IPEの果樹園2020

今週のReview

5/4-9

***************************** 

石油戦争 ・・・医療・ワクチンの公共財 ・・・中国との関係 ・・・EUのコロナウイルス危機 ・・・危機後の社会資本 ・・・デフレか、インフレか ・・・アメリカのパンデミック対策 ・・・パンデミックの独裁者 ・・・債務処理の政治対立 ・・・パンデミックと自然 ・・・ロックダウン解除の混乱 ・・・南部戦略と家産制国家

[長いReview

****************************** 

主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 石油戦争

FT April 23, 2020

It is hard to pick any winners from oil’s collapse

Helima Croft

原油価格の急落後、トランプ大統領の介入で、サウジアラビアとロシアは和解し、原油生産量が抑えられた。その勝者は、トランプ大統領だった。

しかし、時間とともに、だれが勝者なのか、わからなくなった。OPECはアメリカのシェール・オイルが市場を奪うことを激しく憎んできた。生産量を減らして、シェール・オイル産業が復活するのは好まない。

アメリカは、シェール・オイルを得たから、中東の石油に関心を失う、ということもないと分かった。イランに対する制裁でアメリカが市場を得たとき、石油価格の安定化にはサウジアラビアの協力が必要だった。

石油生産・輸出に依存する諸国は、経済の多様化を急ぐしかない。イラク、アルジェリア、スーダンは、石油価格の下落で抗議デモが激化し、政権が崩壊した。ガバナンスの貧困、雇用機会の不足は、権力にとって致命的である。

石油戦争において、誰が勝者なのか?

FT April 24, 2020

Oil is not the only negative price coming to you

Robin Harding

ものを除去するのに支払うケースは、多くないが、珍しいことではない。髪の毛、出歯、産業廃棄物、十代の子ども、そして、今週は原油だ。月曜日、史上初めて、1バレル、マイナス40.32ドルになった。

しかし、電力市場では、かなり普通に起きる。それでも、人びとは普通じゃないと感じて憤慨する。それは、損失を回避することに偏見があるからだ。

同じことは、ヨーロッパと日本で、マイナス金利に対する後半に不満に示されている。

FT April 25, 2020

Will American shale oil rise again?

Derek Brower and David Sheppard in London

FT April 27, 2020

Russia’s economic woes will clip Vladimir Putin’s wings

FT April 30, 2020

Failure of oil price war may cost Putin dear

David Gardner


 医療・ワクチンの公共財

PS Apr 23, 2020

Patents vs. the Pandemic

JOSEPH E. STIGLITZ, ARJUN JAYADEV, ACHAL PRABHALA

1つの世界を想像する。そこでは医療の専門家たちがネットワークを形成し、感染症ウイルスの出現を監視している。そしてウイルスに対抗するワクチンの知識を定期的に更新している。情報は、世界中の企業と国に利用可能である。さらに、この協力は知的財産権IPに制約されていない。独占的な製薬企業が薬を渇望する人々を利用して利潤を最大化することにも制約されない。

COVID-19の登場が、製薬企業の独占による人命のコストを、痛いほど明瞭に示している。

それに代わる途はある。たとえば、コスタリカ政府は最近、WTOに、COVID-19に関する知識を自発的なIPのプールにするよう求めた。それによって多くの生産者が供給する新薬を、もっと手に入りやすい価格で利用できるだろう。

PS Apr 23, 2020

Target R and Wait for the Vaccine

RICARDO HAUSMANN

PS Apr 27, 2020

How to Develop a COVID-19 Vaccine for All

MARIANA MAZZUCATO, ELS TORREELE


 ウイルスと戦争

PS Apr 23, 2020

COVID-19 is Not World War II

WILLIAM H. JANEWAY

COVID-19との闘いは、第2次世界大戦と違う。それは需要を維持することだけではない。

PS Apr 27, 2020

The Fog of COVID-19 War Propaganda

NINA L. KHRUSHCHEVA

COVID-19は、ナチス・ドイツではない。真珠湾攻撃もない。外国に反撃することとは全く異なる。


 中国との関係

PS Apr 24, 2020

COVID-19 and the Thucydides Trap

YU YONGDING, KEVIN P. GALLAGHER

FT April 26, 2020

China’s economy can only grow with more state control not less

Michael Pettis

人民日報は、最近、市場による資源配分を改善する重要な新ガイドラインを発表した。経済自由化、サプライ・サイドの改革が民間部門を強化するだろう、と考えている。

主流派エコノミストたちは、長い間、北京に市場経済の改革を求めてきた。彼らは、民間部門が過去10年に後退した、と考えてきた。しかし、政府部門の支配が拡大したという証拠はない。

長期的に、中国経済が民間部門と市場志向の経済によって利益を得てきたのは間違いない。しかし、直近から中期を考えれば、このアプローチは中国の減速や債務依存について何も改善をもたらさないだろう。COVID-19のダメージについても同じである。

なぜなら、中国経済の問題は、サプライ・サイドではなく、デマンド・サイドにあるからだ。コロナウイルスのパンデミックは問題をさらに悪化させた。

近年は忘れたようだが、2007年以来、エコノミストたちは、中国経済が著しい不均衡にあることを知っていた。家計所得がGDPに占める割合が非常に低く、地方政府、ビジネス、富裕層に偏っているのだ。それは、歴史的にも最低水準の、約半分である。それゆえ家計の消費は少なく、成長を維持できない。

消費不足は投資に対する抑制効果をもたらすから、こうした経済は輸出能力の拡大に向かい、中国のように経済規模が大きくなれば、それは成長維持には持続不可能になる。性y等に残された2つの源泉は、政府によるインフラ投資と不動産投資である。

どちらも中国はすでに投資過剰になっており、都市不動産開発の4分の1は埋まっていない。それゆえ、中国の成長には政府の支援だけが頼りである。

市場に依拠した改革だけでは、どれほど大規模に行っても、持続的な成長を実現できない。北京が政治的な困難を排して、富と権力の再分配を行い、地方政府とエリートから奪い、普通の市民たちに与えるとき、はじめて改革は成功する。

長い間、地方のエリートたちはこれに抵抗してきた。経済の均衡を回復しない限り、政府部門の拡大と債務の膨張でしか成長は実現できないだろう。

PS Apr 27, 2020

The End of the US-China Relationship

STEPHEN S. ROACH

ナショナリスト的なアメリカ人は中国にうんざりしている。ナショナリスト的な中国人もアメリカにイライラしている。しかし、やられたらやり返すような非難合戦では世界で最も重要な2国間関係は動かせない。

この関係断絶の結果を考えて冷静になるべきだ。

深く縫い合わされた共棲関係である以上、両国経済は激しい痛みを生じるだろう。中国は最大の市場を失う。中国のGDP20%は輸出である。また中国は、技術革新に必要な、アメリカからのハイテク部品を失う。そして、USドルというアンカーを失えば、金融不安定性が増大するだろう。

しかし、アメリカにとっても重大な損失だ。アメリカは主要な低コスト製品を失う。それらは所得の限られた消費者たちが生活するうえで長期に依存してきたものだ。成長を損なう中で、重要な外国市場を失う。中国はアメリカにとって3番目の輸出先であり、しかも最も急速に売り上げが伸びている市場だ。アメリカは財務省証券の最大の買い手を失う。しかも今は、史上最大の財政赤字を出して、買い手を求めているときだ。

断絶は、さまざまな分野で、それぞれが勝手に動き出す。中国は均衡を回復する時代になる。輸出と投資から国内消費を中心とした成長へ。製造業からサービスへ。貯蓄過剰から貯蓄に見合う国内支出へ。技術の輸入から自生的技術へ。まったく異なる道へ進む。

それは次第に、中国に依存している「取り残されたアメリカ人」の生活を苦しくし、侮辱されていると感じるだろう。最初は非難し、今は対立に向かっている。アメリカ財政は第2次世界大戦以来、最も債務の比率が高まっている。コロナウイルスの痛みも感じて、両国の指導者は互いを非難するゲームをやめ、信頼を回復するべきだ。

FP APRIL 27, 2020

The Future Is Asian—but Not Chinese

BY JAMES TRAUB

FT April 28, 2020

Why China’s smaller businesses are struggling to access credit

Henny Sender

PS Apr 29, 2020

COVID-19 Is Finishing Off the Sino-American Relationship

MINXIN PEI

YaleGlobal, Tuesday, May 5, 2020

Irresponsible Superpowers Must Cooperate

Amitav Acharya

アメリカも中国も、相手の行動を無責任で危険だとみなし、世界が求めるような「情報を知らせる」規範や「保護する」規範を示さなかった。

しかし、国際機関だけでCOVID-19のようなパンデミックに対処することはできない。脅威はグローバリゼーションと結びついている。それを完全に抑えることはできないからだ。パンデミックは、14世紀のもっと小規模なモンゴルのグローバリゼーションとともに起きた。おそらく中国から始まって、ヨーロッパ、インド、アフリカ、中東へ広がった。世界人口をおよそ1億人減らしただろう。

パンデミックの期限をある地域に限定することはできない。それは国家の内的な脆弱性によって拡大していく。公衆衛生と早期警戒システムに投資することが重要だ。

同時に、排他的で内側しか観ないような対策は、長期的には機能せず、経済的コストを増すばかりである。国境封鎖は一時的な措置でしかない。

主権や内政干渉という旧い思想に制約されずに、事実を究明し、国際監視を行うべきだ。中国のようにグローバル・ガバナンスを指導する国には変化が求められる。

国際機関を強化することも重要だ。アメリカなど、各国はWTOへの資金を止めるのではなく増やし、その権限を拡大するよう支援するべきだ。


 EUのコロナウイルス危機

FT April 24, 2020

EU efforts to ease economic crisis beset by domestic strains

Tony Barber

コロナウイルス危機の対策に関してEUの指導者たちは答を出さねばならない。安定化の資金を誰が出すか、どのくらいの額を出すか、どういう形で出すか、どれくらいの期間出すか? 彼らは集まったが、答えを欧州委員会に委ねた。

欧州委員会のライエンUrsula von der Leyen委員長は、しかし、財政移転を認めただけで、その規模や方法は、スペイン首相の提案(1.5兆ユーロの、融資ではなく、譲渡)とは遠いものだ。

各国の政治指導者が決めねばならない。しかし、個々の国で、また、ヨーロッパの南北で、政策の選好が異なり、各国内でも、連立政権内部や与野党間で対立がある。彼らすべてが選挙で有権者に支持を求めて闘うのであれば、EUレベルの政策にコンセンサスを形成するのはさらに難しくなる。

PS Apr 24, 2020

Europe’s Welcome Pandemic Response

SYLVAIN BROYER

VOX 25 April 2020

Corona and Financial Stability 4.0: Implementing a European Pandemic Equity Fund

Arnoud Boot, Elena Carletti, HansHelmut Kotz, Jan Pieter Krahnen, Loriana Pelizzon, Marti Subrahmanyam

FT April 26, 2020

How to think about the EU’s rescue fund

Wolfgang Münchau


 危機後の社会資本

FT April 24, 2020

Reweaving the social fabric after the crisis

Andy Haldane

経済成長にとって「社会資本」(第3の支柱)が重要であることは忘れられがちである。しかし、コロナウイルス危機の中で、医療などの社会サービスとボランティアの重要性が注目されている。

パンデミックが、資本主義の築いた資本=都市=市民たちの生活を破壊してしまう。資産の価格が下落し、成長を損なっている。経済活動を脅かし、物的資本が廃棄される。歴史的に、パンデミックは職と生活水準を損なった。今もそうである。

社会的な距離を取る対策は、社会資本を破壊する、と予想されていた。それはコミュニティーに広がるネットワークであり、社会を強化する。しかし、実際は、社会資本が強化される、とわかった。隣人の親切な行為、コミュニティー活動、チャリティー、慈善活動、支援のためのボランティア参加である。戦争のような危機でも、社会資本の増加が回復を助けた。

産業革命後の社会不安や都市問題でも、民間、政府、そして社会的部門が補い合って生活を守り、社会を回復した。

2次世界大戦中の1942年に出たベヴァリッジ報告もそうだ。福祉国家と国民医療サービスを提唱した。もしこれらが無かったら、戦後のイギリス人の暮らしはどうなっていたか、考えるのもむつかしい。

NYT April 24, 2020

Martin Luther King Jr. Predicted This Moment

By Gene B. Sperling

FT April 27, 2020

Precarity, not inequality is what ails the 99%

Albena Azmanova

「富裕層に課税せよ」という革新派の叫びが強まっている。しかし、それは政治的な敗者の考え方だ。選挙で勝てる見込みはない。その理由は、不平等ではなく、経済的な不安定さが問題であるからだ。不平等はその一面である。

多くの人々は富裕層を賞賛する。既存の社会主義体制では、平等がむしろ問題だ。

経済的不平等は統計によって示せるが、それは社会的な不正義なのか? その答えは、富裕が社会的特権であるとき、極端な富が、自分たちに奉仕する、略奪的な政治権力につながるとき、それは不正義になる。

それゆえ現実的な解決策は、富の再分配ではなく、対抗力を強化することだ。労働組合その他の社会運動、支持を広く得なければならない政党、金融的不正を告発する司法制度、国家権力に関する監視機構。

2に、富は安定性をもたらす源泉の一部でしかない。自動化、グローバリゼーション、公共サービスと社会保険の削減、それらは市民にとって巨大な経済的不安定性を強いている。それは若者、高齢者、男性、女性、熟練、未熟練、移民、その他の社会的弱者に、それぞれ異なる意味で負わされている。

パンデミックは、こうした不確かさprecarityの苦痛を増した。デンマーク、ドイツではコロナウイルスの死者が少なく、緊縮財政で病院などの医療インフラに投資を削減したUKとイタリアには死者が多い。アメリカは、利潤に支配された医療システムが犯す典型的な失敗を示している。

2008年の金融危機後にも、政治がラディカルに変化し、労働者階級の力を強化するという希望が示されたが、不安定さは保守化の本能を刺激し、さらに反動化することにもなった。有権者の右傾化は続いている。

われわれに必要なことは、公衆衛生、社会保険やインフラ、教育、その他の公共サービスをもたらす戦略的な科学、である、それを実現する政治運動だけが勝利できる。

NYT April 28, 2020

Another Way the 2020s Might Be Like the 1930s

By Jamelle Bouie


 危機後の世界

PS Apr 24, 2020

Protectionism Is No Cure for Pandemics

AMINA MOHAMED

PS Apr 24, 2020

The International Order After COVID-19

ROBERT MALLEY

FP APRIL 25, 2020

Don’t Bash Globalization—It Will Rescue Our Economies After the Pandemic

BY SALVATORE BABONES


 不平等を進めたのは

NYT April 23, 2020

Who Is Driving Inequality? You Are

By David Brooks


 COVID-19の起源

FT April 24, 2020

The case for an international probe of Covid-19’s origins

The Guardian, Fri 24 Apr 2020

Donald Trump's prescription for coronavirus: quite literally toxic

Marina Hyde

この国はコロナウイルスとどう戦うのか? トランプが最新のシンポジウムの後、記者会見した。全国放送されているテレビで、「ただちにウイルスをやっつける方法が分かった」とわめいた。「体に注射するのだ。消毒剤かな。確かめてみるのはいいだろう。」 ・・・そんなわけない!

トランプは、もはやアメリカのチェック・アンド・バランスが機能していないことを示している。しかし、トランプを称賛する一部のメディアでは、人種差別も女性蔑視も歓迎してきたが、さすがに消毒剤を注射する話には呆れて、反対することにしたようだ。

イギリスはどうか? ボリス・ジョンソンは闘病中で、内閣にいない。何週間も。このネズミの王様を欠いた政府は、内紛に揺れており、なんとかして自分たちを王様から解放するしかないだろう。

それは「科学」だろうか? しかし「科学」も一枚岩ではない。政府は何週間も前から、科学に従っている、と主張していた。そして科学者たちは、自分たちが政府の「人間の盾」に利用されることを恐れている。

FP APRIL 29, 2020

WHO Becomes Battleground as Trump Chooses Pandemic Confrontation Over Cooperation

BY COLUM LYNCH


 デフレか、インフレか

VOX 24 April 2020

Is there deflation or inflation in our future?

Olivier Blanchard

われわれはデフレーションになるのか、インフレーションになるのか、

石油価格は急落し、商品価格が下がっている。労働市場も需要がない。インフレは抑えられ、デフレになるだろう。

しかし、財政赤字や中央銀行のバランス・シートが巨額になる。それはインフレを、しかもかなり高いインフレを予想させる。

私は低インフレーションになると思う。しかし、わずかな可能性だが、高インフレーションも否定できない。その説明はこうだ。

標準的な理解では、インフレーションは労働市場の状態、インフレ期待、商品や食料価格に起きるショックを観た。これらはインフレが起きそうにないことを示している。失業は予想をはるかに超えて高い水準だ。

現金不足の家計や企業に、財政的な支援が行われる。それは利用可能な供給を超えて需要を増やすと考えるかもしれない。しかし、それは起きていない。ソーシャル・ディスタンスで買い物ができず、不安による貯蓄が増えているからだ。インフレ率は、ロックダウンが始まってから、どちらかと言えば、低下してきた。

ソーシャル・ディスタンスが終われば、需要が爆発的に増大し、インフレが起きると心配する者がいる。しかしそれは、インフレ期待を不安定化するほど、大きくも長くもないだろう。

しかし、私は高いインフレーションが起きる1つのシナリオを考えることがある。それは3つの要素からなるものだ。

1.債務のGDP比率が非常に大きくなる。2.経済活動をその潜在力に維持する「中立的利子率」が大幅に上昇する。3.財政的な事情が金融政策を支配する。

政府は、インフレ率を高めて債務を維持する負担を減らそうとするかもしれない。若干のインフレは、その意味で、望ましいだろう。しかし、過去の高インフレが示すように、インフレ期待が生じて、それを抑えることができなくなる。一層の高いインフレ、そして、ハイパーインフレーションで終わる。

これら3つの要素は、それぞれ、起きる可能性が非常に低い。3つがそろうことはほぼないと言える。しかし、完全に排除することは間違いだ。

FT April 26, 2020

The deflation threat from the virus will be long lasting

Gavyn Davies

COVID-19の危機は強いディスインフレ的なものであることが明白になった。価格が急速に下落している。レストラン。ホテル、航空業、住宅。さらにこの1週間は、原油価格がマイナスになった。

アメリカのインフレ率は2%の目標を大きく下回り、ユーロ圏と日本では記録的なマイナスになっている。先進国の経済でさえ、GDP20%30%の落ち込みを示すとしても驚くことではないだろう。供給不足はインフレにつながるかもしれない。ロックダウンした部門で政府が賃金を補償するとますますそうなる。

現状と戦時経済との類推が働くことは極端なイメージではない。イギリス政府はインフレを心配していた。1940年、J.M.ケインズは有名なパンフレットを書いた。『戦費調達論』である。1930年代のデフレに対して、財政赤字の規模を気にせず、政府支出を拡大して対抗することを主張した。しかし、戦争は彼の意見を変え、適切なマクロ経済管理を主張することになった。

数百万人が徴兵され、消費財の供給が削減された。他方、巨大な軍事支出が総需要を拡大した。それは必然的に、超過需要と「不足」の経済である。ケインズは、政府がインフレを抑えるために、迅速に、所得に増税し(高所得者の限界税率は97.5%)、国民が強制的に貯蓄することを求めた。主要財の割当制とともに、これが戦時期間のインフレ抑制に役立った。

R.スキデルスキーは、同様の力が働いている、という。ロックダウンは消費財生産に労働者が集まることを制限し、賃金補償は総需要を維持するために行われる。政府は、消費財部門から医療や公共部門に労働者を移動させている。

しかし、その規模は全く異なる。

NYT April 27, 2020

Peacocks and Vultures Are Circling the Deficit

By Paul Krugman

私は、長年、「緊縮の神話」というコラムを書いてきたが、赤字を警告する者のせいで金融危機後の不況は長引いたのだ。残念ながら、同じ赤字警戒論が復活している。

目を見張るような数字が並ぶのは確かだ。この先2年間の財政赤字予想が出た。それはショッキングであるが、驚くことではない。

失業者は急増しており、歳入は激減している。失業保険などのセーフティーネットが支出される。議会は追加的な支援策を承認するだろう。

しかし、政府は低金利で借り入れることができる。実質はマイナス金利である。われわれは債務を支払うこともないだろう。

重要なことは、恐れるべきは財政赤字を恐れることだけである、ということだ。

FT April 28, 2020

The world has more to fear from deflation than hyperinflation

PS Apr 28, 2020

The Coming Greater Depression of the 2020s

NOURIEL ROUBINI

2007-09年の金融危機の後もそうだった。金融危機が示した構造的問題を解決するより、問題を先送りにして、新しい危機を不可避にするような重大なリスクを創り出した。今もそうだ。

1に、財政赤字が急増する。債務とデフォルトが増えるだろう。さらに、多くの家計や企業では所得が失われている。大量の破産、倒産が起き、回復はさらに弱いだろう。

2に、人口問題の爆弾が残されたままだ。資源をますます、奢侈財などではなく、医療や公共財に支出しなければならない。

3に、デフレのリスクが高まる。大幅に過剰になる財や価格の暴落する商品がある。債務がデフレによって重荷になり、デフレを強める。

4に、通貨が価値を失う。金融政策はますます正統的ではなくなる。財政赤字を貨幣化する。時間を経ても、グローバリゼーションの逆転、保護主義、スタグフレーションなど、供給側のショックが続く。

5に、デジタル経済型の混乱が拡大する。多くの人々の労働条件や収入が悪い。所得や資産の格差が拡大する。製造業が自国に戻っても、それは自動化を進めることになる。ポピュリズム、ナショナリズム、排外主義を強める。

6に、グローバリゼーションが逆転する。バルカン化、分断が進む。米中のデカップリングが加速する。自国の企業や労働者を保護する。

7に、民主主義が弱まり、民主化は逆転する。経済悪化、大量失業、不平等によって、ポピュリストの指導者たちは支持を広げる。危機の犯人を外国に求める。

8に、米中の対立はさらに醜悪になる。習近平は、ますます、アメリカが中国の台頭を阻むつもりだ、と確信する。

9に、トランプ政権は、中国に対してだけでなく、ロシア、イラン、北朝鮮とも冷戦を展開する。それは隠蔽されたサイバー攻撃や、従来型の軍事衝突にもつながる。

最後だが、第10に、環境破壊を軽視してはならない。それは金融危機よりも重大な経済崩壊をもたらす。パンデミックは、さまざまな環境破壊の別の側面である。

グローバル・エコノミー全体が完全な嵐に突入し、絶望的な時代になる。その後の世界に理想的な社会モデルを構想することは可能だが、まず、この大不況を生き残ることだ。

PS Apr 29, 2020

Reading the COVID-19 Market

JIM O'NEILL

FP APRIL 29, 2020

Terminal Deflation Is Coming

BY TREVOR JACKSON

2008年の金融危機の後もそうだった。中央銀行は金融システムに奉仕してインフレを懸念するあまり、危機後の失業や不平等、不安定性が増大することを無視した。コロナウイルス危機においても、それを繰り返し、デフレーションをもたらす恐れが強い。

FT April 30, 2020

Satya Nadella: crisis requires co-ordinated digital response

Satya Nadella


 アメリカのパンデミック対策

NYT April 24, 2020

Failing to Help Those Who Need It Most

By The Editorial Board

FP APRIL 24, 2020

A Tale of Two Rescue Plans

BY MICHAEL HIRSH, KEITH JOHNSON

多くの零細企業を代表する意見であるが、数週間も申請手続きにふりまわされてから、フロリダの会計士Robert Shindlerは思った。政府は2兆ドルで、シャットダウンの被害を緩和する資金を用意し、迷路を作った。あいまいなルール、変更、例外、大銀行が一般に示す非協力で、だれも資金を受け取れない。

金曜日、トランプ大統領が特に零細企業のために用意した4840億ドルは、最初の30秒で消滅するだろう。そう彼は言った。

これは破滅的なプログラムだ、とJoseph Stiglitzは言った。資金は、それをもっとも必要としている人々に届かない。最も弱い人々には資金がない。それは企業が雇用者を維持するように設計されている。しかし、だれもトランプ政権が債務免除するとは信じていない。

雇用を維持して、企業を支援することが好ましい。しかし、明らかにアメリカはそのようなシステムで動いていない。Dani Rodrike-mailの質問に回答した。

アメリカの自由放任モデルは圧力にさらされている。今は、もっと国家介入型のモデルに優位があるからだ。アメリカ人は「弾力的」労働市場、自由市場を自慢してきたが、今起きている危機では、レーガン主義の信条は放棄される。もはや、政府を解決ではなく問題の一部だ、と言う者はいない。

アメリカは、先進諸国の中でも、パンデミックに対する準備がなかった。2700万人も医療保険を持たなかった。健康状態の悪い、不平等な、所得の不安定なアメリカに、COVID-19のパンデミックは最良の拠点を見出したのだ。

NYT April 27, 2020

Mitch McConnell Has No Idea What Bankruptcy Actually Means

By Jodie Adams Kirshner

FT April 29, 2020

Warren, Ocasio-Cortez propose M&A ban during crisis

James Fontanella-Khan in New York and Lauren Fedor in Washington

ウォール街に対する厳しい2Elizabeth Warren and Alexandria Ocasio-Cortezは、大企業がパンデミックを利用して他の小企業を吸収することを禁止するよう提案した。

しかし、共和党が支配する上院で承認されることはないだろう。

FT April 28, 2020

Jon Gray: Don’t handcuff private capital in this crisis

Jon Graypresident and chief operating officer of Blackstone

急速な市場の消滅と不確実性に対して、優秀な企業でも必要な資金を得ることができない。プライベート・キャピタルはこうした問題についても投資できる。もしこの資本を拒むなら、より多くの企業が倒産するだろう。

FT April 29, 2020

Coronavirus crisis lays bare the risks of financial leverage, again

Martin Wolf

危機は脆弱さをあばく。コロナウイルスがあばいたのは、何よりも、金融システムの脆弱性である。以前と同様、レバレッジを増やすことに頼って私的な利潤を増やし、公的な救済を導いた。その救済規模は空前のものだ。前回の危機は、それが銀行だった。今度は、資本市場である。

わずかな利回りの差を、レバレッジを使うことで利潤にする。しかし、その戦略は浮動性の増大、市場における隆盛の減少に、脆弱である。

FT April 29, 2020

Corporate bailouts should come with strings

FT April 29, 2020

Pandemic is turbocharging tech’s appeal for investors

Ulrike Hoffmann-Burchardi


 パンデミックの独裁者

NYT April 24, 2020

Despotism and Democracy in the Age of the Virus

By Roger Cohen

アメリカ後の世界で最初の危機がひどい状態に陥り、さらに悪化している。パンデミックに対しては、地球規模の対策が必要だ。しかし、ホワイトハウスには怪しい人々の煙が充満し、その世界を称えている。

「アメリカの指導力のかけらもない。」と、スウェーデンの元首相Carl Bildtは私に語った。「そのことが根本的に新しいことだ。」

世界はアメリカという参照基準を失った。コロナウイルス危機におけるアメリカ消滅に最大の貢献をした人物は、ポンペオ国務長官だ。

中国政府の役人たちはマスクや人工呼吸器をヨーロッパに送ることに忙しい。しかし、すべての始まりは、武漢における生物学的なチェルノブイリで始まった。独裁体制の恐怖による数週間の隠蔽は否定できない。

独裁と民主主義との競争は21世紀も続く。1933年、F.D.ルーズベルトはニューディールを開始し、同じ年に、ヒトラーかドイツで権力を握った。

11月のアメリカ大統領選挙は、権力を失うことなど考えもしないドナルド・トランプが、何をするかわからない。

FT April 28, 2020

Coronavirus apps: the risk of slipping into a surveillance state

Patrick McGee and Hannah Murphy in San Francisco and Tim Bradshaw in London

FT April 28, 2020

China has valuable lessons for the world in how to fight Covid-19

Liu Xiaoming

FT April 30, 2020

Xi Jinping and Vladimir Putin are the big losers from this pandemic

Philip Stephens


 アバ・キャリ

FT April 25, 2020

Abba Kyari, chief of staff to the president of Nigeria, 1952-2020

William Wallis

アバ・キャリAbba Kyariは、コロナウイルスの犠牲になった。今のところ、アフリカの犠牲者中で、最高の政治的職位にある人物である。67歳。ナイジェリアで最も影響力のある地位、大統領首席補佐官に就いていた。

アバ・キャリは40年も前にムハンマド・ブハリの友人となり、2015年、ブハリが予想に反して大統領選挙に勝利した後、彼をスタッフの指導者にした。熱烈な忠誠心で激務をこなし、細部にまで注意して、しばしば政敵たちを不安にした。

彼が残した真空状態は、ナイジェリアが輸出収入のほとんどを頼っている原油の価格急落で不確実な時期に、コロナウイルスによる彼の死を世界的な事件にした。

キャリは、ナイジェリア北東部、Borno州のBamaに生まれた。イスラム過激派の反政府活動が広まっている地域だ。イスラム教徒だが、クリスチャンのミッション・スクールに通い、1980年代、UKのウォーリックとケンブリッジで学んだ。ジャーナリストとして経歴を始め、ナイジェリアの指導的銀行の幹部になり、Unilever ExxonMobilの子会社で経営陣に参加した。

英語圏の主要な新聞・雑誌、テレビに登場し、Amartya SenArthur Lewisのような左派的な思想家に影響を受けた。

キャリは、ナイジェリア国家がボロボロで、行政能力がないことを意識していた。しかしまた、ビジネスの経験から、民間企業がしばしば政府と癒着していることを心配した。法の支配を欠く中で、ナイジェリアの諸問題に自由な市場が解決策になるとは考えなかった。その任期中、問題の多い為替レート制度を廃止するように求めるIMFの勧告に反対した。

キャリはブハリの発言を代弁した。ブハリが当選したとき、収賄を根絶し、紛争を終わらせ、ナイジェリア経済を石油産業から多様化する、と公約した。その公約は直ちに障害に直面した。不況、制度からの抵抗、ブハリの健康悪化。それでもキャリはブハリの守護者として、陰謀と計略から大統領を護った。

歴史は、同時代人たちより、キャリに優しいだろう。

次第にキャリはいくつかの問題に集中するようになった。農業改革、電力、輸送インフラ。そして、長年の課題であった石油・天然ガス部門に着手するところであった。

医師の反対にもかかわらず、多くの官僚たちがキャリの葬儀に参加した。

FP APRIL 27, 2020

Mohammed bin Salman’s Bloody Dream City of Neom

BY SARAH LEAH WHITSON, ABDULLAH ALAOUDH


 リブラ2.0

VOX 25 April 2020

Libra still needs more baking

Barry Eichengreen, Ganesh Viswanath-Natraj

リブラの発行について、the Libra Association が指摘された問題に応えるためWhite Paper v2.0を出した。

「だれでも、法執行者を含めて、すべての取引(操作)を監査できる」と述べている。それは取引の主体やその目的を含むのか、明確ではない。プライバシー問題、マネーロンダリングやテロ組織の資金を明確に区別できるのか。

現金と短期証券から成るthe Libra Reserveは、安定通貨の保証であると述べている。それは、十分に資本を備えた補完銀行が、地理的に分散して管理する。Designated Dealers (DDs)だけが、Libra AssociationLibra利用者との間で取引を仲介する。DDsは十分な規制と資本を備えた(金融)機関だけである、という。

以前の指針では、US居住者が、ドルではなく、デジタルであれ非デジタルであれ、バスケット通貨の単位で取引する理由がわからなかった。今回の指針では、居住者はUSドルに結びつけた安定通貨で取引する。これは連銀が管理するデジタル・ドル通貨を、その末端の売買だけLibra Associationが扱う、という話だ。

Libraのデリバティブ取引のエコシステムがどうなるか、先物契約は不明確であり、最後の貸し手も存在しない。

VOX 25 April 2020

Central bank digital currency: Central banking for all

Jesús Fernández-Villaverde, Daniel Sanches, Linda Schilling, Harald Uhlig

中央銀行が発行するデジタル通貨a central bank digital currency (CBDC)は、発展途上諸国の利用者に大きな利益をもたらすだろう。同時に、中央銀行が持つようになるパワーを、正しく使用するように監視しなければならない。

PS Apr 28, 2020

How to Use the SDR

JIM O'NEILL, DOMENICO LOMBARDI

COVID-19の世界GDPに与える影響を、IMF9兆ドル以上に及ぶと推定した。それは、日本とドイツのGDPを合わせた規模に等しい。政府と中央銀行は、次々に、経済的な悪化を緩和するための対策を示している。

次第に、論争は新しい財源に向けて移ってきた。国際流動性を供給するIMFSDRs発行を主張する声がある。これを基金として申請諸国に資金供給するのが良いだろう。

また、ECBや米中も、配分されたSDRsを使って、パンデミック対策の支援を制度化することができるだろう。IMF加盟諸国の85%の支持を必要とするが、拒否権を持つアメリカにとっても、税負担をもたらさずに利益となる。

FT April 29, 2020

Gary Cohn: Coronavirus is speeding up the disappearance of cash

Gary Cohn

コロナウイルス危機で、人びとは貨幣や小切手を使用しなくなるだろう。デジタル通貨への移行が一気に完成する。今も、世界で17億人は銀行口座を持っていない。犯罪行為にかかわる取引を監視できる。

スウェーデンの中央銀行はデジタル・ウォレットの実験を開始した。


 ボリス・ジョンソン首相

The Guardian, Sun 26 Apr 2020

Will Boris Johnson's brush with death prompt him to talk more honestly?

Andrew Rawnsley

The Guardian, Tue 28 Apr 2020

Why Boris Johnson isn't getting the blame for coronavirus

Gaby Hinsliff

21000人以上が病院で死んだ。数百万人が失業する。コロナウイルスは、介護施設を逃げ場のない絶望に追いやり、労働者たちもほとんど何の保護もないまま命を危険にさらしている。

しかし、ボリス・ジョンソン首相は避難から免れている。なぜか?

左派はいつもジョンソンが有権者と持つ共感を軽視してきた。多くのイギリス人は、今もジョンソンを好むか、非難する前に様子を見ている。ジョンソン自身が感染して死に瀕したことは、彼の考え方を、国家を無視したリバタリアンから、慎重な穏健派に変えた、という印象を持っている。

人びとは、ロックダウンを始めたときの絶望状態が過ぎて、むしろ小さな幸せを感じるようにしている。多くの人は状況に合わせて暮らすものだから。運命に逆らって憤慨する者は少ない。

これほど多くの人が、ジョンソンがコロナとの闘いに成功することを願っている。


 高等教育バブル

NYT April 26, 2020

College Campuses Must Reopen in the Fall. Here’s How We Do It.

By Christina Paxson

FT April 27, 2020

Coronavirus bursts the US college education bubble

Rana Foroohar

どこでもバブルがはじけている。アメリカの最も貴重な輸出財、高等教育もその例外ではない。大学は座礁した巨大クルーズ船の様に、なんでも食べられるビュッフェや多くの種類のビールを出すが、ソーシャル・ディスタンスは取れない。

多くの学校がオンライン教育に移行するが、その財源が十分にない。3割が赤字に苦しんでいる。アメリカの大学は世界水準にあるが、2兆ドルの危険な学生ローンを抱えている。高騰する授業料、無価値の卒業資格、大学と政府が行った無謀な投資が、成長と社会的移動性の喪失した将来において、強い逆風にさらされる。

アメリカ高等教育に、大いに必要であったデフレーションが起きるなら、それはコロナウイルス危機のもたらす正しい修正だ。


 債務処理の政治対立

The Guardian, Mon 27 Apr 2020

Should we be scared of the coronavirus debt mountain?

Adam Tooze

パンデミックがいつ終わるのか、われわれにはわからない。世界中で、GDPが急減している。同時に、危機によって債務が急増する。

危機が過ぎると、われわれは決めなければならない。債務をどうやって支払うのか? あるいは、そもそも支払うのかどうか? その問題は政治の表情を決め、将来のインフラや公共サービスを決める。それを解決しなければ、コロナ債務は財政緊縮のキャンペーンに襲われる。

債務の政治学は、家族・家計における無駄遣いにたとえられる。道義的な論争は、国家の破産を求める。特に、その国が、外国の債権者に、その外国通貨建(ほとんどはドル)で債務を負っている場合である。多くの貧しい諸国が豊かな諸国にこうした債務を負っている。

先進経済では、自国の通貨で、自国民に債務を負っている。家計のたとえは当てはまらない。われわれが政府の債務を保有している。しかし、奴隷と主人の関係が同じ人物なのか? それは幻想である。

歴史的には、政府債券を保有するのは中産階級と上層の市民、不労所得者層であった。政府は税金を集めて返済するから、低所得層が大きく負担した。現代でも、富裕層が政府の債券を保有している。しかし、同時に、年金基金や保険会社を通じて国民が広く保有している。それは有益な金融資産である。

タックス・ベースも拡大している。しかし、だれが税金を支払うのか? 富裕税や、企業が利用するタックスヘイブンの閉鎖を求める議論になるだろう。付加価値税の引き上げや、政府支出の削減が論争になる。学校、年金、国防費が削減される。

かつて第1次世界大戦後にJ.シュンペーターが述べたように、予算は、あらゆるイデオロギーを排除したあと残る、国の骨格である。

緊縮策は、返済に必要な成長そのものを損なう。進歩派の政治は目標ばかり主張する。しかし、債務を恐れる緊縮派と闘うべきだ。

中央銀行は、危機における債務の増大と、その後の返済を、安定的に管理するメカニズムであり、インフレと不況を監視する機関である。


 韓国

PS Apr 27, 2020

How South Korea Stopped COVID-19 Early

MYOUNG-HEE KIM


 パンデミックと自然

NYT April 27, 2020

Now We Know How Quickly Our Trashed Planet Can Heal

By Margaret Renkl

「サムは、クラスで白昼夢をいつも楽しむ子供だった。」

今、パンデミックは私たちみんなを「窓を眺める者」にした。われわれは予期せぬ形で自然に驚異を示す空間を開けたのだ。世界中の都市で、鳥たちのさえずりが大きくなった。彼らはもはや交通の騒音と競争していない。

サンフランシスコやシカゴの通りでコヨーテが、ウェールズではカシミール羊が、フィラデルフィアではビーバーが、サンマテオにライオンが、バルセロナに野生の大蛇が、ナッシュビルにはアカギツネが現れた。

コロナウイルスが気候変動を逆転させることはないだろう。しかし、われわれは自分の眼で、われわれがゴミに変えた地球を、自然界が再び取り戻すのを待っているのだ、ということを観る。われわれがその機会を与えるなら、どれほどのエネルギーと迅速さで、自然が戻ってくるかを観る。モーターボートがいないベニスの運河は澄み、自動車のいないニューデリーの空は晴れ渡る。

パンデミックは、すべてが失われたわけではないことを教えている。

われわれは自然との関係を考え直す文化的な影響を利用できる。地球を真に共有するにはどうすればよいか考え、われわれの生活を変えると決心する。

孤立した状態から抜け出すときに、われわれの最初の課題は「記憶する」ことだ。自然がよみがえる予感を記憶にとどめる。そして、実現するために可能なすべての努力をする。


 もし金正恩が死んだら

FP APRIL 27, 2020

3 Scenarios for Kim Jong Un’s Mysterious Absence

BY DUYEON KIM, LEIF-ERIC EASLEY

FP APRIL 27, 2020

The Coronavirus Has Pushed North Korea’s Economy to the Edge

BY THOMAS BYRNE

FP APRIL 27, 2020

The Future of Korean Politics Might Be This Defector From Pyongyang

BY MELISSA CHAN

FP APRIL 27, 2020

5 Things to Know If Kim Jong Un Dies

BY ORIANA SKYLAR MASTRO

FP APRIL 28, 2020

With Kim Jong Un Mysteriously Gone, China Is Likely to Make a Power Move

BY MICHAEL AUSLIN

FP APRIL 29, 2020

What Comes Next for North Korea

BY DOUG BANDOW


 ロックダウン解除の混乱

FT April 28, 2020

The end of UK coronavirus lockdown will threaten a new health divide

Robert Shrimsley

PS Apr 28, 2020

The COVID-19 Balancing Act

MICHAEL J. BOSKIN

NYT April 28, 2020

Is Sweden Doing It Right?

By Thomas L. Friedman

コロナウイルスを「見えない敵」や「戦争」と大統領は言う。しかし、そのたとえは正しくない。

われわれは自然に勝つことができない。気候変動でも、コロナウイルスでも、その目標は打ち勝つことではなく、適応することだ。

われわれはコロナウイルスに適応する。スウェーデンが試みているように、意図して、あるいは、混乱した状態を受け入れて、適応する。あるいは、「ロックダウンは地獄だ」とか叫んで、50の異なる方法で適応する。

スウェーデンの「集団免疫」を獲得する戦略を考える必要がある。65歳以上の高齢者と深刻な既往症のある者は隔離し、他の国民には自由に行動させて感染する中で免疫を獲得することを許す。人口の60%が免疫を獲得したら、感染拡大は起きない。

スウェーデンの戦略のメリットは、ロックダウンによる経済への深刻なダメージを避けられることだ。しかし、高いコストも生じている。北欧の近隣諸国(デンマーク、ノルウェー)に比べて、死亡率は5倍、もしくは11倍も高い。異端免疫を核と期して、それで感染が永久に起きないとは証明されていない。

歴史的には、集団免疫による適応しかなかった。アメリカは混乱したままだ。

PS Apr 29, 2020

American Carnage

J. BRADFORD DELONG

アメリカのコロナウイルスによる死亡者数は、75000人に近いだろう。

ワクチンがないとき、疫学によれば、集団免疫を達成するまでに、アメリカ人の70%が感染するだろう。もし死亡率が1%なら、最終的な死亡者数は5万人から75000人ではなく、230万人に達する。しかも、それはアメリカの医療体制が重圧に耐えた場合である。それが崩壊すれば、死亡率は2%3%5%かもしれない。3%なら、700万人が死亡する。

感染拡大を抑えるには、ロックダウン、大量のウイルス感染検査、抗体検査が必要だ。残念だが、トランプ大統領やジュリアーニはそのような体制を取っていない。経済活動の再開を進める州もある。

FT April 30, 2020

Five principles for a gradual, successful reopening of the UK economy

Carolyn Fairbairndirector-general of the CBI, the UK business body

1)健康と富の間に対立はない。2)政府、医療専門家、企業、労働組合、市民社会が団結する。3)キャパシティーを高める。4)枠組みに従った弾力性。5)再開は慎重に。

FT April 30, 2020

Lockdown contraction is not following usual economic script

Chris Giles

PS Apr 30, 2020

From Lockdown to Lock-In

SIMON JOHNSON, PETER BOONE


 南部戦略と家産制国家

PS Apr 28, 2020

Trump’s Cruelest Month

ELIZABETH DREW

PS Apr 28, 2020

Trump’s War on Public Health

ANNE O. KRUEGER

PS Apr 28, 2020

Welcome to the Post-American World

CARL BILDT

FP APRIL 28, 2020

Forget Washington and Beijing. These Days Global Leadership Comes From Berlin.

BY ELISABETH BRAW

FT April 29, 2020

The American Confederacy is rising again under Donald Trump

Lloyd Green

パンデミックに直面して、ドナルド・トランプは知事たちにウイルス対策をゆだねた。ホワイトハウスはリアリティー・ショーの演出に徹し、トランプ支持の知事たちはそのシンボルを「アメリカ連合国the Confederate States of America」に求めている。「州の解放」という主張に、南軍の副大統領であったAlexander Stephensは、墓石の下で笑っているだろう。

これは共和党の新しい「南部戦略」である。

NYT April 29, 2020

States Are in Crisis. Why Won’t Trump Help?

By Lizabeth Cohen

FT April 30, 2020

The golden age of Jared Kushner

Edward Luce

ジョージ・W・ブッシュは、戦争が悪化する直前、任務完了の宣言を行った。トランプの娘婿であるクシュナーJared Kushnerは、コロナウイルスで同じギャンブルをした。

Fox Newsで、クシュナーはアメリカ経済の回復を約束し、トランプ政権のコロナウイルス対策を「大成功」と語った。

しかし、アメリカの失敗をまねる国はどこにもない。アメリカはすでに6万人が死亡し、世界全体の死亡者数の4分の1、感染者数の3分の1を占める。アメリカ人口は世界の5%でしかない。42か国がアメリカよりも人口当たり多くの検査を行っている。国によっては何倍も多い。

外国の指導者たちは、アメリカ大統領に話すために、彼の家族を介して話す必要がある。クシュナーは、大統領だけを聴衆にして話している。大統領は諸州(Texas, Florida, Tennessee and South Carolina)に経済を再開させたがっているが、それはリスクの高い戦略だ。

東海岸で爆発した感染拡大が、南部に向かう兆候が見られる。検査や追跡の体制もないまま封鎖を解くのは、新しい感染爆発につながるだろう。

1月初め、中国から感染が拡大し始めたとき、トランプ政権は分裂していた。中国に対する強硬派のナヴァロらのグループは厳格な規制を主張した。1月末に、彼らはトランプを説得して中国からの航空便を禁止した

クシュナーら、ムニューシン財務長官を含むグループは、コロナウイルス危機が誇張であり、過剰な反応は再選を脅かす、と主張した。クシュナーは概ね優位な位置にあり、トランプはその後の措置を何も取らなかった。

FTはコロナウイルス危機を無視しているブラジル、ベラルーシなどの諸国を「ダチョウ連合」とよんだ。クシュナーはホワイトハウス内のダチョウ派首領である。パンデミックの経験もないのに、政権内の「影のコロナウイルス対策班」を率いた。そして未完成の中東和平案と同様、彼のビジネス仲間やマッキンゼー・コンサルタントを招き入れた。

世界はこれまでにない異なるアメリカに直面している。外国指導者や州知事たちが、そして中国も、クシュナーを大統領の関心につながる者とみなす。サブサハラ・アフリカでしか見られないような意思伝達方法だ。COVID-19は、アメリカが家産制国家・族長支配に戻ったことを示した。

族長家族の言葉は、科学よりも重い。アメリカは、トランプ家による、トランプ家のための、トランプ政権とともに生きる。

FP APRIL 30, 2020

Here We Go Again: Russia Gears Up to Interfere in 2020 Election With Coronavirus Disinformation

BY SPENCER P. BOYER


 インドとアフリカ

FT April 30, 2020

India: the millions of working poor exposed by pandemic

Amy Kazmin and Jyotsna Singh in New Delhi

FT April 30, 2020

Africa’s Covid-19 response is a glimpse of how things could be different

David Pilling


 グローバリゼーションの始まり

YaleGlobal, Thursday, April 30, 2020

When Globalization Really Began

Valerie Hansen

******************************** 

The Economist April 18th 2020

Covid-19 lockdown: Fumbling for the exit strategy

Chaguan: China’s self-censoring nationalists

Coronavirus and inequality: Unequal protection

Lexington: The paradox of the pandemic

Finance and geopolitics: Bucking the trend

Free exchange: The cost of living

(コメント) ロックダウンの出口戦略は描けない。中国のナショナリストは西側を信用しない。アメリカが失敗したのは、ウイルス対策より、貧困問題だ。コロナウイルス危機で金融市場がドルに殺到するとき、人民元の市場は安定したままだった。危機の後、世界にはインフレの可能性が戻ってくるだろう。

いずれも、そうだな、と思いました。

そして、トランプです。アメリカはコロナウイルスで世界最大の感染者と死者を出しているのに、トランプの人気は衰えない。コロナとの闘いでも、トランプは社会と政治の分断状態を決して緩和したりしないからだ。しかし、それだけではない。

感染爆発したニューヨークのように、都市部の貧困問題、非合法移民が、感染しても発病しても、医療サービスを受けられなかった。「絶望死」を爆発させたようです。トランプはこれを利用する。

******************************

IPEの想像力 5/4/20

Foreign Policyが都市文明の将来を問いかけた。パンデミックが都市の密集した居住形態や公共輸送システムから広がった。人びとが都市に見出した恐怖は、都市の魅力や経済機会を超えるものになった。

それでもワクチンが開発され、ウイルスに対する免疫を獲得すれば、再びパンデミックが起きることを恐れるより、都市中心の金融グローバリゼーションが復活するのか?

パンデミックを契機に、英米が主導した金融ビジネスがあまりにも多くのコミュニティーや弱者の地位を破壊したことは記憶され、長い論争と社会モデルの転機を導くのではないか?

それは、どのような転換になるだろうか。若者たちや、社会のさまざまな資源は、どのような分野に振り向けられるのか。たとえば、デジタル金融資本主義ではなく、環境・福祉国家へ。医療や介護を中心とした社会が再生の中心になる。

生産活動は、パンデミック後、生産や配送部門にハイテクが導入され、無人化が加速する。産業や農場の雇用が積極的に再編され、内外の移民の流れが、免疫獲得の重要なシステムになる。

それは、社会秩序、政治経済モデルにも転換を求めるだろう。ふさわしい報酬や尊敬・社会的地位の秩序を書き直すべきだ。技術革新と富の関係が見直されるのではないか。株式市場やデジタル大企業の占拠している社会的資源や富は、過去のものになる。エッセンシャル・ワーカーズこそ、時代が誇る人々だ。

環境破壊や気候変動に対する姿勢を変える必要が、パンデミックの記憶と大火災やハリケーンの猛威に重ねて、認識と社会制度の変更におよぶかもしれない。社会的な弱者や世界の貧困地帯にも、資源の独裁や犯罪者の支配ではなく、「包摂」を重視した政治経済モデルが求められる。

そのためにも、人びとはよく考えることで政治を変える。何が正当な権力なのか? 誰を政治指導者にするべきか?

パンデミックと戦争を組み合わせた国際秩序の再編圧力は何に向かうのか? 核兵器はもちろん、生物化学兵器を使用しない。使用させない。

グローバリゼーションやインターネットの市民的基準を確立する。ウイルス監視・予防原則。情報監視社会、デジタル・プラットフォーマーを民主的な社会の側が取り込めるように。

それを指導するのは、現在のアメリカでも中国でもない。新しい、多様な、諸大陸に分散した、自律型政治経済モデルの平和共存が目標になる。そして、だれもが好ましいと信じる文明圏を移動できる。

****

日本政府のパンデミック対策は、結果的に、非常に成功したのかもしれない。感染者の広がりは正確に把握しないまま、法的強制や罰金も科さない形で自粛を要請し、それは効果的に感染爆発を抑え込んだ。そのようにグラフは見える。

私は、政府とその専門家会議を「攻撃」したことが間違っていたかもしれない、と反省しています。しかし、同時に、本当のメカニズムや決定の理由はわからない。政府の姿勢には今も不満と不安を持っています。

議論を尽くしたのか? さまざまなアイデアを吸収しているか? 意思決定の過程をオープンにして、時間とともに検証し、見直しを続ける用意があるか?

イギリスやスウェーデンの集団免疫・自然感染は、日本と同様に、注目されます。

私は今も、津波の経験を利用して、政府が建設した(今も建設中の)堤防を思い出します。12.5メートル?の高さの堤防で、永久に海と切り離された生活が、幸せだろうか? 私は堤防に反対でした。同様に、ロイターや朝日新聞の記事があります。

「ブログ:震災7年、「巨大防潮堤」に隔てられた生活」

https://jp.reuters.com/article/wider-image-jp-sea-walls-idJPKCN1GL182

朝日新聞 Globe 半年議論、防潮堤をやめた 当事者が考える「復興とは」

https://globe.asahi.com/article/11734248

******************************