IPEの果樹園2019

今週のReview

4/8-13

***************************** 

EU離脱政治の迷走 ・・・アメリカのポピュリズム ・・・金融市場の将来 ・・・中国の将来 ・・・スペインはメキシコに謝罪せよ ・・・トランプはあなたを殺す ・・・ポピュリズムの示す問題 ・・・NATO成立70周年 ・・・フィンランドの社会保障

[長いReview

****************************** 

主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 EU離脱の迷走

PS Mar 29, 2019

The Brexit Hour Has Come

CHRIS PATTEN

私の3人の娘、3人の孫も参加して、100万人が議会に離脱反対のデモをした。

イギリス政治にあったEU反対の動きを、保守党の前首相デイヴィッド・キャメロンは、EUの加盟国であることを国民投票にかける、と約束することで党内を治めた。それは賭けだった。

キャメロンが僅差で敗北したが、それは有権者が移民の増加を恐れたからだ。しかし、移民の多くはEUの外から来ている。妄想と鬱屈が投票を決めた。

その後、現在に至る混乱には3つの主な理由がある。

1.保守党の大部分がイングランド・ナショナリズムを掲げた。保守党の勢力は減少し、高齢化している。共和党のティーパーティー運動のように、より過激な勢力が影響を強める。

2.国民投票は、イギリスの伝統的な民主主義制度に挑戦するものである。議会が、国益に関するもっともよい判断を形成する、という信念を損なった。

3.テリーザ・メイ首相が、イギリスとヨーロッパとの将来の関係について合意を形成する前に、離脱の期限を決めてしまった。しかも、イギリスの輸出の半分はEUに向けて行われるが、EUからの輸出は10%しかUKに来ない。

もう時間がない。新しい指導力を見出すしかない。

NYT April 2, 2019

The United Kingdom Has Gone Mad

By Thomas L. Friedman

ロンドンではどこにでも政治的な笑劇が満ちている。しかし、それは実際、悲劇である。

2016年のBrexitを決めた国民投票は、まったく誤解を招く単純化された選択だった。いつもはビジネスの利益を守る保守党が、経済的な考慮を全く無視して、「主権」の回復を叫んでいた。

エアバスを生産する巨大なボーイング社のCEOTom Endersは訴えたが、人々は聞かなかった。ボーイングは14000人をUKで雇用し、そのサプライ・チェーンに関係して、地域に11万人の雇用を生んでいた。Tom Endersは政治指導者たちに警告した。もしUKEUと破壊的な離脱を選べば、イギリスでの操業はむつかしい。「離脱強硬派は聞くべきだ。エアバスの工場は大きすぎて移せないだろう、と思うのは間違いだ。他の諸国にも、エアバスの翼を生産したい人たちが多くいる。」

EU離脱に投票した人たちの苦悩は本物だ。移民の流入、横柄なEU官僚たち、グローバル化した都市エリートへの不満。中産階級の賃金は停滞したままだ。

しかし、最も有能な21世紀の指導者には共通した特徴がある。彼らは、毎朝、問いかけている。・・・自分たちはどんな世界に暮らしているのか? 世界にはどんな趨勢があるのか? さまざまな政策で、こうした趨勢から最善の利益を受け、最悪の面を避けようとしていると、市民たちに、どうやって教えるのか?

1に、それは高度に連結した世界である。ビジネスは、知識のストックの周囲に、価値を創りだす基礎を見出す。知識を保護し、それを市場にもたらして経済価値を得る。知識は急速に劣化していく。

イギリスは、こうした世界から離脱して、アメリカと自由貿易協定をすぐに結ぶ、という愚かな考えを持つ政党が指導している。トランプは競争的なナショナリズムを好む。EUを解体し、個々の国と有利な取引を結ぶことを好むだろう。

2に、世界の技術とグローバリゼーションはそろって加速している。すべての変化の兆候を見るべきであり、最も有能な、リスクを恐れない者たちを集めるべきだ。

アメリカのC.E.O. of Microsoftはだれか? Satya Nadellaだ。 C.E.O. of Googleはだれか? Sundar Pichaiだ。 C.E.O. of Adobeはだれか? Shantanu Narayenだ。C.E.O. of Workdayはだれか? Aneel Bhusriだ。・・・さて、ロンドンには誰がいるだろうか?

現代の重要な問題はグローバルであり、グローバルな解決策しかない。あなたの国がアメリカ、ロシア、中国、インドでなければ、EUのような連携を必要とする。

すぐれた指導者たちは歴史を知るべきだ。トランプも、プーチンも、Brexit推進派も、EUNATOが創られたのは、競争的なナショナリズムが20世紀のヨーロッパを2度も戦争に導いたからだ、ということを見ない。

離脱に執着する保守党と、マルクス主義者が党首である労働党は、現実に合った妥協を国民にもたらさない。

FT April 4, 2019

Goodbye EU, and goodbye the United Kingdom

Philip Stephens

1975年の春、アメリカのthe Wall Street Journalが強烈な見出しを掲げた。「グッバイ・グレート・ブリテン」。UKはヨーロッパの病人とみなされていた。成長は乏しく、産業な慢性的に苦しんで、投資家たちは逃げ出した。偉大さを失い、衰退が累積した。

その予言は時期尚早であった。イギリスはIMFから救済融資を受け、その後の北海油田に救われた。マーガレット・サッチャーの革命を指摘する者もいるだろう。10年後、サッチャーはレーガンと国際政治の舞台で活躍していた。

今、イギリスは新しい生存の危機にある。Brexitの推進力は、すでに、数十年のEU加盟による制度や経済関係、政治的紐帯を排除しつつある。しかし、グッドバイ・ブリュッセルは前半でしかない。Brexitの後半は、グッドバイUKである。

Brexitの経済的コストは対処できるものだろう。しかし、Brexitとは、アイデンティティーと文化の問題である。Brexitとは、保守党内で、右派のイギリス・ナショナリズムが興隆したことで動き出した。帝国を失ったことになじめない保守主義の苦悩を示すものだ。

EU離脱は、推進派が独立記念日とよぶものだが、エリートとよそ者に対するポピュリストの反抗である。新しい「グローバル・ブリテン」、第2次世界大戦、ウィンストン・チャーチルの孤立がノスタルジーを彩る。

Brexitは、ブリティッシュではなく、イングリッシュの企てだ。都市ではなく、イングランドの地方に支持者は多い。スコットランドも、北アイルランドも、離脱を支持しない。ブリティッシュネスは、発明されたアイデンティティーである。それはUK4つの国民、そしてより最近は帝国の子孫たちを移民として歓迎することを意味する。圧倒的に、白人コミュニティーの所有物である。

ブリティッシュネスへの脅威に、イギリスの子孫たちが混沌をもたらす。アイデンティティー政治に境界はあるが、共通の目的がない。


 アメリカのポピュリズム

PS Mar 29, 2019

The American Populist Reckoning

SIMON JOHNSON

ポピュリズムとは、最終的に実現できない、愚かな約束によって政権を得るものだ。ドナルド・トランプ政権の結果とは、低成長、不平等の拡大、公共サービスの低下であろう。さらに、技術革新で他国を圧倒する力が失われる。

アルゼンチンのペロンは代表的なポピュリズムの指導者で、2(1946-1955 1973-1974)大統領になった。持続できない賃金の引き上げ、通貨価値の過大評価、外国から大量の借り入れを行って、反対する政府機関や中央銀行のスタッフを交代させた。その結果は、激しいインフレ、通貨価値の暴落、不況に終わった。

イギリスのBrexitもポピュリズムの企てであるが、イングランド銀行は健全である。他方、アメリカのトランプ政権は、連銀に対する攻撃を始めた。連銀は、金融バブルと危機の救済策、その後の大規模な緩和など、失策によって政治的に弱くなっている。

アメリカの経済と通貨はポピュリズムに大きな資源を与える。トランプが去ったとしても、連銀が廃止され、アメリカにポピュリズムの時代が続く恐れは十分にある。


 金融市場の将来

PS Mar 29, 2019

What if Zero Interest Rates Are the New Normal?

ADAIR TURNER

金融危機後の金利低下とデフレに近い停滞は、金融システムをもろい状態のままで、従来の金融理論・政策を行き詰まりに導いていた。しかし、にわかに財政刺激策が加わって、経済は活気を取り戻した。しかも、それは中央銀行によって金融されたのだ。

世界の3台中央銀行が、財政赤字の増大を財政刺激策と金融緩和の制限とは考えないことは、非常に重要だった。

しかし、刺激策がにわかに弱まった。アメリカの減税は1回きりであり、日本は長く延期してきた消費税を引き上げる予定である。ユーロ圏の成長も外需を失い、減速する。

だから2016年の問題に戻るのだ。金利ゼロでデフレを脱するにはどうすればよいか? 新しい「現代金融理論」が注目を言集めている。その危険をよく理解して、グリーン・ニュー・ディールなどの積極的な政府投資を行うべきだ。


 中国の将来

PS Apr 4, 2019

Does China Have Feet of Clay?

JOSEPH S. NYE

中国の成長は素晴らしい。100か国以上にとって、中国が主要貿易相手国である。しかし、習近平の権力は粘土の足を持つのかもしれない。

中国が将来も成長し続けるか、だれにもわからない。その長い歴史には、システムの崩壊や停滞の時代があった。今は、中国の強さが誇張されていると思う。5つの問題が中国を苦しめる。

1.人口変化が避けられない。労働力人口は2015年がピークであった。高齢化は医療のコストなどを増やすが、その準備はできていない。

2.経済成長モデルが転換する。鄧小平が、毛沢東の自給体制を、日本・台湾が開拓した輸出志向成長モデルに転換したことは正しかった。しかし、そのモデルは外国政府の許容するレベルを超えた。政府による投資や国有企業への補助金は効率性を悪化させる。

3.この30年間の改革は容易な局面であった。改革は、この先、困難な局面に入る。独立した司法、国有企業の合理化、農村戸籍による人口管理体制の廃止、そして政治改革。

41949年、毛沢東が採用したレーニン主義のモデルは、中国の伝統的な帝国支配と近かった。しかし、中国の急速な経済発展が政治的な必要も変えた。今では、中国も都市中産階級が支配的な社会である。それでも共産党は政治権力を独占している。

5.中国はソフト・パワーの赤字である。「チャイニーズ・ドリーム」や、憲法に明記した「習近平思想」を導入する外国はない。政府はますますナショナリズムに依存し、マイノリティーや人権運動を弾圧している。


 スペインはメキシコに謝罪せよ

FT March 30, 2019

Mexico and Spain need to heal history’s wounds

メキシコのオブラドール大統領が500年前のスペイン人によるメキシコ制服について謝罪するようスペイン政府に求めた。それは、歴史の深みから政治的資本を引き揚げる皮肉な試みに見える。国民の悲嘆を利用する政治に他ならない。しかし、戦術や外交を考えるべきだ。法廷闘争をするよりも、オブラドールは、両国民の理解と友情を深めるような、積極的な歴史論争に転換するのが良い。

左派の過激なメキシコ大統領は、謝罪を求める相手が多くいる。ローマ・カトリック教会を代表する法王フランシスもそうだ。多くの司祭たちが征服の十字軍を指揮した。

オブラドールは、補償を求めていない、と言う。メキシコの大統領たちは、1910年の革命とその英雄たち、Emiliano Zapata and Pancho Villaの伝統を称賛してきた。スペインがメキシコに残した封建制支配を一掃した革命だ。

オブラドールは多くの国内問題を抱えている。経済の悪化、ストライキの波、汚職の蔓延、麻薬戦争。外国に対する激しい攻撃は、関心をそらすうえで役に立つ。アメリカの隣国として、メキシコは非介入を強く支持する。オブラドールがスペイン帝国を非難するとき、それはアメリカが採用するアメリカ・メキシコ国境の攻撃的な姿勢と重なる。

スペインの側では、政治家たちが慎重に対応するべきだ。怒りに任せて、植民地の過去に目をふさぐことは許されない。旧帝国諸国に見られる欠陥だ。イギリスも、オランダも、ポルトガルも、その帝国では人権を無視した支配、野蛮な弾圧が行われた。しかし、植民地の歴史は、めったに中立的なものにならない。

スペインもメキシコも、歴史の積極的な側面に注目することで得ることが多い。1930年代のスペイン内戦を逃れた亡命者の多くを、メキシコは礼を尽くし、友情を持って迎えた。多くのメキシコ人が、メスティーゾとして原住民とヨーロッパの両方のルーツを持つことを誇りとする。

メキシコ・シティの中心部に、征服の最後の戦場となった場所がある。その説明は言う。「勝利ではなく、敗北でもなかった。それは、現在のメキシコである、メスティーゾの国民が生まれる苦しみであった。」


 トランプはあなたを殺す

NYT April 4, 2019

Donald Trump Is Trying to Kill You

By Paul Krugman

ドナルド・トランプが去った後のアメリカがどうなっているのか、われわれにはわからない。しかし、1つ確かなことは、たとえ彼が4年で終わるとしても、直接、間接に、多くのアメリカ人が早死にする、ということだ。

何人かは右翼の、ホワイト・ナショナリストの暴力によって死ぬだろう。ホワイト・ナショナリストは急激に増えている。それは、ある程度、大統領が彼らを「とても素晴らしい人たち “very fine people”」と呼んだせいである。

何人かはガバンスの失敗によって死ぬだろう。ハリケーン・マリアがプエルトリコに多くの死者を出したように。思い出してほしいが、プエルトリコの人々はアメリカ市民である。

何人かはオバマケアを無効にしようと政権が努力することによって死ぬだろう。医療保険制度改革は、完全に破棄されてはいないが、保険を得る人々が増えるのを阻んでいる。もし完全に破棄すれば、もっと、もっと多くの死者が出る。

しかし、最大の死者は、トランプ政権の偏った「規制緩和」によって発生する。食品の安全基準について、トランプ政権は食肉業界を過度に信頼する。利益を追求するビジネスは正しいことをするし、市場の支配は優れている、というのだ。

風力発電では、彼らは違うことを言う。発電のタービンが癌を発生させる、というのだ。トランプは、彼のゴルフ場の近くで、風力発電の建設を阻止できなかったことから、個人的な恨みでもあるのだろうか、と思うだろう。

トランプも、一般に共和党員も、ビジネスが生じる「マイナスの外部性」を無視するか、軽視する。発電所からの水銀排出もそうだ。しかし、再生エネルギーの開発には反対する。

なぜか? それを説明するのは政治献金である。食肉業も、炭鉱業も、共和党に献金する。再生エネルギー業は民主党だ。

風力発電のタービンは癌を引き起こさないが、石炭を燃やす発電所は癌を増やす。政府の推定でも、石炭の規制緩和は年間1000人の死者を出す。

あなたは肉を食べ、水を飲み、空気を吸う。そうやって、ドナルド・トランプはあなたを殺そうとしている。


 ポピュリズムの示す問題

PS Apr 1, 2019

Springtime for Nationalism?

BILL EMMOTT

イスラエル、インド、インドネシア、フィリピン、スペイン、EUの選挙が次の2か月間で行われる。ポピュリズムはさらに広まるのか?

本当の対立は、ポピュリズムとの間にはない。ナショナリズムとインターナショナリズムとの対決だ。

ポピュリズムは単なる選挙テクニックである。すべての政治党派が利用する。しかし、いったん権力を得ると、ポピュリストたちは有権者の好意を得るために統治しなければならない。それに失敗すれば、次の選挙で負ける。

イタリアの「5つ星運動」M5Sがそうだ。20186月にM5Sは連立政権に主流派として入った。しかし1年もたたず、得票数が半減して、地方選挙には敗北した。彼らは、賃金生活者の所得を増やす、という公約を守った。しかし連立政権内で、ナショナリズムを誇示する強硬右派「同盟」に敗れたのだ。

インドのモディ、フィリピンのドゥテルテ、イスラエルのネタニヤフは、強烈な指導者が支配するナショナリズムを基盤とする。彼らが利用するのは恐怖だ。それは、パキスタン、麻薬カルテル、ハマスのロケットである。内外の脅威から国民国家を守り、国民の自尊心に訴える。彼らは国際機関や国際法を重視せず、外交においては、アメリカや中国との2国間関係を重視する。

まったく異なる政治だが、ヨーロッパでも重要な亀裂はよく似ている。ポピュリストやユーロ懐疑派という言葉は、彼らの本質をとらえていない。スペインのVOX、オーストリアの自由党、ドイツのAfD、あるいは、ハンガリーのオルバン首相や、ポーランドの政権党である「法と正義」PiSも、そうだ。

これらの政党は、すべてナショナリストであり、保守派である。一般に、移民に反対する。しかし、「法と秩序」を常に強調し、軍事・地政学的な恐怖より、文化的な恐怖に訴える。これは反EUの現象としては理解できない。EU内の政治バランスが、ナショナリスト右派に重心を移した。Brexit型の離脱に向かうことはないが、EU統合は進まない。事後的な政府間合意に向かうだろう。ロシアでもリビアでも、共通の外交・安全保障は後退する。

ポピュリスト批判は忘れるべきだ。ルールに依拠した国際秩序が、今も、有権者に支持されるのか、彼らの恐怖を鎮めることができるか、が問われている。


 NATO成立70周年

FP APRIL 3, 2019

The Outdated Alliance?

BY DOUG BANDOW

ワシントンには多くの聖なる牛がいる。NATOはその中でも、この上なく神聖なものだ。今週、70周年を迎えた。

しかし、ワシントンでも少なくとも1人は同意しない。トランプ大統領だ。アメリカ国務省は、NATOの条約を必ず守る、と確認するのだが。その将来は疑わしい。

その成立した時期と今とでは、世界の姿がまったく異なっている。ヨーロッパ諸国は復興したが、暴利力の整備は怠ってきた。1991年、ワルシャワ条約機構とソビエト連邦が崩壊した。NATOは存在する理由を失ったように見えた。

しかし、2つの方法でNATOは生き延びた。1つは、加盟国を増やす。もう1つは、非加盟国においても軍事的な関与を強めた。その結果、NATOは「グローバル同盟」になった、とみる分析がある。世界の大部分を監視警戒している、というわけだ。そこまでいかなくとも、ワシントンは今も、ヨーロッパの防衛の大部分を担っている。

同盟諸国間の負担の不均衡は常に論争になってきた。2011年、オバマ大統領は「フリー・ライダー」と非難した。そして、トランプが登場したのだ。この論争を続けても成果はない。

ヨーロッパはアメリカの軍事的支援を必要としない。ヨーロッパ経済はアメリカ経済に等しく、その人口を超えている。ヨーロッパ諸国を合わせれば、ロシアの10倍の経済力、4倍の人口を持っている。防衛費もロシアの4倍だ。もちろん、集団行動はむつかしい。しかし、緊急事態の意識があれば、もっと賢明な支出を計画できるはずだ。

それがない。ヨーロッパは脅威に見合う防衛費を支出しない。昨年。アメリカは1人当たり1888ドルの防衛予算を組んだ。しかし、ヨーロッパのNATO諸国は503ドルだった。

NATO70歳だ。人間なら引退して、現状に合った安全保障構造に交代してもらうだろう。今、まだトランプは負担を続けている。その予測不能で、気まぐれな行動は、重大なことをやりかねない。ヨーロッパは自分たちの防衛を負担するべきだ、と彼は主張している。


 エルドアンの敗北

FT April 2, 2019

Recep Tayyip Erdogan’s power is waning

David Gardner

エルドアンは、内外の陰謀に対して、「トルコの生き残り」をかけた選挙である、と強調した。それは、大統領と、イスラム国家としてのトルコを奪うものだ、と。

しかし、首都、アンカラを失っただけでなく、最大の都市、イスタンブールを失ったことは、エルドアンの政治権力を損なうだろう。与党AKPは、いまだに、トルコの新興イスラム主義運動であり、エスタブリッシュメントに受け入れられないアウトサイダーである。

エルドアンは、ますます、極右の新興政治勢力と連携する必要が強まるだろう。または、ロシアと衝突し、トランプに逆らって、国際政治を利用するのかもしれない。


 フィンランドの社会保障

FT April 3, 2019

Demographic time-bomb: Finland sends a warning to Europe

Richard Milne in Helsinki

ヘルシンキ北東部の新しい建物で、高齢者ケア施設の実験が始まった。60歳以上の約30人が、集団で生活する。Kotisatamaという施設で、食事を共にし、2つのサウナ、屋根付きのテラス、体操の施設がある。

しかし、スタッフはいない。Kotisatamaは高齢者のコミュニティーである。この住宅の主要な目的は、自分たちが活動的であるように維持することだ。「これは介護施設ではない。」

フィンランドでも年金制度の改革は非常に困難であった。大都市を基盤とする政党と、地方を基盤とする政党が、それぞれの改革案を争ったが、合意はむつかしかった。極右政党が重要な役割を果たした。極右政党は扱いにくい仲間だが、それでも、隣国と異なり、フィンランドの主要政党は彼らを排除しなかった。

フィンランドの将来を見るには、日本の現在の姿を見ることである。改革を進めなければ、成長や雇用が失われ、大きなコストとなる。フィンランドは、介護施設重視のシステムから、可能な限り在宅のシステムに転換することにした。高齢者が集団で暮らして、健康を維持する。しかし、地方には問題が残る。

******************************** 

The Economist March 23rd 2019

Europe takes on the tech giants

The $100b bet: Too close to the Son

Protests in the Arab world: Talk of spring

Congo, Fighting Ebola, and myths

Greece: The twilight of Syriza

Bagehot: The roar of the crowd

(コメント) インターネットを介して、さまざまな情報が、膨大な規模で交換されています。この情報をプールして、AIがさまざまな目的によって処理し、利用できる。そのサービスを販売する。それは、現代の石油採掘である、と言われます。情報は誰のものか? EUの規制が注目されます。

1000億ドル(10兆円以上)のファンドを運用する孫正義を、太陽に近づきすぎたイカロスにたとえ、危険であると指摘します。

民主化、ポピュリズム、大衆抗議、SNS、グローバルな危機の連鎖。政治は、この時代にふさわしい姿を模索しています。

****************************** 

IPEの想像力 4/8/19

橋下徹、松井一郎、吉村洋文・・・ 政治党派を人物で判断するのは間違いかもしれませんが、なんとも異質なキャラクターです。イギリスのボリス・ジョンソンにも、イスラエルのネタニヤフにも、ギリシャのチプラスにも、見えます。

大阪市民は都構想を支持しました。

すでに大阪維新の会は、大阪市と府の与党であり、ポピュリズムが政権を執ったケースです。私は、IR誘致は愚策だと思います。大阪万博も不要です。

大阪がマカオやシンガポールのように繁栄するというのは幻想であり、雇用創出として望ましいとは思えません。上海万博への投資に比べて、大阪万博が政府のインフラ投資をもたらす規模は限られるでしょう。アジア(韓国・台湾・中国)企業の民間投資を集めることができるか? あるいは、むしろ都市大改造の政治闘争を演出する道具にするとしたら、大阪はポピュリズムの悪循環に入るかもしれません。

アルゼンチンのペロンは代表的なポピュリズムの指導者で、2(1946-1955 1973-1974)大統領になった。持続できない賃金の引き上げ、通貨価値の過大評価、外国から大量の借り入れを行って、反対する政府機関や中央銀行のスタッフを交代させた。その結果は、激しいインフレ、通貨価値の暴落、不況に終わった。」 Simon Johnson

もちろん、大阪には独自通貨や分離独立派は、明示的には、存在しません。しかし、消費税引き上げの騒動を見れば、クーポン券や電子決済、仮想通貨が21世紀のペロン型独裁者を刺激するでしょう。

****

維新の会のホームページには、選挙前の有権者にアピールするため、教育無償化、といったバラマキ?行政を成果として掲げています。しかし、同時に、大胆な定数削減、給与カットをすると主張し、行政の赤字部門を切り離し、民営化して利益を出し、財政赤字も減らした、と改革の成果を強調します。

これは赤字企業の買収、リストラによる黒字化と似ています。そして、実際、赤字の自治体や政府が、外部の融資を受けて再編され、あるいは統合・解消されるケースは世界各地にあります。「ダブル選 維新大勝」を見出しにした48日の朝日新聞には、「離脱を待ち望む 英の港町」という記事が載っていました。

「英国東部にある人口26万人の港町ハル。・・・ハルはかつて欧州有数の漁港だった。数百のトロール船が競って白身魚を水揚げした。」・・・「地元船が消えた近海で、スペインやポルトガルの船が操業する。」「漁獲が減ったハルでは、船の修理業など関連事業もすたれ、代わる産業は育たなかった。」

Brexitから何を学ぶのか? 維新の会は、政治の既得権化、制度の硬直化・弊害を正す姿勢を、トップダウンの企業改革としてではなく、市民参加のアイデアを集め、政治の意味を回復するポピュリズムを担うことで示しています。権力集中や排外主義、野党やマスコミ、外国人、労働組合を攻撃する独裁体制ではなく、対話集会とコミュニティーを活性化する大阪のスタイルを発見すべきです。

野党は、もはや都構想に反対するのではなく、支持するべきでしょう。もっと多くの新興政党を含めて、市民が求める都構想を具体的に議論し、維新の会による「都構想」独占を許さず、対抗案を示すべきです。議会で、さまざまな都構想を話し合い、市民や諸団体と協議することが重要です。クロス・ダブル選挙で上がったけれど、投票率はまだ半分です。Brexitは僅差が問題でした。半数の代表が多数決で決めても、4分の1を代表するだけです。

「衰退はEUのせいではない。」と、地元ハル大学の講師は語った、と記事は紹介します。アイスランドと海洋をめぐる主権争いとなった「タラ戦争」、そして、英国予算の多くがロンドンに使われ、ハルを含むイングランドには、スコットランドとは異なり、議会や地方政府がない。しかし離脱派は、間違った敵であるEUに住民たちの不満を向けた。

大阪都構想は、カジノや万博を誘致し、ハイテク企業を誘致する地方経営の行政独裁手法を賛美するのでしょうか? そうではないはずです。市民が政治に注目し、人々の声が制度や権限を変える力を支えています。

******************************