IPEの果樹園2020
今週のReview
9/14-19
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孫正義の利益 ・・・バフェットの商社買い ・・・アメリカ連銀 ・・・安倍辞任とその評価 ・・・中央銀行の乱戦 ・・・コロナ不況対策 ・・・中国の絶対権力 ・・・ブレグジットと「法の支配」 ・・・核抑止力 ・・・パンデミックと独裁
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 孫正義の利益
FT September 9, 2020
The wider risks in SoftBank’s US tech bet
3年の計画を述べる企業家は少ない。まして、300年を述べる者はいない。しかし、日本のSoftBankを動かす孫正義は、300年後も企業が繁栄するよう、1000億ドルのVision Fundを投資する。
だから、SoftBankが、アメリカのハイテク株を記録的な水準まで上昇させるのに一役買った「クジラ」である、とわかったのは、驚きだ。それはSoftBankの表明していた姿勢と矛盾する戦略だから。ビジョンのあるハイテク企業を育てる投資家には程遠い。これはヘッジファンドの行動だ。
SoftBankの行ったデリバティブ取引の詳細が何であれ、市場はその行動を懸念している。ハイテク企業も、規制当局も、他の投資家たちも。1人の巨大な投資家が世界最大の市場に影響を与えるという事態は、警告となる。
以前から、アメリカの株価がファンダメンタルズを無視しているという懸念がある。ハイテク株が上昇し続けることは持続不可能だ、と。パンデミックに反応した金融刺激策は株式市場を高騰させた。しかし、増加するオプション取引に、十分な知識のない投資家が参加していることに警告するべきだろう。株価が下落する局面で、破滅する投資家が出てくる。
過剰な資金を持つとき、企業はしばしば問題のある行動に手を染める。ハイテク株の下落は再考を促すのに十分だ。SoftBankも、雪崩の始まる、やわらかい雪の上に立っている。
● バフェットの商社買い
FT September 10, 2020
Why Warren Buffett could lead other money managers into overlooked Japan
Leo Lewis
掘り出し物がいっぱいあるのは誰でも知っているが、ラベルもちゃんとつけていない店を詳しく見て回る面倒なことは誰もしない。もっと簡単に、アマゾンに行ってしまう。
しかしウォーレン・バフェットは違う。先月、90歳になった、the Berkshire Hathawayの創設者が、日本の5大商社、三菱、三井、伊藤忠などの株式を、それぞれ5%、購入した。バフェットは棚の奥から、ほこりを払って、過小評価された掘り出し物を見つけたのだ。
しかし、仲介業者は、日本株がなかなか売れないことをよく知っている。海外のファンドマネージャーは、「アベノミクス」で大量の資本が流入した2年間の後、2015年6月以来、日本の株式市場で2200億ドルを売り越した。
Berkshireの日本株購入は巧妙に行われた。一連の債券発行で資金を集め、その平均利子率は0.67%である。購入した株には、平均で4%の配当がある。この選択は、世界中で共同事業に関わっている、これらの日本の商社を、バフェットが「相互利益の機会」とみていることを示す。
Berkshireの取引を誰でもまねることができないが、アメリカと日本の株式市場の大きな差を利用する、ということは、バフェットから学べる。TopixとS&P500という2つの指数を単純に比べると、日本株はこの数年で最低水準にある。US株はthe MSCI World indexの60%近くを占めるが、日本株はたったの6.5%である。
Berkshireは、日本株には、ロボット工学や自動化工場、特別な化学製品で、堅実な経営、豊富な資金保有の、掘り出し物があることを思い出させた。
● アメリカ連銀
FT September 4, 2020
The Fed’s quest for higher inflation looks doomed without Congress
Colby Smith in New York
連銀は、より高いインフレにも耐えるだろう、と報告した。失業率が下がるだけでは金利上昇につながらない、とも。
連銀は、ウォール街だけでなく、実物経済の回復を支援しようと焦っている。金融の安定性だけでは連銀の評価を維持できない。しかし、政府の財政刺激策なしに、連銀だけで、それに成功するとは誰も思っていない。
構造的な諸要因が物価を下げている。日本で特に強く示されたように、人口の高齢化はデフレを促す。技術革新の影響もある。実物経済の回復が遅れれば、不平等の拡大や金融不安定化について、連銀の責任が追及されるだろう。
しかし、夏季休暇前の議会は刺激策に合意しなかった。連銀の運命は議会が握っている。
● 安倍辞任とその評価
FT September 6, 2020
Shinzo Abe’s successor must maintain a delicate balancing act
Yoichi Funabashi
安倍の成果は外交にある。
米中関係が悪化する中で、安倍は2つの超大国間でバランスを取った。日本の安全保障面で、アメリカとの同盟が欠かせない。同時に、貿易では、日本の輸出の20%が中国向けで、第1位である。
安倍は、日米関係をアジアや世界に広げた。オバマ大統領は広島を訪問し、お返しに、安倍は真珠湾を訪問した。トランプとのゴルフや、仲間意識もそうだ。
他方で、中国は安倍を警戒した。しかし、コロナウイルスで延期されたが、4月には習近平の訪日が予定されていた。他方、ロシアとの北方領土交渉は失敗した。
後継者が学ぶ安倍の教訓は3つだ。1つは、日本が、より独立した、しかし信頼される、アメリカの同盟国になること。同時に、インドや東南アジア諸国も、日本の地域的影響力を歓迎している。
その意味で、最大の成果は、環太平洋パートナーシップ協定だ。トランプがアメリカの離脱を決めて後も、日本がまとめた。
2つ目は、中国との関係には、ハードなリアリズムを要する。中国とは、共存と競争の関係である、と北京が理解できる言葉で語った。米中のイデオロギー対立から、プラグマティックに、巧みな回避を行った安倍に、中国は感謝し、評価していたはずだ。
最後に、安倍が国内政治で、ナショナリストと、分断をもたらすポピュリストの、中間の立場に立ったことだ。終戦70周年記念の言葉でも、これまでの首相たちが戦争中の日本の「行動」について示した悔いを引き継いだが、新しい謝罪の言葉は何も加えなかった。
● 中央銀行の乱戦
The Guardian, Wed 9 Sep 2020
The world's central banks are starting to experiment. But what comes next?
Adam Tooze
ドルの支配は終わるのか? 膨大な政府債務がインフレの波を起こすのか? COVID-19による危機において極端な金融政策が取られ、アメリカ政治がさらに分断を深めている。
各地の中央銀行はデフレの悪循環を恐れている。デフレは購入を遅らせ、需要が減り、さらにデフレになる。ネオリベラルの時代を形成した中央銀行のモデルは1970年代のインフレを抑制する、特に、労働者の交渉力をチェックするものだった。
インフレが低下して、問題が生じた。最初は、1990年代の日本だったが、例外とみなされた。2008年、米欧の金融危機が起き、いわゆる量的緩和が採用された。しかし、成長は弱く、デフレが近づいた。米欧日の中央銀行は財政支出を増やすよう求めた。
2016年、日銀は巨額の債券購入に加えて、10年物国債が示す長期金利をゼロにした。なんとかデフレを回避したが、成長はわずかなものだった。オーストラリアがこれに続いた。他方、アメリカ連銀は、インフレ抑制から労働市場重視に、金融政策のバランスを変えた。労働者の交渉力が弱いことを認めた。
連銀がインフレを容認する姿勢を表明したことで、ドル価値が下落した。一般に、ドル安は世界経済を刺激する。ドルの借り入れが容易になり、世界貿易が増えるからだ。しかし、ユーロ建で輸出するヨーロッパは違う。ギリシャやイタリアの債務危機がユーロの価値を抑えていたが、2020年には、アメリカの政治的危機が問題になっている。
ユーロの価値が上昇し、輸出が減り、デフレを促している。ECBはインフレを抑える姿勢を変えていない。しかし、アメリカと違い、債券市場より銀行融資が中心であるヨーロッパで、金利体系を分割する実験を始めた。いわゆるTLTROファシリティで、ECBが銀行融資を補助する。デフレへの不安を解消するほど協力ではないが、融資の流れは維持されている。
こうして日銀、アメリカ連銀、ECBの実験は続いている。しかし、世界金融システムの第4の柱である中国人民銀行は違う。巨額の債券購入も、融資への補助も行っていない。巨大な商業銀行が低利融資のコストを吸収している。
USドルの世界準備通貨という役割は終わるだろう。しかし、それは解決策ではない。今、起きているのは、1990年代の単一の中央銀行モデルが終わった、ということだ。より複雑で、多様で、多極化している。大規模な介入と無限にも見える融資をともなう、ハイブリッドな市場メカニズムが混在する。このフランケンシュタイン的な市場が何であるかは、まだわからない。
ドル安は、通貨戦争、貿易戦争を刺激する。2015年にユーロ圏が財政緊縮策の苦痛を緩和するために、ECBが金融緩和したが、連銀は金融引き締めていた。ドル高が進み、アメリカ製造業のミニ不況に労働者たちは苦しんだ。それは2016年のドナルド・トランプ当選を準備した。
1970年代のインフレを起こした社会的諸勢力は、世界中で粉砕されたのだ。経済は慢性的な停滞へのバイアスを生じるものへ、歴史的にシフトした。中央銀行はより大きな行動の自由を得たが、現在の経済危機において社会福祉や投資を支援するために、それを行使するだろうか。
● コロナ不況対策
FT September 5 2020
Beware what comes after the easy money binge
Michael Mackenzie
世界中の中央銀行が取った超金融緩和、諸政府が行った莫大な支出が、この数か月間、株式市場、信用市場の強力な触媒であった。金融市場の地震が復活し、特にUSハイテク市場のユーフォリアを広めた。今週、ようやく下落したことで、上限が示されたかもしれない。
現在のUSマクロ経済政策は、現金を貯めこむ慎重な投資家を罰するものであり、金利が無いに等しい中で、どのような危険な投資も容易な儲けの機会である。多くの者にとって、底値買いのチャンスだ。
そういう発想は歴史によって支持される。株式市場は経済全般の回復に先行するからだ。しかし、金融史は別の注意を要する話を示す。当初のブームの後、政策がどうなろうと、株価は苦しむことになる。資産価格のバブルが、日本、韓国、台湾で1980年代に、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアで1990年代に起きた。その後は長い下降が続いた。
世界第2の経済(日本)で、巨額の支出が、間違った資本の配分、生産性の停滞をもたらした、と批判する者がいる。過剰な刺激策や金融緩和は、資産バブル、もしくは、インフレの爆発に終わる。どちらも長期的に株式市場を病気にする。
どこよりも株価が突出しているのはアメリカだ。今年、3.3兆ドルの財政赤字(GDP比16%)で、1945年以降で最大だ。アメリカ企業の債務も、金融政策の緩和で増えた。連銀のバランスシートは急激に拡大し、7兆ドルに達した。インフレを促し、失業を減らすという目標を掲げて、その拡大はまだまだ止まらない。
結果的に、企業収益が増え、生産性が高まって、株価上昇は持続可能なものだと分かるかもしれない。財政・金融政策の支援によって、グローバルな停滞とデフレーションを打破するのかもしれない。しかし、内外の投資家がドル資産に偏ることは、準備通貨としてのドルを脆弱にする。
PS Sep 10, 2020
Planning for Crisis Resilience
RICARDO HAUSMANN
テニスボールを地面に投げると跳ね返ってくる。しかし、ワイングラスを投げると砕けてしまう。多くの国で経済が急落している。跳ね返るのか、砕けるのか?
2008年の金融危機では、ギリシャ、バルチック諸国、イタリア、アイルランド、スペイン、ポルトガルが大きな不況になった。ソ連崩壊では、中央アジアのタジキスタンや、ヨーロッパのモルドバ、ウクライナがGDPの3分の2を失った。1980年代前半、ラテンアメリカの債務危機では、ボリビア、ウルグアイ、チリが大きな影響を受けた。2011年、アラブの春で、チュニジアやエジプトのGDPはほとんど減少しなかったが、リビア、シリア、イエメンの経済は崩壊した。
● 中国の絶対権力
The Guardian, Sun 6 Sep 2020
‘Chairman Xi’ seeks only to purge and subjugate. That is his weakness
Simon Tisdall
しばしば言うように、権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する。指導者は愚かな行動を取り、頑固で、最終的には自己破壊的になるから。歴史は、特に中国史は、制限されない全能の支配者が災難をもたらす例にあふれている。
習の権威主義的、拡大主義的政策は、共産党書記長から主席になって以来、その猛威を増し、中国を炎上する環に封印した。内モンゴルから新疆、チベット、ヒマラヤが北部と西部にあり、香港、南シナ海、台湾が東部にある。
● ブレグジットと「法の支配」
The Guardian, Wed 9 Sep 2020
This Brexit bill finally buries the Conservative party of law and order
Martin Kettle
現代保守党の守護聖人にとって、「法の支配」はつねに経済的繁栄の基礎であった。それはイギリス的なるものを識別するものだった。
マーガレット・サッチャーは、その回想録で、「法の支配」を、いかなる社会においても商取引の信頼を支える条件であるとみなした。1982年のインタビューでは、イギリスがヨーロッパに「法の支配」という考え方を授けた、と述べた。「法は、われわれから来たのだ。」
カミングスの影響下にある政府が世界の舞台で自分たちの約束を破ろうと計画したというのは、驚きではない。新しい法案は、カミングスがルールを無視する姿勢を、国際法に移植している。それにしても、地球上でもっとも法を順守する国だと通常は自慢しているイギリス政府が、呆れた行動を取るものだ。それは要するに、独立国家なら、それがUKでも、他国との関係で何をしてもよい、と主張している。
カミングスの世界観は、今週、議会で北アイルランド担当大臣の言葉に示された。「はい、これは国際法を破っています。」 まったくその通りだ。結局、カミングスとジョンソンは、慣習や外国人に敬意を払ったから、その地位を得たわけではないのだ。
EUとの交渉期限が迫っている。ジョンソンは離脱派に、予期に反してEUから勝利をもぎ取った、という形の合意を求めている。単に交渉して、合意するのではないのだ。ブレグジット最強硬派として、外国人どもに膝を屈したりしない。むしろジョンソンは、EU側を悩ませる危機の煙幕を張って、困難な勝利という取引を混乱の中から勝ち取ろうとしてきた。
問題は、ジョンソンが本当に合意を望んでいるのか、ということだ。1つの理由は、彼がUKの分裂を望まないことだ。合意なしの離脱では、スタージョンがスコットランド独立のキャンペーンを一気に加速するだろう。EUも、独立問題を刺激するつもりはない。
しかし、ジョンソンとカミングスは、ブレグジットをめぐる、このすべての闘いの源泉となる闘いを望んでいるだろう。結局、それこそがこの政権が存在する理由だから。その意味で、保守党内に残るサッチャー派は彼らに指導権を奪われた。彼らから取り戻すことはありえない。
The Guardian, Thu 10 Sep 2020
Boris Johnson's 'oven-ready' Brexit had a secret footnote: we'll rehash it later
Fintan O’Toole
ボリス・ジョンソンがイングランドのために嘘をつくのは皆が知っている。彼の支持者にとって、嘘は彼の資産である。彼らは、ジョンソンならEUをだまして、真に受け入れ可能な取引をものにできる、と信じていた。それは、EU加盟国としての利益を楽しみながら、その制約を受けないような取引だ。問題は、その先天的な虚言癖が、外国人に対して発揮されるだけではないことだ。イングランドのために嘘をつくなら、イングランドに対しても嘘をつく。
今週、この2つの虚言がついに1つになった。EUとの離脱に関する合意は破ってもよいと公式に認め、ジョンソンの離脱推進政権は、12月の総選挙で有権者すべてに向けて虚言を売り込んだ、と暗黙に認めたのだ。詐欺によって国内政治を汚染したブレグジットのDNAが、ここに完成した。
交渉における、いわゆる「海上の境界線」は、メイの離脱案が議会において葬られた北アイルランド問題を回避するための妄言だった。ジョンソンも、その腹心であるカミングスやゴーブも、それを計メイな回避策や戦術的後退とは見なかった。しかしブレグジット派の神学では、国家主権が絶対であり、EU加盟を終わることは一方的な自由行動である。推進派は、この詐欺がブリテンを無法国家の汚名に公然と連なることも気にしない。
離脱合意では何も終わってなかったのだ。それが虚偽の一層深刻な、冷笑的な水準に達した行為であることが明白になった。ブレグジットは、離脱合意が議会で承認されても、「完成だ」ではなかったし、カミングスとジョンソンは、これをひっくり返すつもりだったのだ。国民は、調理方法も材料も、後から変えてよい、という但し書きが付いた料理であることを知った。
ブレグジットとは破るためにした約束である。なぜなら有権者が2016年に示された最善の世界は、常に、幻想であったから。しかしそれは時間が経つとともに成長し、広がってきた。今、イギリス民主主義の中に公然と裂け目を生じている。
● 核抑止力
FT September 7, 2020
Erosion of nuclear deterrence makes India-China relations critical
Gideon Rachman
第2次世界大戦後、冷戦期の、核抑止力が戦争を減らすことに成功した時代は、終わったのかもしれない。
3つの国際的緊張事態が起きている。最大のリスクは中国とインドとの国境地帯における衝突だ。インド兵12人が死亡し、中国の死者数はわからない。太平洋ではアメリカと中国が緊張状態にある。ベラルーシの危機はロシアの軍事介入を招くかもしれないが、それでNATOの軍事行動に向けても警報が鳴る。
軍事専門家たちは、核の先制不使用を宣言していることから、核保有国でも軍事衝突する条件がある、と言う。しかし、軍事的に劣位にある国が、敗北を予想した状況で、核を使用する誘惑が強まる。ヒマラヤの軍事衝突で、中国に対するインドがそうだ。
モスクワはNATOと対峙して、影響ある国への軍事介入を考えている。そして、戦術的な、小規模の核兵器を積極艇に開発してきたが、初めて、各地に配備した。アメリカの核軍備近代化を急ぐのも、モスクワの姿勢を恐れているからだ。
トランプは、今やアメリカの主要な敵対国となった中国を組み込まないなら、軍備管理についてロシアと協定するだけでは意味がない、と考えている。オバマ政権で安全保障を担当した専門家は、米中が軍事衝突に至るのは海上であろう、と予想する。その場合、速やかに外交によって管理体制が生まれる。
しかし、外交は失敗するかもしれない。そして、戦闘がエスカレートする。重要なことは、シンボリックな米中の軍事衝突において、どちらの国も決して敗北を受け入れるつもりはないことだ。危機は急速にエスカレートする。
● パンデミックと独裁
FP SEPTEMBER 8, 2020
10 Ways Trump Is Becoming a Dictator, Election Edition
BY STEPHEN M. WALT
私は楽観的過ぎた。私は間違っていた。私は、トランプが政権の期間を経るにつれて権威主義的傾向を強める、と予想していなかった。また、トランプが機会をみて、憲法に忠実な者たちを、追従者、機会主義者、権力至上主義者に交代させる、とは予想していなかった。
アメリカ憲法を信じ、法の支配や人民の声を重んじる国に住んでいる、と思うなら、そうではなくなる心配が非常に強まっている。
1. メディアをシステムとして脅す。2. トランプを宣伝するメディアを組織する。3. 公務員、軍、国境警備隊、情報機関を政治利用する。4. 反対派を政府の監視能力で弾圧する。5. 国家権力で指示する企業を有利に、支持しない企業を不利にする。6. 最高裁を牛耳る。7. 法の支配は片側(反対派)にだけ適用する。8. システムを使ってだます。9. 恐怖をあおる。10. 敵を悪魔のように論争から排除する。
FT September 10, 2020
QAnon cult shows America should fear the enemy within
Edward Luce
アメリカ人の多くが、テロと言えば、イスラム原理主義者を想うだろう。金曜日は、2001年の9・11の19周年だった。しかし今、アメリカの現実では、非常に強い懸念を極右によるテロ攻撃が占めている。昨年、テロ事件の3分の2が国内で生じた極右のテロだった。今年の最初の5アか月間では、90%がそうだ。
それらのテロ事件の多くが、直接、間接に、QAnonによって刺激されている。QAnonは宗教的なカルトで、しばしば、極端な陰謀論によって動く。UFOのマークを示し、イギリス王室がダイアナを殺害したと確信している。
トランプとの関係は不明だが、明らかにトランプはQAnonの発言を広め、歓迎している。QAnonの世界観では、トランプが彼らにとっての唯一の希望である。アメリカの「ディープ・ステイト」を支配する悪魔の集団を敗退できるのは、トランプだけなのだ。
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The Economist August 22nd 2020
The aliens among us
Mali’s coup: Why the Sahel is suffering
Tensions in the eastern Mediterranean: A sea of trouble
Thai democracy: Street cred
Hukou reform: Worlds apart
The United Arab Emirates: The strong, silent type
Italy’s populists: Welcome to the normal politics
Dubai: Navigating the storm
Free exchange: State of the unions
(コメント) 生命の誕生以来、ウイルスとの関係は存在し、ウイルスが除去された世界は考えられない。新しいウイルスを理解することで、それによる死者を減らすしかない。
政治体における権力もそうだ。東地中海のNATO加盟国であるギリシャとトルコが軍事衝突に向かいます。マリのクーデタ。中国における人口登録と移住管理。アラブ首長国連邦(UAE)の軍事・外交・経済は「小さなスパルタ」とペンタゴンに称賛される。タイの学生集会。ベラルーシの抗議デモと弾圧。イタリアのポピュリストたち。バルカン半島からの人口流出と出生率低下。
特に、注目するのは、UAE、USA、EUです。連邦制(Union)は、政治体の生成と死滅のカギを握ります。ソビエト連邦USSRは崩壊し、英連邦UKは解体の危機にあります。UAEが採用する開発戦略と外交が、中東・アラブ世界の変容を加速します。
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IPEの想像力 9/14/20
いわゆるソロ・キャンプのために、森を買うのが流行っている、と言います。しかし、森林を個人が楽しむために売買し、所有する、という考えに、私は不安を感じます。
C.W. ニコルの「アファンの森よ 永遠に」を観ました。ニコルは、日本の森を再生するために行動したイギリス、ウェールズ出身の作家です。
産業革命を支えた石炭の採掘でウェールズ地方は森林を失い、各地で掘り出した土や石炭クズの山ができました。それは雨によって土砂崩れを生じ、多くの犠牲者を出したそうです。人びとは森をよみがえらせるために、木々を植え続け、「アファン・アルゴード森林公園」ができました。
ニコルも、黒姫山の森を一部買い取り、よみがえらせるために間伐や移植を行い、小川や池を作ったそうです。今では、フクロウなど、多くの生命が森に宿っています。
(ネット上の、「TVでた蔵」に番組内容の詳しい紹介があります。)
豊かな森や清浄な大気は、さまざまな生命が共有する条件です。工業化や都市化がそれらを破壊し、経済活動の犠牲となった野生の動植物が絶滅したことに、今では反対する運動が起きています。人間が豊かになるため、楽しむために、自然を分割し、所有し、破壊してもよい、というのは、もっと広い視野と深い思索によって得られる世界の、傷口のように見えるのです。
自然に対する私有制の侵食は、「共有地の悲劇」になります。
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「オランウータン いのちの学校」を観ました。まさに「森の人」です。
・・・インドネシア・カリマンタン島の広大なジャングルの真ん中にある特別な学校である。生徒はオランウータン。
パームオイルを取るために森林を伐採する。オランウータンの生きる森がなくなる。食肉として、密漁される。親を失ったオランウータンの孤児が、人間に飼われたり、見世物として育てられたりする。大人になって捨てられると、森に帰って生きることができない。
この学校では、森林破壊や密猟などで親を奪われた孤児たちを保護し、野生復帰に向けて育てる。人間が親代わりとなって、食べ物を手に入れる方法、危険から身を守る方法など、野生で生きる術をひとつひとつ教えていく。
人間が奪ってしまった未来を人間の手で取り戻すいのちの学校。無垢の命。生きる力。命の学校。
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Country Gentleman
「雑食動物」としての人間 = C.W.ニコル
C.W.ニコル 森からの手紙2020/04/22(2020年4月 毎日新聞掲載)
「人類は「雑食動物」として進化した。植物の根や果実、種子から貝、魚、鳥、動物まで、幅広く食べてきた。
最も貴重かつ危険な獲物を捕らえるには皆が状況をしっかり理解し、緊密な連携を図る必要がある。「鯨一頭、七浦潤す」といわれる通り、セミクジラ1頭で7カ村が生き延びられる一方、漁に出たクジラ捕りが全員命を落とすこともあった。灼熱(しゃくねつ)のサハラ砂漠でも、雪と氷に閉ざされた北極でも、人々は狩猟の伝統を受け継いできた。」
(中略)
「中国の市場で希少な外来の野生動物が食用あるいはペットとして売られているのは、見るに堪えない光景だ。無造作に積み上げられたおりの中に、貴重な生き物がいる。汚いまな板の上で切り刻まれていく様子には、そこに関わる人々への敬意など消えうせてしまう。
自然は、私たち人間が地球を傷つけ、共に生きる他の生命を虐げていることに多くの警告を発している。新型コロナウイルスは、今後、我々を襲うであろう災厄の先駆けにすぎない。」
(後略)
C.W.ニコルは、2020年4月3日に亡くなった。79歳。
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私も、どこかの森を、自然や子供たちのために開放することはできないか、と考えました。
そして、たどり着いた「ナショナルトラストの手引き」を観ているうちに、何度か思い描いた構想を、その延長に見つけました。それは、遺族がいない(引き取り手のない)住宅を寄付するナショナルトラストです。「ビフォー・アフター」のように、老人の集合住宅にリフォームします。
定住する老人を管理人として雇用し、空き部屋をトラスト会員(とその友人)の宿泊に利用してもらいます。若者には「ユースホステル」があり、デジタル時代にはAirBnBが発達しました。私の構想は、その仲間です。
自然や景観が美しい。近隣に大きな観光地や美術館などがある。都市での買い物や交流に便利。その他の理由で、活用できるプラットフォームを探して増やします。
何もない市街地の住宅でも、取り壊して、小さな公園や子どもの遊び場、ガーデンや花壇にするといいでしょう。ベンチを置いて、散歩の途中、休憩する。私の母ならそこに花を植えます。
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