IPEの果樹園2020
今週のReview
6/22-27
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黒人の命は重要だ ・・・パンデミックと経済 ・・・銅像と歴史教育 ・・・ロックダウンと金融緩和 ・・・パンデミックの世界 ・・・アメリカの秩序崩壊 ・・・アジアの安全保障 ・・・トランプの世界 ・・・香港の真実 ・・・インド・中国紛争 ・・・富裕層の景気改革
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 黒人の命は重要だ
FT June 15, 2020
Black Lives Matter is about both race and class
Rana Foroohar
ジョージ・フロイドの死とその後の抗議デモthe Black Lives Matterは世界中の関心を集めている。しかし、これは人種差別に反対するだけでなく、アメリカに新しい労働運動の種をまくだろう。
人種と階級は緊密に結びついており、アフリカ系アメリカ人の数百年におよぶ抑圧の歴史で、失業、貧困に並んで、教育の不足として続いてきた。黒人家族の5分の1は債務が資産を超過しており、白人家族の60%は株式を保有しているが、アフリカ系アメリカ人の家族は30%でしかない。アメリカ連銀の最近の緊急行動は、株価を上昇させたが、白人に比べて黒人の多くがそこから利益を得ていない。
COVID-19で閉鎖された店が、多くのマイノリティーの仕事を奪った。それは特に黒人の所有する店が多い。
BLMの抗議デモ参加者は、黒人の運動というより、多様性を反映している。多文化の大都市だけでなく、白人コミュニティーでも起きている。その要求は公正な賃金、安全な労働条件、不平等や学生ローンの問題に及ぶ。
BLMから始まり、人びとは経済的包摂、包括的な成長を求める声を上げている。労働者の組合結成を阻む法律を禁止する合意が上院で成立するかもしれない。最低賃金の引き上げ、法人税引き上げもそうだ。人種と階級の問題を解決するために必要だ。
● パンデミックと経済
The Guardian, Fri 12 Jun 2020
How worrying is Britain's debt? Surprisingly, we economists say: not very
Ethan Ilzetzki
コロナウイルスのパンデミックにより経済は急激に悪化している。英大蔵省は空前の規模で労働者、企業、自営業者を支援し、今年の政府赤字は3000億ポンドに達する。
UKの経済規模を超える政府債務を心配しなくてよいのか? 税収が不足した分を政府は債券発行によって借り入れる。金利が低い、ほとんどゼロであるなら、このコストはほとんどかからない。しかし、もし金利が成長率を超えたら、債務は維持可能な水準を超え、緊縮財政が必要になる。
CfM(Centre for Macroeconomics)は、LSE、Oxford、Cambridge、イングランド銀行などから、専門家が集まってパネルを開催した。エコノミストたちの多くは保守的であり、財政赤字が増加している。それゆえパネルの結果は意外であった。
1人の例外を除いて、参加者たちは財政赤字を心配しなかった。財政赤字は最終的には増税によって、特に、富裕層への増税で解消されるべきだ、と多数派は考えた。全会一致で、政府支出の削減に反対した。数名は、財政赤字を融資すること、すなわち、イングランド銀行に政府債券を直接に売却することを支持した。今や、エコノミストでも緊縮策を支持しない。
世界金融危機の間は支出削減を求める声が強かった。この間、経済思想は大きく変わった。ドイツのエコノミストたちでさえ、「コロナ債券」を支持する新世代が現れている。保守的なIMFが、公然と、緊縮より刺激策を提唱している。
財政政策による経済の安定化はケインズが大不況において主張した。しかし、ケインズ主義は1970年代になってインフレを重視する世代に破棄された。1976年、労働党のJ. キャラハン首相は、減税や政府支出で雇用を増やす選択肢はなくなった。インフレになるだけだ、と述べた。
政府債務が再び議論されるようになったのは2008-09年の不況においてだ。その頃多くのエコノミストは、中央銀行がマクロ経済の問題を何でも解決できる、と信じるようになっていた。しかし、金利が低下して、金融政策の余地がなくなってきたのだ。
UKや南欧諸国の景気回復が遅いのは、緊縮策のせいだ、と考えられた。2019年、アメリカ経済学会の会長あいさつで、金利が成長率よりも十分に低い間は、債務の水準を心配しなくてよい、とOlivier Blanchardが述べた。
しかし、それは豊かな国だけのぜいたくだ。発展途上世界は世代において最大の政府債務危機が起きている。投資家たちは、相対的に安全なアメリカの金融資産に逃げ、発展途上国の金利上昇と通貨価値下落が起きている。
政府は、医療と景気を支えることに全力を尽くすときだ。しかし、頭の反対側では、債務返済の時期が来ることも覚えておく必要がある。
● 銅像と歴史教育
NYT June 12, 2020
A Statue Was Toppled. Can We Finally Talk About the British Empire?
By Gurminder K Bhambra
イギリスの諸都市でも、何千人、何万人がアメリカの抗議デモに賛同して立ち上がった。ブリストルではデモ参加者がジョージ・フロイドを殺した白人警察官と、植民地主義や奴隷貿易の歴史とを結びつけた。日曜日、彼らは17世紀の奴隷商人Edward Colstonの銅像を引き倒して、ブリストル港に突き落とした。
Colstonの王立アフリカ会社RACは、1672年から1689年にかけて、約10万人の奴隷化した人々を西アフリカからアメリカとカリブ海域に運んだ。奴隷たちの胸には略称のRACの標がついていた。Colstonの会社の船では、2万人以上が病気や脱水で死亡したが、死体は海に捨てられた。それでもColstonの銅像には、1895年に建てられたのだが、「この町の最も有徳で、賢明な息子たちの1人」という言葉が彫られている。
銅像を引き倒すのは、大英帝国の広範な真実を認めない、過去の説明に不満を示す1つの方法だ。植民地化、略奪、奴隷化の歴史にもかかわらず、大英帝国を称賛することは、建物を取り巻く多くの銅像に明らかである。銅像の破壊とは、われわれがどのような過去によって形作られたか、そして、われわれは現在をどのように形作ろうとしているのか、対話を始めるものだ。
没収、収用、抹殺、奴隷化が、大英帝国の中心にあったし、近代イギリスを築く過程であった。はじめは南北アメリカで領土を求め、その後はアジアで交易や植民地化を行った。アフリカからヨーロッパ全土に奴隷を売り、アジアから債務奴隷を取引した。
こうした歴史を理解しているイギリス人はほとんどいない。全体としては不適当な、一部だけを取り出して称賛してしまう。20世紀の脱植民地化は、アイルランドやインドからアフリカ諸国におよぶが、帝国を組織的に解体し始めた。イギリス帝国は、グローバルな大国から「小さな島」に縮小したが、それがEEC加盟と同時に起きた。
EU離脱のキャンペーンでは、かつて帝国の建設で統一されていたイギリスの分裂と、帝国の過去に関する未解決の問題が、論争の中心にあった。離脱派は国民主権を主張したが、イギリスは一度も国民国家であったことがない。帝国であったからだ。
グローバルなBlack Lives Matter運動で、COVID-19のイギリスにおける死者は黒人、アジア人、エスニック・マイノリティーに多いことに注目が集まった。彼らがパンデミックの中でこの国を動かす前線において働いている。
植民地主義、奴隷化、帝国の作った不平等、不正義は、公共の多くの銅像の男たちEdward Colston, Cecil Rhodes, Henry Dundas and Robert Cliveによって鮮明に示されている。それはベルギーのレオポルド2世やアメリカ南軍の将軍たちと同じだ。それらは歴史の特定の部分を栄光あるものとして示し、それらが定義する時代を承認するよう要求する。
成熟した政治コミュニティーは、他者の正当な要求を認め、行動することで、過去の間違いを是正する。その過程で、こうした歴史に由来する現代の不平等を解決し、より広い自己理解に達するのだ。
平等や支配からの解放は与えられるものではない。戦うことでしか得られない。騒乱を非難する者たちは、以前の黙認に対する本能的暴発であると認めることだ。
The Guardian, Sat 13 Jun 2020
If we want a more equal Britain, we must teach its true black history
Jason Arday
イギリス史は、学校教育において巧妙に過去を忘れている。帝国の拡大において黒人を迫害したことを省略し、黒人の歴史は消してしまった。大西洋奴隷貿易からUKが得た利益、ケニアのマウマウ団の反乱とその弾圧など、植民地化した土地における残虐行為について、何も教えない。
黒人がイギリスの発展に果たした積極的な役割も無視している。第2次世界大戦も、白人のイギリスが経験したことに集中している。それは暗黙のヒエラルキーとして、偉大な「イギリス人」の中に反映されている。現在の敵対的な雰囲気において、ノスタルジアやナショナリズムが容易に拡大する主要な理由である。
もっと多様な、包括的なカリキュラムが、国民とグローバルな社会関係の緊張状態を解消するうえで非常に重要である。われわれの過去と現在の歴史は、われわれの帰属意識や社会化を形成するものだ。この物語の中に黒人コミュニティーの知識があるからこそ、多文化的なイギリス社会を正しく反映できる。
● ロックダウンと金融緩和
FT June 12, 2020
Covid-19 crisis highlights the euro’s untapped potential
Fabio Panetta
COVID-19の危機は、ユーロ圏の指導者たちが単一通貨にもっと大きな役割を果たすよう求める機会になる。
ドルのグローバルな地位によって、アメリカはショックを容易に吸収できる。例えば、シニョレッジだ。通貨発行は、その生産コストを超える利益をもたらす。そして資本市場が財政赤字の増加を低コストで吸収できる。資本流入によるドル高から経済が不況になるのを防ぐ。アメリカ企業は国際取引を自国通貨でできる。
世界第2の通貨であるユーロも、ドルと同じような利益をもたらすはずだ。しかし、その利用はドルに比べて少なく、利益はユーロ圏諸国に等しく分配されていない。低金利を利用できるのはすべての国ではない。市場が分断されており、安全資産が十分に供給されていないからだ。それは財政統合を欠くユーロ圏の脆弱性を強め、ユーロのグローバルな利用を妨げる要因となっている。
2つの政策が必要だ。第1に、危機における加盟国全体にとっての安全資産を供給する。最近、7500億ユーロの復興基金が提案されたことは優れた例である。異なる満期で債券を発行すれば、より深い、共通の資本市場に向かうブロックになるだろう。
第2に、グローバルな通貨を支持する中央銀行が、危機に対して景気循環を強めるような変動を避けるように、金融システムに流動性を供給することだ。これはECBがパンデミックに対する緊急プログラムとして実施した。物価水準の安定化のために与えられたECBの権限を、EU法に従い、独立に実行したものである。
ユーロのグローバルな地位を高め、その利益を平等に分配することは、同じ1つの目標である。
VOX 18 June 2020
What price to pay for monetary financing of budget deficits in the euro area
Paul De Grauwe, Sebastian Diessner
COVID-19のパンデミックと大規模なロックダウンが、供給と需要の両方が結びついた、かつてない強烈なマイナスのショックを生じた。収入を失い、企業倒産、大量失業が「ドミノ効果」となって襲うだろう。政府はあらゆる国で、これを止めるために大規模な財政支援策で介入し、巨額の財政赤字と債務を生じている。
中央銀行は、強力な、そしてタブーであった、政府赤字の貨幣化を行っている。その利点は、政府の債務を抑えられることだ。しかし、その仕組みには多くの反対意見がある。すなわち、インフレが高まって、止まらなくなる。ECBは違法な金融操作をしている。中央銀行でも、債務は必ず発生する。中央銀行の独立性が失われる。
インフレが生じるとしても、ECBはCOVID-19の大規模なデフレを避ける介入を行うべきであり、貨幣化もその手段である。ECBはインフレが起きた時に、これを抑えることができる。
● アメリカの秩序崩壊
FP JUNE 14, 2020
To Save Its Democracy, the United States Needs a Dose of Its Own Medicine
BY JEFFREY SMITH, NIC CHEESEMAN
国家が燃えている。
マイノリティーのコミュニティーと仲間が主要都市になだれ込み、人権蹂躙と不平等に抗議している。大統領は社会を分断するデマゴーグであり、支持者を励ます冷笑的な試みにおいて、反対派への暴力を公然と奨励する。かつては尊敬されていたメディアが、生活に関わる内戦状態に巻き込まれ、逮捕や襲撃のリスクにさらされている。警察はもはや法の支配を護るものとして尊敬されておらず、むしろ公共の安全を脅かす。
首都を煙が包み、政府の建物や近隣区が反エスタブリシュメントのギャングに支配され、警察署は放火される。商店街はシャッターで閉じられ。警察車両や救急車がサイレンを鳴らして走り、ヘリコプターが旋回する。市の全域に外出禁止令が出された。
これは、アメリカが、規則的に、民主主義を促進するため何百万ドルも投資する諸国で、まさに見られるものだ。コンゴ民主共和国、フィリピン、ベネズエラ。しかし、今、話しているのアメリカ合衆国だ。
制度化された人種差別と不平等、持つ者と持たざる者との間に広がる亀裂、候補者の質ではなく、選挙資金の多さで明らかに有利になる政治システム、これらは長くアメリカの民主主義を損なってきた。これは「世界最強」と自称する民主主義の欠陥を認めてこなかった不可避の結果である。
アメリカこそ、まさに、民主主義促進プログラムを必要としている。
ドナルド・トランプ大統領は、分裂した政治システムの原因ではなく、その兆候でしかない。政治システムは多年にわたり分断と不信を高めてきたからだ。
もしアメリカ国際開発庁に勤め、ナイジェリア、イラク、アフガニスタン、バングラデシュなどの国で計画を実施してきた者たちが、ノースカロライナ州、ジョージア州、ウィスコンシン州の選挙を評価したら、どうなるだろうか。彼らはきっと、海外で実施したプログラムの多くがアメリカの政治システムを強化するのに役立つ、と考えるだろう。
第1に、南アフリカで実施したような、真実と正義・和解のための委員会が、警察や治安組織に不当に扱われたマイノリティーに対して有効である。第2に、選挙区の変更や投票の弾圧を終わらせるために、選挙制度の改革が有効である。最後に、ソーシャル・メディアの党派的な利用、分断を終わらせる。
The Economist Intelligence Unitは、すでにアメリカを「完全な民主主義」ではなく「欠陥のある民主主義」に分類している。それはナミビア、エルサルバドル、タイと同じである。
● トランプの世界
PS Jun 17, 2020
The Messiah of Mar-a-Lago
SHLOMO BEN-AMI
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、自分を「選ばれた者」と言い、多くの福音派キリスト教徒がそれに同意した。
しかし、ワシントンDCの歴史的なSt. John’s Episcopal Churchの前で、聖書を持って立ったトランプは、その前に警察の盾と催涙弾を使って平和的な抗議デモを排除させたのだが、救世主とより、イエスのロバと共通点が多かった。堕落した文明を解放するどころか、トランプはそれを破裂する地点まで押しやって、多くの福音派支持者が、メシア降臨の前に現れる、そして必要な物と信じている、破滅そのものを創り出しつつある。
もちろん、アメリカの諸問題はトランプによって始まったわけではない。しかし、アメリカが人種差別と不平等、破壊された政治システムの火薬庫であるなら、トランプはそこでマッチを擦ったのだ。そして彼は、その後の火災に責任がないと言う。COVID-19対策の遅れについても、トランプはそう答えた。さらに悪いことだが、彼は火災にガソリンを注ぎ続けた。
トランプの行動はショッキングであったが、驚くことではなかった。彼は政治家になってから、ずっとアメリカの最悪の欠陥を利用し続けてきた。政治的文化的な分断を煽って、白人至上主義者を含む、彼の支持基盤を喜ばせた。他方、減税と規制緩和という伝統的手法でアメリカの最富裕層と大企業に利益をもたらし、共和党の支持を確保してきた。社会保障や教育からは予算を削った。アメリカの防衛予算は、イラク戦争の数年を除き、第2次世界大戦以来の最大規模にある。
ヨーロッパ市民にとってアメリカはもはや戦略的・道義的な指導力を持つ国ではない。大西洋同盟の参加国でもない。ドイツのメルケル首相は、トランプのG7サミットに招待されたが断った。トランプとの友情をいまでも好むのは、イスラエルのネタニヤフ、ブラジルのボルソナーロ、イギリスのボリス・ジョンソン、フィリピンのドゥテルテだけである。
アメリカの評価を高め、同盟諸国の信頼を取り戻すには、そして、中国に対する効果的な対抗力になるには、トランプの破滅的な大統領任期に拡大した亀裂を修復するしかない。それは2011年に2人の軍事戦略家が示した考え方に一致する。市民的な価値、競争力、技術革新、環境保護、社会サービス、医療、文化、教育への投資、そして、若者たちには機会を提供することだ。
ドナルド・トランプは、マックス・ウェーバーが観た「歴史の車輪を回すことが許された」ような指導者ではない。その反対物だ。
● 香港の真実
PS Jun 15, 2020
Hong Kong’s Moment of Truth
ROBERT SKIDELSKY
1984年の共同宣言には常に何か幻想があった。それは中国の主権に復帰した後の50年間も、香港の資本主義システムと基本的自由は維持される、という保証であった。
幻想とは、「一国二制度」の、経済的自由と法の支配に依拠するシステムが、共産党の独裁の内部で、50年間も維持される、という点にある。イギリスであれ、だれであれ、共同宣言を守るために戦争するような国はないからだ。
その幻想にも実体として信じる部分があったのは、特に中国自身が、ケ小平の指導下では、市場経済を受け入れていたこと、そして、中国式の資本主義が次第により大きな民主主義をもたらし、2つのシステムが最終的には一致するという、わずかな希望があったからだ。
しかし事態はそうならなかった。
中国司法の立場は、基本法が安全保障にまで及ぶものではない、ということだ。独裁体制はつねに自由社会よりも正当性が乏しく、それゆえ常に自由社会よりも大きな「安全保障」を要求する。西側やアメリカによる制裁が、中国の意志をくじくことはできない。香港市民は真実の瞬間を迎えるだろう。
香港にとどまって支配を受け入れるか、香港を出るか。
UKは香港市民に出口を提示できるだろう。イギリス政府が香港市民にイギリスの在外市民パスポートを提供する、と外相が発表した。これにより、ある香港の専門家たちは香港を集団として離れ、より自由な国に(香港のような)「憲章都市」を建設する、というアイデアを得た。
しかし中国が、そのような集団的脱出を認め、他国内において新しい香港を建設するのを歓迎するだろうか?
● インド・中国紛争
FP JUNE 16, 2020
Why Are India and China Fighting?
BY JAMES PALMER, RAVI AGRAWAL
ともに核武装しているインドと中国の間で起きた、1975年以来の領土紛争である。
1950年代の初期の友好関係は、両国間のヒマラヤ地域における領土確定をめぐって急激に悪化した。イギリス人の測量士が残した境界線は非常にあいまいであった。ヒマラヤ山岳の諸王国、チベット、シッキム、ブータン、ネパール、に関しても領土は不明瞭であった。
1962年に、短期の戦争が起きて、中国が勝利した。中国は、インドと領土問題を抱えるパキスタンを支援した。中国による一帯一路のインフラ建設もインドは懸念した。特に、中国とパキスタンの経済回廊プロジェクトだ。
現状は双方が支配領域を分けるラインを、公式には受け入れないまま、定めている。2017年、中国のエンジニアが新しい道路を建設しようとして、73日間の紛争がthe Doklam Plateauで起きた。その後、双方が新しい軍事インフラを建設している。
両国とも、愛国主義的な、高度に好戦的なメディアをかかえている。国民感情をエスカレートさせて戦争に導く恐れがある。他方で、メディアは「勝利」を主張して、指導者の行動の余地を作ることもある。
1960年代後半、中国がソ連と国境紛争を繰り返したときも、中国の国内政治が重要であった。当時は毛沢東の文化大革命が進んでいた。
インド側には、中国にインド亜大陸が包囲された、という不安が強くある。中国はパキスタンを主要な同盟国にしてきたが、最近、スリランカとネパールへの関与を強めた。両国はインドの友好国であったが、中国が奪った形である。バングラデシュのインフラにも巨額の投資を行っている。かつて衝突した1960年代、70年代には、インドと中国の経済規模はほぼ等しかった。今、中国のGDPはインドの5倍、防衛予算は4倍である。
高地を支配することは、将来の戦争で優位を得ることにつながる。また資源、特に水の供給は重要だ。14億人がヒマラヤからの水に依存している。中国の北側、ロシア国境と違って、南では多角的な交渉が必要だ。
中国の増大するパワーとナショナリズム、インドにおける好戦的な愛国主義は、長期の解決策をむつかしくしている。
● 富裕層の景気改革
NYT June 18, 2020
How to Avoid a ‘Rich Man’s Recovery’
By Tim Wu
1月以来、Amazonの株価は1850ドルから2600ドルに上昇した。S&P500は、ハイテク企業が支配的な大企業の株式から成るが、最近の下落をほとんど回復した。高給を得ている専門職や経営幹部は、職を維持したし、資産をわずかに変化させたにすぎない。
しかし、2000万人以上のアメリカ人は失業している。
コロナウイルスのパンデミックが経済的な遺産にするのは、資産の一層の集中になるかもしれない。景気回復は「U字型」か「V字型」か、という論争は、社会経済階級が異なればその影響は異なっており、回復過程も異なる、という事実を無視している。ポピュリストの反エリート感情が広まっているにもかかわらず、トランプ政権が推進しているのは富裕者の景気回復である。
連邦政府はすべての者に支援金を支払っているように見えるが、大企業への支援と、中小・零細企業や個人への支援とは違いものだ。大企業は長期の支援を受ける。主に連銀が社債を購入し(ジャンク・ボンドも)、「流動性保証」として、どんな債券でも最終的な買い手になり、さまざまな担保を認めて融資を行う。それらを合わせれば、途方もない支援であり、途方もない保証である。
他方、中小・零細企業や個人労働者が得るのは、短期の、頼りにならない資金だけだ。1200ドルの小切手がいつか届くだろう、という不確実な約束だけである。その不確実さは支援の価値を損なっている。零細企業はthe Paycheck Protection Programで支援を受けるが、短期、8週間であり、さまざまに改良された後でも、複雑で、良い意図に反して利用しにくい。
労働者は、そのスキルが失業によって役に立たなくなる。家計の赤字が続き、立ち退き、家の売却、個人破産、ホームレスになる恐れがある。個人に対する長期の支援、仕事に復帰するまでの失業保険期間の延長、ユニバーサル・ベーシック・インカムを検討するべきだ。
連銀は経済の崩壊を避けるために大胆な行動を取った。しかし、その政策の分配におよぼす効果は考慮していない。大企業の有利な、逆進的な支援策になっている。政府がそれを是正する政策を採るべきだ。
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The Economist June 6th 2020
Hong Kong: Conduit’s end?
Inflation: Tomorrow’s problem
Criminal justice: Order above the law
Lexington: Far worse than Nixon
Fake news: Return of the paranoid style
Hong Kong’s future: Electrical storm
Free exchange: Land of the rising sum
(コメント) 黒人差別と抗議デモの生んだ政治的潮流が、11月までに、トランプの刺激する保守派の不満や恐慌に変わるのか、民主党の大統領を支持する様々な改革案の結集に至るのか。なぜ保守派はフェイクニュースに弱いのか、と合わせて興味深いです。
同時に進行した香港の民主化弾圧と国家安全法導入に、香港という世界金融センターの政治と経済が重なります。アメリカおよびドルによる世界金融市場の一部であった香港が、これで消滅するのか? 米中は真剣に合意できる条件を探るでしょう。
The Economistから見て、日本の果てしない金融緩和と財政赤字は、これからCOVID-19対策に取り組む諸国の安心材料ですが、成長の失敗例であり、決して成功例ではないのです。
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IPEの想像力 6/22/20
ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)。その運動には白人の若者たちも多く参加している。世界の多くの都市にも広がった。特に、イギリスでは、奴隷貿易にかかわった銅像が引き倒された。
日本にも、同じ問題はあると思います。徴用工・従軍慰安婦問題。南京大虐殺。関東大震災と朝鮮人虐殺。軍艦島を含む世界遺産に対する韓国の反対。
歴史を記憶するのは難しい。過去に起きたことは、変えられない。しかし、何を・誰を取り上げて、どのように描くのか。どのような視点で理解するか、何と関連させて学ぶのか。
9分近くもうつぶせにした首の上から膝で押さえつけて、ジョージ・フロイド氏を殺害した映像は、その広がりと深さを、観た者とその社会に問い続ける。
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NHK・BS1「ジャパニ:ネパール、出稼ぎ村の子どもたち」を観ました。
日本に両親が出稼ぎに行き、ネパールに残された子どもたちを「ジャパニ」とよぶそうです。
ネパールのガルコット村で祖母や曾祖母と暮らすビピシャは9歳の女の子だ。おばあちゃんを母親と思っていた、と言う。両親は日本で働き、めったに帰ってこない。
ビピシャは、家から20分ほど、険しい山道を歩いて学校へ通う。クラスで、両親が日本で働く子に手を挙げてもらうと、半分以上がそうだった。面倒を見る人がいない子どもは、寮で暮らす。
おそらく、インドに出稼ぎすることが多かったのではないか。日本に出稼ぎして、コックで成功した若者がいた。その後、ネパールから日本への出稼ぎが増えたそうだ。
地元の人たちが愛するティーズ祭を、出身者たちが東京でも開く。5000人がネパールからきて働いている。村の女性は家の外に出ることも少ないが、ティーズ祭のときは集まって踊ることができる。そして、苦労や心配を打ち明ける。
ビピシャのお母さんはホテルの客室係で働いていた。ようやくビピシャが来ても、お父さんが東京を案内した。お母さんは休みを取ると仕事を失うのが心配だから、夜、部屋に戻って娘に会った。
娘を自分たちの手で育てたい、と両親は願う。東京に、ネパール人だけのインターナショナル・スクールがあった。ビピシャを入学させたかったが、彼女はこの町を好きになれない。
「母さんは私よりお金が好きなのだ。」 学校に通う道を、いっしょに歩いていたカメラマンに、彼女はそう言った。しかし、ビピシャもお母さんも、会うと涙を流す。
子供たちや、少女に接する大人たちの姿に、私は共感しました。そして、若い両親や、少女の友達がどうなるのか、心配しました。
ホテルの客室係という仕事が、どの程度、安定して、十分な賃金を得られるのか、心配になりました。ホテルはコロナウイルスの影響で一斉に客室係を解雇したと思う。彼女に政府の支援策は届いただろうか?
日本で病気になった人、けがをした人は、どうなるのか? 治療代・薬代を支払えないかもしれない。
父も母も、娘と一緒に暮らしたいと願う。しかし、もう1つの秋の祭りの映像に、ガルコット村で、ビピシャは1人だ。祭りの衣装を着け、額に聖水?を付けてもらう。
最後に、説明文だけがしばらく流れた。2020年、コロナウイルスの影響でビピシャの両親も職を失い、生活は困難になった。
もし東京の労働市場や、日本の農村が、アジアの出稼ぎ労働者を必要としているなら、もっと相互の利益になる仕組みを作るべきだ。なにより、日本の他の職場や労働者の権利と同等の権利を、出稼ぎの人たちにも保障して、積極的に受け入れることが必要だ。
数年後、ビピシャとお母さん、お父さんが、一緒に農家の仕事を手伝って、彼女が進学する大学や将来の仕事に夢を持っている姿を観たい、と私は思いました。
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外交において、日本は、アメリカ、オーストラリア、インドとも外交・安全保障の協力関係を深めようとしています。
モディ首相は習近平主席と何度か会った。いわば、外交関係を築くことで、過去の、解決困難な問題ではなく、経済の相互利益を重視し、対米、対中関係を、バランスさせたいと願ったからです。しかし、中国の領土紛争は、ヒマラヤにも及びました。
安倍首相は、繰り返し、ロシアのプーチン大統領に会いました。それは、米朝サミットにも似ているな、と思います。そして、北方領土問題を解決する、と称して、2島返還で躓いた。その合意案はどこまで練られたのか? 外務省の交渉記録を公表してほしいです。
イージス・アショアの配備撤回をめぐって、安倍首相はミサイル防衛システムの全体、日本の安全保障問題を根本的に考え直す、という問題に転換しました。「敵基地攻撃能力」という言葉が頻繁に語られます。
自国の困難な状況は、他国にとって、おそらく、興味ある(楽しい気分で、同情する)話でしょう。内政においても、外交においても、そして歴史的な問題を、日本が正しい解決のために払った代償は、何よりも(間接的に)他国を説得できる話題ではないか、と私は思いました。
過去の反省、真摯な評価と謝罪、賠償のための対話、和解、国家を超えた協力、安全保障の枠組み、そして、出稼ぎの家族が一緒に暮らすことのできる社会。
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