IPEの果樹園2020

今週のReview

6/1-6

***************************** 

財政赤字の容認 ・・・日本化 ・・・香港の国家安全法 ・・・スウェーデンの反ロックダウン ・・・コロナウイルス危機後 ・・・パンデミックとポピュリスト ・・・ドイツのナショナリズム ・・・中国の2つの道 ・・・EU改革 ・・・トランプの再選戦略 ・・・パンデミック対策 ・・・トランプとSNS

[長いReview

****************************** 

主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 財政赤字の容認

NYT May 21, 2020

How Many Will Die for the Dow?

By Paul Krugman

アメリカがもし1週間前にロックダウンを始めていたら、1万人が死を免れただろう、と疫学モデルは示している。しかし、たとえ遅れたとしても、しないよりは良い。ウイルスを封じ込めることは、ロックダウンがもたらす経済的困窮も限定することになる。

だがトランプと共和党は、今や、その戦略を放棄している。彼らは。はっきりと言わないが、その基本的な主張とは、ダウ平均株価を上げるため、多数のアメリカ人が死なねばならない、ということだ。

トランプは、自分の大統領としての成功を株価と結びつけることにこだわっている。それゆえ、経済活動の再開を急ぐべきなのだ。さらに多くのアメリカ人が死んでも。

NYT May 23, 2020

Crumbs for the Hungry but Windfalls for the Rich

By Nicholas Kristof

FT May 26, 2020

US big business gets help first but who needs it most?

Rana Foroohar

COVID-19の経済破壊は2008年の金融危機後をすでに上回っている。しかし、ワシントンの政策論争を聞くと、まるで時間を撒き戻したようだ。大企業vs小企業。ウォールストリートvsメインストリート。ポピュリスト的進歩派の民主党ウォーレン上院議員vs財務省。

5月後半には、ウォーレンがトランプ政権を攻撃した。支援を受けている大企業が従業員を解雇している、と。5月前半には、Blackstoneのような金融ビジネスの巨人が、所有している医療法人の医師報酬を削減したが、他方で、所有している諸企業に政府支援を請求している、と政府を責めた。COVID-19の支援を受け取る大企業には、役員報酬の削減を求め、株式の買戻しをした企業を排除すべきだ、と主張した。

大企業は必要な融資や資金を得た。プライベート・エクイティの大企業、航空会社に加えて、ボーイング、石油大企業、クルーズ船、ホテル、病院、カジノ、豚肉加工業、製薬、ドローン製造などが、近年、自社株式を買い戻していた。Uberには、フルタイムの社員は少なく、大部分がギグワーカーだが、失業手当のコストを納税者に転嫁した。

小企業は雇用創出の大きな割合を占めるが、支給が届くのは遅く、ばらばらだ。官僚的理由で融資が受けられず、大企業よりも厳しい雇用基準が求められた。

当然、個人労働者が最も深刻な打撃を受けている。516日までで、失業手当の新規申請者は3900万人に近い。オーストラリアの全人口に匹敵する失業者だ。

ムニューシン財務長官と共和党は追加の刺激策に慎重だ。ワクチン開発による急速な回復を期待しているからだ。しかもトランプは、バイオ企業の重役をホワイトカラーのウイルス対策班の共同議長に指名した。

ある予測では、職場の半分はウイルス後の企業再編で消滅するだろう。多くの個人と企業の一部は、融資ではなく、債務免除、緊急の医療費支援、新しい職場に向けた再訓練を求めている。そして、財政刺激策が必要だ。

しかし11月の選挙まで、それは実現しそうにない。民主党は救済する企業の行動を規制しようとする。共和党は、企業がさまざまな訴訟を回避できるよう求めている。すべては2008年と09年の繰り返しだ。大企業や政府につながる者たちは無制限の支援を受け、他の者は無視される。2008年の危機後の救済で、不況を回避したが、モラル・ハザードや政治の分極化が起きた。

その後、大銀行は繁栄し、危機前よりも利益を増やし、市場の集中を強めた。他方で、多くのアメリカ人がモーゲージの支払不能で住宅を失った。支援を受けた同じプライベート・エクイティが、その住宅の多くを安価に買い取って転売し、莫大な利益を得た。

政治家たちは同じ間違いを犯してはならない。保護を最も必要とするのは個人や小企業だ。議会は可能な限り早く追加の刺激策を決めるべきだ。大企業の救済は、労働者の保護を最優先し、条件を付けるべきだ。場合によっては、救済融資より、企業の優先株を取得せよ。


 日本化

FP MAY 21, 2020

Yukio Okamoto’s Death Is a Tragic Loss for U.S.-Japan Relations

BY SADAAKI NUMATA

FT May 22, 2020

Fears of Japanification spreading are misplaced

John Plender

アメリカもヨーロッパも日本化する、という不安が投資家に広まっている。慢性的なデフレ状態に財政・金融の拡大策を取り続けて、莫大な政府債務を抱える。

しかし、1990年にバブル経済が破裂してから、日本が示した奇妙なパフォーマンスは、アメリカにもヨーロッパにも当てはまらない。

エコノミストたちは、人口高齢化による民間貯蓄の減少を前提しがちだが、そうではない。確かに家計の貯蓄は減ったが、それを相殺する企業部門の貯蓄があった。過剰貯蓄と不十分な消費を埋めるため、政府の赤字が続いていた。

日本企業は、中国やその他の新興市場から及ぶ労働供給ショックのせいで、賃金を引き下げ、利潤と貯蓄を増やすことができた。それは北米やヨーロッパがこれから向かう傾向と全く異なる。

トランプ大統領がグローバリゼーションの逆転を進めて、企業の利潤は減少する。パンデミック後の世界で、社会は命を危険にさらす労働者への低賃金を改めるだろう。ギグワーカーたちの不安定な雇用も改善されるような政治的動きが強まる。政府の債務は企業に対する増税によって支払われるだろう。企業は、より包括的な政策を求められる。

金融政策に関する、過去30年間のディスインフレ的な偏向は、終わる。金融危機後の量的緩和はインフレにつながらなかった。それは資金が銀行部門にとどまったからだ。現在の金融緩和は、対照的に、直接、企業や商業取引に供給される。その効果はインフレ的である。

雇用状態が回復しないうちは、政府が財政刺激策をやめることは難しい。多くの企業の債務状態はまだ危険である。債務依存の経済について、中央銀行は金利引き上げを遅らせる。

日本化ではなく、インフレが復活するだろう。問題は、それがいつなのか、というだけだ。

FT May 23, 2020

Masayoshi Son, SoftBank’s worried visionary

Leo Lewis and Kana Inagaki

FT May 26, 2020

Why the yen remains in lockdown

Leo Lewis

東京がソフトなロックダウンを宣言したとき、円の為替レートは何も反応しなかった。円は1ドル=106円と108年の間で、ほとんど動かない。

かつて円・ドル相場は、小さなショックで大きな変化を示す、リスクの高い取引だった。しかし、製粉による年金基金を中心に、海外投資の流出が円安のレートを安定的に維持していた。

アベノミクスと円安の時代が終わるのかもしれない。世界はコロナウイルス危機の不況に向かっており、長い円安の時期が終わると、かつてそうであったように、一気に円高が進んで不況になる。

FT May 27, 2020

Coronavirus spawns new generation of Japanese stock pickers

Leo Lewis


 香港の国家安全法

The Guardian, Fri 22 May 2020

China is foisting an anti-sedition law on Hong Kong that will change it for ever

Ilaria Maria Sala and Louisa Lim

北京が「国家安全」法を香港に強制すれば、それは中国本土と国際都市香港とを分けてきた制度や権利を脅かすものとなる。その法律は、「暴動、転覆、分離、反逆」を防ぐためというが、香港の司法の独立性を失わせる。

1989年に、香港の民主化運動支持を北京は憂慮した。1997年の香港返還で、基本法の23条に条文を入れようとして失敗した。2003年の試みも大規模な反対デモにあった。今回は、何カ月も抗議デモが続いた末に、北京の忍耐の限度を超えた。

この法律制定は、香港住民の立法権を破壊する。香港の外から法律を変えるものだ。北京が1997年に約束した、香港の「高度な自治」を破壊する。司法の独立性や、法の支配は否定された。多国籍企業の多くの本社がある条件となっている。株式市場は5.5%も下落した。

本土の治安機関が香港で活動することを許す。「暴動、転覆、分離、反逆」のあいまいな定義は、自治を求める宗教団体や政党を犯罪集団にするものだ。抗議活動を続ける者には、、敵に衝突し、ともに焼死する、という戦略を唱える者もいる。しかし、中国共産党は、抗議デモよりも、もっと破壊的に同じ戦略を採用するだろう。

FT May 22, 2020

Xi distracts from own failings with Hong Kong security law

Tom Mitchell

PS May 22, 2020

China Is Its Own Worst Enemy

BRAHMA CHELLANEY

FP MAY 22, 2020

Beijing Has Lit Hong Kong’s Funeral Pyre

BY JACK HAZLEWOOD

FT May 23, 2020

Beijing has thrown down the gauntlet to Hong Kong

多くの香港人にとって、治安法制はレッド・ラインだ。1997年の「基本法」23条が、中央政府に対する「暴動教唆、転覆、分離、反逆」を防ぎ、外国の影響を排除するための法制を求めた。2003年に香港政庁が治安法制に向けて動くと、50万人の大規模な香華デモが起きた。

香港政庁も北京も、明確に、これを断念した。しかし、今回はもっと問題が多い。何でも認める人民代表大会を利用して、香港の立法会を跳び越えるものだから。

北京はこれで、将来のデモ参加者を恐れさせ、デモの鎮圧を行えると考える。外国政府はパンデミック対策に追われて、反対する余裕がない、と思ったのかもしれない。

習近平主席についての皮肉な詩でさえ陰謀とみなす北京が、基本法が認める権利、集会の自由、表現、デモ、を弾圧する恐れがある。

FT May 25, 2020

The G7 must stand up for Hong Kong’s freedom

Chris Patten

PS May 25, 2020

How the Hong Kong Calamity Will Play Out

MINXIN PEI

The Guardian, Tue 26 May 2020

The Guardian view on Hong Kong’s future: China’s doublespeak

Editorial

FT May 27, 2020

Taiwan’s pride in Covid-19 response spurs hopes of political change

Kathrin Hille

FT May 27, 2020

How China’s tensions could boost Hong Kong’s exchange

Henny Sender

FP MAY 27, 2020

Hong Kong Is in Danger

BY JAMES PALMER

FP MAY 27, 2020

In Hong Kong, Xi Plays a Dangerous Game of Chicken

BY DOUG BANDOW

FT May 28, 2020

Hong Kong is the battleground in a US-China cold war

Jamil Anderlini

中国の指導者たちは、香港の国際金融センターとしての地位より、反体制派を弾圧する方が重要だ、と明確に決断した。アメリカ政府は制裁を強化するだろう。

西側のビジネス関係者は、黙っていれば、事態は収束すると思っているが、それは間違いだ。

香港は、今や、中国と、アメリカが始動したリベラルな世界秩序の遺産とがぶつかる、加速する冷戦の主要な戦場になっている。北京は、国際的な評価が損なわれることも意に介さないことに決めたのだ。

FP MAY 28, 2020

Hong Kong Ensnared in U.S.-China Showdown

BY KEITH JOHNSON, ROBBIE GRAMER

FP MAY 28, 2020

China’s Surging Nationalism Has Claimed Hong Kong

BY HILTON YIP

FT May 29, 2020

UK opens door to citizenship for 300,000 HK residents

Laura Hughes in London


 スウェーデンの反ロックダウン

The Guardian, Fri 22 May 2020

Why Sweden is unlikely to make a U-turn on its controversial Covid-19 strategy

Tae Hoon Kim

FT May 22, 2020

Reopening the economy will divide societies

Tim Harford

ロックダウンの解除は、それが成功したというより、それに耐えられないから、という理由で行われる。明確に、解除を決める基準はない。大量検査によって、感染者を完全に分離するのでなければ、ロックダウンを解除すれば、感染は再拡大するだろう。

社会を、若者と高齢者を分割し、若者に対するロックダウンを解除するのが良いのか。

PS May 22, 2020

How Germany Contained the Coronavirus

JENS SPAHN

NYT May 22, 2020

Britain’s Ethnic Minorities Are Being Left for Dead

By Sonia Faleiro

The Guardian, Sat 23 May 2020

Sweden’s Covid-19 policy is a model for the right. It’s also a deadly folly

Nick Cohen

スウェーデンは、政府の疫学者Anders Tegnellが推進する「緩和」戦略を採用してきた。商店や学校、ジム、作業所は開店したままである。しかし、先週のニュース、「スウェーデンのCOVID-19による死者の比率はヨーロッパ最悪」によって、その間違いがはっきりした。集団免疫も達成されていない。ストックホルムの住民で免疫を得た者は、わずか7.3%である。

すべての感染拡大国で、UKも含めて、感染者の数は減少しつつある。例外はトランプのアメリカと、スウェーデンだ。両国では少し減少した後、高原状態である。

スウェーデンの病気は、医療崩壊だけでなく、政治崩壊でもある。Johan Giesecke教授は、Tegnellとともに政府顧問であるが、右派の仲間の間でスターになった。他国の政府に対して、彼らの厳格なロックダウンが無駄である、と講義したからだ。スウェーデンの悲劇は、政府が国民に信頼され過ぎていることだ。

国民も新聞も、Tegnellを信頼した。政治家が例外主義を国民に支持するよう求めたわけではないが、彼の執着はナショナリストの誇りとなった。トランプやボリス・ジョンソンのような者が指導したわけではないが、尊敬される社会民主党と緑の党と自由党(右派)の連立政権が、Tegnelの助言に従った。

イギリスが、弱体な、無能な政治家たちの危険性を示すとしたら、スウェーデンは、少数の政府担当者を過剰に信頼することの危険性を示している。

The Guardian, Tue 26 May 2020

Cummings’ contempt for lockdown rules makes the public feel like fools

Fintan O’Toole

人びとは、自分たちを愚かだとみなす政府幹部を、決して、永久に許さない。


 アフリカ

PS May 22, 2020

Africa’s Hour of Need

ABEBE AEMRO SELASSIE

PS May 22, 2020

The Rich World’s Pandemic Imperative

ANNE O. KRUEGER


 コロナウイルス危機後

PS May 22, 2020

Which Post-Pandemic Government?

RAGHURAM G. RAJAN

コロナウイルス危機後の社会は、新しい合意を実現するために、より分権的な政府を採用するだろう。需要を維持するために政府は積極的に介入し、労働者を保護し、医療や介護のサービスを拡大し、気候変動に対処する。

政府には何層もの構造がある。1つの選挙区の有権者を保護する政策は、他の有権者のリスクを高める恐れがある。COVID-19の場合、ロックダウンを中央政府が決定する国もあれば、それを州政府や、もっと小さな地方政府に委ねる国もある。

密集したニューヨーク市の場合、厳格なロックダウンでしか街に出る人を抑えられない。金融ビジネスなど、多くの職場は熟練サービスであるから、経済的影響も少ない。ウェイターやホテル従業員も、人びとが安心するまで雇用が戻らない。衛生上の不安が絶対的な優先課題だ。

対称的に、ニューメキシコ州のFarmingtonのように、コロナウイルスで病気の人は知らないが、それで失業した者は知っている、という場合、ロックダウンは支持されない。パンデミックの前から不況に苦しむコミュニティーでは特にそうだ。ここでは病気より経済不安が優先される。

こうした違いは、中央集権的な、1つのアプローチを、強制することの欠陥を示している。しかし、分権的なアプローチも問題になる。地域によってウイルスの感染拡大が異なる場合、移動は可能か? 安全な地域は、潜在的なホット・ゾーンから人が来るのを遮断したいだろう。少なくとも、長い隔離期間を求める。

地域間の調整が必要だ。連邦による調整がなければ、アメリカの諸州は、中国から届く医療設備を奪い合うだろう。競争的な市場は、正常な時期には機能するが、非常事態では無理だ。裕福な州が人工呼吸器や検査キットを買い占めてしまい、貧しい州には何も残らない。国全体のパンデミックも抑えられない。

この場合、中央政府が価格を抑え、必要に応じて配分することが望ましい。しかし、ここにも問題がある。ブラジル、メキシコ、タンザニア、あるいは、アメリカのように、中央政府がパンデミック対策に失敗するケースだ。インドでは、移民(出稼ぎ)労働者に必要な支援もないまま、中央政府が厳格なロックダウンを命じた。その結果、都市から自分の村へ帰るため多くの家族が徒歩で何百マイルも移動した。おそらくウイルスを広めただろう。

極端な中央集権も、地方分権も、問題が起きる。連邦政府は閉鎖とその解除に関する共通の最低基準を示し、実際の決定を地方に委ねる。補完性の原理による地方分権である。権限は、効果的であれば、最も下位の行政単位が担う。

慎重に制御された分権化が好ましい重要な理由は、小さな政治単位の人びとは同様の問題に直面するが、それに加えて、社会的・政治的な連帯感を持ち、解決策を見出して、それを実行することに強く関与できるからだ。

世界中で権威主義体制が増えているのは庶民がカリスマ的指導者を好むからだ。デマゴーグたちは憲法の制約を解除し、国家を破滅に導く。独立した機関を支持するだけでなく、権限を分散することが望ましい。

NYT May 22, 2020

No One Knows What’s Going to Happen

By Mark Lilla

FT May 26, 2020

Can New York avoid a coronavirus exodus?

Joshua Chaffin in New York

FT May 26, 2020

Democracies have proven they have the edge in coping with this crisis

Carl Benedikt Frey

PS May 26, 2020

Building South Korea’s Post-Pandemic Economy

LEE JONG-WHA

PS May 26, 2020

How Courts Will Shape the Post-Pandemic World

JAMES A. GOLDSTON

NYT May 25, 2020

The Future of College Is Online, and It’s Cheaper

By Hans Taparia

PS May 27, 2020

What Should We Be Preparing For?

RICARDO HAUSMANN

PS May 27, 2020

Climate Targets and Industry Participation in the Recovery

HENRIK POULSEN, MADS NIPPER, LARS FRUERGAARD JØRGENSEN

The Guardian, Thu 28 May 2020

The world wasn't ready for a Green New Deal in 2009. Today, it may be

Larry Elliott

FT May 28, 2020

Successful investors learn from history

Simon Edelsten

PS May 28, 2020

Learning to Live with COVID-19

NGAIRE WOODS, LEANY LEMOS


 パンデミックとポピュリスト

NYT May 23, 2020

The End of the New World Order

By Ross Douthat

陰謀論を信じるのは間違っているが、陰謀論が現実と何の関係もないと思うのも間違っている。異常な発散、巧妙な情報操作、重要な趨勢の誇張、誤解、説明されないままの怪事件に対する説得力のない説明。

こうしたことは、トランプ時代にもある。宇宙人や、QAnonの幻影。新世界秩序。コロナウイルス危機がその信奉者を増やした。

国際機関が増え、グローバルな上流階級、EUの、しばしば民主的でない拡大、デジタル世界の監視、中国とアメリカが結びついた「チャイアメリカ」。

The Guardian, Sun 24 May 2020

Covid-19 has changed everything. Now we need a revolution for a born-again world

Simon Tisdall

パンデミックに対するドナルド・トランプの愚行に対して、中国国営のGlobal Times編集者Hu Xijinは、10万人のアメリカ人の死から目をそらすものだ、と述べた。「もし中国でそんなことをしたら、ホワイトハウスは怒りに駆られた群衆に焼き払われるだろう。」

北京はどんな抗議活動でも嫌うから、そんなことは起きないのだろう。しかし、彼の言葉には真実がある。群衆の怒りはどこにあるのか? なぜ人々は立ち上がらないのか? 支配者をギロチン台に送り、既存の政治秩序に火を放たないのか?

革命はいつ始まるのか? コロナウイルスで仕事を失った労働者たちは団結せよ。サプライチェーンのほかに失うものは何もない。好もうが、好むまいが、第2の革命の時代が始まった。

問題は、革命が起きるかどうかではなく、どのような革命になるのか、である。マルクス、毛沢東、ゲバラ、カストロの革命か? あるいは、非暴力であるが、意識的に相互依存を深める世界の機能が根本的に、急激に、変化するのか?

政治革命の主要要素は、2300年前のアリストテレスが理解したことと変わらない。不平等が革命の主要な原因である。正義と平等があらゆる国家・政治体の基礎であり、不平等、不正義はそれを打ち倒す。

感染症の脅威は不確かであるが、第1に、ウイルスは全世界の、普遍的な、人類に対する脅威だ。第2に、その影響は非常に不平等なものだ。性別や年齢だけでなく、社会階級、人種、エスニシティ、所得、栄養状態、教育、生活条件、居住地域によって差を生じる。

巨大な、不正な、社会的不平等が見られる。マリー・アントワネットが貧困層にケーキでも食べろと言った時代のように。

COVID-19の嵐を暴力革命にしないことが、世界的な投資家や億万長者たちの間で話し合われた。「もし人々には十分な機会がないのであれば、それは経済的でないばかりか、システムを脅威にさらす。」 JP Morgan の経営幹部Jamie Dimonは、パンデミックを、企業と政府がもっと公共財に投資するべきだ、という「ウェークアップ・コール」とよんだ。それは社会主義のように聞こえる。

貧困、南北の所得格差、気候、エネルギー、水資源、種の絶滅、・・・GDPではなくドーナツ経済学。・・・それらは絵に描いた餅である。しかし、これほど多くの者が自宅で働き、街から自動車や人が消えた。一夜にして達成されたのだ。

USでは、トランプの富裕層による政治がますます無法状態になり、第2のアメリカ革命を求めている。時代錯誤の代表人選挙制度を廃止し、民主主義を万人に解放する。そして世界に建設的な関与を強める。

イギリスでは、UKを維持するために、1832年の選挙法改正に匹敵する改革を行う。EUもアンシャンレジームを改革するか、ポピュリスト・ナショナリストのサンキュロットたちに転覆される。中国、ロシアのような、権威主義的寡占体制は、暴力的反抗を手なずけ、自己膨張と帝国主義的な経路に進むことはできないだろう。

コロナウイルス危機で生まれ変わった世界に現れるコンセンサスは、サンフランシスコ会議の理想主義、共通の敵を倒した人類の革命的精神で、国連を再強化する。

アリストテレスは、革命が始まった、と言うだろう。

FT May 24, 2020

The modern era of globalisation is in danger

PS May 25, 2020

The Future of Global Power

JOSCHKA FISCHER

PS May 25, 2020

Citizens of the World, Reunite!

NANCY BIRDSALL

パンデミックの広がる中で、ポピュリストたちがナショナリズムを叫んでいる。グローバルな協力、集合行為が必要であるが、ナショナリズムが優勢である。

アメリカは、利益をもたらすグローバル・ヘゲモン(覇権国)であった。その経済的・軍事的な優位を用いて、国際協力と集合行為のルールを定め、維持することが、アメリカ自身の利益であった。

しかし、アメリカのパワーと影響が低下するにつれて、特に中国に対して、ドナルド・トランプが大統領となり、アメリカを孤立主義に転換した。EUや中国が、アメリカに代わって、その役割を果たすことはないだろう。

われわれは皆、ナショナリストであり、愛国者である。しかしトランプに代表されるナショナリズムの破壊力を抑えるには、各国のグローバルな市民意識を持つ人々が協力しなければならない。21世紀に入った10年間の後半、発展した17カ国の国民の80%が「貧しい国の飢餓や極度の貧困を減らすことに道徳的責任がある」と答えた。

国際秩序は国民国家によるしか実現しないだろう。アメリカの市民の間に、パンデミックが連帯の意識を形成しつつある。それは国境を越えたグローバルな連帯に向かうものだ。

アメリカはもはやグローバル・ヘゲモンではないが、危機において、その指導力が求められている。

PS May 25, 2020

America’s Delisting Threat Could Pay Off

SHANG-JIN WEI

FP MAY 26, 2020

No, the Pandemic Will Not Bring Jobs Back From China

BY EDWARD ALDEN

「アメリカ・ファースト」は雇用を取り戻すものではない。トランプ政権は産業や雇用を破壊する「社会主義者」である。ライトハイザーたちはUS経済のダイナミズムを否定している。パンデミック後の経済について、何の見通しも持っていない。

FP MAY 26, 2020

The Pandemic’s 5 Silver Linings

BY STEPHEN M. WALT

FT May 27, 2020

China-US rivalry and threats to globalisation recall ominous past

Martin Wolf

今日の世界は、20世紀初めとよく似ている。「第1期グローバリゼーション」が終わったように、「第2期グローバリゼーション」も終わるのか。

ヨーロッパにおけるイギリスとドイツの対立は、1914年に始まり、ヨーロッパとアジア、そして世界経済を破壊して、1945年まで続いた。

FT May 28, 2020

Be wary of scapegoating ‘just-in-time’ supply chains

Alan Beattie


 ドイツのナショナリズム

NYT May 22, 2020

Germany’s Lessons for China and America

By Roger Cohen

「国民国家だけでは未来がない」と、今週、メルケル首相が言った。それは、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」に対する直接の抗議である。

1945年以後、ドイツは国民的恥辱をぬぐうことに努めてきた。第2次世界大戦の終結から75周年に、Frank-Walter Steinmeier大統領は、ドイツの過去は数百万人の殺害と数百万人の苦しみによって挫かれた、と述べた。そのことが今もわれわれの心を裂く。だから私は言うのだ。この国は心を裂くことでのみ愛される、と。

毎日、たわごとを流し続ける大統領に苦しむ、1人のアメリカ人にとって、それは正直さ、謙虚さ、真剣さ、礼節、倫理、勇気に満ちた言葉だ。トランプ政権はこれらの言葉を過去のものにした。

EUは、頑固に生命を維持してきたが、パンデミックから回復するとき、中国やアメリカよりも強くなるだろう。中国の不安と隠蔽と、アメリカの否認と混乱は、災害を拡大した2つの主要な原因であった。習近平は専制支配を強化し、アメリカの民主主義は明らかに衰弱した。

中国でも、アメリカでも、内部からの告発は消された。習は権力を死ぬまで維持するが、そのことをトランプはうらやむ。パンデミックは、この21世紀の大国が、互いに似ていることを示した。

外交評議会の報告書で、Thomas Wrightは「世界秩序の終わり」を語っている。アメリカは「機能不全の大国」、中国は膨張する「強制国家」である。さらにウイルスが緊張を高める。

メルケルは、国民国家についての判断を基礎に、ドイツがヨーロッパの衰弱した経済圏を助けるための債務を共有することに、初めて、同意した。彼女はマクロンと、5500億ドルの復興基金を共通の借り入れによって調達すると発表した。ハイパーインフレーションの亡霊や、財政規律への執着を示したドイツにとって、これは画期的な転換であり、ヨーロッパの連邦制に向かうものだ。

ドイツ首相は、再選を目指していないが、パンデミックの後に革新が必要だと示した。世界はウイルス前と同じではない。トランプ、習、プーチンのナショナリズムは答えにならない。

ロックフェラー財団会長Stephen Heintzは書いた。危機は「過去350年の間、文明を支えていた3つの中心的OSが時代遅れになったことから生じている。」すなわち、「資本主義は、産業革命以来、炭素を燃やし続け、グローバルな金融化を推進してきた。国民国家は、1648年のウェストファリア条約で定義されたシステムだ。代表制民主主義は、自由、公平、正義、平等という啓蒙主義の理想に依拠する、自治のシステムである。」

問題は、資本主義が地球の生態系を破壊し、巨大な経済的不平等を生んでいること、国民国家が地球温暖化のような国家を超える課題に十分ではないこと、代表制民主主義が代表してもおらず、民主的でもない、と市民が感じていることだ。自治は、大企業、特殊利益、富裕層による支配に変わった。

それは「解体の時代」である。世界秩序、国際法、真実、アメリカの声が失われる。それが危険な時代であることを、ドイツ人ほどよく知っている国民はいない。独裁は恐怖、悲惨、怨嗟、虚偽によって育つ。1930年代がそうだった。そして、今も。あなたの国をいたずらに愛するより、裂かれた心を持って愛する方がよい。


 中国の2つの道

FP MAY 22, 2020

China Has Two Paths to Global Domination

BY HAL BRANDS AND JAKE SULLIVAN

ほんの数年前、アメリカ人の多くは、中国がリベラルな国際秩序を支えてくれる、あるいは、せいぜい、西太平洋でアメリカの役割に挑戦するのかもしれない、と思っていた。今、中国がアメリカのグローバルな指導力に挑戦するのは疑いの余地がなく、あらゆる点で、その姿勢が強まっている。

2014年から2018年に海軍を強化した。その船舶数は、ドイツ、インド、スペイン、イギリスの海軍を合計した数よりも多い。将来の経済・軍事力の配分を決めるハイテク産業の支配を、北京はねらっている。中国沿岸から遠く離れた海域の支配、遠い海外の軍事基地を展開し、ロジスティクスの拠点を築く計画がある。

もし中国が真の超大国になろうとするなら、そこに至る道は2つある。第1は、中国の依拠する地域に覇権を確立し、特に、西太平洋からアメリカを排除して、グローバルな超大国へ跳躍する基礎にすることだ。かつてアメリカがたどった道に近い。第2は、歴史の法則や地政学に反するように見える、非常に異なった道である。西太平洋に依拠するより、グローバルな規模で、中国の経済・外交・政治的影響力を強め、アメリカの同盟システムや地域の軍事拠点を圧倒することだ。

1の道がアメリカ人に説得的であるのは、それがアメリカ自身の頂点に至った道と非常に似ているからだ。北米から西半球における戦略的な脆弱性を排除することで、アメリカはグローバルな影響力を行使できるようになった。西半球からヨーロッパの対抗勢力を排除するキャンペーンを続けてきたが、それは1820年代のモンロー宣言から、カリブ海域でスペイン軍を打破する1898年の戦争に至った。

中国はこの同じロジックを確信しているように見える。多くの政策がそれを示している。空軍の防衛力、エンジン音の抑えた潜水艦、船舶を攻撃するミサイルシステムに多くの投資をしてきた。アメリカの軍艦や空軍機が中国に近寄ることを阻止し、中国の近隣地域で勝手な行動を許さないようにするためだ。北京は南シナ海や東シナ海を中国の内海にすることを望んでいる。

しかし、これが本当に中国の取る道になるか、疑うべき理由がある。国際事情に関しては、常に、相手も同じイメージを持つ。敵視することが多くの敵を作るのだ。アメリカは、その地域の重要な同盟諸国が中国の側に付くことを座視しない。日本、その一連の島々だ。そして、インド、ベトナム、インドネシアなど、中国と領土や領海を接する多くの国々だ。これまで、中国は誘惑と強制によって、フィリピン、タイの方針を転換することに、一部、成功した。しかし、オーストラリアや日本では、それがむしろ反撃を強めた。

このような方針を回避する途はないのか? それが第2の道である。中国は東ではなく、もっと西を向く。ユーラシア大陸からインド洋にかけて、中国が指導する経済・安全保障の秩序を築く。同時に、グローバルな諸制度で中国が中心となる。中国はアジアからアメリカを追い出すとか、西太平洋でアメリカ海軍を超える、ということは、少なくとも予想される将来において、求めないと認める。そうではなく、経済ルール、技術のスタンダード、政治制度の前進で、中国が世界的な役割を、中国のイメージにおいて、果たすようにする。

このアプローチを採る場合、経済・技術パワーが、伝統的な軍事力よりも、グローバルな指導力を確立するうえで根本的に重要になる。東アジアに物理的な影響圏を築くことが必要な必要ではなくなる。中国は西太平洋で軍事的均衡を保ちながら、他方で、他のパワーを駆使して、グローバルな支配を追求する。

ここには、北京が見るべきアメリカの異なる例示が存在する。第2次世界大戦後の秩序において、アメリカが指導力を得たこと、そして、冷戦終結後に、それが再強化されたことには、3つの要素があったからだ。第1に、経済力を政治的影響力に転換する能力、第2に、他の世界に優越する技術革新力の持続、第3に、基軸となる国際制度を築き、グローバルな行動のルールを設定する能力。

2の道を進むなら、中国はこれら3つの要素を再現することになるだろう。それはユーラシアからアフリカにおよぶ一帯一路で始まる。物理的なインフラを建設し、融資することで、中国は、多数の国に広がる貿易のウェブと経済リンクの中心になる。多様なレバレッジを駆使して、中国はその政治的・経済的な選好を植え付けるだろう。アメリカが戦後秩序に自分たちの政治イメージを重ねたように、第2の道は中国が国際秩序の中心となる政治規範を作り変えることを意味する。

もう1つの重要な軸となるのは、アメリカが第2次世界大戦後、そして冷戦後に、強固な、回復力のある同盟システムを築いたことだ。この点で、北京は資産を持たない。中国は西側の同盟を弱体化し、分断することをねらっている。

その試みは、アメリカがドナルド・トランプ大統領の下で伝統的な指導的役割を放棄し始めたことと重なっている。トランプは、伝統的な軍事・安全保障に投資するが、中国が示すグローバルな挑戦に対処する気がない。コロナウイルスに対する国内の無策と国際的指導力の欠如が示すように、中国が徐々に、その空白を埋めるだろう。世界はほかに選択肢がないことを認めて、中国の増大するパワーに慣れる。

しかし、中国はまだグローバルな公共財を供給する力がアメリカほどにない。それは、力が足りないことだけでなく、その権威主義的政治システムが、開明的で、プラス・サムの指導力を行使することに向いていないからだ。コロナウイルス危機で、中国がアメリカからの非難に応酬する姿勢は、非常に無責任で、攻撃的なものだ。中国の略奪的な貿易慣行や基軸産業の支配を目指す政策、そして、民主的な世界でも、人権擁護の声を黙らせ、言論の自由を弾圧することは、ドイツなど、ヨーロッパ諸国に嫌われている。

中国は、2つの道のどちらを進むのか? いまはそれらを組み合わせて進んでいる。しかし、中国の資源は無尽蔵に見えるが、決して無限ではない。ミサイルや潜水艦に投資するなら、パキスタンやヨーロッパでインフラを建設する資金は不足する。中国の指導者たちが持つ政治的資本も無限ではない。新興国家は、敵対する国を増やし、国内不安を抱え、多くの地政学的、地経学的な問題を、過度の税負担や国内での幻滅を避けて、解決しなければならない。

冷戦期のソ連に比べて、グローバルな規範や制度を変える点で、中国のパワーははるかに大きいだろう。アメリカが自分から指導力を放棄することを続けるのでなければ、中国の挑戦に対処する力がある。しかし、中国が2つの道を持つということは、米中の対抗がより複雑で、潜在的に、より厳しいものになるということを意味する。

PS May 28, 2020

Who Has the World’s Largest Economy?

JEFFREY FRANKEL

PS May 28, 2020

Cooperate with China or Suffer

ANDREW SHENG, XIAO GENG

米中は協力してコロナウイルス危機に対処するのが良い。中国はそれを認めるが、アメリカは認めない。


 EU改革

NYT May 22, 2020

Can Europe Stay Back From the Brink?

By Sylvie Kauffmann

FT May 24, 2020

China is pitting EU countries against each other

Wolfgang Münchau

The Guardian, Mon 25 May 2020

The Guardian view on Europe and Covid-19: time for true solidarity

Editorial

PS May 25, 2020

Perpetual Bonds Could Save the European Union

PROJECT SYNDICATE, GEORGE SOROS

FT May 26, 2020

Now is the time to renew the German economy

PS May 26, 2020

One Giant Leap for Europe?

LUCREZIA REICHLIN

仏独の提案は、人によっては「ハミルトンの瞬間」と言うが、そうではない。これはもっとプラグマティックなものだ。財政統合に至るには、条約の改正が必要だ。COVID-19の危機に対する復興基金は、その目的を共有し、利用を集団的にモニターするしかない。そのための期間が設立されるだろう。これはまだ、危機に対処する官僚たちの手段でしかない。

しかし、危機から景気悪化が長引くなら、債務/GDP比率は必ず上昇する。ユーロ圏の改革は避けられない。次の政治的な前進を、まだ、達成してはいない。

FT May 28, 2020

Europe’s battle lines are drawn at a uniquely perilous moment

Constanze Stelzenmüller


 トランプの再選戦略

FP MAY 23, 2020

Why the White House Should Propose More Economic Stimulus

BY JOSEPH W. SULLIVAN

FT May 27, 2020

Donald Trump has a way to win the US presidency again: spend massively

Janan Ganesh

ドナルド・トランプは、コロナウイルス危機の初めに戻って、正しい対策を示すことはできないが、選挙までには時間がある。彼は共和党の政治家を率いて、民主党の支出策をどんどん実現するだろう。それが選挙で勝利することにつながるからだ。

民主党やジョー・バイデンはモラル・ハザードを心配しない。医療保険や社会保障に財源を与えるのも、パンデミック前には否定したが、今は多くの国民が肯定的に聴くはずだ。

NYT May 27, 2020

Trump’s Economic Advisers Are Wrong

By Steven Rattner

FT May 28, 2020

Trump is courting a landslide defeat

Edward Luce

トランプの再選予想は悪化している。それを示すのは彼がパニックになってツイートを増やしていることだ。今のツイート数は、就任1年目の4倍、就任2年目の3倍だ。

その中身はひどいものだ。トランプは、MSNBC’s Morning Joeの共作者であるJoe Scarboroughはスタッフを殺害した、と繰り返し主張した。支持者でも、そのばかげた主張を非難する。

しかし、トランプは11月の選挙が反対派によって奪われる、と激しく主張する。世界のどこにも、アメリカを含めて、選出された政府のトップが、自分たちのシステムは自分に不利に操作されている、と主張するのを聞いたことはない。

有権者が、トランプのパンデミック対策が記録的な死者を出していることで支持しなくなった、というのは明らかだ。トランプは雪崩式の大敗北に終わるかもしれない。

2つのことがそれを阻む。1つは、バイデンだ。11月の選挙はトランプの信任投票である。バイデンは何もせずに、トランプが敗北するのを待てばよい。

しかし、それは容易でない。少なくとも副大統領候補を決めねばならない。中道派では若者が離反し、左派では郊外の有権者が離反する。

もう1つは、経済が急回復することだ。トランプはソーシャル・ディスタンシングを終わらせることに必死である。しかし、そこにはジレンマがある。高齢者の死亡が増えるかもしれないからだ。

NYT May 28, 2020

If We Had a Real Leader

By David Brooks


 キューバ革命の幻滅

NYT May 23, 2020

How Cubans Lost Faith in Revolution

By Anthony DePalma


 パンデミック対策

The Guardian, Sun 24 May 2020

An open letter: why we need a National Youth Corps

Will Hutton

COVID-19による経済危機が雇用機会を奪われる若者たちのために、政府は彼らを雇用し、仕事や訓練に参加する組織National Youth Corpsを立ち上げるべきだ。

FT May 24, 2020

Small-time investing fuels real world consequences

Rana Foroohar

PS May 27, 2020

Regulating in a Pandemic

HOWARD DAVIES


 オーストラリア

FT May 24, 2020

Australia: has the ‘lucky country’ run out of luck?

Jamie Smyth in Katoomba, Blue Mountains

オーストラリアは「ラッキー・カントリー」であった。しかし、パンデミックは、この国が30年間経験したことがないこと、不況をもたらすだろう。しかも、それを複雑にしているのは、中国との関係が悪化していることだ。貿易や投資によって、中国が圧力をかけることを恐れている。


 富裕税

The Guardian, Mon 25 May 2020

This is why we're proposing a wealth tax in Spain to help us out of this crisis

Pablo Echenique

FT May 25, 2020

The changing face of the billionaire classes

John Thornhill


 ブラジル、インド、エチオピア、イエメン、ロシア

FT May 25, 2020

Jair Bolsonaro’s populism is leading Brazil to disaster

Gideon Rachman

FT May 26, 2020

India’s draconian lockdown gives way to a sudden easing

Amy Kazmin

FT May 28, 2020

No lockdown, few ventilators, but Ethiopia is beating Covid-19

David Pilling

YaleGlobal, Thursday, May 28, 2020

Disorder and Disease Wins in Yemen

Austin Bodetti

PS May 28, 2020

Russian Derangement Syndrome

NINA L. KHRUSHCHEVA

FP MAY 28, 2020

Brazil Is Suffering. Bolsonaro Isn’t.

BY OMAR G. ENCARNACIÓN

ボルソナーロの右派ポピュリズムは、コロナウイルス危機の中でも支持を維持している。彼と支持者を結ぶのは、イデオロギーでも政策でもなく、いわゆるリベラルなエリートに対する共通の嫌悪感である。危機はそれを強めた。ボルソナーロは、「法と秩序」という主張で、選挙基盤を都市部に広げた。それは軍事独裁体制を支持し、犯罪撲滅を主張することであった。


 中央銀行

The Guardian, Tue 26 May 2020

Central banks must change course if they are to lead us out of the coronavirus crisis

Josh Ryan-Collins

NYT May 28, 2020

Why Is the Fed Spending So Much Money on a Dying Industry?

By Sarah Bloom Raskin


 ポンぺオ国務長官

NYT May 26, 2020

Mike Pompeo Is the Worst Secretary of State Ever

By Thomas L. Friedman


 アルゼンチン債務

FT May 27, 2020

There is a way forward for Argentina and its creditors

Robert Johnson

VOX 28 May 2020

Sovereign debt standstills: An update

Patrick Bolton, Lee Buchheit , Pierre-Olivier Gourinchas, Mitu Gulati, Chang-Tai Hsieh, Ugo Panizza, Beatrice Weder di Mauro

PS May 27, 2020

A Chronicle of a Lost Decade Foretold

YANIS VAROUFAKIS


 トランプとSNS

NYT May 27, 2020

What Would Happen if Twitter Banned Trump?

By Charlie Warzel

NYT May 27, 2020

Twitter Tsks, and Trump Fumes

By Kara Swisher

かつてトランプは愚劣なたとえ話をツイッターで広めた。大統領がNY5番街で誰かを撃ち殺しても、自分は罪を問われない、恩赦を与える、と。

もはや、そうはいかない。ツイッターは彼の行動が罪を問われないことを許さなくなった。郵送による投票について、トランプがツイートしたことに、「誤解を招く」と警告を付けたのだ。

ツイッターやフェースブックがニュース・メディアから奪った地位を、今後、問われるだろう。

FT May 28, 2020

Welcome to the age of insult, you snowflake

Simon Kuper

FT May 29, 2020

Fact-checking Donald Trump’s Twitter feed

FT May 29, 2020

Tweeter-in-chief Trump hands Facebook and Twitter a gift

Richard Waters

******************************** 

The Economist May 16th 2020

Goodbye globalisation

Unemployment: Reopen and shut

Hydropower in Asia: Water torture

Europe under strain: Searching for meaning

The Mekong: Torrent to trickle

Globalisation: Torn apart

(コメント) 2016年にUKEU離脱を国民投票のよって決めたとき、その直前に、EUとは何か、と説明する記事が載った。今、再び、同じ趣旨の記事がここに載った。COVID-19の衝撃に対して、EUが正しく政治合意を形成するように求めたのだろうか? 27に分割された財政赤字と、1つの中央銀行とが、EUの政治的意志を問う論説の力は、衰えたように思います。

もしかしたら、グローバリゼーションと同じように後退し、メコン川管理委員会のように政治的意志を欠いたまま、COVID-19後の世界は、まだ何に向かうのか、もっと大きな危機を待っているように見えます。21世紀の世界は、巨大なEUのように、迷走し始めているのでしょう。

******************************

IPEの想像力 6/1/20

コロナウイルス危機後の経済不況は、特に、貧しい者と、医療、介護、配達・輸送、食料品店、ごみ処理・清掃などに従事する、エッセンシャル・ワーカーズに多くの感染者と死者を出した。

白人警察官による黒人殺害は、動画が拡散することで大きな反響を生んだ。SNSによる拡散、炎上である。これが11月の投票や、政治的な勢力配置の変化をもたらすのか、まだわからない。

抗議デモと略奪、放火、暴力が広まり、保守派は「法と秩序」、「テロ集団」という言葉を拡散している。再び、「アメリカの殺戮」という言葉をトランプは使った。

もっとも悪質な、社会的混乱を利用する、政治的な動機の陰謀集団、極右や極左の暴力を賛美する主張に影響された個人が、放火や略奪、警察車両と公共施設に対する攻撃を煽動しているのではないか。

ホワイトハウスの地下壕から、トランプは支持者への挑発をツイッターで拡散し続けた。暴徒鎮圧用の犬を使うぞ、恐ろしい武器を用意せよ、略奪があれば、銃撃が始まる。

圧倒的な武力で暴動を支配・制圧しろ、州兵を出せ、そんなこともできないのか、笑いものだぞ。そして、軍を動かす、とトランプはツイートした。

都市部は民主党の支持者が多く、市長や知事などは民主党だ。彼らの政策が失敗した。これは、トランプ、そして共和党支持者たちにとって、自分たちの正しさを証明している。

****

抗議デモが広がり、トランプ大統領の言動がアメリカ社会の分裂状態を強める爆弾を撒いているとき、保守的な社会層もこの2人の発言には注目したと思います。

1人は、マティス前国防長官。トランプ大統領の発言を、厳しく批判しました。トランプは国民を分断している。国民をまとめるふりすらしない。人生で初めて見る大統領だ、と述べた。

また、トランプがセントジョン米聖公会教会の前で聖書を持ち、写真撮影に応じたことを、PBSのインタビューで教会の監督官が、聖書や教会を使ったことは間違っている、と明確に批判した。彼は教会に祈りに来たのではない。自分たちと言葉を交わすこともなかった、と。

まるでイラク戦争だ。

警察は市民を守るのか、「敵兵」を拘束、殺害することが目的なのか。

トランプだけでなく、左派も、右派も、多方向からのSNS革命を呼びかける。

アメリカにおける銃器の氾濫は、治安問題の解決を致命的に困難にしている。「麻薬戦争」や「ギャング」による市街戦に近い。多くの警察官が殺害されてきたことで、警察の武装強化が進んだ。市民のための治安ではなく、犯罪組織と警察の軍事衝突がエスカレートし、特殊部隊のような迷彩服と、電子化されたゴーグルを装着して「敵」を探す。

****

アリストテレスも『政治学』の考察で、革命の源は不平等だ、と書いた。制度化された不平等は、不正義を意味する。

ミネアポリスは全米で2番目に、黒人と白人の間の不平等な所得分配を示す。

ニュースを観ていると、黒人と白人の家計所得に5万ドル?も差がある、と言った。そう聞こえたけれど、本当だろうか? 黒人の家計所得は、5万ドルもないだろう?

Newsweekのある記事は、ボストンの黒人世帯の純資産は「わずか8ドル」しかない、と書いている。たとえ自動車や家があっても、同じだけの債務がある、と。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/12/831.php

黒人と連帯を示す地元警察官たちの姿が報道された。人びとと一緒に行進し、片膝をついて「連帯」を表明する。下院では、民主党の議員たちが、警察官がフロイドの首を、846秒の間、膝で押しつぶして殺したことに抗議し、同じ846秒の間の黙祷を行った。

これまでの大統領は、国民に向けて和解を求め、法の下の平等と正義を実現すると約束した。それでも、あまりにも多くの黒人が殺害され、投獄されている。警察と司法システムに問題があるのか?

人種の多様性を確保すること。コミュニティーの対話を推進し、制度化すること。そして、思い出した。香港のデモ隊に警察が過剰な暴力を行使したとき、市民たちは強い声を上げた。あのとき政府は、彼らの声を真剣に聞いて、市民による「警察の暴力」に関する監視・審判を制度化するべきだった。

デモを指導した黒人女性は、白人の警察官が一緒に行進したいという願いを受け入れた。しかし、歩きながら、自分たちのスローガンBlack Lives Matter! 黒人の命は大切だ、と叫んで、彼を観た。自分は人種差別的かもしれない、と恥じたからだ。

すべての人の命は大切だ。そう言って、彼らは一緒に行進した。

******************************