。国際関係の1つの体制を脱け出し、その地位は悪化した。おそらく、停滞が待っている。

われわれは、ブリュッセルから支配権を取り戻すだけでなく、住民投票や議会による民主主義を復活させるはずだった。しかしボリス・ジョンソンとその仲間は、EU官僚よりもひどかった。むしろ国民の正統性を深く傷つけたために、北アイルランドとスコットランドは、沈没する船となったブリティッシュ国家から去るだろう。

自由貿易論が失敗したブレグジット推進派は、1950年代から繰り返されたブリティッシュの試みに連なっている。西ヨーロッパに自由貿易圏を築こうとしたが、EEC1961年、加盟した。さらにさかのぼれば、1920年代、30年代に、保守党は「自由貿易帝国」を築こうとした。これもまた失敗に終わり、インドと植民地だけの保護貿易圏が残った。

当時、帝国主義者たちはアメリカに対抗していたが、今のブレグジット推進派はアメリカとの取引を好み、支配権をブリュッセルではなく、ワシントンにわたそうとしている。しかし、トランプがいなくなっても、アメリカは保護主義的であり、低い基準の食品を輸出してくるだろう。

ブレグジットの選択肢は、ほかにもある。ケイマン諸島モデルだ。UKはカリブ海域から連なるタックス・ヘイブン群島の1つになる。今でもそうだが、一層の巨大な不労所得者の島になる。

最後の選択肢は、国民の再生に向けたレベルアップである。それは労働党にとって新しい可能性を開くのか? しかし、労働党はブレグジットの幻想と保守党のアイデアに縛られている。1930年代には、労働党は保守党に従って自由貿易から帝国的保護論に鞍替えした。その後も、EECを支持し、グローバリゼーションヲ支持し、自由市場を支持した。

ブレグジットのイデオロギーが渦巻きに呑まれてしまったことで、労働党は新しい使命と自分たちの新しい歴史を持って再生する機会を得た。保守党の物語に対抗して、それに代わる未来を示すべきだ。

それは労働党の過去から継承することである。平等、共通の目的、労働組合の強化、賃金引き上げと、意味のある職場を創り出す、と主張する。エリート政治に反対して、民主主義を再活性化する。

ブレグジットがもたらした良いこととは、イギリスが国民的な幻想を燃やし尽くして、世界における本当の地位を知ったことだ。それはもはや「上位の国」ではない。ヨーロッパの軌道から外れることはできない。たとえその頂点においてもそうだった。フェイクではない、本物の再建を遂げることだ。

二重の批判が必要だ。この40年間の失敗した政策と、ウルトラ・サッチャリズムを突き進んで破滅に至ったブレグジット推進派の批判だ。労働党にとって、ここに歴史的機会がある。


 パンデミックと世界秩序

FT January 1, 2021

Goodbye virus-ridden 2020, hello Roaring Twenties

Martin Sandbu

1世紀前に、1918-1920年のインフルエンザが終わったとき、史上最悪の感染症と、史上最悪の戦争の後で、経済的熱狂と社会改革の10年がやってきた。

消費信仰が広がり、金融市場、音楽、ファッション、自己陶酔、自由を謳歌した。「狂騒の20年代」とよばれる。今度もそうだろうか? 

ワクチン接種が行われ、安心した人びとの支出を再開できれば、戦争と違って、商品の供給脳慮億はそのまま残っている。需要があれば経済の復活は急速に進むだろう。

あるいは、金本位制復帰のときのような、財政健全化への妄信がそれを阻むのか? 最も懸念されるのは、パンデミックが生産システムや社会制度を破壊し始めることだ。より平等な分配、公平な社会が必要だ。

現在の高い貯蓄率は異常である。人びとがパーティーに参加するのをじゃまする障害物が取り除かれるなら、経済の復活は加速する。

FP JANUARY 2, 2021

The World After the Coronavirus

ウイルスは多くの生命を奪い、経済システムを破壊し、選挙結果を変えた。世界秩序はどのような影響を受けるだろうか?

JOHN R. ALLEN ・・・病気をコントロールする指導力と社会の自己規制が足りなかった。国際秩序は以前からの脆弱性、弱点を示したが、変わらない。長期的問題が悪化した。

ANNE-MARIE SLAUGHTER ・・・トランプのアメリカは国際協力にその不可欠な役割を果たさず、国民が多くの代償を支払っている。パンデミックの示した最大の驚きは、国内でも世界でも、裕福な者たちの経済と、その他の人々との、決定的な隔離状態である。それは革命の種を蒔く。

LAURIE GARRETT ・・・グローバリゼーションの後退は明らかだ。パンデミックに対応して、多国籍企業はサプライチェーンを再編している。大企業の経営幹部たちの表情は暗いままだ。世界は回復する力を失った。

KISHORE MAHBUBANI ・・・数字は嘘をつかない。各国の死者数を比べればわかる。西側社会はかつて、科学と合理性を尊重することで成功した。今やその指導力は失われ、東のアジア社会に移った。西側の自己満足に対して、東側の規律、社会的管理が勝ったのだ。

STEPHEN M. WALT ・・・西から東への、すでに予想されていたパワー・シフトが加速した。地政学的な対立は終わらず、国際協調の時代が来るわけでもない。開放性と経済的繁栄のいくらかを失った。しかし、ポピュリストたちが勝利するわけでもない。

RICHARD N. HAASS ・・・国内の政治システムとパンデミック対策の成否との間に関係はなかった。サプライチェーンを破壊し、経済と財政状態に空前の悪化をもたらした。ドナルド・トランプの敗北が最大の成果であり、ほかにはパンデミックが歴史的な転換点ではないだろう。

JOSEPH S. NYE JR.  ・・・グローバリゼーションはその形を変えただけである。

G. JOHN IKENBERRY ・・・パンデミックは人びとの想像力、21世紀の世界についてのビジョンに重大な影響を与えた。人類はパンデミックで、自然界と相互依存について、もっと理解しなければならないと知った。秩序の根本問題は、無政府状態ではなく、近代の諸問題が持つジキルとハイドの2面性、すなわち、科学、技術、工業力が解放した巨大な能力と社会管理問題である。

PS Jan 4, 2021

The Pandemic’s Big Sort

HAROLD JAMES

政治システムが、戦争や政治プロジェクトと同様に、パンデミックでも競争している。既存の権力システムは、諸問題の解決に高い能力を示すことで勝利する。

2008年の金融危機がそうだった。アメリカのサブプライム・ローンが危機の原因とみなされ、ヨーロッパと中国はそれを免れた、と思われたが、その後のユーロ危機はそれを再び転換した。

パンデミックにおける優位は愈透明で、政治システムに帰属させるのはまだ早い。社会的に協力した解決策を求める姿勢が強まった。

国家主権を万能と考え、コントロールを取り戻す、という幻想に頼ったUKは、その劣ったパフォーマンスを示す証拠を得るだろう。


 合理的バブル

FT January 2, 2021

Rational bubble puts markets on high starting point for 2021

Michael Mackenzie

持続的な超低金利があることを想えば、これは合理的なバブルである。

その後、音楽が止まって、市場の陶酔感が冷めるかもしれない。投資家たちは現金保有を増やし、不安定な変動期が始まる。


 トランプのデマゴギー

The Guardian, Sun 3 Jan 2021

The Guardian view on Trump's strategy: overturn result, cheat democracy

Editorial

トランプは、選挙で敗北したことを認めず、選挙制度を覆そうとしている。トランプは、自分は大統領として何をしても罪を問われないと知っている。その姿勢を共和党が支持したことで、権力を維持するためなら何でもするだろう。これは、アメリカの民主主義システムそのものを葬る危機である。


 欧州・中国の投資協定

FT January 4, 2021

Europe has handed China a strategic victory

Gideon Rachman

欧州委員会は中国と投資協定を結んだことで、地政学的に最悪のメッセージを送った。

中国は香港の民主化を弾圧し、ウイグルで人権を蹂躙し、インドと軍事衝突し、台湾を武力で威嚇し、オーストラリアに対して防疫で制裁を科してきた。欧州委員会は、これらを欧州は気にしていないことを示した。

これは多極化した世界で、中国にとって外交的な勝利であり、バイデン次期大統領が就任する前に民主主義陣営を団結する希望に重大なくさびを打ち込んだ。

ドイツのメルケル首相が合意を推進したのは、もっぱらドイツ自動車産業にとって中国市場が不可欠である、という通商上の理由によるものだろう。メルケルはすでに、アメリカでトランプ政権が示した不安定性に、欧州が安全保障を頼るべきではない、という姿勢を表明していた。

しかし、欧州は、世界最強の国家が民主主義であることから多大の恩恵を受けてきた、ということを理解すべきだった。権威主義的な中国が望む秩序は、欧州の脆弱性を高めるだろう。

今回の近視眼的な決定は、欧州の「地政学委員会」というアイデアの限界を示している。


 パンデミックと孤独

The Guardian, Mon 4 Jan 2021

To solve the problem of loneliness, society needs to look beyond the nuclear family

Eli Davies

パンデミックは、人びとにとって「孤独」を考える深刻な機会になった。

冬の、クリスマスの時期に、孤独は以前から耐えがたいものであった。孤独は、特別な人たちが強く感じる心の病だった。

孤独は、その具体的な表現を、われわれの文明が組織される形によって与えられた。核家族、離婚、高齢化。

私たちは孤独を解決する方法を模索してきた。パソコン画面を分割したチャット。リソースを組み替え、共有すること。新しい形で家族を形成すること。フェミニストは女性の負担が大きいことを批判してきた。

同棲関係。フラットの共有。住宅価格の高騰と、永続的な大人の取り決め。コミュニティ全体で分配し、組織する方法を考える。真に集団的な共同体生活を模索する。


 アメリカの復活

NYT Jan. 4, 2021

America Can’t Even Produce the Things It Invented

By Dan Breznitz and David Adler

アメリカの製造業は、優れた技術があっても、短期的な利益を優先して生産拠点を海外に移転した。アメリカに雇用と必要な製造業を再生するため、長期的な需要を維持するべきだ。

PS Jan 6, 2021

Is Biden Up to the Good Jobs Challenge?

DARON ACEMOGLU

高等教育を受け、高度なスキルを持たない者は、良い職場を見いだせないアメリカでは、社会の結束が著しく損なわれてしまった。中産階級の機会、人種やジェンダーの平等は、もはや期待されていない。所得分配は増大したままだ。

パンデミックはさらに労働者たちの状況を悪化させた。株価の上昇も、経済の回復より、不健全さを示している。高い生産性や雇用を増やすより、大企業は労働者の賃金を抑え、市場の競争を妨げている。

景気循環は社会分断を深めるだろう。金融資本の流入は、トルコ、インド、南アフリカのような新興諸国で構造的な欠陥を隠蔽した。

大企業の広めたイデオロギーを一掃するべきだ。技術革新や政策決定を支配している。

FT January 8, 2021

Chances are rising for a US economic reset

Gillian Tett

通常であれば、投資家たちは新政権が準備する景気回復策を期待するだろう。ジョージア州で民主党が勝利したからだ。

しかし、重要なことは、蜂起や弾劾ではない。不平等の解決だ。

バイデン次期大統領は平等化を約束したが、不平等について、大統領にできることはあまりない。コロナウイルスによるパンデミックは、これから先も、不平等を悪化させる。

Walter Scheidelがその著書(The Great Leveler)で述べたように、不平等が逆転したのは、駅業、国家の崩壊、戦争が起きたときであった。

アメリカはそれに匹敵するショックを味わっている。ジョージア州で民主党候補が勝利したことで、変化のチャンスがある、と言えるだろう。

バイデンのチームは大規模な支援策を追加するだろう。さらに、大規模なインフラ投資を準備している。トランプの減税に代わって、明確な累進性による増税を提案するかもしれない。富裕層や市場は、それにどう反応するのか?

それは、まだわからない。


 「選挙の不正」

NYT Jan. 5, 2021

Trump Still Says He Won. What Happens Next?

By The Editorial Board

トランプはまだ選挙の不正を言い立てて、バイデンの勝利を認めない。そのような圧力を関係者にかけている。弾劾裁判を免れたことで、彼は何でもできる、共和党はいつでも自分を支持する、と学んだのだ。

これほど無法で、国家の最高英英責任者の資格がない人物を、こうした不正行為で大統領の職から2度目に弾劾することで、将来の公職からも追放するべきだ、という主張には十分な根拠がある。


 議事堂襲撃と煽動者、共謀者

NYT Jan. 5, 2021

Never Forget the Names of These Republicans Attempting a Coup

By Thomas L. Friedman

トランプに協力する、これらの無原則な共和党員たちを許してはならない。彼らの考えは明白だ。

「民主主義は素晴らしい。それがわれわれに支配権を与える間は。もしわれわれが権力を失うなら、ルールもシステムもくそくらえだ。権力は人民の意志から生じるのはなく、われわれの意志であり、指導者の意志だ。」

まともな共和党を、トランプと、選挙は不正だ、勝利を奪われた、という妄想に従う集団から切り離すべきだ。

The Guardian, Wed 6 Jan 2021

The violence at the Capitol was an attempted coup. Call it that

Rebecca Solnit

水曜日、アメリカ合衆国大統領によるクーデタの試みがあった。右派の暴徒が議事堂になだれ込んだ。彼らは、バイデンとハリスが選出されたことを完了する手続きを妨害したのだ。

選挙は合法的ではない。トランプが大統領を続けるべきだ。そのような中身のない主張で作業がすでに中断されていた。これもまた、憲法を犯し、選挙に示された有権者の意思を翻す、クーデタの試みだった。議事堂の内外の勢力が同じことをもたらした。外の暴徒は、中の政治家たちがいなければ、集まっていなかっただろう。インサイダーたちは恐怖と拒絶を叫んでいるが、この暴挙は彼らのものだ。

マコーネルと他の共和党指導者たちは、11月初めに選挙結果を認めた。そのとき暴徒はいなかった。しかし、共和党の大統領職を維持することに失敗した彼らは、後からその結果を否定しようとした。トランプは暴徒を招き入れ、数か月かけて闘いを煽り、爆弾に火をつけた。

この試みがバイデンの大統領就任を阻止することはできないだろう。しかし、次期政権を法に反する選挙の結果であると主張し、弱体化を狙っている。これは多年にわたる激しい怒りがもたらしたものだ。トランプ自身が、また全米ライフル協会、Foxニュース、さまざまな右翼評論家たち、共和党、白人至上主義者、プラウド・ボーイズなどの極右集団が、この特に白人男性の怒りに油を注ぎ続けた。それは、他の人々が法の下では平等であることへの怒り、権力がより平等に分配されることで女性や有色の人々も統治することへの怒り、出生証明書を求め、妨害することで黒人の大統領を非合法化しようとしたのと同じ怒りであった。平等に反対する怒りである。

われわれが議事堂に観たのは権威主義者の暴力だ。犯罪者の意志に、他の人々が服従することを強制する。この暴力は、この国で権力を持つ唯一の人々であると、長い間、自認してきた白人男性から起きている。彼らは、よそ者も権力や発言力を持つかもしれないという理由で、これらの人びとを周辺に追いやり、弾圧することを空想していた。

このクーデタの試みは、繰り返しわれわれが観てきた、銃の乱射事件が示すように、抑制の無い暴力のイデオロギーの上に立つものだ。それは21世紀のアメリカで当たり前になったが、銃器と銃を保有する権利への信仰は、殺人の武器とそれによる死を格段に広めた。アメリカ人の死亡理由では、近年、銃による死が自動車事故を抜いている。

トランプはアメリカが生んだ最も嘘をつく公人であるが、彼の嘘はその権威主義体質の本質をなしている。トランプと彼に忠誠を尽くす人々は、最悪の事態が起きたことに責任を取らず、驚いたふりをしている。しかし、なお暴徒を飼い続ける。選挙結果を翻すクーデタとして、これが成功か、失敗か、という問題に解消してはいけない。これはそのどちらでもない中間の行為、民主主義の手続きを非合法化する、新政権の正統性を失わせる、もっと陰湿なものである。

トランプ支持者たちは、彼らと指導者が法の上にあること、彼らが楽しむ事実であればそれが何であれ、それらに基づいて強制できる、と考えている。彼らは別種のリアリティーを築き上げた。影の政府として合法的な政府を苦しめ、弱体化しようとする。われわれが、今日、観たのは、そういう行動だった。

NYT Jan. 6, 2021

Impeach and Convict. Right Now.

By Bret Stephens

ドナルド・トランプはアメリカに放火する意図的な犯罪者である。この男がわれわれの立憲共和制の建物の下に火をつけた。

上下両院はその義務として、バイデンの当選を承認した後、再集合するべきだ。そして大統領を弾劾し、解任し、彼が二度と就任できないようにするべきだ。

たとえわずかであっても、彼がその任期を務めるのを認めてはならない。それはこの国の安全保障を損ない、われわれの民主主義に対する評価を地に落とす。議事堂襲撃は、この無法な、不道徳な、恐怖を広める大統領がけしかけ、支援した、暴力的な煽動の結果であった、という避けられない真実に目をつむるものだ。

2015年、トランプが共和党の大統領候補としてトップに立ったときから、彼がどういう人間であるか、機会があれば国を乗っ取ろうとしていることは明らかであった。ビジネスにおいては詐欺師。外交においては嫌がらせ。その政治手法はデマゴーグである。

彼には考えがない。あるのは偏見だけだ。彼には同盟者がいない。あるのは群衆だ。彼は恥知らずな人間であり、その追従者たちにも恥知らずであることを許す類の政治家である。

こうしたことは明白であったのに、彼を止めることはできなかった。2015年のアメリカがあまりにも多くの問題を抱えていたからだ。それらが長い間、無視されていたために、ポピュリストたちが群衆の支持を得る材料がふんだんにあった。しかし、2015年最大の問題は、主要政党である共和党がこの凶悪犯に降参したことだ。その後も共和党は、トランプを弁解し、その犯罪を黙認し、許容し、共謀して、彼の凶悪さを祝福するようになった。

5年間も、共和党はトランプを正常とみなすことで政治文化を劣化させてきた。民主主義の規範や制度を彼が攻撃するのを放置した。絶えざる不誠実さを性格の問題とみなし、政権の不適格としなかった。トランプの集会は、民主主義の祭典であり、暴徒による支配を訓練しているとはみなさなかった。

5年間も、共和党はこれを代価のともなわない追従と思っていた。そして水曜日に、彼らのチキンが議事堂を襲撃する姿を観たのだ。

FT January 7, 2021

The nightmarish end to Donald Trump’s presidency

Edward Luce

ドナルド・トランプ大統領は、90分後に議事堂を襲撃した群衆に対して、「力を示せ」と演説した。

就任式でトランプが「アメリカの虐殺」を警告してから4年後に、彼はその望みをかなえたのだ。

今、最も緊急に問うべきは、彼が残りの任期に何をするか、である。国防総省の軍司令官たちは、もしトランプが1807年の内乱鎮圧法を行使して、戒厳令を発した場合に、どのように対処するべきか、長い間、議論してきた。

暴徒があれほど簡単に議事堂に乱入できた1つの理由は、警備陣の一部が暴徒に同情的であったことだ。その何人かは議事堂内で暴徒たちと自撮りしていた。

どれくらい多くの共和党議員が、盗まれた選挙、というトランプの物語を支持し続けるのか。

ユタ州選出のロムニー上院議員は、トランプの権威主義に対して明確に警告してきた数少ない共和党員だが、仲間の共和党議員たちに言った。「お前たちが手に入れたものとは、これだぞ。」

ジョン・F・ケネディは就任式で述べた。「虎の背に乗って権力を得る愚か者たちは、虎を部屋に入れてしまう。」

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The Economist December 19th 2020

The plague year

Targeting big tech: Credibility gap

The Arab world: Ten years after the spring

Banyan: A lonely furrow

Citizen of the world

The Arab spring at ten: No cause for celebration

(コメント) 感染症の年が1つ終わった。まだ続く。ハイテク大企業は何が問題か。インドにおける農業関係法の強権的な改正。それに反対する農民たち。賛成するエコノミストたち。

アラブの春を再論することや、トランプ支持者の議事堂襲撃を目撃する中で、エラスムスの記事を読むのは感動的です。

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IPEの想像力 1/11/21

ドナルド・トランプは、自分が育てた暴徒や極右運動に議会への襲撃をそそのかしました。民主主義を重視する欧米の指導者たちが、その暴挙と醜悪な言動を厳しく非難したとき、日本の首相は何を語ったのだろうか?

いまだに、安倍首相とトランプ大統領の親密さを貴重な資産と思って、非難することを控えたとしたら、森友学園問題、桜を観る会などを不問にする姿勢、学術会議の任命拒否を改めることも、説明することもできず、うやむやにし続ける無能さに並んで、この国の民主主義や政治の質を貶めるものと思います。

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The Economistのクリスマス特集号に、エラスムスの話が載っています。

彼は、1466年、ロッテルダムで司祭の私生児として生まれた。キリスト教的統一ヨーロッパ最大の知識人でした。その学者としての名声は高く、諸国の王の友人として、皇子たちの教育者として損益された。同時に、自ら「世界市民」とみなし、キリストの言葉、キリストの行動によってキリスト教を考える。信仰に関して、身分の違いなく、だれとも親しく接した。

エラスムスは、社会が乱れ、支配者が殺戮に向かうことを、キリスト教の力で改善できると考えた。しかし、教会や大学は腐敗し、縁故主義が支配し、無意味な衒学にふけっていた。エラスムスは、ソルボンヌで博士となるのに最低でも8年、平均18年もかかる、と書いた。ローマの最大のビジネスはワイン取引と売春であった。似非神学者たちを厳しく寓話や風刺で批判した。同じく教会の腐敗や社会問題を批判した『ユートピア』の著者トマス・モアは親友だった。

エラスムスは皇子をキリスト者として人文学を教育し、そのことによって改革を推進できると考え、皇子のための教育論を出版した。3年前に出た『君主論』でマキャベリは、支配者が愛されるよりも、恐れられることを主張したが、エラスムスは逆だった。慈善、愛、寛容さを持つ指導者こそが、社会を平和的に改善できる、と考えた。

王による権力を変えるのは、王を教育することだった。腐敗した教会組織もそうだ。キリスト者であることの愛や優れた心は、既存の教会や司祭ではなく、聖書に立ち戻り、キリスト自身の言葉や行為を学ぶことで得るべきだった。エラスムスは聖書をラテン語から翻訳し、誰でも読めるものにした。その姿勢から、17歳年下のマルティン・ルターは学んだ。

エラスムスは過激な主張を嫌った。教会を分裂させることも望まなかった。しかし、あきらかに宗教改革はエラスムスの姿勢からルターを経て広まった。カトリック教会とプロテスタントは激しく互いを攻撃し、パンフレットや本を燃やしたが、信仰をめぐる闘いの過激化は、暴力や村の焼き討ち、虐殺、集団的レイプ、戦争にまで至った。

宗教改革でエラスムスはどちらの側にも属さないことを選んだ。そして、双方から責められた。やむなく、狂信的なプロテスタントより、カトリックの改革を望んだが、カトリック教会も対抗して、攻撃的姿勢と硬直化に向かった。エラスムスは英雄から、憎悪される化け物になった。

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これは景気循環や世界不況ではなく、人類の《冬眠》である。そう考える方がよいでしょう。

冬眠中の[ユートピア]では、静かな、透明な景色が広がります。

金利や地代、家賃を最小あるいはゼロに抑え、政府が債務者や借家人に代わって支払う。人びとは誰でも、基礎所得に加え、労働して追加の収入を得る機会は平等に募集される。市民として、さまざまな職種を経験する。

外出はできない。街へ出るには、要件を明確に限定して、デジタル許可書を発行してもらう。公園で家族が遊べる日は指定され、父親は会社を休む。お店は4件に1件、あるいは、接触するタイプの業種は都市部ですべて閉店する。

世界中央銀行が世界通貨を発行する権限を持ち、主要な国際商品(エネルギー、食糧、鉄、パソコン、スマホ)を購入できる。その保証によって、通貨価値を支え、世界の周辺諸国における市場において介入(通貨供給)する。

世界復興基金が基礎所得を保障する。基礎所得はベーシックインカムだけでなく、食糧配給、共同食堂、共同宿泊所、公共事業による雇用創出の形で受給できる。

ついに、人類の《春》を迎える。軍隊は解体され、兵士たちは家族のもとに帰る。武器や兵器は生産されない。アラブの春は、再び、ルネッサンスのような文芸や知識の復興となって実現する。

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月曜日、グッと地球便で、沖縄県。久米島の馬牧場で奮闘する藤井菜摘さんの話を観ました。彼女が馬の世話や民宿の改装に懸命に働く姿が印象に残ります。パンデミックは観光業に深刻な打撃を与え、馬牧場の経営を困難にしていると思います。

首相には、コロナウイルス感染予防や医療システムに関して、根本から考える姿勢がない。ますます、それを痛感する中で、反省するのは、東日本大震災の復興と福島における原発事故の処理、原子力政策です。

パンデミックは、日本の政治の在り方、衝撃に耐える仕組みや能力を問い、連帯する心を求めている。

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