IPEの果樹園2020

今週のReview

1/6-11

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簡易版

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 2020年の予想・抱負

FP DECEMBER 26, 2019

10 Conflicts to Watch in 2020

BY ROBERT MALLEY

FT December 27, 2019

Forecasting the world in 2020

2019年、FTの予測は間違った。Brexitは停止せず、欧州議会選挙でポピュリストは予想外に少しの増加であった。

2020年の予測は、ボリス・ジョンソンはEUとの通商条約に合意し、労働党は敗北から再生できず、メルケルは大連立を失い、サルヴィーニはイタリア首相となるが、ドナルド・トランプは再選されない。ヒラリー・クリントンはトランプより300万票も多かったが敗北した。

アメリカの不況は来ないが、インドは世界最速の成長国に戻れない。イランとの戦争は起きず、南アフリカは破綻国家になり、ラテンアメリカの抗議デモは続く。フランスのマクロンはロシアとの和解を実現できず、ハイテク大企業は規制されない。

NYT DEC. 27, 2019

Economic forecasters got the 2010s wrong. What will the next decade bring?

By Ruchir Sharma

世紀の転換期には、アメリカの衰退が予想されていた。しかし、それは間違いだった。経済成長も、ドルも、株式市場も、アメリカが世界で最も優れている。

次の10年はそうではないだろう。その他の世界、新興諸国に焦点が移る。

PS Dec 27, 2019

Loser Teens

HAROLD JAMES

2010-2020年は、1810年代、1910年代と似て、秩序の崩壊と不信の時代であった。まだ名前はない。

人類文明は10年の意味を求め、名前を付ける。「60年代」は、ただちに、楽観論、若者の反乱、グローバリゼーションの始まり、「1つの世界」という約束。

60年代から半世紀たつと、陰気な時代になる。1810年代も、1910年代も、希望が砕かれ、幻想の消えた時代だった。

世界を変えるビジョンが示された。フランスのナポレオン、ロシアの皇帝アレクサンドル、アメリカのウィルソン大統領。しかし、それは国家的プロジェクトの現実と衝突し、社会の敵意、経済ショックに終わる。戦後のデフレも加わる。

ナポレオン、アレクサンドル、ウィルソンは、それぞれ、合理的な法によって統治され、平和になった世界を構想していた。しかし急速に、嘲笑と軽蔑の対象になった。

2010年代もまた大構想の約束と、希望を与える英雄的な政治家によって始まった。200964日、アメリカのバラク・オバマ大統領は、すばらしい雄弁を多く示した。アメリカとイスラムを、人類の寛容さと尊厳でつなぐ、というカイロ演説もそうだ。

そのような議論は何も生み出さなかった。オバマは希望の外観をうまく維持したけれど、それが実現することはなかった。アラブの春は、弾圧と内戦、悲惨と死を通じて、痛ましい幻滅に終わった。

2010年代の、しつこく続くディスインフレーションは、ナポレオン戦争や第1次世界大戦後のデフレーションと違うものだった。戦時経済から財政の安定化を目指すことではなく、グローバリゼーションと技術革新が原因だった。しかし、人びとの視点では、政策の失敗、特に金融危機後は間違った経済管理とみなされた。

歴史的に、インフレーションは約束や希望の実現を、ディスインフレーションやデフレーションは物価の下落と夢の挫折を予感させる。

再選されたオバマは、冷笑ではなく希望を訴えたが、それも間違いだった。冷笑主義は、過剰な約束と過小な成果の時代に対する、人びとの反応だった。そして、「ポスト真実」の政治に向かう条件を創った。ドナルド・トランプ大統領は、就任以来、15000回以上も嘘をついた。

次の希望を与える2060年代を、ほとんどの者は観ることができない。

FT December 29, 2019

The algorithms’ vision for 2020

Gavyn Davies

FT December 30, 2019

A productive economic bubble is my wish for 2020

Rana Foroohar

2020年の私の抱負は、生産的な経済バブルだ。

それは形容矛盾だろうか。バブルには、生産的なものと、非生産的なものがある。投機は技術革新を生むプロセスに必要だ。アメリカのデジタル革命、それに続く中国のグリーン技術革命。

問題は、革新を促す国家が、その衝撃に耐えられるのか、である。

私はそう望んだ。しかし、判決は下った。アメリカのIoTでは、WeWorkが破綻し、Google and Facebookは国家を超えるパワーを持つ。中国はサーベイランス国家に向かった。

NYT Dec. 30, 2019

The Legacy of Destructive Austerity

By Paul Krugman

10年前、世界は1930年代以来の経済危機が残したものに苦しんでいた。欧州と北米で約4000万人の労働者が失業していた。

しかし、経済政策は正しい対策を取らなかった。不況の中でも、政府は支出を削ったのだ。

緊縮策は間違いだった。しかし、なぜ採用したのか? 彼らは、財政赤字を減らすことに「真剣な政治家」の規準を求めた。「財政赤字の悪」を抑えることが正しい、と考える有権者もいたのだ。

他方、民主党は、政府債務が膨らむと議会で社会給付を削られる、と恐れた。

しかし、トランプが大統領になると、真剣なはずの共和党が赤字の膨張を無視した。こうした政治的に利用されたケインズ主義が、この2年のアメリカの成長を損なっている。

過去の財政緊縮は、東欧、イギリス、アメリカで現在と未来の政治を変えた。オバマが景気回復と雇用創出に正しい刺激策を取っていたら、トランプが勝つこともなかっただろう。

FP DECEMBER 30, 2019

2020 for the Future

BY ELISABETH BRAW

FP DECEMBER 31, 2019

The Global Economy 2020: A Positive Outlook Shadowed by China, Debt, and Trade Tensions

BY KEITH JOHNSON

FP DECEMBER 31, 2019

The World Didn’t Change Much in 2019. That’s Bad News for 2020.

BY STEPHEN M. WALT

2019年の重大な事件を挙げれば、その候補はいくつもある。香港デモ、下院の弾劾審査開始、アマゾンとオーストラリアの大火災、ボリス・ジョンソンの勝利、モディ首相の偏狭なナショナリズム。良いニュースを挙げれば、アメリカの株価上昇、第116議会で女性の数が最大、重大な病気の治療法が見つかった。

しかし、外交、国際関係の視点では、重要な変化がない年だった。それは良いことではない。


 ソーシャルメディア

NYT Dec. 26, 2019

The Media Is Broken

By David Brooks

FT December 27, 2019

Ten years of social media have left us all worse off

Tim Harford

Facebookなど、ソーシャルメディアは、われわれの意識や政治、経済を変えてしまった。


 アメリカ政治とカネとフェイク

NYT Dec. 26, 2019

Big Money and America’s Lost Decade

By Paul Krugman

NYT DEC. 27, 2019

The 2010s Were the End of Normal

By Michiko Kakutani


 Brexit後のイギリス

The Guardian, Fri 27 Dec 2019

How Brexit has battered Britain’s reputation for good government

Jill Rutter

FT December 27, 2019

How Britain can bring power closer to the people

PS Dec 27, 2019

Making the Best of a Bad Brexit

WILLEM H. BUITER

The Observer, Sat 28 Dec 2019

The Observer view on Britain’s future in an uncertain and perilous world

Observer editorial

Brexit推進派の希望は、世界において「グローバル・ブリテン」が占める新しい位置である。その意味は、米中の超大国がどのように動くかに依存して決まる。香港デモが続く中で、中国の習近平体制は妥協しない。周辺諸国に対しても、反民主的な、一層の強硬策を取るかもしれない。

イギリス国内に高まるイスラム教徒への憎悪や攻撃を、政府はどのように対処するのか。

気候変動と安全保障の問題は切り離せなくなっている。

「グローバル・ブリテン」は何を示すのか?

FT December 30, 2019

Boris Johnson’s promise of political stability is a rash one

Miranda Green

FT January 2, 2020

Levelling up the UK regions will be easier said than done   

Chris Giles

FT January 2, 2020

The world’s indifference to Muslim woes

Edward Luce

イスラク教徒への大規模な迫害を放置する英米政府は、イスラム圏の宗教的ナショナリズムを強めるだけである。


 インドの後退

NYT Dec. 27, 2019

We Are Witnessing a Rediscovery of India’s Republic

By Rohit De and Surabhi Ranganathan

The Guardian, Sat 28 Dec 2019

India’s founding values are threatened by sinister new forms of oppression

Madhav Khosla

FP JANUARY 2, 2020

Back to India’s Secular Future

BY KAPIL KOMIREDDI


 リベラルな国際秩序

FP DECEMBER 27, 2019

Why the Liberal International Order Will Endure Into the Next Decade

BY MICHAEL HIRSH

リベラルな国際秩序は、2010年代に現れた敵対する悪意ある諸勢力によって、葬られるのか? そう問うことがはやっている。しかし最近の趨勢をもとに考えて、民主主義、グローバリズム、開放的な貿易体制は、21世紀の30年代を生き延びるだろう。

民主主義は、ドナルド・トランプとボリス・ジョンソンのワン・ツー・パンチを受けた。世界で最も古い、最も重要な民主主義に、ナショナリズムの古い悪魔を呼び起こした。若い民主主義においても、ハンガリー、ポーランドで非リベラルな体制が現れ、より成熟した諸国でも、ドイツのAfDやオーストリアのFreedom Partyのような反移民、ナショナリスト政党が拡大し、インドでもモディ首相と与党BJPが同じメッセージを発している。

民主主義の政治体制が、ロシアのプーチン大統領のような独裁者による、サイバー空間を利用した情報操作、偽情報の拡散、システミックなハッキングに対して、自己防衛できるのか、という不安がある。

しかし、2019年のグローバル抗議デモの年が示すように、民主主義はあきらめない。それは草の根から再生し続ける。抗議デモは、最も起こりそうもない困難な土地で起こっている。すなわち、イラン、レバノン、イラク、チリ、何よりも、香港で。たとえ英米の民主主義が退廃するとしても、民主主義の思想は強い力を持っている。社会学、政治学が長く主張してきたように、世界中で、所得が増え、教育水準が高まるほど、民主主義は強くなる。

国際経済も激しいストレス・テストを受けている。2019年は、トランプの貿易戦争が世界不況を引き起こす、という不安で始まった。FRBのパウエル議長が述べたように、中央銀行にはグローバルな貿易摩擦に対処する経験があまりない。しかし、トランプのもたらした不確実さと減速にもかかわらず、不況の懸念は後退した。

たとえアメリカの大統領が一人だけでスムート-ホーリー関税を復活するとしても、1930年代のような報復関税の連鎖や世界戦争を引き起こすことはできない、とわかったのだ。深く、緊密に統合した世界経済とそのサプライ・チェーンは、この地球で最強の人物にとっても、逆転させるには複雑すぎる。

国際システムを支える諸制度、特に、国連、WTONATOはどうか? アメリカ人はつねに、その関係を窮屈に感じていた。トランプは単に、アメリカ人の自我が水面下では感じていたことを表現しただけである。オバマはNATOの同盟諸国をフリー・ライダーと批判したし、ジョージ・W・ブッシュとその政権は、プライベートに、同盟関係や国連を軽蔑していた。

忘れてならないのは、トランプとジョンソンは、国際システムを支配したエリートたちの重大な政策失敗に対して、当然に起きた反動を吸収していることだ。イラク戦争、ウォール街の規制緩和とその後の世界金融危機、1929年以来の大不況。イギリスも同様だ。

より重要なことに、トランプとジョンソンは、システムに対する最新のストレスでしかない。金融市場は何度も崩壊し、イスラム主義のテロリスト、米中の対抗。リアリストの専門家たちは、ソ連の崩壊後、西側という人為的な概念は消滅する、と主張していた。

しかしそうではない。国際機関は拡大し続けた。その急激で集中的な変化が反発を生じた。その拡大は、それを阻止し、破壊する動きを超えている。確かに、アメリカが国際システムの安定化を担う地位は大きく損なわれた。しかし、トランプ弾劾の下院における公聴会は、アメリカの外交専門官たちが示した、諸国を公平にあつかう伝統的価値観を再確認した。

リベラルな国際秩序は、今も、維持される。

The Guardian, Thu 2 Jan 2020

Authoritarian leaders thrive on fear. We need to help people feel safe

Michele Gelfand

SPIEGEL ONLINE 01/02/2020

Former Bush Adviser Karl Rove on Trump

'Populism Isn't Sustainable Over the Long Haul'

Interview Conducted by René Pfister in Washington, D.C.

トランプは群衆の心をつかむのがうまい。人びとを動かすことにたけている。

なぜ共和党はトランプに従うのか? 政治においては部族主義が支配しているからだ。誰もが大統領を擁護する。


 ポスト資本主義

PS Dec 27, 2019

Imagining a World Without Capitalism

YANIS VAROUFAKIS

真にリベラルな、ポスト資本主義の、技術的に先進的な社会の可能性を、構想するときだ。

The Guardian, Sun 29 Dec 2019

Neoliberal’ is an unthinking leftist insult. All it does is stifle debate

Will Hutton

右派が知的に破綻しただけでなく、左派も空虚な言葉ではなく、中身のある詮索を議論するべきだ。「ネオリベラル」、「社会主義」、「マルクス主義者」・・・ それは何か?

労働党は内部の派閥争いで敗北してきた。2020年代の、リベラルな左派を見出すべきだ。

NYT Dec. 30, 2019

Double the Federal Minimum Wage

By The Editorial Board


 プーチン

PS Dec 27, 2019

The Future of Putin’s Information Autocracy

SERGEI GURIEV

PS Dec 31, 2019

Putin’s Pipelines to Power

NINA L. KHRUSHCHEVA


 アメリカ後の中東世界

FT December 28, 2019

Russia, China and Iran launch Gulf of Oman war games

Najmeh Bozorgmehr in Tehran and Henry Foy in Moscow

FT December 30, 2019

End of the American era in the Middle East

Gideon Rachman

何世紀にもわたって、中東は外国の大国(軍事力)によって支配されてきた。第1次世界大戦後、オスマン帝国の支配が崩壊した後、英仏が、その後はアメリカが、最も強力は外部勢力だった。しかし、アメリカの死はした時代は今や終わりに向かっている。

アメリカが去った後は、ロシア、イラン、トルコが、シリアだけでなく、中東の秩序を決めるだろう。サウジアラビアの石油施設がドローンによって破壊されたときも、トランプ政権は何もしなかった。中東諸国が急速にロシアとの関係を深めたのだ。

人道危機や難民を恐れるだけで、ヨーロッパは自分たちで軍を動かさない。アメリカは最後に知るだろう。中東とヨーロッパに戦争が広がるなら、アメリカは大西洋を越えて介入するしかない。

FP JANUARY 1, 2020

To Keep Putin Out, Belarus Invites the U.S. and China In

BY REID STANDISH


 中国の未来

FT December 29, 2019

China’s authoritarian turn is a challenge for the world

FT December 29, 2019

China’s impending Minsky moment

William Rhodes

中国には、過度の楽観が続くことで、「ミンスキー・モーメント」に至るリスクがある。債務のGDPに対する比率は300%を超えている。

中国政府・金融当局は、米中貿易戦争がどうなるのか、わからない。また、香港デモを鎮静化できるか、もわからない。

しかし、わかっていることもある。地方政府の債務が累積している。雇用と成長を支えるため、国有企業の債務も膨張している。当局は、「シャドー・バンキング」に対する規制を十分に行わない。

ポール・ボルカーが示したように、長期の成長を維持する条件を取り戻すには、不況を覚悟するしかない。

FT December 30, 2019

Market faith in US-China trade deal is misplaced

Gregory Daco

PS Dec 30, 2019

China’s Damaging Policy Disruptions

ZHANG JUN

The Guardian, Tue 31 Dec 2019

This decade belonged to China. So will the next one

Martin Jacques

中国の台頭に、西側は今も適切に対応できない。中国は急速に成長した。世界の景気を支えるのは、アメリカではなく中国だ。しかも、中国は安価な製造品の輸出ではなく、今では技術分野で最先端を行く国になった。

アメリカが国際システムを支える役割から退場しているときに、少なくとも、象徴的な意味で、中国の一帯一路イニシアティブは重要な変化を世界にもたらすだろう。これまでの急速な台頭を示した国に比べて、中国は軍事的な対抗は抑制してきた。

中国の台頭によって、世界の将来が決まる。

FT January 2, 2020

Beijing’s delicate balancing act relies on job creation

George Magnus


 差別

FT December 29, 2019

Why do so many organisations mess up on race?

Ravi Mattu

FT January 2, 2020

French #MeToo movement struggles for lasting impact

Alice Kantor


 ギグエコノミー

The Guardian, Mon 30 Dec 2019

The Guardian view on the gig economy: stop making burnout a lifestyle

Editorial

PS Dec 31, 2019

Dystopia Is Arriving in Stages

ALEXANDER FRIEDMAN

技術革新に対して社会の諸制度がキャッチアップするには長い時間がかかる。


 金融市場と金融政策

PS Dec 30, 2019

Does Inattention Explain Today’s Low Inflation?

KOICHI HAMADA

金融政策の有効性を考えるには、合意的期待形成論だけでなく、行動心理学的期待形成論が必要だ。

FT December 30, 2019

New year’s resolution: do not view banks as high-yielding utilities

Patrick Jenkins

FT January 1, 2020

As the efficient markets hypothesis turns 50, it is time to bin it

Paul Woolley

株式市場は不合理である。資本だけの視点で考える効率的市場は間違いだ。

PS Jan 2, 2020

When Central Banks Go Green

WILLEM H. BUITER

気候変動への対処が金融リスクを変えることは明らかだ。中央銀行は行動しなければならない。


 ヨーロッパの模索

PS Dec 30, 2019

Europe’s New Green Identity

JEAN PISANI-FERRY

FT December 31, 2019

The eurozone’s tectonic plates are shifting

Martin Sandbu

The Guardian, Wed 1 Jan 2020

The refugee ‘crisis’ showed Europe’s worst side to the world

Hsiao-Hung Pai

迫害や差別、恐怖から逃れて地中海を超えた人々を、ヨーロッパは祝福するより、隔離し、非合法化してきた。しかし、ヨーロッパがもたらした植民地主義の結果として、この不平等な世界を逃れて、移住を決意する人々を、社会の周辺に追いやってしまうようなシステムに挑戦するべきだ。

FT January 2, 2020

European Central Bank has one item left in its toolkit: dual rates

Eric Lonergan


 トランプ再選に向けて

FP DECEMBER 30, 2019

Can the Democrats Reinvent Themselves in Time to Win in 2020?

BY MICHAEL HIRSH

FT January 1, 2020

Do not underestimate Trump’s re-election chances

Janan Ganesh


 日本の聖者

FT December 30, 2019

Japan must look beyond the 2020 Olympics

FT January 2, 2020

A Japanese saint among the sinners of the Afghan war

Philip Stephens

アメリカ政府は平和を希求する。911テロ攻撃の後、アメリカ軍はアフガニスタンを侵略した。

タリバンの指導者たちは強烈な比喩を与えた。アメリカ人は腕時計を持っているが、われわれには時間がある、と。まったくその通りだ。アメリカは、全力を尽くしたが、かつてイギリスが19世紀に学び、より最近はロシアが学んだことを、学習した。アフガニスタンを外国の軍隊が平定することはないだろう。

アフガニスタンは忘れられた戦争だ。対テロ作戦、国家建設、麻薬撲滅、何十億ドルもの財政支援、すべてが試みられた。それでもタリバンは地方の大部分を支配している。平和のためには、アフガニスタン政府とタリバンが合意する必要がある。

怒り、慢心、傲慢さ、無能さが混じり合った最悪の状態で、戦争はアフガニスタンの民間人とタリバン兵士を数万人犠牲にし、約3000人のアメリカと同盟諸国の兵士を犠牲にした。最近、2つの事件が悲劇の驚くべき規模を示した。

1つは、ワシントン・ポストが、公式の報告書では見られない、数千ページの文書を公開した。それは、小さな政府機関が行った「教訓を得る」ための秘密調査だった。戦争に関わった政策担当者、職員、外交官に、何百人もインタビューした。

最も衝撃的なことは、責任者たちに広まっていた無知である。アメリカとNATO諸国の軍は、最大で15万人が派遣されていたが、アフガニスタンの歴史や文化について最低限のことも知らなかった。軍の司令官たちは、多くの時間を、戦略目標もないまま戦っていた。

アメリカの侵攻の最初の目的は、アルカイダを敗退させ、タリバン政権の指導部を排除することだった。それらは1年以内に達成できたが、その後も、輝かしい西側の民主主義を創りだす、などの、さまざまな野心を持った。その国のことを何も理解しないまま、勝手な前提の上に戦略を立てた。

もう1つは、日本人医師の中村哲が、アフガニスタンで急逝したことだ。中村は、パキスタンの後、1990年代にアフガニスタンのNangarharで医院を開設した。日本のNGOの支援を受けて、病人たちを治療していた。病気の原因は、多くの場合、栄養不良や水不足であった。

そこで彼は技術者になった。2000年に入ったころから、灌漑施設のネットワークを建設し、多くの砂漠を耕作地に変えた。その設計は、日本の伝統的な灌漑ネットワークから借りたもので、複雑な機械は要らないし、重要なことに、アフガニスタンの現地の人びとが維持管理できるものだった。

中村医師の観察は少ししか公表されていないが、鋭いものだった。多くの兵士は傭兵であり、土地を失い、家族を養うための金が要るから戦っていた。農地を回復できれば、紛争は抑えられる。

このシンプルな洞察は、ワシントンで戦争を指揮した賢者たちに、まったく見えないものだった。

日本のテレビが紹介する彼のプロジェクトが示すように、まさに現代の聖人だ。アメリカ人に、彼の知恵のかけらでもあれば、よかったのに。


 ゴーン脱出

FT December 31, 2019

Carlos Ghosn’s escape: the 5 big questions

Leo Lewis and Kana Inagaki in Tokyo, and Chloe Cornish in Beirut

カルロス・ゴーンはレバノンから声明を出した。日本の「不正義と政治的告発」から逃れた、と。

5つの疑問がある。1.どうやって脱出したか? 2.日本はどう対応するのか? 3.ゴーンは何ができるか? 働けるか? 旅行できるか? 4.裁判はどうなるか? 5.ゴーンの「不正義」と検察批判はどうなるか?


 ガバナンスの改善

PS Dec 31, 2019

Why Governments Should Not Wait for Godot

RICARDO HAUSMANN

政府は、外国企業の持った買い能力を求めて、自国の投資環境を改善しようと考える。しかし、外国企業に改善できることは限られている。そもそも、政府が改革を進めてからしか、彼らはやってこない。

FT January 2, 2020

Democracy still works — but only if we work at it

Gillian Tett

10年前は、アメリカの民主主義が機能していない、と懸念する声は少なかった。今は違う。投票率を上げることが民主主義の機能に必要な条件だ。1つの方法として、デジタルな投票を行う。


 韓国の離脱

FP DECEMBER 31, 2019

South Korea’s Groundhog Year

BY S. NATHAN PARK


 北朝鮮はトランプを釣り上げるか

NYT Jan. 1, 2020

North Korea Is Not Done Trolling Trump

By Nicholas Eberstadt


 グローバリゼーションの逆転

PS Jan 2, 2020

The Decline of Global Value Chains

ERIK BERGLÖF

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The Economist December 21st 2019

Pessimism v progress

New Conservative heartlands: Boris Johnson’s northern strategy

Homelessness: Mean streets

Country of the year: The improvement prize

Semiconductors: The pivot

Chaguan: The communist block

Essay: Beware the Borg

(コメント) 技術革新が悲観論を生むのは歴史において繰り返しみられたことだ。しかし、短期的なコストを抑えるために、長期の利益を逃してはならない。AI、ロボット、遺伝子情報など、利用に関する正しい規制や制度を設けることだ。

ボリス・ジョンソンの保守党が労働者に支持されるとしたら、それは発展する諸都市圏から離れた貧困地区を、輸送インフラへの大規模投資によって、積極的に結びつけることだろう。また、ホームレスのための住宅対策も重要だ。ガバナンスを大きく改善した国として、2019年の賞を得たのはウズベキスタンです。

クリスマス・新年特集号の記事として、ハイテク分野の半導体供給を受け負うTMSCが、AppleHuaweiに半導体を供給しており、地政学的なリスクを緩和する焦点にもなりうること、また、中国の政治体制を「民主的でない」という理由で批判する西側の(勝手な)主張を、「正統性」に関する異なる源泉(儒教的な支配の正統性)によって反駁する、中国人研究者の主張を、取り上げています。どちらも面白い。

しかし、(私は観てないのですが)『スタートレック』に登場する異種生命体「ボーグthe Borg」にも似た、新しいハイテク社会組織、市場も、リベラルな民主主義も、必要なくなる可能性を検討した記事が、特に、興味深いです。

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IPEの想像力 1/6/20

お正月のテレビは、なぜか、子供のときほど、楽しめません。スポーツ番組と喜劇が増え、政治や経済の特別番組が減ったと思います。

新年のトップニュースが、北朝鮮の弾道ミサイル発射や「桜を観る会」ではなく、カルロス・ゴーンの日本脱出と、ソレイマニ司令官の殺害であったことは、まさに驚きでした。2020年が、決してオリンピックの年ではない、とよくわかりました。

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ゴーンとトランプ。2人に共通するのは、その莫大な富と、ビジネスを介して人々を支配する帝王になったことです。

ゴーンがニッサン自動車の内紛によって地位を追われたことは明白です。しかし、日本の検察が被疑者として彼を扱い、長期間にわたる拘束を行ったことは意外でした。ゴーンが主張するように、これは日本政府が、ニッサンをフランスのルノーに取り込まれるのを嫌って、妨害し、排除するために深く関与し、検察を動かしたのか。

同時に、日本の検察や司法システムへの不信感が強く残ります。なぜ安倍首相に関するさまざまな疑惑を、検察の捜査によって証拠を集めて、明確に、罪に問わないのか。なぜ籠池の用地買収に関して、この人物だけを集中的に扱い、長期間、拘置所に閉じ込め、それ以外の関係者から十分な証拠を集めないのか。なぜ引退した高級官僚が息子を殺害したことに、わずかな刑罰しか与えないのか。なぜ今、中国企業が関わるカジノ関連の買収を取り上げたのか。

そして、ゴーンが得ていた(あるいは、受け取るはずだった)報酬額の大きさ、脱出を組織した国際的なコネクションと諜報・軍事民間会社、プライベートジェットの料金、空港での特別な扱い、など、世界の超富裕層やビジネスマンの生活に、不可解な異臭をかぎ、文明の暗黒面を観るように想います。

ゴーンが日本の検察と司法を糾弾するなら、私はそれを歓迎したいです。日本政府、法務大臣、検事総長が、それに明確に答える機会を逃すべきではないでしょう。少しでも改めるべき点があると思うなら、改善策や改革プログラムを用意して示すべきです。

これは情報・宣伝合戦でしょう。しかし、日本国民や世界にとって有意義なものになるとしたら、それは、日本の企業や政府、司法システムがその真実を、国民に、自ら示すことです。

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トランプがソレイマニ司令官をドローンで殺害することを命じました。アメリカとイランとが対立をエスカレートさせる中で、イラクにおいて米軍が殺害を実行した結果、イランの穏健派や反政府デモは勢いを失い、イラクでも米軍の撤退を求める国会決議となったわけです。これを、トランプが意図していたのか、予想外の結果なのか。

トランプ再選に向けた国際政治ショーが始まった。

トランプは、北朝鮮やイランとの危機を煽って、選挙までの効果的な時期に和解のためのトップ会談を設定します。あるいは、大々的な取引を持ち掛けて、歴史的な成果を宣伝するでしょう。あるいは、約束を破ったとして、巡航ミサイルやドローンで報復するかもしれません。投票日に向けて、戦争は決して始めないが、さまざまな危機を選挙に利用し続けるわけです。リアリティー・ショーとして、観衆を煽ることが重要だ。民主党の対立候補など、テレビに映る時間はない。

ボリス・ジョンソンが勝利したように、トランプも民主党の支持基盤を削り取るため、BlexitBlack + Exit)を推進している、という番組を観ました。

大統領選挙のシステムがこのままなら、それを利用できるトランプは再選されるような気がし始めました。2期目のトランプは、従来の大統領なら、再選を意識しなくなり、歴史的な成果を求めて外交や制度改革に励むでしょうが、トランプはそうではない。

トランプは、国際システムを完全に破壊することを恐れないだけでなく、憲法改正や国民投票など、アメリカの大統領制を皇帝型に変え続けるかもしれません。そして、退任による報復を恐れ、終生の独裁権力を願うのではないか。

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