IPEの果樹園2019

今週のReview

9/9-14

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簡易版

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 

NYT Aug. 28, 2019

Straining Through the Tear Gas

By Nicholas Kristof

通りの至るところが戦場となりつつあった。片側に集結した鎮圧部隊はガスマスクを調整しつつ、神経質に、武器を触っていた。

香港と中国政府は、最初から、抗議デモをうまく扱えなかった。今や双方の暴力がエスカレートしている。市中における対決は、秩序をもたらす決意を固めている習近平主席と、自由を失いたくないと決意している多数の香港人との、対決を表現する小宇宙であった。

私の心は抗議デモを支持している。教育を受けた香港人たちは、もちろん、自分たちの代表を選出するにふさわしい。

小柄な痩せた男が、短パンとランニングシャツ姿で、両手を広げて、抗議デモに銃を向ける警官の前に立ち、デモ参加者を守ろうとしていた。

しかし、私は一種の予兆を感じている。それは時間の問題であろう。誰かが殺害され、非難と、興奮と、暴力の新しいサイクルが続く。30年前の中国で、私は天安門広場の学生たちによる民主化デモを取材していた。

1989年の天安門と同じように、香港の抗議デモも民主主義に関する要求だけでなく、その深いところで、経済的不満に関する抗議でもある。平均的な香港人の住居面積はわずか160平方フィートであり、それはニューヨークの駐車スペースよりほんの少し広いだけだ。

私がここの住民を、旧い、なじみの言葉 “Hong Kong Chinese” と言ったとき、人びとは怒った。いや、われわれはチャイニーズではない。「香港人」と言いなさい、と。

香港人は、政府が純粋に平和的な抗議デモには応えない、と学んだという。しかし私は、暴力が武力弾圧のリスクを高める意味で失敗だ、と思う。人びとの不満はあまりに強く、暴力を非難する声はほとんどない。

金の卵を産むガチョウを中国は殺さない、と彼らは言う。しかし香港最後の総督であったクリス・パッテンは、かつて、ドライな注意を与えた。「歴史には首をはねられたガチョウの死体がいっぱいある。」

1989年にも、理想主義のデモ参加者は、彼らの大義は不滅である、と私に語った。そして、私は戦車が正義を踏みつぶすのを観た。

PS Aug 30, 2019

Two Systems, One World

JOSCHKA FISCHER

NYT Aug. 30, 2019

In Hong Kong, Playing Tennis With Tear-Gas Grenades

By Nicholas Kristof

NYT Aug. 31, 2019

Joshua Wong and Alex Chow: The People of Hong Kong Will Not Be Cowed by China

By Joshua Wong and Alex Chow

香港は闘っている。「われわれが燃えるなら、あなたたちもともに燃え尽きる。」

大規模な、指導者のいない、香港の抗議活動は、共産党による北京の権威主義体制と決定的に対峙する最前線である。内外の圧力に直面した独裁政党は、特に米中貿易摩擦によって、明らかにいら立ちを深めている。

香港で不正を正す闘いは、外の世界に、特に、中国共産党の支配する中国の台頭と闘う意志を試すものだ。それは中国政府の正当性の危機である。

FT September 2, 2019

Hong Kong’s ‘water revolution’ spins out of control

Jamil Anderlini

すべての革命には名前が要る。3カ月もの間、香港で民主化を求めて闘う抗議デモを、the “water revolution”「水の革命」とよぼう。

彼らは「水になる」戦略を唱えている。それは香港で最も有名な男に敬意を払う呼び名だ。「型にはまらず、形を持たない、水のように。」 そうブルース・リーは、数少ないテレビ・インタビューで語った。彼はカンフー映画のスターで、史上最も影響力のある武道家であった。「水のように流れ、敵を粉砕するのだ。水になりなさい、友よ。」

蒸し暑い香港の革命では、抗議デモが平穏に、冷静に行われた。数百万人もの市民たちが多くの通りからデモに合流し、その後は溶けるように解散した。ときには、この週末のように、暴力を受けたデモ隊が逆襲し、火炎瓶、パチンコ、槍で武装して、暴動鎮圧部隊と激突した。

警察や暴力的な自警団と対峙したときは、「氷のように強くなれ。」 警察を分散させるために、同時に都市の多くの場所で撹乱し、「水のように柔軟であれ。」 準備することができないように、「一瞬で暴動」を起こす「露のように集まれ。」 逮捕されずに、次の闘いに参加するため、「霧のように拡散せよ。」

運動の中核は小さな細胞を組織したものであり、ヒエラルキーがない。彼らはソーシャルメディアを通じて彼らは高度に分散した、アイデアの民主的な市場を形成している。その戦術やスローガンはクラウドで共有される。

抗議デモ参加者たちは2014年の平和的な「雨傘革命」から学んだ。当時、理想主義的な若者たちが普通選挙を要求して、香港セントラルを79日間占拠した。指導者たちは、その後、告発されて投獄された。すべての要求は無視された。

多くの裕福な若者たちも運動に加わっている。クールだが、非常にロマンチックな若者たちの抗議活動だ。彼らは香港の将来のために戦っていると信じている。命がけで。北京の支配するメディアや共産党も、権威主義的な暗いプロパガンダや、毛沢東の言葉を流す。「革命はディナー・パーティーではない。」

もし北京が超タカ派のアプローチを続けるなら、香港は北アイルランドの1970年代・80年代に陥った「争乱状態」に陥る危険がある。それはグローバルな金融センターの死を意味するが、「水の革命」は終わらないだろう。それは容易に中国本土との境界を越えてゆく。かつてIRAUKで攻撃を行ったように。抗議デモのスローガンは言う。「水を撃つことはできない。」

The Guardian, Wed 4 Sep 2019

Hong Kong’s protesters have scored one for democracy, but the struggle is far from over

Simon Tisdall


 

YaleGlobal, Thursday, August 29, 2019

South Korea’s Anti-Japan Campaign Alarms Allies

Shim Jae Hoon

FP SEPTEMBER 1, 2019

Asia’s Coming Era of Unpredictability

BY ROBERT D. KAPLAN

1942年、アメリカの海兵隊がまだ日本軍との野蛮な戦闘を太平洋の島々で続け、終わりが見えないときに、オランダ系アメリカ人の戦略家Nicholas J. Spykmanスパイクマンは、当時のアメリカにとって決定的に重要な同盟国であった中国に対して、戦後の日米同盟を予想していた。日本は忠実で有益な同盟国である、と彼は論じた。

日本は食糧と石油を輸入するためのシー・レーンを防衛するアメリカを必要とする。同時に、日本はその人口と消費を維持するために強力な貿易関係を形成する。他方、中国は戦争から復興すれば、アメリカにとってバランスをとる必要がある、強力かつ危険な大陸国家となる。スパイクマンはさらに、日本がアジアの大陸から離れた、巨大なアメリカの同盟国として、イギリスに匹敵するだろう、とも示唆した。

スパイクマンはその後、癌で死んだが、そのビジョンこそアジアとその平和を定義するものだった。ほぼ4分の3世紀にわたって平和と経済的繁栄を保証した。ニクソン大統領は、ソ連に対するバランスをとるために中国に接近したが、それも日米同盟があったからできたことだ。

しかし、スパイクマンのアジア秩序は崩壊し始めている。それはアジアがこの10年で経験した顕著な構造変化によるものだ。変化は漸進的で、多くの国に分かれて起きたため、われわれが新しい時代に入りつつあることを知る者は少ない。中国の攻撃的姿勢、アメリカの同盟関係の解体、アメリカ海軍の優位の喪失。香港の危機や日韓関係の急激な悪化も、新しい時代の序章でしかない。アジアの安全保障は、もはや当然のことではなくなった。

中国は、もはやかつての中国ではない。顔の見えない官僚政治が一定期間で交代しながら支配する、10%を超える成長を管理する国家ではなく、6%で成長する経済を監視する絶対的専制国家である。高度な知識労働者による成熟したシステムに移行し、ナショナリズムと不満を持ちやすい新中間層を、政府は高度な水準で満足させねばならない。習近平主席は新中産階級に、ユーラシアの港湾と通商のシステムを支配する姿を見せ、ナショナリズムを高めて経済改革を推進する決意だ。それには顔認証を含む新技術のかつてない展開が必要である。習は、ゴルバチョフとは逆に、政治支配を強化する。政治支配を無傷のままに維持して、経済改革を実現するつもりだ。

アジアのシー・レーンは、アメリカ一極の秩序ではなく、多極化するだろう。それは不確実な体制であり、次第にフィンランド化することが避けられない。すなわち、諸国は近接する大国の影響下に置かれ、政治的、外交的な接近を受け入れるだろう。アメリカはインドとの関係強化を進めているが、トランプ政権がTPPを離脱して、安全保障と経済関係の緊密な統合化を破壊したとき、インドも中国との関係を重視するしかなくなった。かつての非同盟戦略がよみがえる。

NYT Sept. 4, 2019

This Is How a War With China Could Begin

By Nicholas Kristof

もしアメリカが中国と戦争になれば、台北が最初に闇になる。

安全保障専門家の間で、習近平主席が、今後の数年内に、台湾に対する無謀な行動を起こし、アメリカは戦争に巻き込まれる、という懸念が強まっている。

香港に対する強硬姿勢は、台湾に対する警鐘となる。中国は台湾人の心をつかむ努力を削減して、着実に軍事力を強化している。習はそれを使用する懸念がある。

台湾が一方的な変更をすることはないし、中国も介入や強制には、その代償を支払うことを確信させなければならない。

FP SEPTEMBER 4, 2019

American Bases in Japan Are Sitting Ducks

BY TANNER GREER

FP SEPTEMBER 5, 2019

Asia Has Three Possible Futures

BY STEPHEN M. WALT

アジアの将来には3つの可能なシナリオがある。

1.中国が台頭し続けて、アメリカは衰退し、アジアから追い出される。アメリカは、イギリスが20世紀最後に直面した決断を求められる。西太平洋で、中国が覇権を握るだろう。その場合、アジア諸国が中国に対抗して同盟化することはむつかしい。

2.逆に、中国の台頭は続かず、アメリカは成長を回復して、アメリカが優位を保つ。中国には多くの深刻な問題委があるからだ。また、アメリカの重要な優位(地理、資源、技術革新)は変わらない。アメリカがアジア諸国との関係を緊密に維持できる。

3.最も起こりそうなシナリオは、アメリカと中国が同じように成長を続け、2国間のギャップは減るが、逆転しない。米中2極化に近い、緩やかな多極化(インド、ロシア)になる。多くの国はアメリカとの関係を維持するだろう。中国に接近し過ぎると、中国の意図に対する脆弱さを増すだけだ。

アジアにおける勢力均衡を管理する外交は、非常に複雑な、高度な思考を要する。トランプ政権が、成立から3日目にTPPを破棄したことは、それと全く逆行しており、アメリカ外交の失敗が続くなら、アジアは全く望まない姿に変わってしまうだろう。


 

NYT Aug. 29, 2019

30 Years After Reunification, Germany Is Still Two Countries

By Anna Sauerbrey


 

FT August 30, 2019

Negative rates are a risk investors have not seen before

Merryn Somerset Webb

FT August 30, 2019

How central bankers can survive populist attacks

中央銀行家は攻撃されている。アメリカのドナルド・トランプはジェイ・パウエルを「敵」とみなし、イギリスの議員の何人かはイングランド銀行のカーニー総裁がBrexitに反対したと責め、インド準備銀行のパテール総裁はモディ政権と対立後に辞任した。イタリアのサルヴィーニはイタリア銀行を完全に解体するよう求めた。

中央銀行家は政治を避けるべきだが、政治的に巧妙でなければならない。金融政策を効果的に行うためには、その決定を政治が支持する必要を知っている。彼らは正当性を守り、世間の圧力に耐える必要がある。

連銀の金融政策決定委員会の元委員であるBill Dudleyは、正式に反撃すべきだ、と今週のコラムで書いた。「間違った通商政策を選択し続ける政権を中央銀行は救済しないとはっきり述べる」ことを求めた。

しかし、それは間違いだろう。トランプと取引するのはむつかしい。そのような主張は、選挙によって正当性を得ていない官僚たちが陰謀を巡らせている、という非難を刺激する。むしろ中央銀行家は冷静に対応し続け、その権限を守って、真実を語るべきだ。

中央銀行がその決定を公的に説明し、政策を正当化するように求められるのは正しい。政治家たちには金融政策を精査する正当な役割がある。金融政策は富と所得に影響するからだ。中央銀行は市場に対する絶大なパワーを行使できる。

しかし、政治家の主張は限度を超えることもある。それに対しては、無視することだ。連銀でさえ、トランプの愚行からアメリカを助けることはできない、と国民はすぐに知るだろう。

PS Aug 30, 2019

The Trump Narrative and the Next Recession

ROBERT J. SHILLER

NYT Aug. 31, 2019

Only the Fed Can Save Us

By William D. Cohan

パウエル議長がトランプ大統領の圧力に屈して金利を下げたとき、私は次の不況を確信した。連銀は、金融危機後の異常な低金利の時代を終わらせる、という方向を逆転した。それは過剰なリスク、過剰な債務を積み上げるだろう。

FT September 2, 2019

Central banks will need new tools to combat the next downturn

Philipp Hildebrand

PS Sep 3, 2019

Central Banking’s Bankrupt Narrative

ROGER E.A. FARMER

これまでのマクロ経済政策の枠組みを変えるべきだ、という意見に、私も賛成だ。新ケインズ主義の判断基準であるNAIRUnon-accelerating inflation rate of unemploymentインフレを加速しない失業率)は時間とともに変化し、どこにあるのか予測することはできない。それは科学ではなく、信仰だ。

資本主義は単純な構造ではない。完全な自由放任と、中央計画経済との、中間にあるさまざまな経済モデルがつながっている。われわれの目標は、市場の優位が発揮できる制度を構築することだ。

PS Sep 4, 2019

Money for Nothing

HAROLD JAMES

QEとゼロ金利、マイナス金利が続く異常な経済状態では、ポピュリストたちの暴論を止めることができない。

例えばドイツ政府は、30年満期の国債をマイナスの利回りで発行できる。つまり、コストをかけずに、何でも好きなことができるのだ。財政的な積極的行動への要請が、成長減速の最初のシグナルを観て、一斉にあふれるのは当然だ。

中東欧のポピュリスト政権にとって、この状況は非常に好ましいものだ。彼らはさまざまな集団から支持を得るために、児童給付や年金を増やし、年金支給年齢を引き下げ、インフラ建設、減税を同時に実行してきた。反対派が新しい支出を要求すれば、それを自分たちの主張として採用する。

1990年代、ヨーロッパ市民はユーロを採用するかどうか考えるとき、単一通貨を、財政規律を与えるものとして、従来の政治的なトレード・オフを甘味に包んで飲み込む手段として説得された。ユーロ圏に参加することは、財政政策に関して主権を一部犠牲にすることで、金利を引き下げ、政府の債務維持負担を減らし、それゆえ他の用途に資源を振り向けることだった。

しかし今や、彼らは無責任な行動、予測不能な行動に対して報酬を受け取ることになった。それを吸収するように金融政策が緩和されるからだ。トランプとアメリカ連銀はその典型である。

2008年の金融危機以来、伝統的なルールは適用されなくなった。「ネオリベラリズム」は危険な幻想である、と。財政規律は低金利と消費を促す美徳であったが、それを批判する者には、政府支出はコストのかからない、まったくの善行なのだ。

金融・財政のすばらしい新世界においては、だれにも明確に債務の危険な水準を決めることはできない。しかし、債務の増大によって状況が劇的に逆転するときが来ない、という意味ではない。貯蓄や投資に関する不安が生じると、債務はコストが増大し、既存の債務残高も持続不可能になる。その時にポピュリストの魔法は解消する。

カサンドラの警告を聞くのは、いつも、すでに手遅れになってからだ。

FT September 5, 2019

Why the ECB should gear up for a ‘helicopter money’ drop

Moritz Kraemer

これ以上の金融緩和には効果がない。

金利を下げるより、「ヘリコプター・マネー」を採用するべきだ。消費者物価を目標にするのであれば、直接、消費者の支出を増やすことに意味がある。

ECBはユーロ圏の市民すべてに対して、インフレ率が目標の2%に達するまで、その口座に毎月支給する。インフレ率に応じて、支給額を調整すればよい。


 

FT August 30, 2019

China’s ‘helicopter money’ is blowing up a bubble

Arthur Budaghyan

銀行融資を通じた中国式の「ヘリコプター・マネー」は、長期的には信用創造バブルを生じるだろう。それは人民元の減価をもたらす。

「ヘリコプター・マネー」にはマイナス面がある。革新を妨げ、資本の効率的な配分を損ない、生産性の上昇を抑える。生産性の上昇が遅く、貨幣の供給を増やしてインフレを加速するのは、社会主義システムに内在するダイナミズムだ。

すでに経常収支黒字は消滅しつつあり、中国からの資本逃避を恐れて、資本取引の自由化は進まないだろう。


 

PS Aug 30, 2019

The Battle for Britain

GUY VERHOFSTADT

PS Aug 30, 2019

Brexit, the Novel

SIMON JOHNSON

PS Aug 30, 2019

Britain’s Brexit Breakdown

PHILIPPE LEGRAIN

FP AUGUST 30, 2019

Britain Can’t Afford the Queen’s Weakness Anymore

BY ADAM TOOZE

The Guardian, Sat 31 Aug 2019

Final sovereignty on Brexit must rest with the people

Jeremy Corbyn

The Guardian, Tue 3 Sep 2019

The Guardian view on Boris Johnson’s strategy: split party, divide country, win election

Editorial

保守党内のBrexitをめぐる論争は、ロバート・ピールが1846年に穀物法を撤廃したときの党の分裂をもたらした論争と同じだ。

ジョンソンは、保守党を乗っ取るために、そのような党の分裂を望んでいるように行動する。ジョンソンは議会の多数を失ったが、保守党の支配を強めている。

ジョンソンは離脱に投票した有権者の憤慨を煽っている。それは総選挙で勝つためだ。ジョンソンはEUに合意の改正を求めているが、その条件は議会の反対派や大陸には受け入れられないものだ。しかし彼は、敵を挑発し、裏切者と非難する。イギリスの主権をEUに譲渡する手助けをしている、と。この種の政治的な機会主義と間違ったイデオロギーの混成物が、イギリスを地政学的な死に追いやる。

ジョンソンは、本能的に、混乱が権力を維持する条件になると知っている。権力のためなら、政府のどこであれ焼き払うだろう。

PS Sep 4, 2019

Britain’s Enemy of the People?

IAN BURUMA

ジョンソンは「人民の代表」ではない。彼は典型的なイギリス・エリートであり、上流階級だ。

ジョンソンは、イギリス議会に対して「人民の声」を主張する。しかし、国民投票はイギリスの伝統的な主権とは異なる考え方である。ジョンソンの行動は違法ではないが、伝統的な規範や秩序を重視する保守主義とは無縁のものだ。

人民と敵対させて議会を破壊するジョンソンは、イギリスの偉大さと、連合国家を破壊する。

NYT Sept. 4, 2019

Boris Johnson Loses to Democracy

By James Butler

The Guardian, Thu 5 Sep 2019

Johnson should beware – forcing a crisis rarely ends well for aspiring strongmen

Andy Beckett

FT September 5, 2019

Brexit has read the rites over British conservatism

Philip Stephens

FT September 5, 2019

Otto von Bismarck is in the House as Brexit goes Prussian

Frederick Studemann

ジョンソン首相はチャーチルWinston Churchillを崇拝するが、むしろまねるべき指導者はビスマルクOtto von Bismarckである。彼は、非常に柔軟な戦略家であった。挑発して、混乱する事態を利用した。一貫性ではなく、勝利することが目標だった。

FT September 5, 2019

A humbled Boris Johnson has lost control of Brexit

FT September 5, 2019

Boris Johnson gambles everything on an election that will transform Britain

Robert Shrimsley

FT September 6, 2019

Labour’s agenda is not the answer for Britain


 

NYT Aug. 30, 2019

Imran Khan: The World Can’t Ignore Kashmir. We Are All in Danger.

By Imran Khan

PS Sep 2, 2019

Myths of Kashmir

BRAHMA CHELLANEY


 

FT September 1, 2019

US and China are weaponising global trade networks

Abraham Newman

NYT Sept. 2, 2019

Only China Can Save Us Now

By Adam Tooze

世界経済の将来は、動脈硬化のヨーロッパ、ナショナリストのアメリカ、権威主義体制の中国に依存している、というのは楽しくない展望である。

PS Sep 3, 2019

The Renminbi’s Bid for Freedom

YU YONGDING

PS Sep 4, 2019

China is Committed to Multilateralism

XIZHOU ZHOU

PS Sep 5, 2019

Trump’s Mercantilist Mess

ROBERT J. BARRO

トランプ大統領が「貿易戦争に勝つのは簡単だ」とツイートしたのは、現代経済学の正当な理解とは関係ない、重商主義的な理解に依拠したものだった。輸出はプラスだが、輸入はマイナスだ、というわけだ。

それは、リカード以来の貿易の理解に反するし、トランプに説明しているナヴァロが博士号を得たハーヴァード大学で国際マクロ経済学を正しく学ばなかったのだと思う。

PS Sep 5, 2019

The True Toll of the Trade War

RAGHURAM G. RAJAN

政治的・経済的にアメリカが支持しない中国の台頭は、貿易を通じた成長が国際間で波及する、という世界貿易の前提を破壊し、これまでの通商摩擦とは全く違う米中の政治対立にしてしまった。


 

PS Sep 2, 2019

Capitalism in the Last Chance Saloon

ADAIR TURNER

NYT Sept. 4, 2019

The Original Evil Corporation

By William Dalrymple


 

NYT Sept. 2, 2019

The Great Tax Break Heist

By Paul Krugman


 

FP SEPTEMBER 2, 2019

Maximum Pressure on Germany Is a Big Mistake

BY JEFF RATHKE, MAX HAMMER


 

PS Sep 3, 2019

America’s Uneven Future of Work

LAURA TYSON, SUSAN LUND


 

FT September 4, 2019

Labour takes aim at shareholder capitalism

Jonathan Ford in London


 

VOX 04 September 2019

Libra: The known unknowns and unknown unknowns

Barry Eichengreen

Libraは、まだ基本的な問題に答えていない。

How will incentives for development be reconciled with the fully-backed nature of the system? How will seigniorage be allocated? How will the system be scaled? How will the desire for privacy be squared with know-your customer rules? How will authorised resellers be selected and regulated? How will the public sector agencies responsible for systemic stability and consumer protection regulate Libra more generally?

これは、アルゼンチンが試みたようなドルやユーロを含む通貨バスケットに対するカレンシー・ボードなのか? シニョレッジはだれが得るのか? どこまで供給できるのか? だれがボードに参加するのか? プライバシーはどうなるのか? システムの安定性に通貨当局はどう関わるのか?


 

FT September 5, 2019

Italy’s new experiment in populist technocracy

Carlo Inverenizzi Accetti


 

SPIEGEL ONLINE 09/05/2019

World War II Anniversary

Is Armed Conflict Possible in Today's Europe?

By Dirk Kurbjuweit

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The Economist August 24th 2019

What companies are for

Germany’s economy: Take aim

Corporate purpose: I’m from a company, and ‘m here to help

Banyan: Fawning frenzy

International tax: Trading blows

Buttonwood: The eternal moment

(コメント) 会社は何のためにあるのか? 成功した企業は、利潤の獲得だけが唯一の目的である、株主利益の最大化、というマントラから脱け出す必要を感じています。しかし、記事はポイントを外しているように思いました。

Japanification「日本化」もそうです。日本はバブルが破裂した後の処理を誤った、という話から、アメリカ連銀は金融危機後のちぐはぐな介入姿勢を強化しましたが、結果は、思ったように進んでいません。

ドイツの財政刺激策、インドの反政府メディアに対する抑圧、フランスがGAFAに課税したらトランプはフランス産ワインに課税する。「会社は何のためにあるのか?」そして「日本化」を考えさせるのは、こうした世界の昏迷状態につながるものです。

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IPEの想像力 9/9/19

ユーラシア大陸の両側で、イギリス政府と議会、香港行政府が、混乱を深めている。シリア、アフガニスタン、ジンバブエ、スーダン、イエメン、アルゼンチン、イタリア、韓国、インドネシア・・・ ニュースにならない国が安定しているとは限らない。

国際秩序が不安定化するのは当然だ。その前提にある問題は、政府や統治のモデルが答えを見出せないことだろう。

「企業・会社・カンパニー」が存在する目的は何か?

「民主主義」が広まる条件、機能する政府を生む条件は何か?

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The Economistの特集記事は「カンパニー」の問題を取り上げた。「私たちはカンパニーから来ました。」と言って、都市の路上生活者にパンを配る、高齢者を助ける、町の清掃に参加する、1世代もしくは2世代前の漫画が載っている。

アメリカの経団連ともいえるthe Business Roundtableが、「企業の目的は利潤だけではない。株主だけでなく、労働者やその家族、地域社会といったstakeholdersに奉仕することだ。」と宣言し、1つのニュースになった。それは、社会の態度が変化し、彼らの金もうけに厳しい攻撃が向かい始めることへの予防線だ、と記事は指摘する。いつまでもTrumpと共和党、好景気の時代は続かない。次は、Warrenや民主党左派、所得格差や不況・長期停滞の時代に入る。

そして、ミルトン・フリードマンの<神託>である「企業は利潤最大化が唯一の目的だ」とか、代理人問題に振り回された「株主利益の最大化」説が取り上げられている。フリードマンの議論は1962年の時代を反映している。それは、現在の短期利益志向を意味していない。1970年代に有効だったけれど、1990年代には意味がねじれてしまった。

たとえば、銀行や企業は、温暖化に対して何もしなくてよいのか? それは政府が行うことだから? しかし、政府よりも高い能力をプールしており、政府の能力を削り取っているのは彼らである。環境の持続可能性を重視した経営をアピールするべきか? 環境への負荷を価格に反映するように、炭素税や温暖化ガス排出量の削減目標と税制や国際財政移転を組み合わせる?

記事は、株式会社・資本主義の改革に言及しない。

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ファリード・ザカリアの『民主主義の未来』を読んだ。ザカリアは、2003年の本で、アメリカの民主主義を憂慮していた。イラク戦争が始まった、アメリカ1極のグローバリゼーションが頂点にあったころだ。民主主義は立憲主義ではなく、リベラリズムを保証しない。秩序を欠いた民主主義は、独裁制にいたる。

ザカリアはインド、ムンバイの出身であり、イギリスがインドに残した民主主義の諸制度と、それが破壊されることを危惧していた。アングロサクソンだけがリベラリズムと民主主義とを実現した、と考える。それは「文化」ではなく、歴史的な偶然、あるいは地理的条件があったからだ。王権は集中されず、新興のブルジョアジーが貴族ではなく大商人への道を好んだ。

リベラルな社会を民主主義が維持するには、「富」が民主的な形で形成されることだ。市場が発達し、「資本主義」が機能する。ザカリアはその条件を、アングロサクソンの上流階級・エリート層が持った強固な「社会規範」に見出す。公共の利益のために奉仕することが、上流階級の使命であり、誇りであった、と。それらが過剰な「民主化」によって失われる。

政治家は「世論調査」に振り回され、選挙資金のためにロビイストの意向には逆らえない。ザカリアは、民主主義を制限して、社会エリートを復活させ、重要な権限を彼らに委託することを、リベラルな社会の条件と考える。

国民国家、都市、企業、議会、富と課税、それらがグローバリゼーションの時代に秩序を形成する条件として、どのように変容するのか?

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