IPEの果樹園2020

今週のReview

5/4-9

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中国との関係 ・・・危機後の社会資本 ・・・デフレか、インフレか ・・・アバ・キャリ ・・・債務処理の政治対立 ・・・パンデミックと自然 ・・・南部戦略と家産制国家

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 中国との関係

FT April 26, 2020

China’s economy can only grow with more state control not less

Michael Pettis

人民日報は、最近、市場による資源配分を改善する重要な新ガイドラインを発表した。経済自由化、サプライ・サイドの改革が民間部門を強化するだろう、と考えている。

主流派エコノミストたちは、長い間、北京に市場経済の改革を求めてきた。彼らは、民間部門が過去10年に後退した、と考えてきた。しかし、政府部門の支配が拡大したという証拠はない。

長期的に、中国経済が民間部門と市場志向の経済によって利益を得てきたのは間違いない。しかし、直近から中期を考えれば、このアプローチは中国の減速や債務依存について何も改善をもたらさないだろう。COVID-19のダメージについても同じである。

なぜなら、中国経済の問題は、サプライ・サイドではなく、デマンド・サイドにあるからだ。コロナウイルスのパンデミックは問題をさらに悪化させた。

近年は忘れたようだが、2007年以来、エコノミストたちは、中国経済が著しい不均衡にあることを知っていた。家計所得がGDPに占める割合が非常に低く、地方政府、ビジネス、富裕層に偏っているのだ。それは、歴史的にも最低水準の、約半分である。それゆえ家計の消費は少なく、成長を維持できない。

消費不足は投資に対する抑制効果をもたらすから、こうした経済は輸出能力の拡大に向かい、中国のように経済規模が大きくなれば、それは成長維持には持続不可能になる。性y等に残された2つの源泉は、政府によるインフラ投資と不動産投資である。

どちらも中国はすでに投資過剰になっており、都市不動産開発の4分の1は埋まっていない。それゆえ、中国の成長には政府の支援だけが頼りである。

市場に依拠した改革だけでは、どれほど大規模に行っても、持続的な成長を実現できない。北京が政治的な困難を排して、富と権力の再分配を行い、地方政府とエリートから奪い、普通の市民たちに与えるとき、はじめて改革は成功する。

長い間、地方のエリートたちはこれに抵抗してきた。経済の均衡を回復しない限り、政府部門の拡大と債務の膨張でしか成長は実現できないだろう。


 危機後の社会資本

FT April 24, 2020

Reweaving the social fabric after the crisis

Andy Haldane

経済成長にとって「社会資本」(第3の支柱)が重要であることは忘れられがちである。しかし、コロナウイルス危機の中で、医療などの社会サービスとボランティアの重要性が注目されている。

パンデミックが、資本主義の築いた資本=都市=市民たちの生活を破壊してしまう。資産の価格が下落し、成長を損なっている。経済活動を脅かし、物的資本が廃棄される。歴史的に、パンデミックは職と生活水準を損なった。今もそうである。

社会的な距離を取る対策は、社会資本を破壊する、と予想されていた。それはコミュニティーに広がるネットワークであり、社会を強化する。しかし、実際は、社会資本が強化される、とわかった。隣人の親切な行為、コミュニティー活動、チャリティー、慈善活動、支援のためのボランティア参加である。戦争のような危機でも、社会資本の増加が回復を助けた。

産業革命後の社会不安や都市問題でも、民間、政府、そして社会的部門が補い合って生活を守り、社会を回復した。

2次世界大戦中の1942年に出たベヴァリッジ報告もそうだ。福祉国家と国民医療サービスを提唱した。もしこれらが無かったら、戦後のイギリス人の暮らしはどうなっていたか、考えるのもむつかしい。

FT April 27, 2020

Precarity, not inequality is what ails the 99%

Albena Azmanova

「富裕層に課税せよ」という革新派の叫びが強まっている。しかし、それは政治的な敗者の考え方だ。選挙で勝てる見込みはない。その理由は、不平等ではなく、経済的な不安定さが問題であるからだ。不平等はその一面である。

多くの人々は富裕層を賞賛する。既存の社会主義体制では、平等がむしろ問題だ。

経済的不平等は統計によって示せるが、それは社会的な不正義なのか? その答えは、富裕が社会的特権であるとき、極端な富が、自分たちに奉仕する、略奪的な政治権力につながるとき、それは不正義になる。

それゆえ現実的な解決策は、富の再分配ではなく、対抗力を強化することだ。労働組合その他の社会運動、支持を広く得なければならない政党、金融的不正を告発する司法制度、国家権力に関する監視機構。

2に、富は安定性をもたらす源泉の一部でしかない。自動化、グローバリゼーション、公共サービスと社会保険の削減、それらは市民にとって巨大な経済的不安定性を強いている。それは若者、高齢者、男性、女性、熟練、未熟練、移民、その他の社会的弱者に、それぞれ異なる意味で負わされている。

パンデミックは、こうした不確かさprecarityの苦痛を増した。デンマーク、ドイツではコロナウイルスの死者が少なく、緊縮財政で病院などの医療インフラに投資を削減したUKとイタリアには死者が多い。アメリカは、利潤に支配された医療システムが犯す典型的な失敗を示している。

2008年の金融危機後にも、政治がラディカルに変化し、労働者階級の力を強化するという希望が示されたが、不安定さは保守化の本能を刺激し、さらに反動化することにもなった。有権者の右傾化は続いている。

われわれに必要なことは、公衆衛生、社会保険やインフラ、教育、その他の公共サービスをもたらす戦略的な科学、である、それを実現する政治運動だけが勝利できる。


 デフレか、インフレか

VOX 24 April 2020

Is there deflation or inflation in our future?

Olivier Blanchard

われわれはデフレーションになるのか、インフレーションになるのか、

石油価格は急落し、商品価格が下がっている。労働市場も需要がない。インフレは抑えられ、デフレになるだろう。

しかし、財政赤字や中央銀行のバランス・シートが巨額になる。それはインフレを、しかもかなり高いインフレを予想させる。

私は低インフレーションになると思う。しかし、わずかな可能性だが、高インフレーションも否定できない。その説明はこうだ。

標準的な理解では、インフレーションは労働市場の状態、インフレ期待、商品や食料価格に起きるショックを観た。これらはインフレが起きそうにないことを示している。失業は予想をはるかに超えて高い水準だ。

現金不足の家計や企業に、財政的な支援が行われる。それは利用可能な供給を超えて需要を増やすと考えるかもしれない。しかし、それは起きていない。ソーシャル・ディスタンスで買い物ができず、不安による貯蓄が増えているからだ。インフレ率は、ロックダウンが始まってから、どちらかと言えば、低下してきた。

ソーシャル・ディスタンスが終われば、需要が爆発的に増大し、インフレが起きると心配する者がいる。しかしそれは、インフレ期待を不安定化するほど、大きくも長くもないだろう。

しかし、私は高いインフレーションが起きる1つのシナリオを考えることがある。それは3つの要素からなるものだ。

1.債務のGDP比率が非常に大きくなる。2.経済活動をその潜在力に維持する「中立的利子率」が大幅に上昇する。3.財政的な事情が金融政策を支配する。

政府は、インフレ率を高めて債務を維持する負担を減らそうとするかもしれない。若干のインフレは、その意味で、望ましいだろう。しかし、過去の高インフレが示すように、インフレ期待が生じて、それを抑えることができなくなる。一層の高いインフレ、そして、ハイパーインフレーションで終わる。

これら3つの要素は、それぞれ、起きる可能性が非常に低い。3つがそろうことはほぼないと言える。しかし、完全に排除することは間違いだ。

NYT April 27, 2020

Peacocks and Vultures Are Circling the Deficit

By Paul Krugman

私は、長年、「緊縮の神話」というコラムを書いてきたが、赤字を警告する者のせいで金融危機後の不況は長引いたのだ。残念ながら、同じ赤字警戒論が復活している。

目を見張るような数字が並ぶのは確かだ。この先2年間の財政赤字予想が出た。それはショッキングであるが、驚くことではない。

失業者は急増しており、歳入は激減している。失業保険などのセーフティーネットが支出される。議会は追加的な支援策を承認するだろう。

しかし、政府は低金利で借り入れることができる。実質はマイナス金利である。われわれは債務を支払うこともないだろう。

重要なことは、恐れるべきは財政赤字を恐れることだけである、ということだ。


 アバ・キャリ

FT April 25, 2020

Abba Kyari, chief of staff to the president of Nigeria, 1952-2020

William Wallis

アバ・キャリAbba Kyariは、コロナウイルスの犠牲になった。今のところ、アフリカの犠牲者中で、最高の政治的職位にある人物である。67歳。ナイジェリアで最も影響力のある地位、大統領首席補佐官に就いていた。

アバ・キャリは40年も前にムハンマド・ブハリの友人となり、2015年、ブハリが予想に反して大統領選挙に勝利した後、彼をスタッフの指導者にした。熱烈な忠誠心で激務をこなし、細部にまで注意して、しばしば政敵たちを不安にした。

彼が残した真空状態は、ナイジェリアが輸出収入のほとんどを頼っている原油の価格急落で不確実な時期に、コロナウイルスによる彼の死を世界的な事件にした。

キャリは、ナイジェリア北東部、Borno州のBamaに生まれた。イスラム過激派の反政府活動が広まっている地域だ。イスラム教徒だが、クリスチャンのミッション・スクールに通い、1980年代、UKのウォーリックとケンブリッジで学んだ。ジャーナリストとして経歴を始め、ナイジェリアの指導的銀行の幹部になり、Unilever ExxonMobilの子会社で経営陣に参加した。

英語圏の主要な新聞・雑誌、テレビに登場し、Amartya SenArthur Lewisのような左派的な思想家に影響を受けた。

キャリは、ナイジェリア国家がボロボロで、行政能力がないことを意識していた。しかしまた、ビジネスの経験から、民間企業がしばしば政府と癒着していることを心配した。法の支配を欠く中で、ナイジェリアの諸問題に自由な市場が解決策になるとは考えなかった。その任期中、問題の多い為替レート制度を廃止するように求めるIMFの勧告に反対した。

キャリはブハリの発言を代弁した。ブハリが当選したとき、収賄を根絶し、紛争を終わらせ、ナイジェリア経済を石油産業から多様化する、と公約した。その公約は直ちに障害に直面した。不況、制度からの抵抗、ブハリの健康悪化。それでもキャリはブハリの守護者として、陰謀と計略から大統領を護った。

歴史は、同時代人たちより、キャリに優しいだろう。

次第にキャリはいくつかの問題に集中するようになった。農業改革、電力、輸送インフラ。そして、長年の課題であった石油・天然ガス部門に着手するところであった。

医師の反対にもかかわらず、多くの官僚たちがキャリの葬儀に参加した。


 債務処理の政治対立

The Guardian, Mon 27 Apr 2020

Should we be scared of the coronavirus debt mountain?

Adam Tooze

パンデミックがいつ終わるのか、われわれにはわからない。世界中で、GDPが急減している。同時に、危機によって債務が急増する。

危機が過ぎると、われわれは決めなければならない。債務をどうやって支払うのか? あるいは、そもそも支払うのかどうか? その問題は政治の表情を決め、将来のインフラや公共サービスを決める。それを解決しなければ、コロナ債務は財政緊縮のキャンペーンに襲われる。

歴史的には、政府債券を保有するのは中産階級と上層の市民、不労所得者層であった。政府は税金を集めて返済するから、低所得層が大きく負担した。現代でも、富裕層が政府の債券を保有している。しかし、同時に、年金基金や保険会社を通じて国民が広く保有している。それは有益な金融資産である。

タックス・ベースも拡大している。しかし、だれが税金を支払うのか? 富裕税や、企業が利用するタックスヘイブンの閉鎖を求める議論になるだろう。付加価値税の引き上げや、政府支出の削減が論争になる。学校、年金、国防費が削減される。

かつて第1次世界大戦後にJ.シュンペーターが述べたように、予算は、あらゆるイデオロギーを排除したあと残る、国の骨格である。

緊縮策は、返済に必要な成長そのものを損なう。進歩派の政治は目標ばかり主張する。しかし、債務を恐れる緊縮派と闘うべきだ。

中央銀行は、危機における債務の増大と、その後の返済を、安定的に管理するメカニズムであり、インフレと不況を監視する機関である。


 パンデミックと自然

NYT April 27, 2020

Now We Know How Quickly Our Trashed Planet Can Heal

By Margaret Renkl

「サムは、クラスで白昼夢をいつも楽しむ子供だった。」

今、パンデミックは私たちみんなを「窓を眺める者」にした。われわれは予期せぬ形で自然に驚異を示す空間を開けたのだ。世界中の都市で、鳥たちのさえずりが大きくなった。彼らはもはや交通の騒音と競争していない。

サンフランシスコやシカゴの通りでコヨーテが、ウェールズではカシミール羊が、フィラデルフィアではビーバーが、サンマテオにライオンが、バルセロナに野生の大蛇が、ナッシュビルにはアカギツネが現れた。

コロナウイルスが気候変動を逆転させることはないだろう。しかし、われわれは自分の眼で、われわれがゴミに変えた地球を、自然界が再び取り戻すのを待っているのだ、ということを観る。われわれがその機会を与えるなら、どれほどのエネルギーと迅速さで、自然が戻ってくるかを観る。モーターボートがいないベニスの運河は澄み、自動車のいないニューデリーの空は晴れ渡る。

パンデミックは、すべてが失われたわけではないことを教えている。

われわれは自然との関係を考え直す文化的な影響を利用できる。地球を真に共有するにはどうすればよいか考え、われわれの生活を変えると決心する。

孤立した状態から抜け出すときに、われわれの最初の課題は「記憶する」ことだ。自然がよみがえる予感を記憶にとどめる。そして、実現するために可能なすべての努力をする。


 南部戦略と家産制国家

FT April 29, 2020

The American Confederacy is rising again under Donald Trump

Lloyd Green

パンデミックに直面して、ドナルド・トランプは知事たちにウイルス対策をゆだねた。ホワイトハウスはリアリティー・ショーの演出に徹し、トランプ支持の知事たちはそのシンボルを「アメリカ連合国the Confederate States of America」に求めている。「州の解放」という主張に、南軍の副大統領であったAlexander Stephensは、墓石の下で笑っているだろう。

これは共和党の新しい「南部戦略」である。

FT April 30, 2020

The golden age of Jared Kushner

Edward Luce

ジョージ・W・ブッシュは、戦争が悪化する直前、任務完了の宣言を行った。トランプの娘婿であるクシュナーJared Kushnerは、コロナウイルスで同じギャンブルをした。

Fox Newsで、クシュナーはアメリカ経済の回復を約束し、トランプ政権のコロナウイルス対策を「大成功」と語った。

しかし、アメリカの失敗をまねる国はどこにもない。アメリカはすでに6万人が死亡し、世界全体の死亡者数の4分の1、感染者数の3分の1を占める。アメリカ人口は世界の5%でしかない。42か国がアメリカよりも人口当たり多くの検査を行っている。国によっては何倍も多い。

外国の指導者たちは、アメリカ大統領に話すために、彼の家族を介して話す必要がある。クシュナーは、大統領だけを聴衆にして話している。大統領は諸州(Texas, Florida, Tennessee and South Carolina)に経済を再開させたがっているが、それはリスクの高い戦略だ。

東海岸で爆発した感染拡大が、南部に向かう兆候が見られる。検査や追跡の体制もないまま封鎖を解くのは、新しい感染爆発につながるだろう。

1月初め、中国から感染が拡大し始めたとき、トランプ政権は分裂していた。中国に対する強硬派のナヴァロらのグループは厳格な規制を主張した。1月末に、彼らはトランプを説得して中国からの航空便を禁止した

クシュナーら、ムニューシン財務長官を含むグループは、コロナウイルス危機が誇張であり、過剰な反応は再選を脅かす、と主張した。クシュナーは概ね優位な位置にあり、トランプはその後の措置を何も取らなかった。

FTはコロナウイルス危機を無視しているブラジル、ベラルーシなどの諸国を「ダチョウ連合」とよんだ。クシュナーはホワイトハウス内のダチョウ派首領である。パンデミックの経験もないのに、政権内の「影のコロナウイルス対策班」を率いた。そして未完成の中東和平案と同様、彼のビジネス仲間やマッキンゼー・コンサルタントを招き入れた。

世界はこれまでにない異なるアメリカに直面している。外国指導者や州知事たちが、そして中国も、クシュナーを大統領の関心につながる者とみなす。サブサハラ・アフリカでしか見られないような意思伝達方法だ。COVID-19は、アメリカが家産制国家・族長支配に戻ったことを示した。

族長家族の言葉は、科学よりも重い。アメリカは、トランプ家による、トランプ家のための、トランプ政権とともに生きる。

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The Economist April 18th 2020

Covid-19 lockdown: Fumbling for the exit strategy

Chaguan: China’s self-censoring nationalists

Coronavirus and inequality: Unequal protection

Lexington: The paradox of the pandemic

Finance and geopolitics: Bucking the trend

Free exchange: The cost of living

(コメント) ロックダウンの出口戦略は描けない。中国のナショナリストは西側を信用しない。アメリカが失敗したのは、ウイルス対策より、貧困問題だ。コロナウイルス危機で金融市場がドルに殺到するとき、人民元の市場は安定したままだった。危機の後、世界にはインフレの可能性が戻ってくるだろう。

いずれも、そうだな、と思いました。

そして、トランプです。アメリカはコロナウイルスで世界最大の感染者と死者を出しているのに、トランプの人気は衰えない。コロナとの闘いでも、トランプは社会と政治の分断状態を決して緩和したりしないからだ。しかし、それだけではない。

感染爆発したニューヨークのように、都市部の貧困問題、非合法移民が、感染しても発病しても、医療サービスを受けられなかった。「絶望死」を爆発させたようです。トランプはこれを利用する。

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IPEの想像力 5/4/20

Foreign Policyが都市文明の将来を問いかけた。パンデミックが都市の密集した居住形態や公共輸送システムから広がった。人びとが都市に見出した恐怖は、都市の魅力や経済機会を超えるものになった。

それでもワクチンが開発され、ウイルスに対する免疫を獲得すれば、再びパンデミックが起きることを恐れるより、都市中心の金融グローバリゼーションが復活するのか?

パンデミックを契機に、英米が主導した金融ビジネスがあまりにも多くのコミュニティーや弱者の地位を破壊したことは記憶され、長い論争と社会モデルの転機を導くのではないか?

それは、どのような転換になるだろうか。若者たちや、社会のさまざまな資源は、どのような分野に振り向けられるのか。たとえば、デジタル金融資本主義ではなく、環境・福祉国家へ。医療や介護を中心とした社会が再生の中心になる。

生産活動は、パンデミック後、生産や配送部門にハイテクが導入され、無人化が加速する。産業や農場の雇用が積極的に再編され、内外の移民の流れが、免疫獲得の重要なシステムになる。

それは、社会秩序、政治経済モデルにも転換を求めるだろう。ふさわしい報酬や尊敬・社会的地位の秩序を書き直すべきだ。技術革新と富の関係が見直されるのではないか。株式市場やデジタル大企業の占拠している社会的資源や富は、過去のものになる。エッセンシャル・ワーカーズこそ、時代が誇る人々だ。

環境破壊や気候変動に対する姿勢を変える必要が、パンデミックの記憶と大火災やハリケーンの猛威に重ねて、認識と社会制度の変更におよぶかもしれない。社会的な弱者や世界の貧困地帯にも、資源の独裁や犯罪者の支配ではなく、「包摂」を重視した政治経済モデルが求められる。

そのためにも、人びとはよく考えることで政治を変える。何が正当な権力なのか? 誰を政治指導者にするべきか?

パンデミックと戦争を組み合わせた国際秩序の再編圧力は何に向かうのか? 核兵器はもちろん、生物化学兵器を使用しない。使用させない。

グローバリゼーションやインターネットの市民的基準を確立する。ウイルス監視・予防原則。情報監視社会、デジタル・プラットフォーマーを民主的な社会の側が取り込めるように。

それを指導するのは、現在のアメリカでも中国でもない。新しい、多様な、諸大陸に分散した、自律型政治経済モデルの平和共存が目標になる。そして、だれもが好ましいと信じる文明圏を移動できる。

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日本政府のパンデミック対策は、結果的に、非常に成功したのかもしれない。感染者の広がりは正確に把握しないまま、法的強制や罰金も科さない形で自粛を要請し、それは効果的に感染爆発を抑え込んだ。そのようにグラフは見える。

私は、政府とその専門家会議を「攻撃」したことが間違っていたかもしれない、と反省しています。しかし、同時に、本当のメカニズムや決定の理由はわからない。政府の姿勢には今も不満と不安を持っています。

議論を尽くしたのか? さまざまなアイデアを吸収しているか? 意思決定の過程をオープンにして、時間とともに検証し、見直しを続ける用意があるか?

イギリスやスウェーデンの集団免疫・自然感染は、日本と同様に、注目されます。

私は今も、津波の経験を利用して、政府が建設した(今も建設中の)堤防を思い出します。12.5メートル?の高さの堤防で、永久に海と切り離された生活が、幸せだろうか? 私は堤防に反対でした。同様に、ロイターや朝日新聞の記事があります。

「ブログ:震災7年、「巨大防潮堤」に隔てられた生活」

https://jp.reuters.com/article/wider-image-jp-sea-walls-idJPKCN1GL182

朝日新聞 Globe 半年議論、防潮堤をやめた 当事者が考える「復興とは」

https://globe.asahi.com/article/11734248

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