IPEの果樹園2019

今週のReview

7/29-8/3

***************************** 

簡易版

[長いReview

****************************** 

主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 イギリスとイラン

NYT July 19, 2019

Trump and Ahmadinejad Are Right

By The Editorial Board

FT July 20, 2019

UK dilemma on Iran confrontation is part of a much larger conflict

Gideon Rachman

ジョンソンは首相となって最初に、軍事衝突にもなりかねない、イランとの外交交渉に取り組む。ホルムズ海峡でイギリス国旗を掲げたタンカーをイランが拿捕したのは、ジブラルタル付近でイギリスが、シリア制裁に違反する疑いでイランのタンカーを拿捕したことに対する報復であると考えられる。

イギリスの軍事的・外交的な現実は、軍事的な対応策を制限する。イギリスは、この事件以前から、外交的対応を続けてきた。UKがイランの影響ある地域で軍事行動を起こす能力はない。どのような軍事衝突であっても、アメリカの対応に頼るしかないだろう。しかし、トランプ大統領が軍事行動に乗り出すことを嫌っているのは明らかだ。

アメリカは、「最大限の圧力」という戦略を採って、イランとの直接交渉と有利な条件(アメリカ優位)の新しい合意を目指している。他方、イラン指導部は、戦争に消極的なトランプの姿勢を前提に、小さな軍事的挑発を続けるだろう。

イランの計算は、ワシントンにいるボルトンらの強硬派の存在によって、誤算に終わるかもしれない。イギリスは、次第に強硬策に傾き、アメリカによるイラン経済の破壊に協力するだろう。それは、EUの望むイラン核合意の継続を、最終的に破壊することになる。

そして、イギリスは長期的な外交ポジションを大きく変える結果になる。

FT July 21, 2019

 ‘Eye for eye’ ideology behind Iran tanker seizure

Najmeh Bozorgmehr in Tehran

FT July 22, 2019

Iran tanker dispute is not solely Britain’s problem

FT July 25, 2019

Boris Johnson and Iran — time for pragmatism

Roula Khalaf


 気候変動と民主主義

FP JULY 20, 2019

DEMOCRACY IS THE PLANET’S BIGGEST ENEMY

BY DAVID RUNCIMAN


 ボリス・ジョンソン首相就任

SPIEGEL ONLINE 07/20/2019

Mad in Britain

How Boris Johnson Turned the British against Europe

By Jörg Schindler

ボリス・ジョンソンは常にトップを目指してきた。Brexitが勝利することに貢献し、今や、その達成を担う。しかし、彼自身、何をしたいのか、わかっていない可能性がある。ヨーロッパは混乱の秋を迎える。

保守党党首選挙でも、ジョンソンは楽しませ、エネルギーを放っていた。

Brexitは、イギリス政治を一種のこん睡状態に陥らせた。イギリスは意識を失い、指導者のいない国になった。

イギリス人の絶対多数が、ジョンソンを信頼しなかった。ほら吹き、中身のない、乱暴な煽動家。ずる賢い、雄弁家で、多くの者を独自の魅力で引き付ける。

支持者にとって、ジョンソンは尽きることのないカリスマ性を持っており、自分自身に絶対的な信念を持つが、具体的な行動計画は持っていない。

頂点を目指す絶え間ない闘いを好み、ユーモアを欠かさない。

オックスフォード大学を卒業後、ジョンソンはブリュッセルからEUについての記事を書き始めた。すぐに彼はEUの細かい無駄話を楽しむようになった。それはロンドンの保守党、特に、ますます大きな声を上げるようになっていたヨーロッパ懐疑派を喜ばせた。

人々が彼の寓話を楽しむ限り、それが真実かどうかは、ピノチェト(チリの独裁者)のように、無関心であった。ジョンソンは、エビ風味のポテトチップスをEUは禁止したがっているとか、大陸全体でEUはコンドームのサイズを決めたがっているとか、魚と同じように、EUはカタツムリのサイズを分類したいのだ、と書いた。EUの単一市場は、史上最大の美術品窃盗をもたらすだろう。大陸の国境は、麻薬取引、テロリスト、武器密輸業者、あらゆる分野の移民たちに開放されている、とも書いた。

ボリス・ジョンソンは、ベルルスコーニ、ドナルド・トランプ、その他の魅惑的なポピュリストたちと同じように、世界の舞台に遅れて現れたが、政治の冒涜と幼児化に貢献した。

世論調査で、ジョンソンから中古車を買うと答えたのは、わずか13%しかいなかった。ほぼ半数が、彼が分裂した国を団結させることを疑い、さらに多くが「不道徳」と答えた。

保守党に登録した16万人の投票で、次のイギリス首相が決まる。

300年以上の歴史を持つ保守党が、ジョンソンの政治的セクトに矮小化され、かれを救世主とみなす。ジョンソンは唱える。この偉大な国を信じよう。われわれにはできる。信念、愛情、希望を持つように訴える。しかし、政治的な話は何もない。

Brexitによって、ジョンソンは何をしたいのか? その政治権力を何のために使うのか? 彼の理想はチャーチルだ。

いつものように細部は示さないまま、ジョンソンはBBCのインタビューで答えた。離脱交渉を進める。EU市民権。移行期の計画。北アイルランドにハードな境界線も。ハイテクで処理すれば必要ない、という以前の発言を指摘されて、ジョンソンは驚いた。

結局、ジョンソンは、EUと何の合意もなく離脱する、最悪の破滅コースを選択するのだろうか。最後の瞬間まで彼は決めないが、最後に決めるのは彼だ。

「破滅など存在しない。すべては好機である。」と彼は述べた。「そして、もちろん、機会は新しい破滅にもつながる。」

FT July 22, 2019

An opportunity for Britain’s new prime minister

Nick Butler

NYT July 22, 2019

Boris Johnson Is How Britain Ends

By James Butler

ボリス・ジョンソンは誰にでも平気でうそをつくが。首相になる。1945年以来、最も複雑で、扱いにくい、イギリス政治の危機に対処する。

ジョンソンは、その怠惰と、伝説に近いご都合主義で有名だが、偽りを実践するのがうまく、容易に儲かるという話で聴衆の偏見を冗長するのがうまい詐欺師である。彼の私生活は下半身のスキャンダルに満ち、公的な業績は何もない。

ジョンソンの首相就任は、イギリスという国家の終わりになるかもしれない。

連合王国the United Kingdomは、1922年の憲法条約に依拠するが、何世紀にもわたる積み重ねがある。Brexitはもっぱらイングランドの情念で推進されたが、北アイルランドやスコットランドでは残留を支持する者が多数であった。

現在、独立派は多数を占めていない。しかし議会の混乱が続くことで、スコットランドの独立を求める住民投票を再度行う要求が強まるだろう。

北アイルランドについて、ジョンソンは民主統一党DUPとの連立を継続することを望んでいる。DUPの票を失えば、議会の多数を失うからだ。しかしジョンソンは、そのための安全策について見直しを求めている。この条件こそ、メイの合意案が3度とも否決された理由であった。

このような状況を打開するために、伝統的な手法は議会の解散、総選挙である。しかし、世論調査では支持が4つに分裂している。ファラージのBREXIT党が、自由民主党と労働党に並んで、保守党の支持を奪っている。保守党が強硬策に傾いてBREXIT党に流れる支持を取り戻せば、より多くのリベラルな支持を失う。ジョンソンの無謀な計画に頼って、支持者が分断され、コービンの労働党が勝利するリスクが大きすぎる。メイの解散劇の失敗を、誰も繰り返したくない。

政治状況は悪化するばかりだ。EUは忍耐も善意も失っている。

ジョンソンには原則がない。その顕著な不誠実を超えて一貫するのは、銀行家を擁護する、減税する、事実に即して彼を批判する者を嫌うことだ。

イギリスの深刻な分断状態を修復するには、深い人格と確信、原則が求められる。何一つとして、彼にはないものだ。彼の不気味な小説で、ジョンソンのような政治家が考える。「世界全体が複雑なジョークのようなものだ。」

The Guardian, Tue 23 Jul 2019

The Guardian view on Boris Johnson’s leadership: the years of a clown

Editorial

FT July 23, 2019

Which Boris Johnson will the new UK prime minister prove to be?

Miranda Green

PS Jul 23, 2019

Boris’s Brexit

ANATOLE KALETSKY

ボリス・ジョンソンが首相となって、Brexitの悲喜劇はクライマックスを迎える。

悪いニュースは、保守党党首選挙でジョンソンが示した合意なき離脱は、2008年のリーマン・ブラザーズ倒産と似た経済活動の突然死を生じる恐れがあることだ。

良いニュースは、前任者のテリーザ・メイに比べて、ジョンソンはずっと賢明で、狡猾な政治家であることだ。イギリスの将来の見通しは、どのような形で離脱しても悲観的である。しかし、今や合意なき離脱に比べるなら、それ以外の離脱は、短期的な損失を急速な回復によって相殺されるだろう。完全な崩壊のリスクが去って、イギリスとヨーロッパとの経済関係が長期的にほとんど変わらず、長期の移行過程の確実性が、ビジネスや消費の気分に現れるからだ。

このシナリオでは、ドーバー海峡の両側で起きる政策変化が、イギリスとその貿易相手国にBrexitが与える損失を上回ることを想定する。UK経済は、間違いなく、ジョンソンの公約である高度の政府支出と減税から循環的な刺激を受けるだろう。ヨーロッパ諸国、特にドイツとフランスは、イギリス企業を単一市場から締め出す政策によって、金融、メディア、製薬、防衛、自動車のような産業で機会を得るだろう。

では、長期の移行に向けて秩序ある離脱を実現する蓋然性はどうか? 破滅的な突然の切断は避けられるのか?

少なくとも3つの理由で、合意なき離脱はほとんど起きないと言えるだろう。それは、ジョンソンにもかかわらず、ではなく、ジョンソンだからこそだ。

1.議会は合意なき離脱に反対する者が多数を占めている。メイに対して以上に、ジョンソンに対する反対で団結している。ジョンソンは、数人の保守党員が反対に回れば政権を失い、総選挙になる。合意なき離脱のほかの道を見出さない限り、ジョンソンは史上最も短命の首相で終わるだろう。

2.ジョンソンには、メイになかった逃げ道がある。もしEU指導者たちがジョンソンにわずかな見せかけの修正を与えれば、ジョンソンはその「新しい合意」を議会で通過させるだろう。これこそがヨーロッパ懐疑主義者たちがメイをジョンソンに交代させた理由だ。「本物の」Brexit推進派であるジョンソンの合意なら、これを支持するほかに選択肢はなく、選挙でもBrexitに失敗したと攻撃されない。かつてはBrexitを阻止することを望んだ2大政党内のヨーロッパ支持者たちも、今なら合意なき離脱を避けるために、交渉の結果を何であれ支持する。

EUはわずかな修正を与えるだろうか?  与えるだろう。Brexitの混乱が終わることを願っている。北アイルランドの国境はどうか? アイルランドのPat Leahy首相は、数年にわたって秩序ある移行を確認できれば、イギリスはEUとの恒久的な通商合意に熱心であるから、アイルランドはもっとオープンな境界を求めるだろう、と述べた。

3.ジョンソン自身は、その発言に制約されない。独自の政治スタイルを持つ。世界がジョンソンの約束を、讃美歌を聴くように、聞いただろうか? 

もしジョンソンが合意なき離脱を実行すれば、彼はあらゆる破局に直面する。他方、もし秩序ある離脱、シンボリックな離脱を実現すれば、ビジネスの心理は好転し、減税や政府給付にも都合が良い。ケインズ主義的刺激策で、来春の選挙にジョンソンの保守党は確実に大勝利するだろう。

無原則を政治の原則とするこの放蕩者にとって、彼を権力の座に就けたヨーロッパ懐疑主義者たちにどのような愚かな約束をしたとしても、秩序ある、交渉による離脱こそが好ましい選択だ。

NYT July 23, 2019

Boris Johnson Is About to Collide With Reality

By The Editorial Board

NYT July 23, 2019

Boris Johnson Faces a Swift and Bloody Nemesis

By Roger Cohen

FP JULY 23, 2019

Will the Sun Set on the Boris Empire?

BY EDOARDO CAMPANELLA

ボリス・ジョンソンは、本質的に、懐古主義の指導者だ。EU離脱後のイギリスの将来を、ロンドンの過去に求め、イギリスの真のパワーと影響力を膨張させた。イギリスはもはや海洋を支配せず、かつての植民地であるインドは大国を目指し、大陸ヨーロッパは戦争に満ちた土地ではない。しかし、彼に言わせれば、ボリスの帝国でも日は沈まない。

イギリスの孤立こそが、その例外主義を生んだ。イギリスは、諸国家の乱立する大陸から地理的に切り離されるだけでなく、歴史的に特異である。イギリスが誇りとするのは、その例外的に連続する自由、自治政権、法の支配の歴史であることだ。

しかし、これは大陸から見れば、異なる意味を持つ。冷戦において統一した西側概念が生まれる前は、アングロサクソン世界と大陸ヨーロッパが3世紀にわたって対抗していたのだ。イギリスにとって、ヨーロッパもしくはユーラシアに覇者が現れ、グローバルな勢力均衡を破壊するたびに、すなわち、Charles V, Philip II, Louis XIV, and Napoleon Bonaparte to Wilhelm II, Adolf Hitler, and Leonid Brezhnevがそうだったが、秩序を回復するために、アングロサクソンが介入した。

グローバル・ブリテン戦略とは、懐古主義的に、EUの普通の加盟国から、近代の帝国権力に戻るものだ。しかし英語圏諸国も、アメリカも、旧イギリス植民地の英連邦も、まったくEUの代わりにならない。

それは国内向けのアピールだ。ジョンソンのBrexit仲間のエリートたちを除けば、その支持者は、地方の工業地帯に住む人々であり、非常に内向きだ。彼らは自国の国境を守るだけで、田舎の静かな生活を望んでいる。それは21世紀の政治にふさわしい指針ではない。

The Guardian, Wed 24 Jul 2019

Britain is boiling, and ditching the duvet won't solve the problem

Elle Hunt

FP JULY 24, 2019

Boris Johnson’s Russian Oligarch Problem

BY MARK GALEOTTI

The Guardian, Thu 25 Jul 2019

We’ve yet to work out how to oppose Boris Johnson. It won’t be easy

Suzanne Moore

FT July 25, 2019

Three things to know about Boris Johnson’s premiership

Philip Stephens

PS Jul 25, 2019

Boris Johnson and the Triumph of Gullibility?

RAJ PERSAUD

NYT July 25, 2019

Why I’m Rooting for Boris Johnson

By Bret Stephens


 歴史と社会目標

The Guardian, Sun 21 Jul 2019

Turning our back on studying history fits with a society that’s losing its common purpose

Will Hutton


 ロシアと中国の同盟

NYT July 21, 2019

What’s America’s Winning Hand if Russia Plays the China Card?

By The Editorial Board

アメリカ国防総省Pentagonの最新の防衛白書は、ロシアの増大する戦略的脅威を強く警告している。ウラジミール・プーチン大統領は、「ニクソンの逆転」として、アメリカに対抗する「中国カード」を使っている。

2014年のクリミア危機で西側がロシアに対して制裁を課して以降、中国とロシアの政府当局は、西側の民主主義を攻撃し、戦後アメリカの指導体制に代わるものを提示する、という大義を共有した。今や、中国とロシアの関係はこれまでになく緊密化し、アメリカに対抗する恒久的な制度を支援しつつある。

アメリカが影響力を行使する形でできた、世界システムは、モスクワと北京が同盟することで、大きく揺らぐだろう。両者の親密な関係は、先月、モスクワの会合で、プーチンが中国に1000億ドルを超える貿易、前年比30%の増加に感謝し、暗黙に米中貿易の停滞を非難したことに示される。

両指導者は、2013年以来、およそ30回の会談を重ね、ロシアが中国に最新の軍事技術、S400地対空ミサイル、SU-35戦闘機、を売却することに合意した。2012年と昨年秋には地中海で海上演習を行った。ロシアが東シベリアで戦後最大の戦争ゲームを行ったことに並行する。両国の合同軍事演習を定例化する計画がある。

氷が溶けつつある北極圏では、両国が合同で石油・天然ガスの探査を行っている。国連での投票でしばしば同様の行動をとり、イラン、北朝鮮に関する立場が似ている。ともに中東での活動を積極化している。

アメリカと同盟諸国は、「グレー・ゾーン」で戦術的にロシアと中国が行う、政治不安を醸成する介入に、十分な対応を進めていない。すなわち偽装した軍事介入、政治・経済的強制、情報操作、サイバー攻撃、電波の遮断。

プーチンは、中国との協力がロシアの平和と繁栄を高める、と自信を示した。特に、彼のユーラシア経済同盟と、習近平の一帯一路が連携することを強調した。両国の経済・軍事・技術と権威主義体制の融合した軌跡を考えれば、アメリカは長期的に見てはるかに大きな挑戦を覚悟するべきだ。アメリカの民主主義に介入するロシアに対して、トランプ政権の不器用な対応策は間違っている。

歴史的に、中国とロシアは決して公式な同盟に合意しなかった。両国は、戦争とイデオロギーで対立し、今も東アジア、中央アジア、北極で影響圏を争っている。中国は台頭する支配的パートナーであり、ロシアは衰退する大国だ。中国は世界第2位の経済規模を持つが、ロシア経済は上位10か国にも入らない。

しかし、彼らの目標は一致しており、西側の利害を侵している。アメリカにひつようなことは、民主的同盟諸国を非難するのではなく同調し、確固とした政治経済モデルを提示することだ。

PS Jul 23, 2019

Can Europe Become a Global Player?

MARK LEONARD

PS Jul 25, 2019

Which Way Now for the EU?

KEMAL DERVIŞ

2019年の世界のパワー構造は、数年前と比べても全く異なっている。われわれはG2世界に住んでいる。中国のパワーと影響力は、急速にアメリカに追いついている。

軍事力においては中国がまだアメリカに大きく遅れているが、そのGDPは購買力で見てアメリカを抜いた。中国は第1級の軍事力を持ち、アメリカよりも多く、科学、エンジニアリング、医薬品の研究者を育てている。世界第4位の銀行、技術分野におけるグローバル・リーダーを自慢する。

EUG3世界を目指すなら、そのソフト・パワーを、ハード・パワーと並んで、ルールに依拠したグローバル秩序の構築に活用するべきだ。アメリカや中国を含めて、世界中にその価値を広めるため、模範を示さねばならない。


 イギリスのリベラル

The Guardian, Mon 22 Jul 2019

The fightback for liberal Britain begins here. Jo Swinson can lead it

Timothy Garton Ash

人々はイギリスの新しいBrexit推進保守党政権に注目し、自由民主党の党首選挙でJo Swinsonが顕著な多数を得て勝利したことを見逃している。

George Dangerfieldの名著が指摘したように、イギリスでは社会がリベラルを志向しているのに、リベラルな政党は奇妙なことに消滅した。リベラルの100年を観れば、そのジェットコースターに乗ったような景色が味わえる。

1次世界大戦が終わるまでの60年間、リベラル・自由党は政権を担う主要政党の1つであったが、(得票と、不公平な選挙システムにより)1931年から1970年代前半まで、小政党になった。その後、労働党を飛び出した社会民党と同盟を組み、最終的に合同して自由民主党として復活した。2010年、選挙に勝利して保守党との連立政権に合意したが、そのプラグマティズムは2015年の選挙で有権者に罰せられた。

2016年のBrexit国民投票以降、リベラルは明確に2度目の国民投票を主張し、残留派の政党となった。保守党のBrexitが混乱し、労働党は明確に語らないまま、リベラルの支持が高まった。しかし、それは2つの条件による。1.離脱か、残留か、という問題が、他の論点を圧倒している。2.保守党のボリス・ジョンソン、労働党のジェレミー・コービンは、ともに広く支持されていない。

この機会をつかむために、Swinsonは、リベラルの党首として3つの基本方針を魅力的に示した。1.人民と地球を第1に重視した経済、2.技術革命の推進、3.われわれの価値のために立ち上がる、ポピュリズムとナショナリズムに反対するリベラルな運動を起こす。

リベラリズムを深く理解し、推進しなければならない。それは個人の自由を中心に据えるが、John Locke and “Freeborn John” Lilburne, そして John Stuart Mill and William Ewart Gladstone, そして Isaiah Berlin and George Orwellに至るイギリスのリベラリズムには素晴らしい伝統がある。気候変動、ジェンダーの平等、教育、リベラルな国際秩序としてのEUを、リベラルな諸価値としてSwinsonは語ることだ。

FT July 23, 2019

Liberals should cheer the return of state power

Martin Sandbu

FT July 24, 2019

China is using trade war with US to defeat liberal thinkers

Shirley Yu


 1930年代の経験

FT July 22, 2019

Donald Trump, Boris Johnson and lessons from the 1930s

Gideon Rachman

ヒトラーの台頭を経験した作家の日記は、1930年代と現在との非常な類似性を示している。


 アメリカ後の国際秩序

PS Jul 22, 2019

Post-American Networks

ANNE-MARIE SLAUGHTER, ELINA RIBAKOVA

FT July 26, 2019

The business case against Bretton Woods

Gillian Tett


 債務危機

NYT July 22, 2019

The Next Debt Bombs

By David Leonhardt


 オフショア・バランシング

FP JULY 22, 2019

Restraint Isn’t Isolationism—and It Won’t Endanger America

BY STEPHEN M. WALT

オフショア・バランシングの批判者は、アメリカがもっと抑制された外交を展開することは国際安全保障を不安定化する、という。それは間違いだ。

1.孤立主義と同一視してはいけない。2.地域のバランスを重視する。3.アメリカの撤退は、真空状態をもたらさない。そもそも世界の大部分は戦略的な重要性を持たない。4.価値の重視。5.核拡散の防止は誇張されている。


 ドイツ政治の再編

FT July 23, 2019

Pressure for change is building in Germany


 日本人の現金依存

FT July 23, 2019

The painful path to curing Japan of its cash addiction

Leo Lewis and Kana Inagaki in Tokyo


 ドイツの平和主義

NYT July 23, 2019

The World Used to Fear German Militarism. Then It Disappeared.

By Jochen Bittner


 モディの選挙

YaleGlobal, Tuesday, July 23, 2019

Modi’s Success in India’s Elections: Five Factors

Gilles Verniers


 ウクライナ

NYT July 23, 2019

The Risks of Radical Renewal in Ukraine

By Una Hajdari

FP JULY 24, 2019

Welcome to Ukraine’s Post-Post-Maidan Era

BY MAXIM EDWARDS


 ジョンソンとトランプ

FP JULY 24, 2019

Boris and Donald’s Wrecking Ball

BY MICHAEL HIRSH

FT July 25, 2019

Trump, Johnson and the new radical tribes of politics

Simon Kuper

ドナルド・トランプやボリス・ジョンソンは、その政治劇をコミュニケーションする過程において、彼らの政治的な部族、過激な、新しい部族を創りだした。そして、彼が許されない境界を越えるとき、部族も一緒に政治的境界を越えて移動した。

それは政治的舞台の過激化によるものであるし、彼らが新しい支配的部族として政治の過激化を実現した。指導者たちは、その従属者たちが想像したこともない領域へ連れて行った。

トランプのコミュニケーションにおける巧緻は、敵の部族も創りだすことであった。彼は、歴史上のいかなるリベラルの指導者にもできなかったような、リベラル派の団結を創りだした。

すべての新しい部族は、そのメンバーたちを孤独から解放する。アトム化した社会で、人々はますます1人で生き、職場や経済的階級に明確な帰属意識を持てない。特に、トランプの、テレビ・セットだけと過ごした世代は、新しい部族によってコミュニティーを与えられた。

彼らは政策に関心がない。それは文化運動だ。

部族は純化を求め続ける。誰でも次の段階では「裏切者」として糾弾される。旅が続く限り、故郷からどれほど離れても、メンバーたちは船にとどまるだろう。

PS Jul 25, 2019

The Crisis of Anglo-American Democracy

JEFFREY D. SACHS

トランプも、ジョンソンも、個人生活においては常習的な嘘と不道徳を示し、公的生活においても国益や有権者の利益を代表する意識がない。しかし、彼らが政府の最高位に就いた。

それは政治システム、選挙制度の欠陥によるものだ。アメリカの2大政党と政治資金における富裕層への依存、イギリスの小選挙区制と2大政党の行動は、こうした間違った指導者によって悪用されている。


 インフレ目標の廃止

PS Jul 25, 2019

Central Banks Should Forget About 2% Inflation

JEFFREY FRANKEL

2%のインフレ目標を達成するまで、景気を刺激する必要がある。すでに金利はゼロの水準だから、インフレ期待を高めて、実質金利を下げるしかない。

しかし、このような議論にはインフレ期待の測定が疑わしい。そもそも2%のインフレを目標として、現在の安定した物価から乖離するような、金融政策を追求する理由はない。

******************************** 

The Economist July 13th 2019

Riding high

Citizenship in India: Show me your papers

Italy’s public finance: The most dangerous man in Europe

The world economy: A strangely elastic expansion

The world is not flat: Global supply chains

(コメント) 世界経済が拡大し続けるのか、破局に向かうのか? アメリカ経済は拡大する時期の終わりに近づいているはずです。中国経済は減速するとともに、多国籍企業や消費者はグローバリゼーションの逆転を味わうのか? ・・・世界は平らではなかった。

****************************** 

IPEの想像力 7/29/19

今、株を持っている日本人は、何を考えているのでしょうか?

アメリカの好景気は続くのか? 連銀の金利引き下げで次の相場が来るから儲かるに違いない。米中貿易戦争は終わるとも思えないから、ここで儲けたら、もっと安全な資産に移るか? ドルでいいのか? 中国や韓国と関係の深い日本の株は大丈夫か? ・・・リブラ? まだ心配するのは早いだろう。

長期投資家なら、そんな心配はしないのかもしれません。しかし、長期といっても、目の前の不安を無視することはできないでしょう。

The Economistの2つの特集記事が面白いです。1つは、アメリカの弾力的な景気拡大。もう1つは、思ったほど平らでなかった世界のサプライ・チェーン。そして、この2つは交差しています。

これほど長期にアメリカ経済が拡大し続けるのは、なかったことです。つまり、次の下落は迫っている。いくらトランプが経済学のテキストを読まず、この時期に富裕層のための減税を行ったとしても、連銀は次の不況に備える意味でも、インフレを予感する状況で、金利を引き上げるはずでした。

それはない、と金融政策の方向を逆転したのは、はたして正しいことなのか? トランプの政治的圧力が効いたのか? そもそも金融緩和が再び行われる意味を、世界中の金融政策専門家は、どのように理解しているのでしょうか?

「弾力的な拡大」と、The Economistはよびます。「大いなる安定2.0」ではなく。

景気変動は、企業の投資の変動を示しています。記事は、2つの点で、それが変わった、と指摘します。1つは、在庫調整がなくなったことです。サプライ・チェーンの管理が、グローバルな規模で、きわめて正確に行われ、在庫を持たず、柔軟に調達されます。

そして製造業の設備投資ではなく、サービス業へ、特に、知的財産に対する投資に、経済活動は大きく依存するようになったことです。だから、かつてのような景気変動を恐れることはない。

もう1つは、信用の供給が続いて、ブームを生じ、債務に依存した拡大が行き過ぎて、それが破裂する、という条件は見られないことです。住宅市場も、消費者の債務も、以前のバブルや債務削減の痛みを忘れていないから。中国はその例外ですが、国際金融市場から切り離されています。

最後に、第3の要因として、金融危機を挙げます。金融部門が異常に拡大して、サービス業への移行がもたらす安定性を、破壊してしまう恐れがあります。記事は、アメリカの株価が究極的には企業の将来の利益を示している、という水準から乖離しているわけではない、と考えます。

もちろん、アメリカの好景気は必ず終わります。しかし、破局を恐れる必要はない。・・・そのアキレス腱が、グローバル・サプライ・チェーンである、とまでは書いていませんが。

******************************