IPEの果樹園2019
今週のReview
12/23-28
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簡易版
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● ボリス・ジョンソンの大勝利
NYT Dec. 13, 2019
Boris Johnson and the Coming Trump Victory
in 2020
By Roger
Cohen
ドナルド・トランプは、ニューヨークの5番街で誰かを銃撃しても、裁判で勝てる、という。
ボリス・ジョンソンは、イギリスを10月31日までにEUから離脱させるという約束を破った。トルコ人がイギリスを侵略していると嘘をついた。EU加盟の財政負担について嘘をついた。40か所の新しい病院が建設できるという話をでっち上げた。存在しない、毎週、4億6000万ドルものEUへの支払いを、国民医療サービスに使うと約束した。それほど嘘を並べても、保守党は1987年のマーガレット・サッチャー以来の大勝利を得た。
イギリス人は、少なくともイングランド人は、なにも気にしなかった。真実というのは20世紀の昔に存在したものだ。人びとはBrexitを成し遂げるよう求めた。ジョンソンは、2020年1月31日までにイギリスをヨーロッパから切り離すだろう。たとえ将来の関係については、すべての決断がなされないままでも。
ジョンソンは幸せだった。ジェレミー・コービンは、もうすぐ党首をやめるだろうが、最悪の野党指導者であったからだ。ナイジェル・ファラージのBrexit党を労働党にぶつけ、保守党とは対立しないようにできた。ミッドランドとイングランド北部に集中する労働者階級は、労働党とコービンの社会主義を捨てて、ジョンソンのナショナリズムに替えた。
イギリス労働者がエリート校出身のジョンソンを支持したことは、ブルーカラーの民主党員が、億万長者のトランプと、そのデマゴギーを支持することを示す。たった1つのことを主張したジョンソンが、バラバラの野党を倒したことも、アメリカのトランプ再選を示唆する。労働党の大きな政府をもたらす社会主義が拒否されたことは、アメリカの民主党を不安にする。
「Brexitとトランプは2016年に起きた表裏一体の現象だった。それらは今も緊密につながっている。」と、スティーブ・バノンは語った。「ジョンソンは、トランプが大勝利する予兆だ。」
ジョンソンは、80議席を超える多数を得たが、その勝利が和解不能な者たちを和解させることはない。彼を資金援助した仲間たちは、イギリスをテムズ河畔のシンガポールにする、と自由市場を信奉する。彼の新しい労働者階級の支持基盤は、国家の資金援助で大英帝国の栄光を再現する、と願っている。それらのバランスはむつかしい。UKの分裂は近づいた。議席を増やしたスコットランド国民党SNPは2度目の住民投票で独立をめざすだろう。
イギリスはナショナリストの幻想に従い、取り返しがつかないほど偏狭になった。
FP DECEMBER 13, 2019
Corbynism’s Bad Hangover
BY JAMES
BLOODWORTH
The Guardian, Sat 14 Dec 2019
This Labour meltdown has been building for
decades
Aditya
Chakrabortty
The Guardian, Sat 14 Dec 2019
The battle for EU membership is lost, but a
European England is still possible
Timothy
Garton Ash
20世紀初め、ポーランドの独立を求めて闘った指導者Józef Piłsudskiの言葉がある。「敗退してもあきらめないこと、それが勝利である。勝者となってその栄光に安住すること、それが敗北である。」
Brexitのもっともありそうな結末とは、UKが弱くなり、貧しくなり、影響力を失うことである。選挙結果が明らかに示すように、UKは解体に向かう。ジョンソンのEU離脱取引は、北アイルランドがすでに、イングランド、スコットランド、ウェールズとは異なる経済的・法的空間になるだろう。北アイルランドの選出議員は、初めて、ナショナリストがユニオニストを超えた。
イングランドが保守党に大きく傾いたように、スコットランドはSNPスコットランド国民党に傾いた。党首は独立を目指す2度目の住民投票を行うと明確に約束している。イングランド人として、スコットランドがUKにとどまることを望む。そして多民族国家ブリテンの強さ、多様性、開放性を高めるよう求める。しかし、もし私がスコットランド人なら、小国がEUに属する方が好ましいことを知っており、今や独立を支持すrだろう。
帝国を失ったイングランド人の、偉大な時代をめぐる幻想を刺激したBrexitが、この島々を1つにまとめる、最初の、最小のイギリス帝国さえも破壊することで終わる。Brexitとは、その核心において、イングランド人のナショナリズム運動である。
ブリテンをEUにとどめる闘いには敗北した。しかし、ヨーロッパのイングランドを求める闘いが始まったばかりのである。われわれはEUの諸制度におけるイギリスの席を擁護していただけでなく、EU内のイギリスに関するある理想を守っていたのだ。解放された、寛容な、国際派の、市民的な、都市の、そして、単なる経済的表現より、個人の自由の社会的な基盤として。こうした価値を、われわれは他のヨーロッパ人と共有している。
FT December 14, 2019
Boris Johnson’s chance to forge a new role
for Britain
Gideon
Rachman in London
さあ、これから何を始めますか? 首相官邸に着けば、ジョンソンは尋ねられる。Brexitを成し遂げると言うが、そのあと、首相として何をするのか?
暗い予想をすれば、Brexitは簡単に終わらない。多年を要する交渉が始まるだけだ。その間の不確実性は、投資を妨げる。その後、本当にむつかしい問題が始まる。それは、世界におけるイギリスの役割をどうするのか、という問いだ。EUにおける影響は失われ、中国とアメリカからの圧力に苦しむだろう。イギリスは内向きになり、政治は醜悪になって、スコットランドは独立を要求する。
その可能性は確かにあるが、それが不可避ではない。イギリスにとってもっと良い世界もあるはずだ。それを実現するために、何ができるだろうか?
ジョンソンが真に目標とするべきは、Brexitを官僚的な交渉として、政治の退屈で些末な事項に変えることだ。それによって、イギリス政治から毒を抜き、EUとの関係を改善する。
しかし、些末化は容易でない。交渉は複雑で、ジョンソンはEUのルールから大きく離れることを望んでいる。それでも、双方にBrexitを早く終わりたい気持ちは強い。イギリスは、その真に世界的な指導的産業に絞ることだ。金融、法務、製薬、教育、ツーリズムなどだ。
長期的な目標は、近隣諸国と新しい緊密な関係を結ぶことだ。フランスもドイツも、イギリスの重要な価値を理解している。軍事、諜報、外交、通商のパートナーとして、イギリスを失いたくない。特に、アメリカのユニラテラリズムや中国の増大するパワーに立ち向かうならば。
アメリカ政府との関係は慎重に、日本政府が示したTPPへの参加は積極的に、そして、国益を促進するという伝統的立場に戻り、Brexitに関して他国が抱く不安を払しょくすることが重要だ。「平和と繁栄」、領土の保全、その意味で、イギリス政治の一体性を回復することと切り離せない。
もしジョンソンがBrexit後にこうした安定した姿勢を取れば、国家の重視、たとえば、リベラルが不快に思う市民権と国境の問題を強調しつつも、Brexitに至ったポピュリストの不満を吸収できる。民主主義を破壊するのではなく、それを強化する形で和解できるなら、ジョンソンは、世界の中道右派がポピュリズムに対抗する1つの姿勢を示すもの、と支持されるだろう。
FT December 14, 2019
Boris Johnson has reshaped the UK’s
political landscape
Camilla
Cavendish
FT December 14, 2019
How the Labour party’s ‘red wall’ turned
blue
James
Kanagasooriam
The Guardian, Sun 15 Dec 2019
One thing Johnson’s victory doesn’t change:
he’s still lying about Ireland
Fintan
O'Toole
The Guardian, Sun 15 Dec 2019
Unions colluded in the fiction that
Corbyn’s plan was going to win power
Will
Hutton
The Guardian, Sun 15 Dec 2019
The Guardian view on Labour’s defeat: an
existential crisis with no easy solution
Editorial
FT December 15, 2019
The long journey of Labour’s voters into
the Tory fold
Paula
Surridge
FT December 16, 2019
Labour needs to break the grip of the hard
left
PS Dec 16, 2019
Johnson’s Win Is a Loss for British Power
GORDON
BROWN
The Guardian, Tue 17 Dec 2019
How long will it take Boris Johnson to betray
his new friends in the north?
Rafael
Behr
FT December 17, 2019
Corbynism, not just Jeremy Corbyn, is Labour’s
problem
Owen
Smith
PS Dec 17, 2019
A Post-Election Reckoning for British
Politics
ROBERT
SKIDELSKY
保守党は、サッチャー主義の財政緊縮策から、人びとが求める安定性と効率性とをバランスさせる政府の役割を発見しなければならない。
労働党は、有権者たちが保守的な文化に変わり、新しい文化的な規範の中で、偏見を排除することと、社会的結束を高めることとの、バランスを見出す必要がある。
要するに、右派は経済的個人主義で人々を満足させることはできず、左派は多数は文化を軽蔑していたのだ。UKでは、両方の政党で、エリートの無能さがBrexitをもたらした。ヨーロッパやアメリカでは、それがポピュリズムの拡大に現れている。
経済的にも、文化的にも、ユートピア主義は破壊をもたらす。より完全なものを実現するために、すでにあるものを破壊しようとするからだ。完璧さの夢想は政治家をダメにする。コミュニティー全体を代表して統治する政治家は、最善の可能な結果を目指すべきであり、最善の結果が可能であると主張すべきではない。
The Guardian, Wed 18 Dec 2019
There is an antidote to demagoguery – it’s
called political rewilding
George
Monbiot
● 民主主義の悲哀
NYT Dec. 13, 2019
Democracy Grief Is Real
By
Michelle Goldberg
貴重な、かけがえないものが失われていくのを見守る、気象学の科学者たち、環境保護運動家たちが示す絶望は、ときに、「気候の悲哀」と書かれる。
最近、私が経験しているのは民主主義の悲哀である。市民権運動がついにアメリカの民主主義を実現した後に、私たちの世代は生まれた。リベラルな民主主義は、常に、私たちの気候の一部だった。大気のように、季節の移り変わりのように。しかし、私の子どもたちに、ドナルド・トランプの再選をもたらす非リベラルな超富裕層のことを思うと、失われるものはあまりに大きく、ほとんど何もできない。
トランプの当選後、多くの歴史家、政治学者がそれを説明する本を書いたが、あるタイトルが代表している。『民主主義の死に方』。その後の数年に、息がつまるような速さで民主主義は死んだ。専門職の官僚は追放され、トランプの信奉者に代わった。裁判所には、若い、極右の、イデオローグが増えた。
2017年4月、私はアトランタ郊外の選挙区に向かった。トランプが当選してから、初めて、私は楽観的な気分になった。かつて共和党のNewt Gingrichが出た地区で、民主党候補が当選したのだ。しかし最近、そのときに会った女性たちの1人で、3人の子供を育てる退役軍人Katie Landsmanと再び連絡を取ると、彼女は沈んだ状態にあった。
「愛する者が病気で死んでゆくのを見守っているようだ。」と彼女は言った。
PS Dec 16, 2019
The UK’s Electoral System Failed
JEFFREY
D. SACHS
NYT Dec. 18, 2019
Sebastián Piñera: A New Opportunity for
Chile’s Future
By
Sebastián Piñera Echenique
FP DECEMBER 18, 2019
Violence Is a Dangerous Route for
Protesters
BY ERICA
CHENOWETH, MARIA J. STEPHAN
FT December 19, 2019
These days, covering politics is much like covering
football
Simon Kuper
PS Dec 19, 2019
Not Another Arab Spring
SHLOMO
BEN-AMI
● 金融市場
FT December 14, 2019
Investors grapple with reality of
indefinite monetary support
Michael
Mackenzie
PS Dec 16, 2019
The Global Economy’s Luck May Run Out
MOHAMED
A. EL-ERIAN
● トランプ弾劾
NYT Dec. 15, 2019
The Impeachment Process Is Barely
Functioning
By Elizabeth
Drew
弾劾条項は、これほど政党が政治を支配する条件の下では、憲法が想定したように機能しない。
FT December 16, 2019
Trump’s impeachment is set to turn into a
farce
NYT Dec. 16, 2019
On Tuesday, March for Impeachment
By
Michelle Goldberg
NYT Dec. 17, 2019
We Are Republicans, and We Want Trump Defeated
By
George T. Conway III, Steve Schmidt, John Weaver and Rick Wilson
ドナルド・トランプの犯罪、汚職、腐食性の政権に直面するわれわれの国が生き延び、愛国心を示すことは、単なる政治を超えた要求である。アメリカ人として、われわれは、彼とその仲間たちが法の支配と憲法、アメリカの性格に与えつつあるダメージを防がなければならない。
われわれがその指針と精神を求めるのはリンカーンだ。彼は、連邦を救うだけでなく、精神的かつ政治的に、再び、国民をまとめ上げる必要を理解していた。
NYT Dec. 17, 2019
’Twas the
Eve of Impeachment
By Frank
Bruni
PS Dec 18, 2019
Elizabeth Warren’s Bold Ideas Don’t Go Far
Enough
DARON
ACEMOGLU
NYT Dec. 18, 2019
Are There Limits to the Rights Revolution?
By
Thomas B. Edsall
倫理的な問題と、トランプに選挙で勝利する、という戦略問題とは、どのように関係するのか?
NYT Dec. 18, 2019
Will Impeachment Drive Trump Batty?
By Gail
Collins
YaleGlobal, Thursday, December 19, 2019
A National Security Impeachment
Harold
Hongju Koh
● 優等生のマカオ
FT December 15, 2019
Macau: lessons for Hong Kong from Beijing’s
‘good student’
Sue-Lin Wong
in Macau
珠江を挟んで、香港の対岸には、中国共産党がアジアの金融センターの危機を終わらせるモデルとみなす都市がある。マカオだ。
元ポルトガルの植民地であったが、20年前の今週、中国に返還された。12月3日、高官は「中央政府の精神」を体現し、マカオを称えた。それは香港に向けたメッセージであった。
表面的には、香港とマカオは共通点が多い。元植民地として、「一国二制度」の下、中国が統治している。中国本土にはない「高度な自治」が、言論の自由、出版の自由、堅固な司法システムを含めて、許されている。
30平方キロしかないマカオは、香港の人口の10分の1であるが、長く北京によって「優等生」として描かれてきた。2006年にラスベガスを超えて、世界最大の賭博場になったが、4000万人のツーリストの70%以上が中国本土からであるという意味で、香港よりも強く中国に依存している。
マカオ政府はその収入のおよそ8割を、中国でカジノが合法とされている唯一の場所として、ゲーム産業から得ている。しかし、2016年以来、その収入は初めて減少した。中国経済の減速、米中貿易戦争、人民元安、香港反政府運動がその理由だ。
マカオはその大きさ以上に重要だ。なぜなら、香港に、そして台湾にさえも、北京はその将来を、マカオのようになれ、と示しているからだ。マカオのポルトガル人弁護士は言う。
本土から来る政府職員たちは、マカオを長い間、資金の秘匿と洗浄のために利用してきた。
北京は、一国二制度のモデルにおいて、普通選挙を認めないだろう。それは、台湾再統一のために考えられたモデルであるからだ。
香港に比べて、マカオの市民社会は弱く、そのアイデンティティーも弱い。この6か月間、北京は香港の抗議活動がマカオにおよぶのを恐れ、圧力を増してきた。しかし、ここには香港のような若者世代がいない。彼らは、批判的思考、民主主義や人権の擁護が重要であることを知らない。
カジノ産業は高度な搾取と社会の分断をもたらす。過去20年間は、それに対する社会福祉政策が重視された。2008年以来、マカオは住民に現金を給付している。2019年、それは1人当たり1万パタカ(1245ドル)になる。
失業率は2%以下でも、マカオ住民の多くは急速な成長を共有していないと感じている。住宅問題、公共輸送の不足、高額の医療費など、香港の怒りを生み出した同じ要素がある。
● イギリス選挙後
The Guardian, Mon 16 Dec 2019
So Boris Johnson is going to ‘do’ Brexit –
but what are the actual options?
Jonathan
Portes
FT December 16, 2019
In search of liberal nationalism
Gideon
Rachman
昨年夏、私はロシアの雑誌Russia
In Global Affairs編集者、Fyodor
Lukyanov と話した。彼は、UK首相のボリス・ジョンソンが「リベラルBrexit」を唱えていたことに言及して、笑い飛ばした。ロシアから見れば、Brexitこそリベラルな大義を打ち壊す野蛮な試みにほかならず、愚かなことだった。
2016年のBrexitは、EUやオバマ政権が代表したリベラルな国際主義にとって、2重の打撃になった。最初は、Brexitの国民投票、それに続けて、ドナルド・トランプの当選だ。ナショナリストの台頭は、西側の外で顕著だった。中国、ロシア、インドで、指導者たちが、トランプの「再びアメリカを偉大にする」と同じスローガンを唱えていた。彼らはその敵を「グローバリスト」とよんだ。
今となっては、リベラリズムとナショナリズムが敵であることは明白だ。しかし、必ずしも常にそうではなかった。
PS Dec 16, 2019
Should We Fear Singapore-on-Seine?
HOWARD
DAVIES
イギリスが、Brexit後に「テムズ河畔のシンガポール」を目指すなら、少なくとも、金融部門について、フランスはヨーロッパの金融規制を守る、という利益を損なわれるだろう。
FP DECEMBER 16, 2019
Islamophobia Is Boris Johnson’s Problem Now
BY H. A.
HELLYER
FT December 17, 2019
Dominic Cummings’ reinvention of UK
government is about more than new names
Robert Shrimsley
FP DECEMBER 17, 2019
Triumphant Boris Johnson Bucks Pressure to
Draw Out Brexit
BY KEITH
JOHNSON
FT December 19, 2019
Realpolitik for post-Brexit Britain
Philip
Stephens
FP DECEMBER 19, 2019
Boris Johnson Won’t Unite Britain—He’ll
Keep Dividing It
BY ALEKS
EROR
● インド市民権
FT December 16, 2019
India’s citizenship bill has echoes of
Myanmar’s dark path
Amy
Kazmin
The Guardian, Tue 17 Dec 2019
The Guardian view on Modi’s citizenship law:
dangerous for all
Editorial
PS Dec 17, 2019
Narendra Modi’s Second Partition of India
SHASHI
THAROOR
NYT Dec. 18, 2019
Modi Makes His Bigotry Even Clearer
By The
Editorial Board
● 習近平体制
PS Dec 16, 2019
Xi Jinping’s Annus Horribilis
MINXIN
PEI
中国の強権的指導者、習近平は一休みできそうにもない。アメリカとの貿易戦争、香港の危機、人権に関する国際的非難、2019年は習近平にとって大きな後退であったが、2020年はさらに悪いだろう。
習は反体制派を許容しない。また、悪い情報を受け入れることがむつかしい。これらは政権を大きな政策の失敗に陥らせる。事態が悪化すれば、強権指導者が不可謬性のイメージを守ろうとして、明らかに効果のない、非生産的な政策を、転換できないものにするのだ。
2020年は習近平の最悪の年になるだろう。
PS Dec 18, 2019
China and the West Race to the Top
DAVID
SAINSBURY
PS Dec 19, 2019
China’s Civilizational Challenge
CHIN-HUAT
WONG
● アフガニスタン戦争
FP DECEMBER 16, 2019
Everyone Knows America Lost Afghanistan
Long Ago
BY
STEPHEN M. WALT
FP DECEMBER 17, 2019
How Hypocrisy Became Standard Operating
Procedure for the U.S. Government
BY MICAH
ZENKO
● 炭素税と国際基金
FT December 17, 2019
A fair and simple way to tax carbon
emissions
Raghuram
Rajan
炭素の排出を減らす最も良い方法は、排出削減の誘因を与えること、すなわち、排出に課税することだ、とエコノミストたちは合意している。しかし、短期的な混乱が起きる。フリーライダーと、公平性の問題だ。
アメリカなど、工業化された諸国は、発展途上諸国がフリーライドする、と心配している。他方、発展途上国は、大きな不平等がある、と考える。ウガンダは2017年に1人当たり0.7トンしか排出していないのに、アメリカやサウジアラビアと同じ調整コストを求められる。アメリカは1人当たり16トン、サウジアラビアは19トンも排出している。
簡単な解決策がある。炭素排出トン当たりの誘因を与えるのだ。1人当たり世界平均の約5トンを超える国は、排出削減基金に支払う。年間支払額は、基金GCRIが人口に応じて計算する。もし1人当たり10トンから始めれば、アメリカは360億ドル、サウジアラビアは46億ドルを支払う。ウガンダは、逆に、約20億ドルを基金から受け取る。
公平性のために、GCRIは、炭素排出によって生産された財を輸入して消費する国が、生産する国に対して負担することや、これまで炭素を蓄積してきた排出国が過去の責任を負担するように、修正されるべきだろう。
● 不平等の是正策
PS Dec 17, 2019
Six Tax-Based Ways to Tackle US Inequality
JEFFREY
FRANKEL
富裕税よりも、税制の累進性を高める改革によって、不平等を是正することが好ましい。
● 難民と連帯
PS Dec 17, 2019
Solidarity with Refugees Has a New Blueprint
FILIPPO
GRANDI
● イナゴの嵐
FT December 18, 2019
Locust swarms refocus attention on an old
enemy
Anjana
Ahuja
聖書が描いたような終末が展開されている。最近、数か月に、地球上の南において、イナゴの嵐が広がっている。エチオピア北部のAmharaでは、すべての農作物が食い尽くされた。それは今も、近隣諸国に拡大しつつある。
わずか3インチほどの昆虫だが、毎日、体重(2グラム)と同じ食物を消化する。大群は世界の60か国におよぶ。
● 民主党大統領候補
FT December 18, 2019
The Democrats are badly in need of a messiah
Edward
Luce
民主党の心をつかむ、「恋に落ちる」ような候補者は、まだ見つからない.
民主党はあらゆるマイノリティー、労働組合、富裕層の多数派、高等教育を受けたアメリカ人、そうでないアメリカ人、に支持基盤を拡大した。これほど多様な連携を組むことは魔術に等しい。確かに、富裕層も、貧困層も、ゲイも、ストレートも、皆、トランプをひどく嫌っている。しかし、候補者たちには異なる解釈があり、党が分断されている。
トランプを排除するためには、他のすべてを犠牲にするべきか? あるいは、これはアメリカの経済を転換するための闘いか? 政治家たちは優先目標を決められない。
FP DECEMBER 18, 2019
Democrats: Don’t Screw Up Like Britain’s
Labour Party Did
BY MIKE
HARRIS
FP DECEMBER 18, 2019
The Democratic People’s Republic of U.S. Monetary
Policy
BY LEAH
DOWNEY
● 日本とフィンランドの女性
SPIEGEL ONLINE 12/18/2019
Breaking Taboos
A Rape Case Finally Has Japan Talking about
Sexual Assault
By
Alexandra Rojkov
ジャーナリストの伊藤詩織は裸でホテルの部屋にいることに気付いた。何が起きたのか、記憶がなかった。彼女は、そこに連れてきた男を性的暴力で訴えた。水曜日、彼女は勝訴した。
日本の司法システムでは、強姦の罪を認めさせるのが非常にむつかしい。
伊藤は、日本で生まれ、育ったが、若いときから世界を旅した。15歳のとき、はじめて、アメリカのカンザスで1年暮らし、自立心を持って帰国した。レポーターとして、ペルー、シエラレオネ、ドイツを旅した。女性器切除の記録フィルムを作り、コロンビア反政府軍兵士にインタビューした。こうした経験が伊藤に決断を促した。彼女は、多くの日本の女性がその人生を変える闘いを開始した。
FT December 19, 2019
Looking in envy at Finland’s social
mobility pin-up PM
Miranda
Green
アメリカン・ドリームは、まだ死んでいないのかもしれないが、明らかに、やせ細っている。富を受け継いだ者がホワイトハウスに入り、エリート大学の入学スキャンダルがアメリカの能力主義というイメージを損なった。
しかし、理想主義者は社会的移動性に他の国際モデルを見つけた。フィンランド・ドリームだ。小売店で働いていた34歳の女性Sanna Marinが、首相になった。
● アメリカ後の中東世界
PS Dec 18, 2019
The Post-American Middle East
RICHARD
N. HAASS
● マクロエコノミクス
NYT Dec. 18, 2019
The Macroeconomics of ‘The Expanse’
By Paul
Krugman
● 保護主義
FT December 19, 2019
Protectionists put brakes on trade
liberalisation
Alan
Beattie
● ファーウェイvsフェースブック
PS Dec 19, 2019
Is Huawei Really More Dangerous than
Facebook?
NGAIRE
WOODS
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The Economist December 7th 2019
Britain’s nightmare before Christmas
Refugee policy: Denying opportunities cost
Asian tigers: Still hunting
Charlemagne: The decline of the Five Star empire
Free exchange: Back to the future
(コメント) 労働党は「経済ルールの書き換え」を主張しており、保守党は改悪された合意案でBrexitを実行すると主張する。やめた方がいい、と思っても、政治は理性で動かない。ブレーキが働く少数連立政権だ。
難民としてアメリカに来た男の努力と闘いがすばらしい。
アジアの虎は、竜とも、雁ともよばれましたが、少子化で絶滅危惧種に変わるのか? 特集記事は、アジアの成長が、民主化の次の目標にすべきは、技術革新に応じた福祉国家である、と考えます。
そして、金融バブルとマクロ経済政策の失敗を代表した日本が、富裕諸国の未来を示す羅針盤として注目を集める中で、「アベノミクス」は再検討する時期です。
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IPEの想像力 12/23/19
2016年に始まったBrexitとトランプの時代。それは予想外の(本人たちも予想していなかった)現象として始まった。
なぜイギリスはEUを離脱するのか? なぜアメリカ人はトランプを大統領にしたのか? そして、なぜ大西洋の両側で同時に起きたのか?
すでに金融危機の最悪の局面は過ぎ去っていた。1930年代と違って、失業者は少なく、株価は上昇していた。銀行や金融ビジネスが批判されるのではなく、移民や難民が攻撃された。
確かに多くの人が不満を感じていた。賃金は停滞し、医療や年金に関する不安、学費の負担、住宅を買うために借金しても、職場は不安定で返済の見込みがなかった。グローバリゼーションの利益を受ける大都市の生活に比べて、地方の、中小都市や村落は長く疲弊していた。高齢化と少子化は社会保障の負担によって財政を制約した。
富裕層に課税し、弱者に再分配する。国際的な資本取引を規制し、大銀行を分割する。そのような主張は、必ずしも、広く支持されなかった。左派の社会民主主義ではなく、右派のポピュリストが支持を集めた。不安に対する「国家の保護」を求める、保守的なムードが広まっていた。
強い国家、国民文化、愛国心、領土。ナショナリストたちと、彼らの幻想を称える強権指導者は、同じように、栄光の時代を復活させると約束した。敵対的に、しかし、結果的には互いを刺激するような形で、保守的転換の流れに向けて協力・共謀した。
それらは、経済的な利益、政策のメリットとデメリットを比較する態度では説明できない。経済学より政治社会学、心理学や人類学、歴史や文学作品の解釈を介して、事件を理解する必要がある。
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1つ、読みかけのJohn B. Judis (The Populist Explosion: How the
Great Recession Transformed American and European Politics) は、アメリカのポピュリズムについて多くを教えてくれます。
たとえば、選挙のロジックは、左右ではなく、もっと他の分割線によって動いたこと。サッチャーとレーガン以後の政治と社会を支配したネオリベラリズムに対する反発が強まったこと。エリートと「人民」とを対比する、政治に対する考え方として、ポピュリズムはアメリカに生まれ、ヨーロッパにも広まったこと。
ポピュリズムは2大政党制を組み替える指導者によって現れたこと。右派ポピュリズムは、エリートと人民とのほかに、外国人・移民など、第3項を持ち込み、人民と富裕層との対立を消し去る戦略として機能すること。ヒューイ・ロングの左派ポピュリズムが支持を高めたせいで、F.D.ルーズベルトはニュー・ディールにポピュリストの要求を大幅に取り入れたこと。
1960年代の市民権運動に対して、ヘンリー・ウォレスは反対した。アメリカ白人の中産階級は、民主党が進めるマイノリティーの権利や再分配の拡大を、自分達の負担・犠牲とみなして反感を持つようになった。こうしてニュー・ディール連合が壊れ、民主党の支持層が共和党に移った。他方、共和党支持層の専門職にあった人びとは、仕事の自律性や満足を得られなくなった。彼らは規制されない資本主義を批判し、バーニー・サンダースを支持する。
トランプは、アメリカ政治の異常値ではない。ロス・ペロー、パット・ブキャナン、茶会運動を動かした政治のダイナミズムは、不動産取引で資産を得、テレビ司会者として人気を得たトランプに、ポピュリズムの支配権を与えた。トランプ政権を生んだのは、金融危機と、オバマの失敗である。
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もう1つ、読みかけのFintan
O’Toole (Heroic Failure: Brexit and the Politics of Pain) は、帝国を失ったイギリス人と、その特別な敗者の感情、「自己憐憫」、を教えてくれます。
****
NHK日曜討論「展望 2020年の経済 世界は、日本は」を観ました。
優れた参加者による、世界と日本のトランスフォーメーション(大転換)の議論とはいえ、ネオリベラリズムに代わる思想は遮断されたままだ、と思いました。
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