IPEの果樹園2019

今週のReview

3/25-30

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迷走Brexitとメイ政権 ・・・あなたも移民に会う ・・・アメリカ連銀の方針転換 ・・・ブレトンウッズと大西洋憲章 ・・・ヨーロッパ議会選挙 ・・・中国の金融改革

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 迷走Brexitとメイ政権

The Guardian, Sun 17 Mar 2019

Let’s continue to resist Brexit. Our economy and values are at stake

Will Hutton

もしあなたがEU加盟を望むなら、あなたは現代の経済と社会が相互依存していることを認めるだろう。また、そのような相互依存を管理するために制度が必要だと認めるだろう。たとえば、気候変動やテクノポリスの圧倒的なパワーがそうだ。あなたは本能的に、他の文化や言語、人々を信用しないとか、敵意を持つことはない。あなたは多様性を魅力的で豊かなことと思う。開放的で、寛容である。あなたは自国を誇りに思うが、他国や他の人々と一緒に働くことで、その誇りが損なわれるとは思わない。

あなたは牙や爪をもつ資本主義を信じない。ステークホルダーの資本主義を支持する。金融規制や、競争と革新を促す国家の介入を支持する。あなたは労働組合が被雇用者に発言力を与え、重要な対抗力になることを支持する。あなたは低税率で公共政策のすべてが満たされるとは考えない。あなたは社会契約の背後にある諸価値を支持する。すなわち、社会のメンバーが相互の権利と義務を受け入れ、公共医療や公立学校、難局や高齢によって苦しむ人々に所得を与える社会サービスを維持する。あなたはこの国を豊かにする、BBCから博物館まで、強い公共制度を信じている。

EUに加盟することは、文明を支持することである。それはEUのすべての面を完璧とみなすわけではない。UKのすべての面が完璧というわけでもない。しかし、ある結びついた命題を、他のヨーロッパ諸国とともに共有することで、人々は価値ある生活を送れると考える。

Brexitとは、併存する異なる文明の選択である。それは、閉鎖した、寛容さを持たない、他者に対する疑いを抱く世界だ。

FT March 17, 2019

A long Brexit delay spells danger for the EU

Wolfgang Münchau

イギリスとの離婚が長引くことは、EUの資源を奪い、反感を広めるだけである。

EUは、経済の減速、金融政策で心配がある。ドナルド・トランプはヨーロッパの自動車に関税を課し、貿易戦争を進め、NATOにも疑念を示す。アメリカ、ロシア、中国は、それぞれの意味でEUの弱体化を進めている。

FT March 18, 2019

Why Emmanuel Macron should have mercy on Theresa May over Brexit

Gideon Rachman

マクロンは、イギリスをEUから追放する強い姿勢を、ド・ゴールのように示すことが、必要だと考えるかもしれない。

SPIEGEL ONLINE 03/18/2019

Brexit Delay

'Why Would We Extend These Discussions?'

By Peter Müller and Jörg Schindler

PS Mar 18, 2019

No Choice and No Exit for the UK

ROBERT SKIDELSKY

国家主権と経済統合。それは1989年に「歴史に終わり」が示したリベラル・デモクラシーの答えであった。しかし、世界を191の国家に分割することは他国の主権と対立し、主権が脆弱さや強制を意味することになる。

イギリスは、アメリカや中国のような、他国に強制できる主権国家ではない。また、経済頭語いうは、短期的な利益で選択しても、長期的な問題を生じる。

FP DECEMBER 18, 2018

Brexit Is Destroying Britain’s Constitution

BY GARVAN WALSHE

The Guardian, Mon 18 Mar 2019

Bercow’s ruling has breathed new life into the people’s vote

Polly Toynbee

FT March 20, 2019

The EU should be ready to grant Britain a long Brexit delay

The Guardian, Wed 20 Mar 2019

Britain is in a hole – Europe, we need you to dig us out

Timothy Garton Ash

EUとは、単なる政府の同盟なのか、あるいは、市民、人民、民主主義、運命の1つのヨーロッパなのか?

もし後者であれば、離脱を目指すメイの政府は問題であって、解決ではない。マクロンはイギリスにもっと時間を与えるべきだ。イギリスの市民、人民、民主主義がより良い場所を得られるように。2016年の投票では、1600万人以上のイギリス市民がEUにとどまることを選んだ。EUは、われわれ、イギリスにおけるヨーロッパ市民に対して責任がある。

もしわれわれが国家であれば、それはEU9番目に大きな国家、オランダに次ぐ、ベルギーよりも大きな国家である。他のEU諸国からイギリスにきて住む300万人を足せば、われわれは1900万人に達する。

The Guardian, Wed 20 Mar 2019

The Guardian view on May and Brexit: a prime minister gone rogue

FT March 21, 2019

Brexit will cost 7,000 City jobs and £600m tax — nothing, right?

Matthew Vincent

合意なきBrexitの混乱を前に、金融サービスグループは危機管理計画を練っている。それは非常時のために1兆ポンドの資産と7000人の職場を、UKからヨーロッパに移すだろう。

The Guardian, Thu 21 Mar 2019

Brexit is not the cause of Britain’s political breakdown. It’s a symptom

Gary Younge

フランスのEU担当大臣Nathalie Loiseauは、彼女の新しい猫をBrexitと呼んだ。「彼は外に出たいから、毎朝、私にしつこく鳴くのだ。」と言う。「それでドアを開けてやると、彼はじっとして、出るのをためらう。私を見つめているから、外へ出してやる。」

イタリアの友人は私に言う。Brexitは今やニュースのいちばん最後になった。ちょうどスポーツと天気予報の前の奇抜な一コマだ。

誰もが私たちを笑う。そうしないわけがない。われわれはバカに見える。これほど裏切られ、退屈し、憤慨し、戸惑っているのでなければ、われわれも自分を笑っている。Brexitは、その提唱者たちによれば、われわれを偉大な、独立した国にするはずだった。その代わりに、われわれは乞食とバスケットケースの間になった。

2つの危機が明らかになっている。1つは、Brexitが起きるまで残り8日しかないのに、われわれは合意を望まず、期限を変更できない。もう1つは、保守党の規律が崩壊したことだ。内閣でも、平の議員からも反対の声が出ている。8人の労働党議員が党を離脱した。

これはイギリス政治の危機である。政党の中心にあった、われわれの政治の規範や選挙の文化が危機に陥っている。すべてが崩壊する局面に入った。Brexitがわれわれを破壊したのだ。離脱か残留か、という荒っぽい質問が良くなかった。分断をもたらし、穏健派を黙らせた。わずかの差で離脱を決めたことで、議会は離脱しない無責任さを問われるか、人民の意志を実現するしかなくなった。どちらにしても政治はその任務を果たせない。

しかし、20166月の前からその傾向があった。それがBrexitを大騒ぎにしたのだ。機能不全と解体はBrexitが創ったものではなく、単にそれを鮮明に示したに過ぎない。投票率は低下し、2大政党への支持は減少していた。

これは、主要政党が、労働組合、業界代表が残留を支持し、この国が離脱を支持した結果である。われわれの政治が危機にあるのは、Brexitがもたらしたものではない。われわれの政治が危機であったから、Brexitが起きたのだ。

この危機は決してイギリスに限らない。2008年の経済崩壊から、西側のほとんどの国で、選挙の分裂、主要政党が衰退し、ネイティビズムや偏見が広まった。大衆的な抗議が広まって、政治は機能しなくなっている。パリの「黄色いベスト」運動もそうだ。

その説明はどこでもよく似ている。重要な違いは、Brexitには明確なタイムテーブルと期限があり、EUという相手があることだ。それは有権者の圧力より、むしろ外交である。

イギリスが笑いものになることから離脱するシナリオは想像できない。われわれは笑われるべきだ。しかし、爆笑している者たちは、その慢心ゆえに窒息しないよう気を付けるべきだ。こうした狂気をもたらすウィルスは非常に感染力が高い。イギリスは、今のところ、最悪の感染地帯だ。しかし、ここが最後ではない。

FT March 21, 2019

The last way out of the Brexit nightmare

Philip Stephens

FP MARCH 21, 2019

Why Europe Should Reject Theresa May’s Brexit Extension

BY GARVAN WALSHE

FT March 22, 2019

Theresa May is taking a hideous Brexit gamble

Martin Wolf

FT March 22, 2019

Brexit advice to Theresa May from the quick and the dead

Henry Mance


 あなたも移民に会う

NYT March 17, 2019

I Am an Immigrant. Someday You Might Be One, Too.

By Laila Lalami

私がアメリカで最初に出会ったのは、重い荷物のカートであった。1992年の夏、ケネディ空港に着いて、本が詰まった旅行鞄を運んでいた。モロッコのカサブランカ空港で乗り込むとき、重量制限を超えたが追加料金を支払えず、私はバッグを機内に持ち込んだ。ニューヨークで荷物を運びながら、私の手には水ぶくれができた。カートの並ぶ列を見つけて、私は救われたと思った。

1つを使おうとして気づいた。ロックの解除には3ドル必要だった。私はそれを覚えている。なんて思いやりのない国なんだろう、ここは。そう思った。

私は、3ドルも、5ドル札も、10ドル札も持っていなかった。ささやかな貯蓄を両替したとき、大きな額の札しかくれなかったからだ。予定通り、カリフォルニア行きの便が出る空港まで行けるのか、不安になった。

そのとき後ろで声がした。「それを手伝ってあげようか?」 野球帽をかぶった中年男性が、私の荷物を取り上げて、バス・ターミナルまで運んでくれた。次のゲートまで、ほかの人たちが次々に手を貸してくれた。ここは思いやりのない国じゃないな、と思った。アメリカ人は風変わりな者にも進んで手を貸す人たちだった。

私は言葉を学んで、モロッコに帰るはずだったが、アメリカ人と恋に落ちて、結婚した。今、私は移民である。それは何も珍しい話ではない。ほかにも数百万人がそうだ。そして移民が世界を見るとき、それは明確な白黒の世界ではなく、灰色の濃淡を持つ世界である。

選挙で公職にある人たちの話は、そのポイントを示すための、想像の産物でしかない。大統領は「犯罪者」「強姦魔」「テロリスト」と呼ぶ。そして、壁を建設し、、国境で家族をばらばらにし、難民の子供たちをキャンプのテントに閉じ込め、イスラム教の国から入国することを禁止する理由にする。他方、大統領を批判する側は、新入国者たちを、起業する才能に満ちた人々だという。軍務に服し、新技術を発明し、議会に立候補し、「仕事をやり遂げる」人たちだ、と。

しかし、移民を悪者やヒーローにするのは、移民を法によって強制する対象とみているからだ。現実はもっと複雑である。

地球に住む他の生物と同じく、人類も移動する種族だ。突然、それに気づくと、物理的な安全を求め、あるいは、経済的機会を求めて、故郷を出て、新しい土地を目指す。壁を築いてこれを阻止するというのは、無駄であるし、自然に反する、と私は思う。それは川の流れを止めるようなものだ。

科学者たちは、このままでは地球の気温が1.5度、もしかすると2度、上昇する、と言う。その結果は深刻だ。住居を失い、飢餓と病気、おそらくは紛争、結果的には難民となるだろう。

ニュージーランドのクライストチャーチでは、先週、金曜礼拝に集まった、少なくとも49人が、白人至上主義者に殺害された。

移民について話すとき、侵略してくる蛮族でも、優れた、例外的な人々でもなく、普通の人であることを知ってほしい。さまざまな個人的、政治的な理由で、彼らは故郷を離れた。彼らは親切な外国人か、あるいは、荷物を運ぶカートのように、顔のない、よそよそしい強制マシーンに会うだろう。それはアメリカ人の選択にかかっている。


 インド

FP MARCH 17, 2019

Modi’s Bullet Train Dreams Are Hitting Rural Roadblocks

BY VAISHNAVI CHANDRASHEKHAR

FT March 20, 2019

India is well placed to be a global economic force

Gaurav Dalmia


 アメリカ連銀の方針転換

FT March 17, 2019

The Fed has exacerbated America’s new housing bubble

Rana Foroohar

PS Mar 18, 2019

Understanding the Fed’s Dovish Turn

NOURIEL ROUBINI

金利の上昇とQEの終息を宣言していたアメリカ連銀は、それを逆転した。それにはいくつかの理由がある。

1.世界の株価急落。2.コア・インフレ率の上昇が止まった。3.トランプ大統領の貿易戦争が緩和された。4. Richard Clarida が連銀理事副議長に加わった。5.Claridaは戦略の見直しを求めた。

FT March 20, 2019

Why further financial crises are inevitable

Martin Wolf


 ブレトンウッズと大西洋憲章

PS Mar 18, 2019

Bretton Woods at 75

ARMINIO FRAGA

ブレトンウッズは、調整可能な固定為替レートと、IMFによる各国政策の監視、対外ショックに直面した国への金融支援によって成り立っていた。このグローバルな制度は、国際収支やインフレの危機を生じない限り、各国・各地域の政策余地を大幅に許していた。

経済の前進とともに、各国の政治的な収れんが起きる、期待されていた。ベルリンの壁崩壊とソ連の解体が起きたからだ。

しかし、ブレトンウッズ(IMF、世界銀行、GATTAから最近のWTO)は多くの反対に直面するようになった。為替レートの変動レート制に変わった。公式、非公式に、インフレ目標がシステムに取り込まれた。

多くの発展途上諸国では、より大きな国際収支不均衡とインフレを生じていたが、対外債務の整理やインフレの沈静化に成功した。他方、グローバルな政策協調はむつかしくなっている。むしろ、G7G8G20のようなフォーラム、金融安定委員会が重要になっている。

確かに、アメリカやEU、中国、日本に対する、柔軟かつ変化する条件にマクロ経済が適応する問題で、ブレトンウッズの役割はもはや重要ではないだろう。それにもかかわらず、ブレトンウッズが果たすべきグローバル・ガバナンスの役割がある。

1.アメリカが支配的な地位を失うことで、世界経済・金融が不安定化する。2.多くのグローバル・フォーラム、地域制度が関係している。3.発展途上諸国は、アジアのタイガーたち、東欧の成功をまねようとしている。4.世界中に広がる非リベラルな、ポピュリスト政治運動がある。

PS Mar 21, 2019

Toward a New Global Charter

CARL BILDT

1941年、チャーチルとF.D.ルーズベルトが、戦後の世界秩序について議論した。まだ第2次世界大戦にアメリカが参加する前だ。それは20年前のヴェルサイユに似た試みだが、当時の合意は明らかに失敗だった。

2人が合意した大西洋憲章は、その後の、国際秩序を、80年を経て、なお定義している。国際連合、IMF、世界銀行。敗北した枢軸諸国は、市場経済を持つ、ダイナミックな民主主義に転換し、新しいグローバルなシステムに統合された。1970年代後半に始まった中国の経済改革も、1991年のソ連崩壊も、グローバルな多国間のガバナンスの下に実現した。

しかし、21世紀の20年目に入る今、それが全く異なる時代に入ることは明らかだ。新しい国際秩序に向けた論争を続ける必要がある。それを放置すれば、むき出しのパワーと狭隘な国益が支配するホッブズ的なジャングルになるだろう。その結果はすでに明らかだ。


 戦争

FP DECEMBER 18, 2018

The State of War

BY RACHEL KLEINFELD, ROBERT MUGGAH


 ハイテク大企業

FT March 19, 2019

The case against breaking up Big Tech

Nicolas Colin

PS Mar 19, 2019

Stagnant Capitalism

YANIS VAROUFAKIS


 ヨーロッパ議会選挙

PS Mar 19, 2019

Showing Europe’s True Colors

ROMANO PRODI , STEFANO MICOSSI

FP MARCH 19, 2019

Why Brexit Is Europe’s Finest Hour

BY MICHAEL HIRSH

The Guardian, Wed 20 Mar 2019

Why Viktor Orbán and his allies won’t win the EU elections

Ivan Krastev

民主的政治にはドラマが必要だ。選挙とは、有権者が最悪の恐怖に直面して、すなわち、戦争、人口崩壊、経済危機、環境の破局、しかし、彼らには破滅を回避するパワーがある、と確信するような、心理療法の機会である。

「選挙が近づくと」と、19世紀初めにアメリカを旅したトクヴィルは書いた。「陰謀が活発になり、煽動が勢いを増し、拡大する。国中がお祭り状態になる。・・・当選者が発表されるや否や、・・・すべてが沈静化して、反乱していた河が、静かな流れとなる。」

もしトクヴィルが正しいとしたら、われわれが見ているのはEUが真の民主主義を示す過程であろう。2か月先の投票に向けて、ヨーロッパ人の多くが、何か重要なことが起きていると感じ、投票しないヨーロッパ人は地獄に落ちるぞ、と思っている。投票の結果、だれが勝者になるのか、わからないが。

それについて語るのはまだ早い。彼らには破滅を回避するパワーがあると、有権者たちが納得するには至っていない。

世論調査によれば、ヨーロッパを支持する者と、ナショナリストたちと、2分されているのではない。第1の集団は、「絶望する人たち」である。世界の終末を恐れる。EUも、国民国家も、ともに破たんしている。多くの加盟国で最大の集団だ。

2は、「思うほど悪くない」と楽観する人だ。EUも国民国家も機能している。第3は、熱狂的なEU支持者。彼らは国民国家が破たんしていると考えるが、中東欧に多い。最後は、ごく小さな集団だが、ダイ・ハード型のナショナリストだ。EUこそが問題であり、国民国家がその答えである。

オルバンは、この選挙を移民問題の住民投票に転換したがっているが、それは3つの理由で成功しない。1.移民は最大の争点ではない。2.もはや主要政党は国境の開放を主張していない。3.中東欧諸国にとっては、移民の流入ではなく、流出こそが問題だ。

主要政党は、国境管理の保証が、壁を求める伝染病に対するワクチンである、と理解した。中欧の社会にとっては、彼らが投資した高等教育で若者たちがドイツやフランスに流出することに、どのように補償するか、ポピュリストの扱わない、この問題こそが重要だ。

FP MARCH 20, 2019

The New Dutch Disease Is White Nationalism

BY THIJS KLEINPASTE

すべての政治はローカルである、というのが昔から言われる真実だ。しかし、その逆も正しいことがある。すべてのローカルな政治は、ナショナルな対決である。オランダ地方選挙がそうだった。


 中国の金融改革

FT March 19, 2019

China needs to overhaul its financial sector to ease rebalancing

Liu Jun

中国経済は減速している。小売りの売り上げが予想を下回り、失望感が広がった。

しかし詳細に見れば、中国経済は構造転換が進んでいる。GDPに占める消費の割合が上昇し、輸出と投資は減少した。知識集約的産業が、労働集約的産業よりも、急速に増えている。科学、技術、技術革新への投資が増え、日本やEUを超えた。

デジタル経済が旧来の産業も変えている。中間財や中間サービスは、バリュー・チェーンからキリ外され、消費者がコストを節約して、中間業者を排除している。中国は、いわゆるシェア・エコノミーや、ビッグ・データ、AI開発の最先端を走っている。

その変化は消費者の文化にもおよぶ。自分でやる、という精神が支持される中国の消費者は、今後も重要な役割を果たすだろう。

北京の政策担当者にとっての問題は、消費の拡大力、経済全体の成長を維持することだ。古典的な経済理論は、金融緩和と財政刺激策を求める。

しかし、中国にとっては、商業銀行に大きく依存する、現在の金融構造の転換が重要だ。デジタル経済では、金融の非仲介化、新興企業による直接的な資金調達、資本市場の発達が重視されるべきだ。

企業の資金調達や銀行システムを改革し、経済を消費により大きく依存する方向へ、激しい不況なしに転換することが中国の目標だ。


 アメリカの防衛産業

NYT March 19, 2019

Why America Needs a Stronger Defense Industry

By Peter Navarro


 アメリカ外交

FP MARCH 19, 2019

America’s Corruption Is a National Security Threat

BY STEPHEN M. WALT

NYT March 19, 2019

Beware the Mideast’s Falling Pillars

By Thomas L. Friedman

PS Mar 21, 2019

Xi and Trump Miss Their Chance

JEFFREY FRANKEL

1990年の日米構造協議が示したように、米中が摩擦を交渉によって解決することは、協力して経済を改善できるチャンスであった。しかし、どちらの政府にも、それを実現する意識はない。

FP MARCH 21, 2019

A Rising China Is Driving the U.S. Army’s New Game Plan in the Pacific

BY LARA SELIGMAN


 アメリカ大統領選挙

FT March 20, 2019

Magical thinking crosses party lines in America

Edward Luce

NYT March 20, 2019

Is Betomania Real or Phony?

By Thomas B. Edsall

FP MARCH 20, 2019

Uncle Joe Is Ready to Run the World

BY JAMES TRAUB


 核拡散防止

PS Mar 20, 2019

Back to the Nuclear Precipice

JAVIER SOLANA


 イタリアとシルクロード

PS Mar 20, 2019

Italy’s Risky Silk Road

PAOLA SUBACCHI

FT March 21, 2019

Italy will secure its place on the new Silk Road

Michele Geraci

PS Mar 21, 2019

Italy’s BRI Blunder

LUCREZIA POGGETTI


 タイの軍事政権

FT March 21, 2019

Thailand’s military junta dallies with democracy

John Reed in Chiang Rai

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The Economist March 9th 2019

Day care for all: It takes a government child-care centre

Macron’s manifesto: Friends, Europeans

Labour’s prospects: Two left feet

Buttonwood: The Shanghai open

National development banks: Reality cheque

Free exchange: Shocked

(コメント) 子供の貧困を救いたい、と民主党の大統領候補であるE. Warrenは思います。しかし、追跡調査は驚くほど予想と逆です。長期やデータの重要性を感じます。そして、そんなはずはないだろう、と。

マクロンのEU改革に向けたマニフェストは、その尽きぬ情熱に記事も支持を与えます。他方、労働党のコービン党首には、左足が2本? こうした非難は、どこまで当たっているのか?

上海市場が次第に世界の金融市場を動かす時代になっています。その地位を、アメリカがイギリスから奪ったように。しかし、政府による開発銀行の流行には、反対しないまでも、釘を刺します。そして、アメリカの製造業雇用や保護政策は効果的に行われていない、と。

なぜ日本が1980年代にアメリカ製造業を破壊したときには、1990年代から中国からの輸入が与えたほどの深刻なショックを与えなかったのか? その分野や地域、労働者に違いを見ています。同時に、必要な対策にも注意せよ、と。

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IPEの想像力 3/25/19

Brexitが迫る中で、イギリス政治とヨーロッパ政治の混沌は深まります。

メイ首相は何を目指すのか? ハードBrexitを恐れる議会に、メイの合意案を承認させる。「合意なしのBrexit」を避けるには、EUと合意した唯一の出口である。

しかし、議会は承認せず、EUも新たな修正を受け入れない。議会は分裂している。国民も分裂している。有権者が国民投票で決めたことに、その投票が間違いだった、と言うしか、反対することができない。

EUは欧州議会選挙が迫っている。イギリスがBrexitをしなければ、選挙に参加することが必要だ。イギリスの代表権が宙に浮き、EUのガバナンスが破壊される。BrexitEUを破壊する前に、メイの合意案をどうするのか、新しい合意案を求めるのか。27加盟国の関心は分裂しており、合意はむつかしい。

短い延期の間に、議会はどう動くか。メイは長い延期を、レファレンダム(2度目の国民投票)に至る、とみて拒む。

メイの合意案、労働党のカスタム・ユニオン、長い延期、そして、首相交代、離党・新党結成・党首交代、解散・総選挙、新内閣、レファレンダム。

メイはハードBrexitを、合意案が承認されないとき、よりましな選択肢と考え始めた。そもそもメイの基本方針が失敗だった。50条による離脱手続きを申請するべきではなかった。「主権の回復」を、1.移民の管理、2.独自の通商政策、だけに絞って、離脱交渉の合意条件に挙げるべきではなかった。

なぜメイが首相を続けるのか? 保守党のBrexit強硬派を宥和する党首だから。保守党の穏健派は、メイをやめさせれば強硬派が離党し、政権を失うことを恐れる。ハードBrexitを恐れるより、労働党政権を嫌うから、保守党の統一を守る。

あるいは、保守党がメイに変わる指導者を決める。そして、Brexit強硬派、もしくは、穏健派が保守党を離れる。労働党がスコットランド国民党SNPと組んで政権を執る。その場合、残留派を重視した妥協案を模索する。移民管理の方法をめぐってEUと再交渉する。そのために、50条の申請を取り下げる。

あるいは、議会がメイに対する不信任案を可決する。あるいは、メイが議会を解散し、総選挙する。保守党も労働党も分裂し、残留派の新政党が重要な位置を占める。連立政権が何度も、20年も続く。

長い延期を認める。50条の申請を取り下げる。離党者が増える。国民の意見は分裂し、デマゴーグが広まる。議会も、レファレンダムも、信用されない。右派と左派の小党が乱立する。その過程でシティは完全に見捨てられる。製造業や技術革新に向けた投資も行えない。ポンドの下落、不況とイギリスからの移民流出が続く。

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秩序の正統性は、それが安定していることです。国内秩序においては、王制や憲法、天皇、宗教や神話による正当化、安定した時代の懐古、永久不滅のイメージが重視されます。しかし、国際秩序においては、しばしば、それが対立や戦争を意味します。

天皇の退位や新しい元号が話題になりますが、表面的な印象をぬぐえません。これが本当に私たちの時代、私たちの平和、国民の望む政治や秩序の姿でしょうか? もちろん、天皇や皇太子、その家族はそれを願うでしょう。さまざまな意味で、さまざまな意見を持っているはずです。

それにもかかわらず、それゆえに、政府は表明的な儀式や儀礼、祭典の演出に凝るのです。国民の象徴であることを問い続けた、という天皇の意志に、私は共鳴します。たまたまテレビに映った中国訪問の様子に、彼の豪胆さと真摯な問いかけを見たように思います。

莫大な債務と、長期政権の安定性。新天皇の即位が象徴するのは、そういったものなのか?

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