IPEの果樹園2019

今週のReview

8/26-31

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簡易版

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 トランプ不況

NYT Aug. 15, 2019

From Trump Boom to Trump Gloom

By Paul Krugman

NYT Aug. 17, 2019

What’s Wrong With the Global Economy?

By Ruchir Sharma

戦後成長の奇跡は終わった。2008年の金融危機以来、世界経済には4つの向かい風が吹いている。世界貿易は拡大をやめ、労働人口は減少し、生産性の伸びも失われ、債務の重荷が危機前と同じ水準に達している。

2008年以前の成長を回復した国は1つもない。10%以上の成長率を示した「アジアの奇跡」は消滅した。どの国の議論も、成長を回復するために何をすべきか、であるが、原則をもたらした条件は政府の制御できないものだ。

ドイツにも不況が迫っている。不況の定義は、4半期のマイナス成長が2期連続することだ。しかし、ドイツのように労働力が減少する経済で、その定義は今なお正しいのか?

ドイツの労働人口は減少し続けてきたが、2039年までに、5400万人から4700万人に減少すると予想される。日本、ロシア、中国でも、人口が減少している。人口が経済成長の主要な要因である以上、それは必然的に成長の原則を意味する。

それゆえ経済の健全さを議論する基準は、1人当たりの所得など、適当なものに変えるべきだろう。人口が減少する国では、成長が減速しても、1人当たりの成長はプラスになりうる。例えば日本は、この10年間、アメリカよりも成長が遅かったが、1人当たり所得はアメリカと同じ1.5%で増大した。日本は深刻な社会不安に直面していない。

多くの新興経済は今でも10%以上の成長を願っている。それは1960年代半ばから1990年代にアジアで実現されたが、当時は人口も貿易も急速に伸びた。2016年、労働力人口が減少に転じた中国で、6%の成長を実現することさえ、貿易、生産性、債務のそれぞれがマイナスの影響を考えれば、祝福に値する。

「低成長」を恐れるより、中所得国でも3ないし4%、アメリカ、ドイツ、日本なら1ないし2%の成長が基準にするべきだ。

FT August 19, 2019

Markets are adjusting to a turbulent world

Rana Foroohar

パラダイムは、最初、ゆっくりと変化し、その後、一気に進む。先週の株価下落は、また回復し、狂乱はすぐに始まらない。

問題は、いつ市場が、低金利とQEによって10年間も育った自己満足を捨てて、現実を受け入れるのか、である。

なぜ新しい現実を受け入れるのにこれほど時間がかかるのか? それは、われわれが古い現実で長く生きたからだ。ブレトンウッズ後の、ネオリベラルな世界だ。グローバリゼーションが制約を解かかれ、低利融資が何年も続いて、資産価格は上昇し、労働よりも資本の分配が改善した。中央銀行の供給する何兆ドルもの資金と、株価が下落するときに儲けるアルゴリズムを駆使した投資戦略が、われわれの意識を変え、長期の政治的リスクを無視させた。

こうしたすべてのことがシグナルを否定してきた。今や警告ランプが点滅している。

最終的に市場が、高まる政治リスク、通貨リスク、信用リスク、そして政府の左傾化を受け入れるにつれて、相場は変化し、ショックを示す。急激で、怒りをもたらすだろう。その次は、どうなるのか?

私の信じるところ、それは世界不況になりそうだ。一段、また一段と、市場は下落する。上げ相場があるかもしれないが、下落する方向は変わらない。それが数年も続く。債券の利回りはさらに低下し、「安全な」資産が値を上げる。円、スイス・フラン、そして金の高値が続く。

ドナルド・トランプはさらにタフな言葉を吐くだろう。株価下落を中国や連銀のせいにする。関税引き上げを、クリスマス・ショッピングに影響しないよう延期するかもしれない。しかし、消費者はすでに損失を感じており、トランプの再選にも影響する。

アメリカ経済が好調であることをトランプはしきりに自慢しているが、保守的地域の白人女性労働者もそれを嫌っている。「ニューヨーク市はそうかもしれない。」・・・「でも、ここはそうじゃない。」

恐怖の夏が過ぎれば、政治的不満の冬が来る。

FT August 21, 2019

Who benefits politically from the next US recession?

Janan Ganesh

PS Aug 22, 2019

The Anatomy of the Coming Recession

NOURIEL ROUBINI

2020年までに、3つの最プライ・ショックが世界不況の引き金を引くだろう。それらはすべて国際関係に影響し、中国とアメリカが含まれる。さらに、そのどれもが不況に対する伝統的なマクロ経済政策によって対処できない。

1のショックは、米中の貿易戦争、そして通貨戦争である。第2も、緩やかに炎上してきた、技術に関する米中の冷戦である。将来の重要産業に関する「ツキディデスの罠」が米中関係をむしばんでいる。

2の重大なリスクは石油供給だ。貿易戦争などは石油需要を抑え、石油価格を下げているが、もしアメリカがイランとの軍事衝突に至れば、石油の世界価格は急騰し、世界不況になるだろう。

これら3つの潜在的ショックはすべて、スタグフレーションをもたらす効果がある。すなわち、輸入財の価格、中間財や技術、エネルギーの価格が上昇し、グローバル・サプライ・チェーンを混乱させて生産が減少する。さらに、米中対立はグローバリゼーションの逆転を加速する。

問題は、財政・金融政策がマイナスのサプライ・ショックに対して有効か、ということだ。1970年代、スタグフレーションに金融政策は引き締められた。しかし今、連銀など、主要な中央銀行は金融緩和している。

しかし、この傾向が続くと、次第に不況になるだろう。まだ不況にならないのは、消費が続いているからだ。短期のショックに金融政策で緩和するのは正しいが、財政政策で中期的な景気を刺激するのは、マイナスのサプライ・ショックに対して正しくない。貿易や技術において恒久的な悪化が潜在成長力を低下させてしまうことに、需要を刺激しても無駄である。Brexitも同じだ。

1970年代に、2つの石油ショックを中央銀行が緩和した結果、インフレの持続的な上昇とインフレ期待、持続不可能な財政赤字、そして政府債務累積が残った。


 金融政策の逆立ち

FT August 16, 2019

Upside down investment world marks limits of monetary policy

貯蓄者、借り手、投資家、企業、だれにとっても世界が逆立ちしている。デンマークの銀行は、今秋、世界最初の、マイナス金利住宅ローン債券を販売した。住宅購入者はローンを組むが、その返済額はローンより少ない。

普通の金融が成り立たない、特殊な原因がある。何年間も、中央銀行が金融緩和し、金利をマイナスにまで下げたからだ。そして膨大な流動性を供給した。それでも世界経済は減速し、刺激策を求めている。その副作用で、銀行は利益を出せなくなっている。

金融政策は限界だが、政府による財政政策の動きは鈍い。その姿勢を変えるしかない。生産性を高めるような投資に的を絞った財政刺激策が優先されるべきだ。インフラ更新投資、公共住宅建設、的を絞った減税策も、考慮すべきだ。

成長とインフレの健全な回復も促せるだろう。

FT August 16, 2019

Bank of England may have no choice but to join race to the bottom

Geoffrey Yu

FT August 20, 2019

Policymakers can fight next recession by ‘going direct’

Jean Boivin

2014年、ジャクソン・ホール経済政策シンポジウムで、ドラギは緊縮政策からの離脱を穏やかに述べた。金融政策と並んで、財政刺激策が採られるなら、非常に有益だろう、と。

景気後退局面で、次の政策対応は、前例のない冒険的な試みであろう。「直接金融」だ。消費者を含めて、支出する主体に、直接、貨幣を与える方法を発見することだ。インフレ目標を達成するために財政当局との協力が有効だ。しかし、中央銀行の独立性を守り、無謀な財政支出を許さないような仕方で行うべきだ。

1.どのような条件で行うのか。2.インフレ目標を、財政・金融の共同責任とする。3.迅速な実施メカニズム、4.明確な出口戦略。

FT August 21, 2019

The US Federal Reserve should use forward guidance now

Neel Kashkari


 香港デモ

SPIEGEL ONLINE 08/16/2019

Lessons of Hong Kong

The West's Guiding Light Has Dimmed

A DER SPIEGEL Editorial by Dirk Kurbjuweit

SPIEGEL ONLINE 08/16/2019

Hostile Takeover

Fears Mount of Chinese Intervention in Hong Kong

By Bernhard Zand in Hong Kong

北京が部隊を境界線に移動した。今秋、抗議デモは香港空港を占拠した。軍事介入の脅威が香港で高まっている。

この10週間の間、香港の不満と怒りは高まってきた。それは市民の日常生活にも及んでいる。抗議デモとそれに反対するデモが通りを占拠し、警察の流血に及ぶ鎮圧行動は暴力のレベルを上げた。シンガポールと並ぶ、アジアの効率性、規律、コスモポリタニズムを代表する都市、香港が、社会的・政治的な崩壊に直面しつつある。

今や、反政府側は雨傘革命のとき以上に要求を強めている。行政長官の辞任を求めている。香港議会は半分しか民主的に選挙されていない。

抗議デモの指導者たちは、北京に対抗して、運動へのグローバルな支持を得るため、その可視的展開を意識し、しかも香港市民を恐れさせないように配慮している。彼らは、マーチン・ルーサー・キングやネルソン¥マンデラのような人物をモデルとしており、「非暴力の抵抗」を唱えている。

NYT Aug. 16, 2019

To Understand Hong Kong, Don’t Think About Tiananmen

By Ilaria Maria Sala

NYT Aug. 17, 2019

Can Hong Kong Avoid Becoming Tiananmen?

By Madeleine Thien

30年前、1989519日、中国共産党の総書記、Zhao Ziyang趙紫陽は天安門広場に立った。朝の5時だった。趙紫陽は疲れ果てていたが、多くの抗議する学生たちに、拡声器を使って演説した。ハンガーストライキの7日目だった。

「学生諸君。われわれが来るのは遅すぎた。」と、彼は言った。「残念だ。申し訳ない。あなたたちがわれわれについて述べ、批判することは何であれ、重要だ。」

趙は、最高指導者のケ小平が軍を天安門広場に入るよう命じると決めたことを知っていた。惨劇を回避するために、趙は学生たちにハンガーストライキをやめるよう頼んだのだ。

翌日、戒厳令が出され、趙紫陽は自宅に軟禁された。その15日後に、人民解放軍は天安門広場に入り、殺戮が始まった。趙は2005年に亡くなった。その素晴らしい業績は共産党内部で抹消された。彼の名は公式記録から消去され、彼の顔は写真から消えた。

今は1989年ではないし、香港は北京と違う。しかし、若い、武器を持たない学生たちは、再び、中国の軍による弾圧の危険にさらされている。

中国の言葉、詩、思想は、香港人の魂の一部である。しかし、容易に答の出せない問題がある。どうすれば香港は、この急速に変化する世界秩序の中で、中国とイギリスが約束した、政治・法システムを続けることができるのか?

2005年に趙紫陽が死んだとき、中国国内では検閲された。しかし、香港では15000人が彼の死を悼んで、ろうそくを灯した。

FP AUGUST 17, 2019

Will Hong Kong Flare Up or Flame Out?

BY KATHRYN SALAM

NYT Aug. 21, 2019

Hong Kong Is Where Peaceniks and Radicals Unite

By Yi-Zheng Lian

抗議デモを組織するのは学生たちだ。メッセージが飛び交っている。「私はともに滅びよう。(弾圧する者たちとともに)」

人民の戦争が再現しつつある。超現実主義的、ポストモダンな形で。世界の主要金融センターである香港において、共産党のジャガーノートに反対して。

FP AUGUST 22, 2019

Beijing Is Shooting Its Own Foot in Hong Kong

BY ANTONY DAPIRAN


 雇用保障プログラムとMMT

PS Aug 16, 2019

The Case for a Guaranteed Job

ROBERT SKIDELSKY

ヘッジファンド・マネージャーのWarren MoslerBernie Sanders and Rep. Alexandria Ocasio-Cortezも、政府が公共事業で働きたいと願っている労働者たちを、固定賃金で、雇用することができる、と主張する。

雇用保障プログラムa job-guarantee program (JGP)は、さまざまな形で、環境経済学の一部であり、アルゼンチン、インド、南アフリカから、非リベラルのポピュリストであるオルバンのハンガリーなど、各地の政府が静かに語っている。

エコノミストたちL. Randall Wray, Flavia Dantas, Scott Fullwiler, Pavlina R. Tcherneva, and Stephanie A. Keltonは、アメリカ政府が(例えば、週35時間を上限として、時給15ドルの固定で)雇用を保証することを求めている。産業革命以来、存在してきた望まない失業は、消滅するだろう。

しかし、JGPには問題が多い。資本主義社会で可能か? 誰が費用を負担するか? 政治的な支持が得られるか? その目的は何か?

JGPと古典的なケインズ主義との違いは3点である。1.民間部門が完全雇用を実現できない、というだけでなく、政府が直接に雇用をもたらす。2.貧困、不平等、気候変動など、社会的目標について、古典的ケインズ主義よりラディカルである。3MMTによってJGPの財源問題を解決する。

ケインズ主義の「マクロ政策」、あるいは、金利、税、政府支出の裁量的な行使で、政府は総支出を完全雇用水準に決定した。しかし、約20年はうまくいったが、2つ問題が起きた。1.金融・財政政策が依拠する政府の予測能力には限界があった。2.政治的圧力を受けて、財政の不均衡がますます拡大した。

こうしてマネタリスト反革命が起きた。より大きなインフレなしには完全雇用を達成できない。この新しい政党は理論を、政治が承認した。1980年代初め、イギリスのサッチャー首相とアメリカのレーガン大統領だ。市場は、すべての就職希望者に市場価格で雇用を与える。賃金を下げないのは労働者の選択だ。

もし雇用水準が社会的に受け入れられないほど低いなら、働く意欲を高めるように労働組合を弱め、失業手当を減らすべきだ。「弾力的な」労働市場による、「自然な」、均衡水準が、自動的に達成される。財政政策は、市場の安定化、インフレ目標、といった非常に弱い形で生き延びた。

しかし、この主張もそれ自体の問題に直面した。貧困と不平等が強まり、成長が減速したのだ。2008年に始まった大不況は、ケインズ主義の教訓を復活させた。完全雇用、長期の経済安定化、分配の平等、社会経済目標を、政府は達成するべきだ、と考える者とJGPは重なっている。

ネオリベラリズムの失敗に対する最も過激なポスト・ケインズ主義の反応がJGPである。それは2つの点だ。1.完全雇用を、需要管理ではなく、政府雇用で直接に実現する。2MMTにより、完全雇用を達成するための財政制約を無視する。

MMTは、政府と、家計や企業は違う、と考えるが、正統派はそれを批判する。正統派の「財政制約」論には、2つのタイプがある。1.国債の保有を受け入れる意思に制約がある。2.「実物資源」に制約される。それを超えるとインフレになる。

しかし、政府はそれ自身が銀行を持つのである。クラウディング・アウト論も間違いだ。QEは世界金融危機が大恐慌になるのを防いだ。MMTと組み合わされたJGPは、フリードマンの「ヘリコプター・マネー」に似て、貨幣供給を印刷ではなく、支出によって行う。

ケインズ主義者には、正統派の「クラウディング・アウト」論を否定しても、MMTを否定する者がいる。それは財政の「信認」が無限ではないからだ。

JGP-MMTについて確認すべき点は6つある。1.総需要ではなく労働需要、生産ではなく雇用を重視する。2.経済は部分的に過熱状態になることを考えると、総需要よりも需要の分配を重視する。3.無駄な労働に資源を浪費することがないよう、JGPは各地の政府・NGO・社会事業が執行する。4.景気循環のバッファーとして機能し、裁量的な財政政策ではない。5JGPの固定賃金の水準は政府が決める。6MMTJGPの資金を供給する。

正統派のエコノミストにとってショックであるのは、MMTが、主権国家の政府は、債券発行も徴税もしなくてよい、と考えることだ。それはアバ・P・ラーナーに由来する「機能的財政」論だ。1.政府はインフレと失業とを管理するべきで、財政の健全さは関係ない。2.貨幣の発行量は金利、もしくは、投資の望ましい率に応じて調整すべきだ。3.こうした目的に対して、政府は貨幣を印刷し、節約し、消去するべきだ。

唯一の制約はインフレである。しかし、ケインズはラーナーについてコメントした。申し分ない議論が、人びとを納得させることはできないだろう、と。

ハーヴァードの2Kenneth Rogoff and Lawrence Summersは、MMTがインフレ的だ、と批判した。しかし、その欠陥は、呪術的経済学だ、といったのではなく、呪術的政治学にある。

MMTを擁護するエコノミストたちScott Fullwiler, Rohan Grey, and Nathan Tankusは反論する。1.過剰な需要は、融資条件や増税で管理できる。2.供給における投機は規制・価格管理できる。3.新しい支出のインフレ的な影響は、総需要ではなく、部門や地域ごとに管理される。4.インフレに対する増税は、累進性や融資条件で行う。

JGP論は3つの点を明確にする。1.賃金がたとえ弾力的でも、労働市場は完全雇用を実現しない。2.完全雇用の実現は政府の責任だ。3.その最善の方法は、政府による雇用保障である。

私の評価は、1.その通り。2.賛成だ。3.健全財政論によるMMT批判が正しい。財政に規律を課すべきだ。しかし、債券発行は想定される以上に弾力的である。

それは国家の規模、経済的な役割、そのための資源に関係する。富裕層や権力を持つ者は、一般に、国家の規模を限定しようとする。自分たちで何でも自由にしたいのだ。貧困層や権力を持たない者は逆である。

ケインズが支持したのは後者だった。

FT August 18, 2019

Workers’ and managers’ interests are aligned

Bernard Spitz

NYT Aug. 20, 2019

Save Capitalism by Paying People More

By Tom Wilson


 トランプ外交

NYT Aug. 16, 2019

With Trump as President, the World Is Spiraling Into Chaos

By Michelle Goldberg

トランプのデマゴギーは国内で誰も真面目に聞かない。しかし、国際政治では違う。アメリカは問題を起こしたわけではないが、その仲介を間違い、その悪化を促している。

FP AUGUST 18, 2019

There Once Was a President Who Hated War

BY STEPHEN M. WALT

FP AUGUST 21, 2019

Why Trump Fails at Making Deals

BY MICHAEL HIRSH


 アメリカの人権外交

NYT Aug. 17, 2019

The Tired and Poor Who Make America Great

By Anastasia Edel


 Brexitする破綻国家

The Guardian, Sun 18 Aug 2019

What next for British foreign policy in a post-Brexit world?

Christopher Hill

PS Aug 20, 2019

Is Britain Becoming a Failed State?

CHRIS PATTEN

かつて私はイギリス政府やEU代表として「破綻国家」を定義する機会があった。部族対立、軍事クーデタ、経済的破綻、高い幼児死亡率。それはアフリカやラテンアメリカに多くの例を見出した。しかし、その定義は、グローバリゼーションによって取り残された人々が出るケースや、意図したことが実現できない政府、にも適用されると考えた。

それは遠くに探しだすケースではなく、今、イギリスで起きていることだ。


 民主主義の改革

FT August 19, 2019

Democracies need renewal if they are to survive

Tony Barber

うまく機能するためには、自動車、パソコン、人の身体と同じように、民主主義もときどき修理する必要がある。

アメリカやヨーロッパの市民たちが無力だと感じ、政治や経済のシステムが自分たちの必要に十分こたえていない、自分たちを代表していないと感じる者が多くいる。かつて深く信頼されていた制度への不信感が広まっている。

2016年のアメリカ大統領選挙、EU諸国やBrexit国民投票に、ロシアが介入したことは深刻だったが、それは西側民主主義の問題から焦点をそらせてしまう。アメリカにおける投票権の抑圧、選挙区の書き換え、選挙資金規制の失敗、ヨーロッパ諸国でも汚職やガバナンスの劣化があり、EU機関は説明責任を果たさなかった。情報操作やフェイク・ニュースも以前からある問題だ。

2008年の金融危機とその事後処理は、極端な不平等と不公正の感覚を広めた。多数の市民が、彼らの政治制度が自分たちのことを気にする余地はない、と思った。政府は銀行を救済し、増税し、福祉国家を削減し、エリートたちのしたい放題だった。特権のために政治は動いているという感覚は、緩やかな不満の高まりに火をつけた。

政治を浄化し、民主的な参加を拡大することが重要であるが、また資本主義システムの改革もそれに劣らず重要だ。

FP AUGUST 21, 2019

We’re All Living in Berlusconi’s World Now

BY TOBIAS JONES

イタリアはいつも政治的革新の国だった。教皇の国を与え、ファシズムを広め、億万長者の道化師による政府を樹立した。

政治はいつも1人の男だけを取り上げ、彼の信任投票だった。そのカリスマ性とミダス王の手触りが支持者によって膨張し、他方でその失策と犯罪が反対派と敵によって虚像となった。中間は存在しない。彼はキリストであるか、あるカポネだった。

トランプとジョンソンにも似たものがある。ベルルスコーニのように、彼ら2人も理想化され、悪魔化される。しかし、こういう政治家たちが権力を握り、その力を過小評価されている。

PS Aug 22, 2019

Will Democracy Die Last?

DOMINIQUE MOISI


 ドルと人民元

FT August 19, 2019

Washington warms to the idea of a weaker dollar

Brendan Greeley

FP AUGUST 19, 2019

The United States Will Miss China’s Money

BY ZACHARY KARABELL


 1989

PS Aug 19, 2019

Remembering the Miracle of 1989

CARL BILDT

1989年の冷戦終結は、もっと流血の事態になっていたかもしれない。


 G7に向けて

PS Aug 19, 2019

Europe Must Oppose Trump

JEFFREY D. SACHS

EU指導者たちは、トランプを喜ばせ、説得し、無視し、同意できないと合意し、それでもトランプの害悪は底なしだった。残された唯一の選択肢は、トランプに反対することだ。

FT August 22, 2019

The next stop on Donald Trump’s end-of-diplomacy tour

Edward Luce

グリーンランドを買収したいという話は、トランプが地球温暖化に無関心で、クリミア併合後のロシアに対する制裁もやめることを示唆した。

FT August 22, 2019

G7 summit in Biarritz should mark the return of the western alliance

Risto Penttila


 ヨーロッパのドイツ問題

NYT Aug. 19, 2019

The World Has a Germany Problem

By Paul Krugman

FT August 20, 2019

Europe must be braced for a trio of trade shocks

Martin Sandbu

FP AUGUST 21, 2019

Germany Is an Economic Masochist

BY SIMON TILFORD

SPIEGEL ONLINE 08/22/2019

Economic Downturn

Germany May Abandon Its Beloved Black Zero

By Christian Reiermann


 企業の目的

FT August 20, 2019

Business must act on a new corporate purpose


 モディとカシミール

FT August 20, 2019

Modi’s ‘dawn of development’ is a dark hour for Kashmir

Amy Kazmin

モディはカシミールの貧困を地域の政治が悪いと責めた。彼は新しい政治勢力を育てて、同盟者にしたのだ。それほど若者たちの不満は高い、と考えた。あるいは、地域の激しい怒りを買うだけか。


 グリーンランド

The Guardian, Wed 21 Aug 2019

The Guardian view on Trump and Greenland: no sale

Editorial

FT August 21, 2019

So you want to buy Greenland, Mr Trump? Let’s talk terms

Henry Mance

NYT Aug. 21, 2019

Trump, Greenland, Denmark. Is This Real Life?

By The Editorial Board

FT August 22, 2019

Greenland should not be another Trump property deal


 中国の技術開発

FT August 22, 2019

Righteous anger from the US will not win the tech war with China

James Kynge

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The Economist August 10th 2019

How will this end?

US-China trade: Dangerous miscalculations

Kashmir’s status: Modi’s bad move

Turmoil in Hong Kong: Seeing red

Kashmir: A state no longer

Currency wars: The guns of August

Finance in India: On the way to Wall Street

(コメント) 記事は、香港の重要性は低下していない、と強調します。むしろ、中国経済や上海が成長したせいで、ますます多くの企業や銀行が香港に拠点を置いている。中国政府が武力介入しないとしても、独自の政治・法体系を否定するなら、アジアの拠点はシンガポールなどへ移るだろう。

同じ時期にインドのモディ政権はカシミールの自治権をはく奪し、直接の軍事管理に動いた。米中の通貨戦争も始まった、あるいは、その兆候が示された。

インドのムンバイやプネーにおける欧米金融機関のインド人エンジニアの大規模雇用が紹介されています。

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IPEの想像力 8/26/19

財政緊縮策を全く無視できる現代貨幣理論MMTは、軽薄で、極左的で、冒険主義だ、と批判される。それは当然かもしれない。他方、金融資産への量的緩和QEができるなら、国民の支出を維持するため労働者・貧困層に向けたQEは、なぜできないのか?

では、この2つが結びつくようなアメリカ民主党のラディカルが主張する完全雇用プログラムを、どう評価すればよいのか? それほど期待せずに読み始めましたが、なるほどスキデルスキーは明晰、かつ、説得的です。

Robert Skidelsky, “The Case for a Guaranteed Job,” PS Aug 16, 2019.

世界金融危機後の、金融資産市場に対する中央銀行による異常な大量買い取り(債券市場買い支え)政策は、アジア通貨危機の際に、各国の企業や家計が破綻するのを助けなかったことに比べて、なんともあからさまな支配層の救済であり、とても正当化できる政策ではありません。

日本がバブル崩壊後にも、銀行を破産処理せず、土地の価格を維持したことは、その中間的・折衷的なケースではないでしょうか。

今、QEの末に、世界不況が起きるなら、一層のQEや、政府と協力した公共投資への中銀融資が始まる、と議論されています。

むしろ、最初から、そうするべきではなかったのか? なぜ最初に、金融機関や資産家を助け、彼らの富を膨張させてから、公共投資や労働者・貧困層の救済を始めたのか? 差別的に、大銀行と富裕層の利益を優先した中央銀行は、今後、政治的な攻撃にさらされるでしょう。

では、MMTを支持できるのか? 日本の国債は国内で保有され、円建てだから、本当は債務ではない、という主張が繰り返されるようになりました。日本はMMTのケースだ、というわけです。

しかし、世界全体でも、中央銀行を作って、世界不況を避けるために貧困国の開発に投資すれば、債務に苦しむ発展した諸国の企業や銀行は、このフロンティアの貿易や投資によって利益を確保し、生産的な活動を再建できるかもしれません。中国が「一帯一路」でしたように。

なぜ、最初からそうしないのか? 分配をめぐる問題、政治権力の問題、選挙で勝つため、組織された生産力と、それがもたらす富を消費し、あるいは投資する、地域や国家、階層や貧富の不平等が、単なるMMTには処理できないのでしょう。

MMTは、軽薄で、極左的で、冒険主義だ、と批判するのは、既存の金融システムや資産を保有する者が、政治秩序を支配することの裏返しの表現なのです。

しかしスキデルスキーは、MMTの経済的な浪費と、それ以上に、政治的な悪用の危険性を無視できない、と考えます。

マネタリズムやネオリベラリズムに対する、世紀の大論争がここに現れます。

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