IPEの果樹園2019

今週のReview

3/4-9

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貧しい国の成長と為替レート ・・・Brexitが迫る ・・・NATOに代わる安全保障 ・・・ハノイにおける米朝サミット ・・・インド・パキスタンの危機 ・・・ロボット税の意味 ・・・リバラルから左派へ ・・・真のポピュリスト ・・・米中貿易交渉 ・・・中米の暴力と難民 ・・・超金融緩和の継続

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 貧しい国の成長と為替レート

VOX 21 February 2019

Real exchange rates for economic development

Martin Guzman, José Antonio Ocampo, Joseph Stiglitz

新興市場、開発政策の研究者たちは、為替レート、国際収支、マクロ経済の安定性、成長の関係をめぐって議論してきた。特に、2つのテーマが重要である。

1.競争的で、安定した為替レートが経済の多様化に果たす役割。ダイナミックな成長において高度な技術を含む活動に経済をスケール・アップすることが必要で、そのために為替レート政策が有効だ。東アジアの工業化の経験がそれを示す。他方で、資源に依存した経済では、為替レートの過大評価によって輸出部門が多様化せず、さらに、早期の脱工業化が起きている。

2.為替レート介入と資本取引の規制は、新興市場に対する外部からの融資が景気循環を増幅する効果を抑え、商品輸出経済の交易条件が変動するのを抑える。それは反循環的なマクロ経済政策の余地を広げるから、マクロ経済の安定化にも有効だ。

学習効果の波及(外部経済性)が大きな部門に資源をより多く配置するべきだが、補助金によって行うことには、レント・シーキングの問題や、国際規制による制限がある。そこで、複数の実質為替レート(RER)を維持する政策が重要になる。目標とする部門以外にRERから利益を受ける分野には課税するべきだ(不利益には補償する)。

実行する手段は、為替市場への介入と外貨準備の蓄積がある。それは中国が行ったことだ。1990年代には、為替レート制度が完全な変動制か、完全な固定制・通貨統合に、2極化するという意見が強かった。しかし、特にアジア通貨危機後、それは間違いだとわかった。むしろ、中間的な、変動を抑制する管理為替レートが支配的になっている。


 Brexitが迫る

The Guardian, Fri 22 Feb 2019

The EU must resist impatience with Britain – for its own sake

Timothy Garton Ash

礼儀正しい、遺憾の言葉の裏に、イギリスの苦難を祝う気持ちが広まっている。イギリスの混乱を観て、Brexitの損害はイギリスの問題だ、と主張する。たとえ合意なしでも、イギリスが離脱したほうがよい。EUは、その本来の目標、すなわち、ヨーロッパ議会の選挙に取り組むことができる。

そうした感情や計算はよくわかるが、それは短期的な見方でしかない。彼らはイギリス内でヨーロッパのために闘うわれわれを見捨てている。また、イギリスの将来を決める上でのEUの重要な役割を軽視している。EUは単にイギリスの論争に反応している傍観者ではない。EUが論争を担う主体の1人である。これはイギリスの選択だけではなく、ヨーロッパの選択である。

さっさと終わらせろ、という主張は、2つの理由で間違っている。第1に、現代民主主義の短期主義という失敗。第2に、イギリスを叩くことで、ヨーロッパの価値を守ることができるという誤解。

もし合意なしのBrexitで大きな損害が発生すれば、Brexitを推進した政治家たちはその責任を問われないように、ますます激しくヨーロッパの姿勢を攻撃するだろう。Brexitは、EU内の南北のバランスを乱し、ドイツに求められる指導力は彼らにとって受け入れられないほどのものになる。イギリスとの関係が悪化する中で、外交や安全保障では協力できる、と思うのは間違っている。「グローバル・ブリテン」というのは危険な幻想であるが、それによって傷つくのはイギリスだけでなく、近隣諸国である。

ヨーロッパ議会選挙でヨーロッパの価値を守るために闘うのは、EU内のナショナリストたちに反対するためであろう。それは、イギリスの闘いをヨーロッパの闘いと分離する、根本的な間違った考えである。1941年と同じだ。ドーバー海峡の両側で、EU支持派とEU反対派との、1つの、同じ闘いが展開している。

欧州議会議長の候補としてEPPEuropean People’s party)から出たManfred Weberを観ればよい。彼は、ポピュリストでナショナリストの、ハンガリーの指導者Viktor Orbánの仲間である。他方、イギリスでは2度目の国民投票を求めて、自分たちの政治的将来を損なう危険にもかかわらず、政党を離脱する議員が何人も現れている。議員たちは、イギリスがリベラルで開放的な社会としてヨーロッパにとどまるように、また、労働党内の反ユダヤ主義を批判し、あるいは、保守党内の排外主義的なナショナリズムを批判して行動している。

EUは、50条に依拠する短期的な延期ではなく、9か月から1年という、もっと長期の延期を認めるべきだ。それは、新しいヨーロッパ議会でイギリス代表をどうするか、という問題が起きる。しかし、短期的な困難を抑えて、長期の闘いに勝利するべきだ。Brexit推進派やEU反対派を宥和することは、どちらにおいても間違いだ。

The Guardian, Fri 22 Feb 2019

The City may thrive despite Brexit, but the rest of us won’t

Simon Jenkins

The Guardian, Fri 22 Feb 2019

The Guardian view on Britain’s political parties: Brexit is breaking the mould

Editorial

ヨーロッパのどこでも、旧来の2大政党システムが分解し、多くの政党を生んでいる。ドイツ議会には7つ、フランスには少なくとも9つ、アイルランドは10以上、スペインは13。政党の分裂は、社会が脱工業化していること、政治がそれに調整しなければならなかったことを示している。

今週、労働党と保守党から12人の議員が離党した。かつて同様の政治的緊張から、自由民主党やUKIP、その他のナショナリスト政党が現れたが、2017年の選挙では、旧政党の支持が回復した。しかし、分解の動きは続いている。イギリスがEUを離脱する中で、イギリスの政治は明らかにヨーロッパ的になっている。

独立派の議員が増えることは政治的不確実性を増し、Brexitをめぐる議会の計算を狂わせる。労働党からの離反は、コービン党首を2度目の国民投票の支持へと傾けた。一層の離脱を恐れるからだ。同様に、3人が離党した保守党では、メイ首相が合意なしのBrexitを明確に排除する姿勢を取らせた。

Brexitは政党にとって政治を苦しいものにしている。離党した12人が政治の方向を変えるアジェンダを示してはない。しかし、旧式の政治的部族主義による対応は間違っている。それはポイントを見失わせる。旧式の政治ではなく、イギリスはもっと優れた政治を求めている。

FT February 22, 2019

Maybe, just maybe, Britain’s political deadlock is breaking

Camilla Cavendish

NYT Feb. 22, 2019

Britain in the Crazed Brexit Vortex

By Roger Cohen

Brexit! BREXIT!? The Backstop! Norway Plus! Canada Minus? The Cooper Amendment! The Malthouse Compromise? The Kyle-Wilson Amendment! Hard Brexit! Soft Brexit! No deal?

多くの難解な用語が作られて、論争だけが続く。329日に離脱するまで数週間しかないが、イギリスがEUを離脱するとどうなるのか、何も明確ではない。

離脱を推進したキャンペーンは幻想を振りまいた。・・・混乱するヨーロッパから切り離された島。それはミルクと蜂蜜の楽園だ。「グローバル・ブリテン」には資金が流れ込み、不快な皮膚病は治癒する。子どもたちはより美しく、土地は豊饒さを増して、世界がイギリスの猟場となるだろう。・・・

しかしホンダはSwindonの工場を閉鎖すると決定し、3500人が失業する。議会では、さまざまな提案が続く。単純に言えば、Brexitは、現在も、将来も、イギリスにとっての災厄である。2016年の国民投票は騙されたのだ。46年間、5億人のヨーロッパ市民が加わる同盟に参加して得られていた利益を失い、だれも理解しない自己切断へ向かうが、若者たちは反対し、それでも、反米の労働党指導者と、リトル・イングランドを愛する保守党の右派は、イギリスを戦利品として求め、他方、有権者の多数はもはやBrexitを支持していない。

つまり、こういうことになるのだろう。メイの修正を議会が認め、329日の離脱は延期され、合意は得られないまま、第2の国民投票へ向かう。・・・正気に戻ることだ。

FT February 24, 2019

Britain need not choose between Corbynism and Europhobia

Chris Leslie

The Guardian, Mon 25 Feb 2019

If Labour aids a Tory Brexit it will be destroyed by what follows

Aditya Chakrabortty

The Guardian, Mon 25 Feb 2019

At last, Jeremy. Now Labour’s mission must be to prevent any Brexit

Polly Toynbee

FP FEBRUARY 26, 2019

Last Exit From Brexit?

BY OWEN MATTHEWS

The Guardian, Wed 27 Feb 2019

Time is on the side of remainers amid Brexit’s smoke and mirrors

Martin Kettle

FT February 27, 2019

A second Brexit referendum is now essential

Martin Wolf

メイは、合意なき離脱の恐怖によって、彼女の悪い合意案を承認させることができると考えている。愚者の行進を止めるには、UKのためにも、EUのためにも、もう1度国民投票を行うことだ。それは危険であるが、確実に迫っている災難に比べたら、良いことである。

現在の行動は正気を失っている。政府も企業・銀行も、離脱の準備はできていない。その条件が定まらない。合意なしの離脱であれば、交渉はやり直しになる。メイの合意案で離脱しても、生来の関係は決まっていない。UKは交渉に現状を前提しているが、それはEUが受け入れないだろう。混乱が続けば、ロシアのプーチンが喜ぶだけだ。

なぜUKはこんなことをしているのか? そこには多くの幻想がある。1Brexitの意味は明確だ。2Brexitで主権が取り戻せる。3.合意なしの離脱でもWTOの条件がある。4WTOの扱う範囲はUKにとって十分だ。5EUとの通商条約は容易に結べる。

すべて間違っている。何よりも大きな幻想は、UKが強硬に主張すれば、EUはその条件を受け入れる、という幻想だ。

今、議会は、合意なしか、メイの合意か、という選択を迫られているが、離脱の延期を決めるべきだ。そして、時間をかけて2度目の国民投票とその選択肢を考える。民主主義は、1人、1回だけ、1票を投じることではない。国民は決定を買える権利を持っている。特に、投票が不正直に行われた場合は、そうだ。

最初の投票から3年近くが経って、多くのことが起きた。ドナルド・トランプはEUWTOを攻撃している。西側と中国との関係も変化した。プーチンがイギリス政治に対して悪意ある介入をしていることは明らかだ。ヨーロッパとBrexitで紛糾しているときではない。

FT February 28, 2019

Britain has a chance to think again on Brexit

Philip Stephens


 NATOに代わる安全保障

SPIEGEL ONLINE 02/22/20

Weakened NATO

Europe's Immense Security Challenges in the Age of Trump

By Christiane Hoffmann

大西洋を越える同盟は大幅に弱体化している。NATOにさらなるダメージを与えず、ヨーロッパは自分たちの安全保障を築くことができるか? そんなことが可能なのか?

212日に、ミュンヘン安全保障会議の始まる3日前、National Interest誌のウェブサイトにChristian Whitonの論説が載った。その見出しは、「NATOをつぶせ」だ。それは会議の参加者たちの間で論争になった。

著者は、ジョージ・W・ブッシュとトランプの下で、アメリカ国務省の顧問であった。「17兆ドル、ロシアの10倍以上、の経済規模を持つ豊かな大陸が、アメリカに防衛を依頼する必要はない。・・・(NATOとは)旧いヨーロッパがアメリカ(の軍事力)にただ乗りするためのメカニズムに過ぎない。」

それは非常に敵意ある、ヨーロッパを侮辱した論説である。NATOとともに、著者はヨーロッパの諸価値を投げ捨てる。「旧いヨーロッパ諸国は、無神論、グローバリズム信仰、多文化主義、文化的退廃を選んだ。」・・・「われわれ(USA)は何を守るのか?」

ドナルド・トランプは、公然と、西側の安全保障同盟に疑いを向けてきた。彼は同盟を支持しない。それどころか、ヨーロッパ諸国は彼の家臣のごとくに命令を受けるべきなのだ。そして、ロシアのプーチン大統領とは内密の話をする。

もちろん、トランプがNATOを害する軍事行動を取るわけではない。しかし、安全保障において、言葉は重要だ。もしアメリカ大統領がヨーロッパにおける核の傘を疑う発言をするなら、ヨーロッパはもはや安全ではないだろう。NATOによるドイツの防衛は70周年を迎える。同様に、ベルリンの壁が198910月に崩壊して、40年が経つ。構造は存在するが脆弱であり、もはや、それが安定していると誰も信じていない。

フランスの政治学者François Heisbourgは、協会は断っているが、そこにあった信念は消え失せた、と言う。「信仰を失った教会は、使命を持たない。・・・非常に深刻な状態だ。」 ミュンヘンで、フンボルトAlexander von Humboldtを引用しながら、ドイツのメルケル首相は語った。安全保障とは複雑な事象であり、兵器とソフトパワー、脅威と対話、プロパガンダと心理、それらの複合物である。

2年以上前に、EUは「戦略的自律性」を提唱した。しかし、ワシントンは懐疑的であった。今や、それはトランプの主張を支持する材料となる。・・・もはやアメリカは必要ない。

われわれは全く異なる世界に住んでいる。それでもドイツの政治家たちは、その議論を避けてきた。NATOで合意したGDP2%まで防衛費を増やすかどうか、だけ議論した。ドイツは、まだ、冷戦終結によって、1夜にして脅威が消えた、快適な世界に住んでいる。

Markus Edererは、ドイツ外務省で防衛計画のスタッフ、その後、国務長官、現在はモスクワでEU大使を務めている。彼は、2つのスマートフォンを出して、その間にペンを置いた。スマートフォンの1つはアメリカ、もう1つは中国だ。世界秩序は、貿易でも安全保障でも、2つのセンターを持っている。ヨーロッパはその間にある。それは不快な中間地帯である。NATOは安全保障でアメリカとの軸をなすが、貿易とは中国と軸を形成する。

1に、アメリカとの貿易軸が回復することはない。安全保障において、ヨーロッパがロシアに対抗できないわけではない。むしろ、ヨーロッパ内部の周辺域で、中小規模の紛争が起き、制御できない恐れがある。また、ロシアとの関係は、長期的に修復されるだろう。

2に、ヨーロッパがNATOを継承する。それは巨大な安全保障の管理体制である。アメリカが去るなら、EUはその構造を使うだろう。

3は、独仏同盟の強化に向かう。メルケル首相は、きわめて直截的に、EUが武器輸出に関する規制を統一する必要に言及した。それは共同の軍事開発プロジェクトの条件だ。独仏同盟への道はまだ長いが、パリは核抑止の共有を進んで議論するだろう、とHeisbourgは言う。

フランスが核の傘を拡大し、ドイツがそれに金を支払う、というのでは失敗する。これは傭兵ではない。核抑止は生存の問題だ。ドイツがもっと防衛問題に関与することだろう。

完全に不可能なものと思うだろう。ヨーロッパの核抑止力。アメリカがゲストとしてのみ参加するNATO。ヨーロッパ議会によるヨーロッパ軍の展開。ドイツの価値に基づく外交と必ずしも一致しない、武器輸出ルール。軍事活動へのドイツの参加。

しかし、これが新しい時代の求めるものだ。かつて誰も、ドイツがマルクを放棄する、とは思わなかった。

PS Feb 22, 2019

Will Germany Permit Joint European Security?

JOSCHKA FISCHER

FT February 26, 2019

Europe is starting to turn French

Zaki Laïdi


 アメリカ外交

PS Feb 22, 2019

America First, Fallout Later

WILLIAM L. SILBER

The Guardian, Sun 24 Feb 2019

'You're fired!' America has already terminated Trump

Robert Reich

NYT Feb. 26, 2019

A Clash Is Coming Over America’s Place in the World

By Stephen Wertheim


 ハノイにおける米朝サミット

FP FEBRUARY 22, 2019

At the Hanoi Summit, Trump Should Hold Himself to His Own Standards

BY MICHAEL J. GREEN

NYT Feb. 23, 2019

Waiting for the Trump-Kim Nobel Peace Prize

By Nicholas Kristof

これは歌舞伎だ。

私が最後に、2017年、北朝鮮を訪れたとき、政府関係者は言った。キムがリビアから学んだのは、核兵器を手放したら、アメリカは彼とその国を亡ぼす、ということだ。キムは非核化する計画など持っていないだろう。

しかし、核実験と核兵器の生産を止めるだけでも前進だ。

トランプ政権がわれわれに示す最大の脅威は、トランプとキムが挑発し合った後、核戦争へ突入することだ。2017年、2018年に、ペンタゴンはこれを恐れた。

FT February 25, 2019

Kim-Trump summit is Vietnam’s moment to seize

Kevin Snowball

PS Feb 25, 2019

How Trump’s “Victory” Became Kim’s Triumph

GRANT T. HARRIS

NYT Feb. 25, 2019

Trump Meets Kim Jong-un This Week. There’ll Be One Winner.

By Nicholas Eberstadt

PS Feb 26, 2019

The Vietnam Model for North Korea

LE HONG HIEP

NYT Feb. 26, 2019

Can Trump Avoid Caving to Kim in Vietnam?

By Susan E. Rice

トランプの外交は常に、劇場と国内政治、であった。

最初の首脳会談で何を達成したのか? 戦争を挑発したが、今では平和を自慢し、最も重要な、北朝鮮の完全な非核化については、それを進めた中身は一切なかった。それでも金正恩との愛を語り、外交の天才としてノーベル平和賞を期待する。

ハノイ・サミットのリスクは2つだ。第1に、トランプが国内政治の不利な情勢を変えるために、間違った合意を急ぐことだ。第2に、トランプが真に非核化するための交渉を破壊してしまうことだ。

長期的な、漸進的、互恵的な過程によって、完全な非核化を実現できる。その交渉のモデルは、オバマ政権とイランとの交渉である。

FP FEBRUARY 26, 2019

Hanoi Summit Has Tokyo Feeling Left Out

BY ROBBIE GRAMER

FP FEBRUARY 26, 2019

The Real North Korea Summit Is Inside the Trump Administration

BY JEFFREY LEWIS

アメリカのトランプ政権内部で、ビーガンStephen Biegun(そしてトランプ大統領と、韓国のムンジェイン大統領)の「太陽政策」と、ジョン・ボルトンなどの国務省「北風」派とが対立している。

しかし、重要なことは、北朝鮮に非核化の計画はない、ということだ。確かに、金正恩は「朝鮮半島の非核化」を支持したが、それはオバマ大統領がプラハで核兵器のない平和と安全保障を望んだことにたとえてもよいだろう。アメリカ大統領が一方的に核兵器を棄てる、とは決して思えない。

北朝鮮が考えているのは軍縮をまねた一連のジェスチャーである。シンボリックなステップを踏んで、アメリカとの新しい関係を築く。言い換えれば、北朝鮮はイスラエルの地位を望むのだ。皆がイスラエルは核兵器を保有していると知っている。しかし、イスラエル政府は公に、核保有国、ということを認めていない。あるいは、インドの方が良いたとえかもしれない。

2017年の北朝鮮による核兵器と弾道ミサイルの実験は、トランプ政権と大統領自身の怒りを高めた。朝鮮戦争の終結宣言、外交関係の回復、アメリカの制裁解除を得るために、北朝鮮はすべての実験を停止し、いくつかの施設を閉鎖する、良好な姿勢を示す。

それは限界があるものの、やるに値する選択肢だと思う。そして金正恩は支配体制を維持し、われわれはこの野蛮な独裁者と生きることを学ぶ。それがうまく行かなければ、何が起きるのか。北朝鮮は通常兵器で韓国やアメリカの兵士が死亡するような攻撃を行う意志がある。数年前に、韓国の哨戒艇が撃沈され、40人以上が死亡した。その攻撃を指揮したのは、トランプ大統領に巨大なラブレターを届けたKim Yong Cholだ。しかし、事実は変えられない。北朝鮮は核兵器を持っている。抑止は有効だ。もしサダム・フセインやカダフィが核兵器を持っていたら、彼らは今も支配しているだろう。

トランプは、お世辞と写真撮影会が好きなのだ。それ以上のことは期待できない。

FP FEBRUARY 26, 2019

The U.S. Can Afford a Peace Deal in Korea

BY S. NATHAN PARK

PS Feb 27, 2019

How to Judge the Hanoi Summit

YOON YOUNG-KWAN

FP FEBRUARY 27, 2019

Sanctions Relief for Pyongyang Should Start Small

BY TROY STANGARONE

The Guardian, Thu 28 Feb 2019

Trump was out of his depth in Hanoi. This failure is his greatest flop yet

Simon Tisdall

これはトランプの虚栄のためのプロジェクトだった。骨折り損だ。

原則として、関係する諸国の誰もが、北朝鮮の核を国際ルールに従わせることを望んでいる。この例外的なコンセンサスを受けて、トランプの無能にもかかわらず外交が成立した。

顧問たちは、トランプが一方的に譲歩し過ぎることを恐れた。実際、サミットはトランプ自身のための政治ショーであった。彼は平和を築く者として、自分の天才を疑わない。自分がノーベル平和賞に値すると確信している。

ボルトンが助言して、トランプはキムの望む制裁解除をしなかった。しかし、低レベルの交渉を認めた。そして、この「事実上の関係正常化」は、すでに制裁を無視して北朝鮮に物資を供給している中国やロシアなどの国に、一層のフリーハンドを与えるだろう。

トランプは、その演説に反して、人権を無視し、拷問や処刑を行う独裁者、金正恩を大いに称えた。その腐敗した、無能な経済管理体制は、大規模に餓死者を今も出しているのに。アメリカ人の大学生Otto Warmbierが、事実上、北朝鮮の犠牲となって死亡したにもかかわらず、金正恩は知らなかった、という彼の言葉をトランプは信じる。ここでも、カショーギ暗殺を知らなかった、という独裁者の言葉を再現する。

トランプは右翼のナショナリスト的本能に従う、独裁者との関係を好む、複雑で、微妙な、国際問題を理解しない、ニュースのサイクルとイメージ重視の、外交政策を展開する。ハノイ・サミットはその成果だ。指導力とは程遠い。喜ぶのは敵だけだ。

The Guardian, Thu 28 Feb 2019

The Guardian view on the US and North Korea: Trump’s vanity diplomacy falls flat

Editorial

FT February 28, 2019

Donald Trump’s diplomatic Vietnam

Edward Luce

もっと悪い結果がありえただろう。1年前、この2人は互いを侮辱し、戦争の瀬戸際に世界を追いやった。

しかし、署名を拒否した結果、トランプ外交の弱みが明らかになった。典型的に言って、指導者たちは、大きなサミットで、最後の瞬間に決定するようなことはない。その前にほとんどすべてのことが官僚たちによって準備されているからだ。しかしそれはトランプのやり方ではない。彼は超人的な能力で予想外の取引をまとめる自信があった。その結果、彼は手ぶらでハノイを去ったのだ。

トランプ外交は、これまで、既存の合意や枠組みを破壊するだけだった。北朝鮮は、トランプ自身が選んだ2国間交渉だ。シンガポールで初めて会って、彼の全員者たちがだれもなしえなかったこと、北朝鮮の「完全な非核化」という約束を得た。しかし、それは幻想であった。

すべての圧力がトランプにかかるだろう。金正恩は多くを得たが、アメリカは何も得ていない。

PS Feb 28, 2019

Vietnam and the Dilemma of New Wealth

TRAN LE THUY

NYT Feb. 28, 2019

What Trump Got Wrong, and Right, on North Korea

By The Editorial Board

NYT Feb. 28, 2019

After the Trump-Kim Failure

By Nicholas Kristof

NYT Feb. 28, 2019

Will Trump Take Us Back to ‘Fire and Fury’?

By Victor Cha

FP FEBRUARY 28, 2019

Pompeo: Time to ‘Regroup’ After Vietnam Summit

BY ROBBIE GRAMER

FT March 1, 2019

Trump and Kim’s brief encounter should not end Korea diplomacy


 インド・パキスタンの危機

FT February 23, 2019

Anil Ambani, India’s theatrical tycoon on the ropes

Simon Mundy

The Guardian, Wed 27 Feb 2019

The Guardian view on Trump in Asia: the crisis is in Kashmir

Editorial

NYT Feb. 27, 2019

Hashtags for War Between India and Pakistan

By Fatima Bhutto

FT February 28, 2019

India-Pakistan clashes risk dangerous escalation


 ロボット税の意味

NYT Feb. 23, 2019

Don’t Fight the Robots. Tax Them.

By Eduardo Porter

数年前に、ロボットに課税せよ、というビル・ゲイツの提案と、それを批判したサマーズ、オバマ大統領の経済顧問、による批判があって、ロボット税が注目を集めた。技術革新に課税することは、その国を貧しくするだろう。

しかし、ロボット税には、労働者に代わって機械化やロボットに投資することが税制上で有利になっている現状を税制する意味がある。それは経済の生産性を高めるだろう。

FT February 26, 2019

Gig economy agreements promise a brighter future for trade unions

Sarah O’Connor


 リバラルから左派へ

NYT Feb. 23, 2019

How America Learned to Stop Worrying and Love Deficits and Debt

By Neil Irwin

FT February 25, 2019

The future belongs to the left, not the right

Wolfgang Münchau

リベラル・デモクラシーが衰退したのには理由がある。

減税、財政再建、規制緩和、といったリベラルな政策が直接にもたらした諸問題に、リベラルな体制が解決策を示せなかったことだ。すなわち、金融不安が続き、経済が悪化した。低所得層の経済的不安定性が増した。技術革新や移民政策によって事態が悪化した。グローバルな課税回避に対する政策協力に失敗した。

金融危機後、ヨーロッパ諸政府は銀行システムを制御できず、ボーナスの禁止も、金融取引税も実現しなかった。増税しなかったが、公共支出を削減し、移民政策を引き締めなかった。失業率だけでなく、低所得層の苦しむ職場の不確実さや金融アクセスの限界を無視した。

リベラリズムへの反動は段階を経て強まった。最初は、トランプ的な反移民の局面だ。2015年に、メルケルがドイツ国境を開放して、100万人の難民を受け入れたことは倫理的に正当化できるし、長期的な経済利益もあるだろう。しかし、ドイツの政治はそれを受け入れる用意がなかった。

またユーロは、危機がないときだけ対応できる設計であった。金融危機で、政治家たちはユーロの生き延びるための行動をしたが、それにかかわる諸問題を解決しなかった。単一の安全資産、銀行同盟が必要だ。リベラル・デモクラシーは、貿易障壁を除去し、人権を擁護し、開放型社会を促進した。しかし、それがもたらす社会・経済問題に対応できなかった。

右派は反移民の反動によって広まった。しかし、それは自滅するだろう。メキシコとの国境に壁を建設しても、移民は減らない。また、移民以外の問題に焦点が移るだろう。すなわち、人工知能が中産階級に及ぼす影響、貧困層の出現、気候変動による経済的な破壊。

それが意味することは、政治環境が左派に有利なものに変わる、ということだ。その代表的な主張は、アメリカ議会の新人Alexandria Ocasio-Cortezが唱える富裕層への70%所得税だ。その数字が重要なのではない。30年間続いた富裕層の所得や利潤への減税、という趨勢を逆転する、という決意を示すことが重要だ。

フランスのマクロンや、イタリアのレンツィのような、ラディカルな中道が成功するだろうか。それはまだわからない。しかし、穏健派よりもラディカルへ、右派よりも左派へ、人々の関心が移る時代に入った。ドナルド・トランプの時代に向かっているのではない。

PS Feb 25, 2019

Should Bold Ideas Drown Out Old Ideas?

JEFFREY FRANKEL

大統領選挙まで2年ある。この時期、野党の候補に革新的アイデアが支持されることは珍しくない。それが「勇敢で」「新しいアイデア」であるだけでも、実験精神が評価される。

しかし、今のところ、それらのアイデアは失敗するものだ。

1.超富裕層の所得に70%の税率で課税を行う。・・・アメリカの所得分配を改善するには、もっと効果的方法がある。

24年制大学の授業料を政府が全額負担する。・・・教育機会の平等を実現するなら、幼児教育を全国民に提供する方が良い。また、詐欺的な大学を取り締まるべきだ。

3.「全国民への医療保険制度」。・・・既存の保険契約を取り消すことは支持されない。まして、すべてが財政的な負担で行われることを喜ぶ者は少ない。むしろオバマケアの拡大の方が支持されるだろう。

4.エネルギー利用を転換する「グリーン・ニュー・ディール」。・・・大型の公共投資を含むものだが、失業率が4%程度のときには支持できない。その中身も現実には実行できない。炭素税や排出権取引のように、もっと価格メカニズムを通じて行う方が良い。

5.自社株の買い戻しを禁止する。・・・企業に対するタックス・ベースを拡大するべきだ。株買い戻しを禁止すれば、財務省証券や他社の株式を買うだろう。

PS Feb 27, 2019

The Case for Green Realism

JEAN PISANI-FERRY


 真のポピュリスト

NYT Feb. 24, 2019

Putin’s One Weapon: The ‘Intelligence State’

By John Sipher

ウラジミール・プーチンは、今後も、アメリカとその同盟諸国において、社会・政治・民族的な緊張を高める介入を続けるだろう。

ロシアでは、冷戦期、ソ連の秘密警察が復活している。KGBが国家の強権的な手段で支配を強める中で、プーチンとその仲間は権力を握ったため、21世紀の諸問題を処理するにも、同じ姿勢で解決しようとする。

FT February 25, 2019

The Putin System, by Grigory Yavlinsky

Review by Neil Buckley

PS Feb 27, 2019

Wag the Dictator

NINA L. KHRUSHCHEVA

PS Feb 27, 2019

A Better Populism

RAGHURAM G. RAJAN

リベラルな民主主義の戦後の経済的成功は、市場を自由にするだけで得られたものはない。アメリカもヨーロッパも、ひとびとが市場を活用するような構造を築いて、市場はそこに埋め込まれていたのだ。その構造が崩壊したことで、右派と左派のポピュリストが多く現れた。

戦後のアメリカでは、素晴らしい中等教育システムがあり、働くために、あるいは、世界最高水準の大学で学ぶために、生徒たちを育てた。スキルがあれば良い職に就けた。急速な経済成長と比較的緩やかな規制が、多くの者に起業を促した。レイオフを許す弾力的な労働政策で、新しい職を見つけやすかった。景気後退も、まれな、軽いものだった。

「市場に入る前」の優れた教育システムと多くの経済的機会があったので、経済変動に対する比較的小さな社会的保護で、アメリカ社会は機能した。失業保険はわずかで、医療保険を持つ労働者も少なかった。

大陸ヨーロッパの教育システムは大きく遅れていた。1950年、フランスの男性はわずか4.75年しか教育を受けていなかった(現在のミャンマーがその水準だ)。アメリカの男性は8年だった。ヨーロッパは次第にその差を解消したが、同時に、強い職場の保護と社会的なセーフティーネットを整備した。ヨーロッパは、「市場に入る前」の準備が足りない分、「市場に入った後」の保護で対応したのだ。どちらのシステムも、戦後の成長で、うまく機能していた。

1970年代前半に成長はとん挫した。西側の民主主義諸国は、市場自由化と国家間の市場統合で対応した。アメリカは前者、ヨーロッパは後者を多く推進した。また2つのシステムはいくらか収れんした。しかし、成長は過去の水準に戻らず、しかも、技術革新と職場の自動化、中心諸国へのアウトソーシングが起きた。製造業の職場は少なく、労働者には多くのスキルを求められた。より多くの「市場に入る前」のサポートが必要だった。

残念ながら、そのようなサポートは、平等主義を欠いたアメリカでは、都市部もしくは郊外のコミュニティーだけが子供に提供できた。衰退する地方や、都市のゲットーでは、子供たちにサポートがなかった。そして、生活コストや住宅価格の高騰で、住民たちの隔離が進み、サポートを受けるために貧しい人々が教育システムに参加することを阻んだ。市場の求める能力主義は格差を強めた。

より平等主義的なヨーロッパでも学校システムの質が問題になった。それは多くの移民が労働者のコミュニティーに入ってきたからだ。移民の子供たちは異なる教育システムと新しい言葉に慣れる必要があった。それは教師や学校スタッフにも多くの対応を必要とさせた。そのことが既存の生徒たちに悪影響となり、コミュニティーが人々を上昇させる力を奪った。

グローバルなスーパースター企業は、起業やベンチャー投資の減少と重なって、取り残されたコミュニティーの問題を深刻にした。優良企業への採用には一層の高いスキルが求められたからだ。左派のポピュリストたちは、「市場に入る前」の支援が不足していることを批判し、医療保険(アメリカ)、雇用保障、ユニバーサル・ベーシック・インカムなどを要求した。右派のポピュリストたちは、左派の要求を、むしろ脅威と見た。自国生まれの多数派が得ている既存のセーフティーネットを侵食することになるからだ。

右派ポピュリストは移民やマイノリティーを攻撃し、貿易にも反対する。しかし、移民や貿易を排除することは、長期的に、若者、エネルギー、その社会の活力を失わせるだろう。近隣窮乏化的な保護主義が蔓延して、世界を貧しくする。

衰退するコミュニティーが至急見出さねばならないのは、新しい経済活動を引き寄せ、市民たちがグローバリゼーションと技術革新による機会によりうまく対応するのを助けることだ。政治的首都はあまりにも遠くにあり、地域の関心に応えず、権力をめぐる内紛に忙しい。ローカルな解決策、コミュニティーの知識と関与による実行、中央政府からの財政支援と緩やかな監視、が必要なのだ。

ポピュリストの右派も左派も、中央集権的な政策を避けて、もっとローカルなコミュニティーを信頼するべきだ。それこそが真のポピュリストである。


 米中貿易交渉

FT February 25, 2019

Donald Trump risks political backlash as deal grows more likely

James Politi in Washington and Lucy Hornby in Beijing

FT February 25, 2019

Donald Trump’s extension of China trade talks suits both sides

Lucy Hornby in Beijing

PS Feb 25, 2019

Will the US Capitulate to China?

MARTIN FELDSTEIN

中国による技術の盗用をやめさせることが最も重要だ。それができなければ、関税引き上げは無駄である。

FT February 26, 2019

Anger over tariffs obscures a shift in patterns of global trade

Susan Lund

PS Feb 28, 2019

Releasing the Renminbi

YU YONGDING


 カタルーニャ

NYT Feb. 25, 2019

Will Spain Become a Victim of the Catalan Separatists?

By Omar G. Encarnación


 中米の暴力と難民

NYT Feb. 25, 2019

Build Central America, Not a Wall

By The Editorial Board

中米の暴力、貧困、抑圧から逃れて北上する難民たちを、壁で阻むことは間違いだ。もっと人道的で、効果的な対応が必要である。El Salvador, Guatemala and Hondurasは汚職、暴力、ギャングによって支配された地域が広がっている。司法システム、警察、学校を改善することが重要だ。しかしエリート層は、賄賂によって行政を動かし、課税を嫌い、負担しない。長い間、アメリカはこうした独裁的な体制を内戦において支援してきた。民主主義や経済・社会的発展にも投資してきたが、トランプ政権は援助を削ろうとしている。

ギャングを撲滅することはむつかしい。厳罰化し、投獄するだけでは、ギャングがテロリストになる。中央アメリカの指導者たちが改革に取り組み、アメリカは民主主義、司法改革、経済成長を助けて投資するべきだ。

PS Feb 26, 2019

Migration Myths vs. Economic Facts

MAHMOUD MOHIELDIN, DILIP RATHA

FT February 27, 2019

US Democrats face an immigration dilemma

Janan Ganesh

NYT Feb. 27, 2019

Athens in Pieces: The Tragedy of Democracy

By Simon Critchley


 ベネズエラ

PS Feb 26, 2019

How to Avoid a War in Venezuela

JEFFREY D. SACHS, FRANCISCO RODRÍGUEZ

FP FEBRUARY 26, 2019

There Is Still a Way Out of Venezuela’s Stalemate

BY MICHAEL ALBERTUS

FT February 27, 2019

Venezuela needs to begin the transition from Maduro


 超金融緩和の継続

PS Feb 27, 2019

Has Monetary Easing Really Run Its Course?

KOICHI HAMADA

QEと低金利政策の限界を説き、早期の利上げを求めるのは間違いだ。変動レート制の世界では、金融緩和は為替レートと資産価格の変化をもたらす。金利の水準だけではない。

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The Economist February 16th 2019

Millennial socialism

Gas and geopolitics: Putin’s pipeline

Millennial socialism: Life, liberty and the pursuit of prosperity

The economy since the referendum: The road not taken

Bagehot: The silence of the lambs

The labour market: True colours

(コメント) The Economistは、アメリカの若者が「社会主義」に求める具体的な成果に批判的です。民主党が社会主義に傾くのも、若い政治家や社会運動が社会主義的な政策に、十分な根拠もなく、大きな期待を持たせることも、間違っていると考えます。

Brexitをめぐる経済の落ち込みを考える記事が興味深いです。一方はマクロ経済のマイナス効果がようやく現れること、もう1つの記事はイングランド北部の牧場に関する考察です。

ロシアからの海底を通るパイプライン建設に、ドイツと近隣諸国が対立しています。あるいは、労働市場に男女の差別があることを是正することが社会に与える効果について。

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IPEの想像力 3/4/19

通貨も、軍隊も、各国が持つには費用がかさみます。しかし、他国に委ねるのは、あまりにも重要過ぎます。

たとえば、中央銀行を、あるいは、核兵器を、われわれは国境を超えて共有できるのか?

日本が、中国や韓国、ベトナムやカンボジア、タイや北朝鮮とも、通貨と安全保障を共有する枠組みに参加するでしょうか? マンデルは、現代の経済において世界が1つの最適通貨圏だ、と述べたそうです。

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ガートン・アッシュは、EUがイギリスの混乱を祝うような感覚を持つことを理解できるとした上で、それを批判します。UKが失敗したのではなく、Brexitに関する親EU派が闘っているからです。EU内で起きている対立も同じです。

どこに境界線を引くのか? ドーバー海峡か? あるいは、UKにもEUにも及ぶ、親EUと反EUとの間か?

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為替レートを安定的に、しかも、輸出部門が競争力を維持する水準で維持できるように、国内の政策や国際的な協力を合意します。

かつて国際通貨制度に関して、完全な固定レート、もしくは、完全な変動レート、どちらかしか生き残れない、という2極化論をB. Eichengreenなどが唱えました。しかし、現実の適応過程はそれが間違いであることを示したのです。

それは、J. Williamsonが主張していたことです。

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核兵器を保有しなければ、国際政治では発言できない、と橋本徹はテレビ番組で持論を述べました。北朝鮮は、その意味で正しい。日本も、当然、核武装するべきだ、という意味です。

橋下徹や小池百合子は、日本のポピュリストです。わかりやすい、目立つ争点を示し、敵を作り、メディアをうまく利用する。大衆に受ける議論を好み、正しい結果をもたらす政策の細部よりも、既存の政策や既得権者を激しく攻撃し、道義的に批判する。長期的な改善より、短期的な論争や評決を、もっぱら重視する。自分のイメージを肥大化し、反対する者を許さない。

自分と権力を結ぶために、それ以外のものは何でも道具とみなし、状況に応じて利用する。なぜなら、それが政治だから。

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イングランド南西部の町Swindonで、ホンダは自動車工場の閉鎖を決めました。Brexitを決めた国民投票では、離脱支持が多く、その結果、自動車工場は経営がむつかしくなる、とすでに懸念されていたのです。

The Economist February 16th 2019の記事(Bagehot: The silence of the lambs)は、Euro Lambsを紹介します。ここは素晴らしい牧場が広がり、イングランドの古典的な景観を残す美しい土地である、と同時に、Brexitが意味する危険なものを示しているからです。

この土地の政治家はBrexitを支持しました。それはイギリスの伝統や景観に対する誇りがあるからでしょう。しかし、この土地の景観を維持するのは、羊たちです。毎週14000頭、クリスマスの週には25000頭が食肉に加工されて出荷されています。それは広範な、細部に及ぶ分業過程に支えられ、廃棄されるものがないくらい、すべての部位が利用されるだけではありません。EUの一部として繁栄しているのです。

Euro Lambsの羊は80%がヨーロッパ大陸向け、多くがフランス向けの輸出です。労働者の60%は東欧から来た者です。Euro Lambsの所有者はパキスタン人の家族です。Khalidの一家は1992年、アイルランドからイギリスに来ました。高品質のハラル・ミートを作るためでした。羊の首を切るのはイスラム教徒でなければなりません。

Khalidたちの牧場はエスニック企業家の重要性を示す例です。彼らはまた、移民たちの同化の物語でした。彼らが住んだCraven Armsは、人口2500人でも都市のように人口が多様で、スカーフをした女性たちが多く、モスクも建てられました。学校長はパキスタン人の生徒たちを「礼儀正しく、身なりもよい」と称賛しました。

町は雇用をもたらす者なら大歓迎でした。なぜなら鉄道のハブとして栄えた町が、刺青の店と持ち帰りの料理屋しかない、衰退する街に変わっていたからです。Khalidたちも町になじみ、町のために貢献しました。労働者たちが住む住宅を購入し、イギリス生まれの聖職者を呼んで、人々に学校の運営に参加し、大都市に住む若いイスラム教徒たちにはイギリスの地方の美しさを知るように勧めました。

しかし、今やBrexitがそれらを破壊します。もし合意なしにEUを離脱すれば、羊肉の輸出には40-45%の関税がかかり、売れなくなるでしょう。東欧の労働者を雇用できず、ライセンスも問題になります。それは2001年に猛威をふるった口蹄疫のようなものだ、もっとひどい、と経営者は嘆きます。また、高品質の羊肉を冷凍せずに輸出することで得られる利益は、パリにすぐ届けられる輸送条件を前提しています。

もしBrexitによってKhalidたちの牧場が消えるなら、イギリスの美しい景観も失われるのです。

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