IPEの果樹園2019

今週のReview

2/25-3/2

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サッチャリズムの遺産 ・・・合意なき離脱 ・・・アマゾンとNY ・・・ポピュリストへの反応 ・・・緊縮策の擁護 ・・・ヨーロッパとアメリカ ・・・カルロス・ゴーンの拘束 ・・・左派的改革プログラム ・・・イギリスの政党離脱者 ・・・米中貿易紛争 ・・・ユーロ誕生から20年 ・・・民主的世界の政党分解 ・・・トランプと国際核管理 ・・・イラン革命40周年の憂鬱 ・・・AIによる人類の解放?

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 サッチャリズムの遺産

PS Feb 15, 2019

The Road From Thatcherism

PAOLA SUBACCHI

この数年、発展した諸国でポピュリズムが勢いを増している。そして経済学では、40年前に起きた自由市場革命が失速し、自ら否定的な言葉を吐くようになった。

19795月に、マーガレット・サッチャーはイギリスで最初の女性首相になった。また、国家の役割を小さくし、市場の役割を大きくすることを要求する、大国の中で最初の指導者となった。自由放任の方針で経済政策を決定する新しい時代が始まった。同じアプローチを、アメリカのロナルド・レーガンも採用した。

1970年代のスタグフレーションの後、戦後のケインズ主義的なコンセンサスは明らかに破たんし、サッチャー=レーガンの市場原理主義、もしくは、すぐにネオリベラリズムと言われるものが、急速に発展した諸国や発展途上諸国に広まった。民営化、財・労働市場の規制緩和、税率に引き下げ、自由貿易、資本取引の自由化。

それは、当然のこととして、金融的不安定性、不平等を拡大し、そして、最後には政治不満が高まった。技術革新が加速し、グローバルな経済秩序が変化する中で、所得政策、労働市場政策、産業政策を求める声は強い。しかし、今も私たちはサッチャリズムとともに生きている。

サッチャーは、首相として、イギリスが深刻な分断状態にあり、経済が縮小していく問題に直面した。イギリスは「ヨーロッパの病人」だった。1970年代半ばのEEC加盟で労働党は分裂し、政府は、議会での支持が半数を割った。1976年のポンド危機で、通貨価値がドルに対して25%も下落し、IMF融資に頼った。

労働党政権は、労働組合を恐れ、インフレを抑えるための政策を採用しなかった。1978年の「不満の冬」では、国有部門労働者のストライキがイギリス国民の生活を挫いた。有権者の不満を観たサッチャーは、機会をとらえた。「労働党は働かない」という強烈なメッセージを広めた。

サッチャーの「新保守的」経済政策は、IEAなど、さまざまなシンクタンクが普及させた。サッチャーは保守的エコノミストと彼女の政治的信念、社会主義は個人の自由に対する脅威だ、という信念を組み合わせた。ハイエクやフリードマンと彼女をつなぐのは、政府介入に対する敵意、クローニズム、レントシーキングという非難だった。

サッチャーは、経済パフォーマンスを無視した。それは産業も政府も破壊した。彼女のアプローチは有名なスローガンに示された。TINA“There is no alternative”)である。イギリス経済の解決策とは、サッチャーによれば、政府支出や公共サービスの削減、社会福祉プログラムの削減、労働組合の力の切り落とし、賃金の抑制、国有企業の民営化、税の削減、だった。1979年以降、50以上の国有企業が、赤字でも黒字でも、売却された。

サッチャーは、民営化によって得た資金240億ポンドを、教育や将来の発展に向けて投資しなかった。減税するために使ったのだ。高所得者の限界税率は、1979年の83%から、1980年代後半にはわずか40%に引き下げられた。

このときから西側の政策論争には市場効率が支配的なパラダイムとなった。左右のイデオロギーを超えて、それは支持された。金融部門の規制緩和を進めたイギリス労働党のブレア首相、ウォール街の自由化、福祉プログラムの削減を行ったアメリカ民主党のクリントン大統領、賃金引き上げの上限を決めたドイツ社会民主党のシュレーダー首相もそうだ。

その成果は乏しかった。成長率が高まったわけではなかった。英米の経済は大きく変化し、製造業が減って、サービス業に比重が移った。この脱工業化は、産業革命の起源であるイングランド北部で激しかった。新しい雇用はロンドンと南部に多かった。規制緩和と組合の解体を経た完全雇用は、不平等で、労働者たちの落ち込む貧困が深まった。子供の貧困率が上昇すると予想されている。

ネオリベラリズムを受け入れた社会はますます分断され、経済的パワー、影響力、教育、医療に関して不平等になった。政治的な分極化、喪失感、不安感が増した。国際的な市場統合は、もっぱら金融部門の規制緩和による、グローバリゼーションであった。社会政策ではなく、金融革新だけで、市場の失敗を是正しようとした。それは発展途上諸国や世界に広まり、国際収支不均衡や金融危機に対するIMF融資を通じて、ワシントン・コンセンサスを輸出した。

2008年の金融危機は、市場が常に自己調整できるという信念を打ち砕いた。既得権集団、モラルハザード、強欲による詐欺が市場を歪めていた。民間金融機関の救済に納税者の資金が使われ、他方で、緊縮財政、成長の減速、低所得層は罰せられた。こうしたことが各国の政治システムの正当性を根底から破壊した。極端な金融緩和政策によって、富裕層はますます多くの富を得た。

1979年、サッチャーはガバナンスの機能不全に対する不満を煽った。そして、自由な、自ら行動する個人に依拠する「社会」というビジョンを掲げた。サッチャーは、有名なことだが、「社会なんてものはない。」と言った。個人や家族はある。政府は人々を動かして政策を実施する。それだけだ。

再分配政策や政府による経済管理を放棄したサッチャーの自己満足は、2006年の危機で、はっきり間違いであるとわかった。Brexit投票やトランプの当選が、その結果である。コミュニティーを分断し、無視することは、時限爆弾である。制度を弱め、最後には政治システムの全体を崩壊させる。

開かれた市場経済を維持することと、政治的な安定性を確保することとは、対立している。市場は自己規制しない。それがサッチャリズムの遺産となった。


 合意なき離脱

The Guardian, Sat 16 Feb 2019

Brexit extremism is going nowhere. Now the moderate millions must act

Nick Cohen

FT February 17, 2019

Parliament’s Brexit drama will play out in three acts

Vince Cable

NYT Feb. 17, 2019

What’s the Plan for Brexit? There Is No Plan

By The Editorial Board

合意なき離脱の細部が議論されている。329日の午後11時がデッドラインだ。しかしメイ首相と議会は不毛な投票を繰り返している。

メイの権威はさらに低下した。彼女が議会の承認を得る能力は、EUにも信用されていない。それでもメイは首相官邸にいる。分裂した保守党が、労働党に政権を奪われることを恐れているからだ。労働党のジェレミー・コービンも旧左派で、自分の党を分断している。

混乱が深まる中で、離脱強硬派には、合意なき離脱は可能であるだけでなく、イギリスが主権を回復する道として望ましい、という感情が明らかに生じている。ヨーロッパの指導者たちにも、イギリスに対する不満が高まっている。オランダのルッテ首相は、EUの外に出れば、イギリスは大西洋に孤立して立つ中規模経済でしかないだろう、と語った。

FT February 18, 2019

What Britain should do after a no-deal Brexit

Wolfgang Munchau

合意なき離脱の論争は2つの点で重大な間違いを犯している。1.阻止しようとする人々の議論が間違っている。2.議会の修正案で阻止できると考える人々のナイーブさが間違っている。

前者の議論は、国民投票で残留派が敗北したときと同じである。恐怖を煽る議論だ。また後者は、メイが首相を続けて、たとえ延期しても、合意なき離脱の可能性はなくならない、ということを理解していない。その可能性は、人々が思うよりも高いだろう。

合意なき離脱が起きると考えた場合、何をするべきか? 短期的には、リーマン・ショックと同じである。イングランド銀行は金利を下げ、財政赤字を増やして政府支出し、ポンドの価値が大幅に低下するだろう。

さらに、長期的に対応することが重要だ。UKがポスト工業時代の成長を実現する経済に転換する政策だ。長期的な経済の健全性は、技術革新・創造性によって決まる。

同時に、Brexitを支持した人々の不満、不平等や、不労所得を貯めこむ企業モデルを改革する必要がある。経済の構造転換を長期的な支配エリートが阻む問題は各地で議論されてきた。UK経済のバランスを回復する作業は、Brexit後のシティや多国籍企業の地位低下によって刺激されるだろう。

その意味では、確かにEU離脱にも良い点はある。しかし、合意なき離脱は、非常に、非常に悪いアイデアだ。

The Guardian, Tue 19 Feb 2019

The Guardian view on Honda’s closure: of course it’s partly about Brexit

Editorial

The Guardian, Wed 20 Feb 2019

Avoiding a no-deal crash-out won’t stop Brexit wrecking our economy

Peter Mandelson

ホンダがSwindonの自動車工場を2022年に閉鎖する、というニュースが届いた。3500人の雇用が失われる。それはエアバスの投資削減や、ニッサンのSunderland工場でX-Trail SUVを生産する約束が撤回されるニュースに続くものだ。UKの貿易や投資に関する不確実性が増したことで、毎週、数十億ポンドが失われている。8000億ポンドの金融資産がイギリスを逃げ出すだろう。

FT February 20, 2019

Brexit betrays Margaret Thatcher’s carmaking legacy

John Gapper

FT February 20, 2019

Politicians must stand up for the City of London after Brexit

Jo Johnson

PS Feb 20, 2019

Brexit’s Lost World

NGAIRE WOODS

2016年にEU離脱を決めて以来、イギリスの環境は3つのレベルで悪化した。1.ルールに依拠したグローバル秩序が弱体化した。2.イギリスのパートナーとして中国との信頼関係が悪化した。3.イギリスの民主主義の基礎となる情報通信環境の脆弱性が増した。


 アマゾンとNY

NYT Feb. 16, 2019

A Better Way to Attract Amazon’s Jobs

By Amy Liu

NYT Feb. 16, 2019

Bill de Blasio: The Path Amazon Rejected

By Bill de Blasio

FT February 17, 2019

The chastening fallout of Amazon’s hunt for HQ2

NYT Feb. 20, 2019

Does New York Still Have a Future in Tech?

By Enrico Moretti


 ポピュリストへの反応

FT February 17, 2019

Populists have a point, the system has to change

Minouche Shafik

ポピュリストの指導者たちは反エスタブリシュメントの感情を煽り、真の「人民の意志」を代表していると主張する。右派でも左派でも、ポピュリスト政党は反エリートで、反多元主義(複数政党制)だ。後者は、彼らを民主主義に対する脅威にしている。ポピュリストに対抗するためには、彼らが依拠する経済的不安定さやアイデンティティへの不安に応えねばならない。

技術革新とグローバリゼーションは、どこでも1%の最富裕層と、新興市場の中産階級に大きな富をもたらしたが、先進経済のほとんどで、下層中産階級と労働者階級は苦しんだ。特に、若者や教育水準の低い労働者が大きな損害を受けた。

その対策はよく知られていたが、政府は十分な規模で行わなかった。すなわち、教育や技能形成への投資、貧困地域へのインフラ投資、課税強化と再分配政策である。もっと創造的な政策も必要であっただろう。すなわち、経済を弾力化しながら、同時に労働者の安定性を維持する政策だ。

デンマーク・モデルの「フレクスキュリティ“flexicurity”」がそうだ。それは雇用主が容易に労働者を解雇できるようにして、同時に、「職場の安定性」ではなく、「所得の安定性」を重視する。また雇用主は、その代価として、税負担や労働者への投資を受け入れる。また、パートタイム労働が広く行われるようになった。

もう1つの困難な改革は、政府をもっと真に民主的にすることだ。特殊利益集団の影響力を削減し、任期の長期化を制限し、政治家が国民に対して正直であるように求め、権限を分散し、市民が真にパワーを行使できるようにする。

おそらく最も困難な改革は、グローバル化し、多文化的な社会で、自分たちが何者かを示す、アイデンティティ形成の物語を開発することだ。アイデンティティ論争は、しばしば、民族、ジェンダー、性的指向、宗教のような、差異を貯める問題に焦点を向ける。しかし、価値観、歴史、食べ物、スポーツ、国民的行事に焦点を当てることで、もっとわれわれを結びつけるだろう。すなわち、ロンドン・オリンピック、The Great British Bake Off(料理コンテスト)、ワールドカップ。

ポピュリストたちは、繁栄を共有し、経済的安定性と共通のアイデンティティを形成するような信頼できるビジョンを示していない。

歴史が示すように、ポピュリストたちは国家を占領し、パトロン関係を広め、批判・反対派を弾圧し、裁判所、規制機関、メディアの独立性を破壊する。それは支持者への買収を拡大した末に、財政破たんや国際収支危機に終わる。


 緊縮策の擁護

FT February 18, 2019

Austerity, by Alberto Alesina, Carlo Favero and Francesco Giavazzi

Review by Chris Giles

緊縮策に対する国際的な反発が広まる中で、3Alberto Alesina, Carlo Favero and Francesco Giavazziは反撃した。健全財政を支持する正統派は政治家に支持されない。トランプ大統領も、EUルールを無視するイタリア政府もそうだ。

反緊縮論の一般に支持されている中身は、増税と支出削減は不況をもたらす、というものだ。3人の主張は、持続不可能な巨額の赤字を出す国は、政府の支出削減によって、財政再建するべきだ、というものだ。Alesinaは「景気拡大的財政引き締め」という言葉で有名だ。それは緊縮策が、不況ではなく、成長をもたらす、という主張だ。

彼らの考えでは、増税による緊縮策では確かに不況になるが、政府支出削減では、しばしば、投資家の信頼が回復し、財政再建が進む。過去の多くのエピソードを調べて、金融危機後の因果関係を確認している。景気回復では、公共支出が減り、税収も回復して、財政赤字削減と好景気とが自然な関係に見えてしまう。しかし、その因果関係はむしろ逆である。


 ヨーロッパとアメリカ

FT February 18, 2019

Angry words in Munich speak to fraying Atlanticism

NYT Feb. 18, 2019

Europe to Mike Pence: No, Thank You

By Roger Cohen

フランスの大使が私に語った。「トランプ政権は、ドイツ人をド・ゴール主義者に変える、という驚異的な偉業を達成した。」

かつてもっとも熱心な大西洋同盟の支持者であったドイツは、侮辱されて態度を硬化させ、ロシアへの内的な親しみと、ド・ゴール的な戦略的独立性という感覚を見出した。

ドナルド・トランプがメルケルを憤慨させた。いたずらっぽい嘲笑を目に示しながら、彼女は問いかけた。シリアから米軍を引き上げることが、本当に、イランに対抗する最善の方法なのか? イランを封じ込めることが、本当に、「存在する唯一の合意」、ヨーロッパが支持し、トランプが破棄する合意を、ごみのように捨てることでできるのか? BMWが南カリフォルニアに最大の工場を持つのに、トランプの通商部が示唆するように、本当に、ドイツの自動車はアメリカの国家安全保障に対する脅威なのか?

「自分で好きなようにする」というのは、多国間の解決を求める世界にふさわしくない、とメルケルは示唆した。ロシアのクリミア併合やウクライナ東部における暴力状態の醸成に、彼女は明らかに憤慨しているが、ヨーロッパはロシアとの関係を断絶するつもりはない。

トランプはメルケルのスピーチに現れない。しかし、イヴァンカ・トランプは演台の前に座ったまま、聴衆がメルケルのスピーチに立ち上がって拍手しても、立たなかった。

ペンスは攻撃に転じた。彼は聴衆の前で、こびへつらう姿勢、傲慢さ、その吐き気を催す上辺だけの悲壮感を示した。トランプ大統領の名は、あたかも神の言葉が意味するように繰り返し称えられ、ヨーロッパ市民は、家臣として、多国間のイラン核合意を破棄しなければならない、と訓戒された。先週のアウシュビッツ訪問は、上辺だけであり、アメリカのイランに関する命令に従わないヨーロッパ人は、事実上の反ユダヤ主義者だ、という意味のメッセージであった。

ミュンヘン安全保障会議は、変化の潮流に抵抗するものだ。アメリカの副大統領に示された敵意は、トランプがヨーロッパの同盟者をハンマーでどれほど激しく叩いてきたかを示すものだ。共通の戦略(イラン、気候変動、通商、イスラエル・パレスチナ和平)を破棄し、共有する諸価値を侮辱し(平壌からリヤドまで、独裁者と抱擁した)、「対話」や「協力」という言葉が消えた。

もはやNATOの指導国は脱走兵である。ヨーロッパの安全保障の強化を、アメリカとともに、考えることは難しい。戦略の真空が現れた。それは危険である。中国の政治局委員Yang Jiechiがミュンヘンに参加していた。国際協調、協力、法の支配を絶賛した彼も、トランプには「説教するな」と言う。それはヨーロッパを喜ばせるが、中国は人権や少数民族との共存を支持していない。ロシアのラブロフ外相が示す冷笑主義の世界も、ヨーロッパは支持しない。

1945年ではなく、今や、人間の尊厳と自由を保障するのはヨーロッパ自身である。

PS Feb 20, 2019

Showdown in Munich

CARL BILDT

FT February 21, 2019

Angela Merkel, Donald Trump and a broken alliance

Philip Stephens


 カルロス・ゴーンの拘束

FT February 18, 2019

A Japanese remedy for the UK’s ailing town centres

Andrew Hill

NYT Feb. 21, 2019

Carlos Ghosn Faces Japanese ‘Justice’

By The Editorial Board

カルロス・ゴーンの栄光に包まれた世界企業の指導者から独房への変転はあまりにも劇的である。彼が何をしたか、しなかったにせよ、これが正義を行う正しい方法とは思えない。

日本では、基本的に、検察官が、繰り返し、自白を拒む容疑者を拘留延期し続けることが許されている。弁護士が立ち会うこともなく、容疑者は何日も尋問される。ゴーン氏はノートを取ることも許されていない。このシステムは99%の自白率を誇っている。

フランスのルモンド紙は、先月、フランスの弁護士50人が連名で、東京検察庁を「自白の強要」で非難する公開書状を掲載した。

それがいつになるかは分からないが、ゴーン氏の後半は、彼だけでなく、日本の司法システムを被告席に立たせるだろう。


 左派的改革プログラム

PS Feb 18, 2019

The Birthplace of America’s New Progressive Era

LAURA TYSON, LENNY MENDONCA

現在の荒涼とした社会・政治状態は、20世紀はじめと共通しており、その時代に最初の革新派の運動が現れた。多様な市民とグローバル化した経済を持つ点で、カリフォルニアはすでにアメリカ全体が直面する問題の多くに対処し始めている。

NYT Feb. 19, 2019

On Paying for a Progressive Agenda

By Paul Krugman

改革プログラムの財源はあるのか? そう詰問する者がいる。彼らの多くは悪意を持って尋ねており、減税に関しては同じ質問をしない。

しかし、エリザベス・ウォレンの諸提案は、税と支出の両面から見るべきだろう。そこには、私の考えでは、3つのタイプがある。1.投資、2.有益なプログラムの拡大、3.システム全体の改革。

非常に低いコストで、非常に有益な社会プログラムに投資する場合、財源を問題にするべきではない。グリーン・ニュー・ディールがそうだ。また、有益なプログラムを拡大する場合、その財源は税金だが、特に、中産階級の家庭ではなく、富裕層への課税を増やすべきだ。たとえば、オバマケアがそうである。

最期の、システム全体の改革として、全国民に医療保険を導入する場合は、政治的に非常に困難であろう。その財源は規模が違う。最終的には、中産階級の多くが、高い税負担を超える利益を受けられる。しかし、こうした革新的候補の提案を「愚劣」で「実現不可能」と非難するとき、その人物は自分の偏見や現実への無神経さを表現しているのだ。


 イギリスの政党離脱者

FT February 19, 2019

The Labour split reflects the dislocation of British politics

イギリスの労働党から7人の議員が離党した。左派のコービンによる党運営を批判したものだ。イギリス左派の分裂はグローバルな現象でもある。ポピュリズムが台頭し、グローバリゼーションが後退し、ネイティビズムが広まっている。中道左派の政党は新しい時代の方針を模索している。ドイツ、フランス、アメリカもそうだ。

しかし新しい政党を組織するには至っていない。

The Guardian, Wed 20 Feb 2019

The splitting of the Tories and Labour could redefine British politics

Martin Kettle

保守党から3人の議員が離党した。

The Guardian, Thu 21 Feb 2019

Once Brexit is over, what’s left? A two-party system that kills optimism

Polly Toynbee

The Guardian, Thu 21 Feb 2019

What next for the Independent Group? Here’s a winning manifesto

Glen O’Hara

FT February 22, 2019

The centre strikes back in British politics


 米中貿易紛争

FT February 19, 2019

China will not surpass America any time soon

Joseph Nye

FT February 20, 2019

US shift to Asia is more than a short-term pivot

Janan Ganesh

PS Feb 20, 2019

The Dialectic of Global Trade Policy

MOHAMED A. EL-ERIAN


 イデオロギー

PS Feb 19, 2019

The Ideology Trap

SHLOMO BEN-AMI


 ロシア制裁

PS Feb 19, 2019

Getting Serious About Russia Sanctions

ANDERS ASLUND


 ユーロ誕生から20

VOX 19 February 2019

The euro ? a tale of 20 years: The priorities going forward

Marco Buti, Maya Jolles, Matteo Salto

20191月、ユーロ圏は19カ国に及び、34000万人が含まれる。ユーロは世界で2番目に多く使用される通貨である。

ヨーロッパが共通通貨を持とうとした最初の動機は、経済的なものであると同時に、政治的なものであった。それは1970年代初めにブレトンウッズ世界が崩壊したことに始まる。すでに19826月、Tommaso Padoa-Schioppaが「不可能のカルテット」という議論をしていた。資本の自由移動、自由貿易、為替レートの安定性は、各国の独立した金融政策と矛盾する、という意味だ。それはEMUの土台となった考えである。経済論は、すぐに、ドイツの再統一はEUのなかに厳格に据えられるべきだ、という政治的主張によって強化された。

EMUの制度設計は、1980年代に支配的な政策決定の強い類型に依拠していた。それはマクロ経済的安定性を究極の目標とした。金融政策の独立性がインフレを抑制すると信じられた。財政の必要や政府の救済に利用されるのを防ぐために、政府の予算赤字や中央銀行による融資は禁止された。税率は景気循環を通じて一定であり、それによって景気循環を抑制する効果が期待された。金融市場が資源を効率的に配分し、EUは競争を促し、市場統合を実現するだけで良かった。市場の効率性が高まる結果として、ユーロ圏は最適通貨圏になるはずだった。

これらの原則がマーストリヒト条約に確立された。しかし、2008年の金融危機がユーロ圏に波及する過程で、その制度的欠陥が次第に明白になってきた。最後の貸し手としてのECB、預金保険、規制、銀行の救済と整理、など、その後の制度改革は今も続いている。


 民主的世界の政党分解

NYT Feb. 19, 2019

Is America Becoming a Four-Party State?

By Thomas L. Friedman

民主的世界の長期的に確立されてきた諸政党が爆発していることを、あなたは気づいているか? イギリス労働党は最近お礼に過ぎない。アメリカの政党はどうなるのか?

2020年のアメリカ大統領選挙は4つの政党による競争になるだろう。極右のドナルド・トランプ、中道右派の旧式共和党、ジョー・バイデンの中道左派、アレキサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)の極左、である。

27日、オカシオ・コルテスはグリーン・ニュー・ディールF.A.Q.に書いた。「アメリカ社会のすべての面を活性化する。・・・ネット・ゼロの温暖化ガス排出量、すべての人のための繁栄。」 さらに、「すべての人のための経済保障。働けない者も、働こうとしない者も。」

「働こうとしない者」にも経済保障を与えるのか? その人が働く気になり、技能を取得するために、新しい税金を支払うと支持する者がいるか? これは旧来の中道左派的な民主党にとって受け入れがたい、急進左派の主張である。

民主党は2つに分裂するだろう。「パイを再分割する」民主党と、「パイを増やす」民主党だ。

「パイを増やす」民主党は、Mike Bloombergがその例だが、ビジネス、資本主義、起業家を称賛する。それがタックス・ベースや、インフラ、学校、緑地、セーフティー・ネットのために資源を生み出すから。良い職場は、政府が与えるものでも、自然に木になっているものでもない。

彼らは近年の経験から学んだ。NAFTAや中国との貿易、デジタル技術革命は、その利益が自動的に底辺までおよぶことはない。彼らは貿易保険や輸入急増への保護を要求し、無料のコミュニティー・カレッジ、職場を移動できる医療保険と年金を要求する。ボスと労働者と株主の間で、もっと公平に利益を分配するための意図的戦略を要求する。

「パイを再分割する」民主党は、Bernie Sandersだが、まず再分配してからでないと成長しない、と主張する。不平等があまりにも大きくなり、余りにも多くの人が大きく後方に取り残されている。

ニューヨークの立地をめぐるアマゾンの決断が2つの民主党の衝突だった。双方の想像力が欠けていた。Amy Liuthe Brookings Institutionの都市問題専門家)が説明したように、Virginia州は正しい組み合わせを示した。アマゾンに5億ドルの補助金を出すが、同時に州は、輸送システムと学校にその2倍を投資する。将来のコミュニティー全体の利益をもたらす、高技術労働者のためのパイプラインを強化するのだ。

共和党は、「政府を小さくして成長を促す」という原則をめぐって分裂する。資本主義が自由に果実をもたらすだけでよいのか、「パイを貯めこんで、跳ね橋を引き上げてしまえ」というトランプのような極右に進むか。前者はthe Never Trumpersであり、後者はTrump’s wagonに便乗する者たちだ。減税、保守派の最高裁判事、規制緩和を得た。しかし、壁建設をめぐるトランプの非常事態宣言は、「小さな政府」を原則とする共和党員たちを、完全に離反させた。

人々の憤慨は天を突く。彼らはソーシャル・ネットワークやトーク・ラジオ、ケーブルテレビを武器として怒りをばらまく。グローバリゼーション、技術革新、気候変動は怒りの加速器だ。だれもが異なる政治的選択肢を要求している。

2次世界大戦以来の二者択一は、これまで政党が依拠したけれど、もはや有効ではない。資本と労働、大きな政府と規制、貿易と移民、ゲイや妊娠中絶といった社会的価値、環境保護。

しかし、もしあなたが、ピッツバーグの鉄鋼労働者で、労働組合員で、週末にはUberで稼ぎ、空いた子供部屋はAirbnbに貸し出すとしたら。安い中国の輸入品をウォルマートで買い、そこになければ、人ではなく応答機械を相手にAmazonで買い物する。そんな生活をするのであれば、支持政党はどうなるか?

創造的な適応が、町や村、都市、高い信頼を維持するアメリカ各地に起きている。そこには複雑な「適応連携複合体」が形成されているからだ。ビジネス、労働者、慈善家、社会起業家、教育機関、地方政府、すべてのネットワークが、職場、ビジネス、住居、学校を改善する。

政治的な部族主義を超えるには2つの方法しかない。共通の脅威か、共通のプロジェクトだ。

FP FEBRUARY 21, 2019

India Has a Lesson for Trump: National Emergencies Are a Disaster for Democracy

BY RUDRA CHAUDHURI


 インド

PS Feb 20, 2019

India’s Trifecta of Failure

RAMESH THAKUR


 トランプと国際核管理

NYT Feb. 20, 2019

Trump’s Idea of a Middle East Nuclear Deal

By The Editorial Board

YaleGlobal, Thursday, February 21, 2019

New Era of Nuclear Rearmament

Ernesto Zedillo Ponce de Leon

FP FEBRUARY 21, 2019

Trump Accidentally Just Triggered Global Nuclear Proliferation

BY SARAH BIDGOOD


 エチオピア

FT February 21, 2019

Ethiopia’s Abiy Ahmed: Africa’s new talisman

David Pilling and Lionel Barber in Addis Ababa


 イラン革命40周年の憂鬱

PS Feb 21, 2019

Iran’s 40 Years of Strife

JAVIER SOLANA


 AIによる人類の解放?

PS Feb 21, 2019

The AI Road to Serfdom?

ROBERT SKIDELSKY

人は安定した職場を求める。同時に、人は常に苦役からの解放を夢見てきた。「ロボットの興隆」は、この2つの願いに新しい衝撃をもたらす。

将来、機械による自動化によって職場の9%から47%が失われると予想される。しかも仕事はますます不安定になる。自動化は、アリストテレスの途方もない予測を実現する。必要な労働のすべては「機械の奴隷たち」が実行し、人間は「善き生活」を生きる自由を得るのだ。古来の問いがよみがえる。機械は人類への脅威なのか、あるいは、解放の手段なのか?

原理的に、矛盾はない。人間の労働の一部を自動化すれば、人は少ない労働で多くの報酬を得られる。産業革命以来、現実に起きたことだ。世界の人口は7倍に増えたが、労働時間は減少し、実質賃金が上昇した。生産性が上昇し、製品の価格が下がったからだ。

しかし、最初の労働者たちは機械によって代替され、リカードが「余剰」と呼んだように、ラッダイトとして反乱を起こした。その後、製品価格が下落し、労働者も多くの衣服を買い、さらに他の消費財を買うようになって、失われた雇用を超える職場を生み出した。

このシナリオには、労働組合も、最低賃金も、雇用保障も、再分配も必要ない。これはフリードリッヒ・ハイエクの唱えた、中央銀行や政府の介入に反対する、有名な議論でもある。

しかし、われわれは問い続けるだろう。自動化の波が広がったら、どうなるのか? 残った職場を求めて労働者たちは競争し、賃金を引き下げる。それは製品の価格下落によって得られる利益を超えるのではないか? 低賃金で低技能の職場は残るが、中程度の技能を要する仕事は消滅するだろう。そして、高技能の職場には大きなプレミアがつく。「素晴らしい職場」は頂点に、「すさんだ職場」は底辺に。

その意味はディストピアの不安を予告するものだ。SF小説は経済分析の先を行く。ごく少数の裕福な不労所得層が、最低限の支払いを受ける多数者によって、あらゆる果てしないサービスを受ける。

それは倫理的な問題である。「ロボットの興隆」がもたらすリスクとは、人間の職場を消滅させることではなく、人間性そのものを消滅させることだ。


 左派ポピュリスト

PS Feb 21, 2019

What’s Left of the Populist Left?

JAN-WERNER MUELLER

ポピュリストに対抗して、人民の声を唱え、右派と融合していく戦略を、左派は採るべきではない。それは反エリートだけでなく、反民主的でもある。もっと具体的な問題について、右派でも左派でもない、新しい民主的な選択肢を示すべきだ。


 ハノイの米中首脳会談

FP FEBRUARY 21, 2019

Hanoi Is Happy Cozying Up to Trump

BY BENNETT MURRAY

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The Economist February 9th 2019

The Iranian revolution at 40: How to deal with the mullahs

The Iranian revolution (1): The shadow of 1979

Trade and politics: East African rifts

Economic geography: Germany spreads the love

Immigration: the new Europeans

Manufacturing’s revival: Making it in America

Free exchange: Brave new world

(コメント) イラン革命から40年を経て、聖職者による政治体制の意味、限界、国際的影響を考えます。革命運動が体制の転換から安定化、統治の正当性へと移るのは当然ですが、聖職者がそれをどのように受け入れるか。

東アフリカ共同体が、究極的には政治的な連邦制を目指して、2024年までに共通通貨を導入する、という議論には、ヨーロッパと同様に、安全保障への深刻な不安があります。

イギリスはEUからの移民を排除しつつ、新たな条件で移民を受け入れることには積極的です。アメリカでは、トランプの政策による製造業の復活が成果を上げている場所を紹介し、他方で、政治に登場した「社会主義」や「グリーン・ニュー・ディール」への慎重な見方も展開しています。

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IPEの想像力 2/25/19

ジョン・キーン著『デモクラシーの生と死』が描く民主政治のダイナミックな姿を、驚きながら、ときには感嘆の声をあげて、読みます。

50年後の歴史家、「記憶の女神ムネーモシュネーの現代の末裔」が語ることとして、キーンはデモクラシーの危機を説明しました。

l  「政府に対してきついことを言ってくるものに威嚇的な質問を向けてやれ」・・・「異論を唱える者は罰せよ。」

l  「タフな広報専門家チームを作れ」・・・「指導者としての首相のイメージを培わせよ。」

l  「退任後の、あるいは現役の官僚からの情報漏れを防げ。」・・・「忠誠と秘密性」・・・「不忠の疑いある者には警察を差し向けて調べさせよ」・・・「容疑者や証人に対する裁判なしの拘束」・・・「最優先事項の報道を禁止する」

l  「情報源を明かさぬ連中を追跡せよ。」・・・「名誉棄損」「法廷侮辱罪」

l  「『コミュニケーションの自由』には賛成だ」・・・「しかし安全保障や治安」「フェアプレー」「企業の権利」「弱者の保護」「統治の必要」・・・「情報を差し止めるべき強力な根拠がある」

これらは自民党政権、安倍首相のことを述べているのではありません。イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ(1994-95, 2001-2006, 2008-2011年に首相)、タイのタクシン・チナワット(2001-2006年に首相)、オーストラリアのジョン・ハワード(1996-2007年に首相)のことを、政権党が多数の支持を得る、グローバルな妥当性を持つテクニックを示した、と描いているのです。

l  「繰り返し勝利することで」・・・「選挙政治の短期のリズム感を変えてしまえ。」・・・「幾度かの選挙に続けて勝つ」

l  「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)の原理など、もはや無意味であるかのごとく行動せよ。」

l  「任期制限があるなら、そんなものは撤廃してしまえ。」

l  「敵側の政党政治家の無能ぶりを皮肉れ。」

l  「何の問題もないかのごとく無視せよ。」「辞め急ぐな。」

l  「統治とは決断であり、スピードであり、無意味な仕事では決してない」

l  「『友達』と『友達の友達』に報いること。」・・・「政治的えこひいきの慣習」・・・「猟官制度を拡大せよ。」

l  「支持を買い取れ。」

l  「『敵たち』があたりを自由に動き回っているという感覚を培え。」・・・「危険なタイプのリストを書いておけ」

l  「公然たる抗議行動への信頼を崩してしまえ。」・・・「ゆめゆめ政府が悪いとは認めるな。」

l  「正しいことと間違ったことの両方を言え」

l  「デモクラシーのことは語るな。」「その言葉を、定期的な選挙という意味にしてしまえ。」

l  「国家非常事態宣言」「地域社会の制圧」「戒厳令の布告」

これらはアメリカのトランプ大統領のことを述べているのではありません。それは「寄生動物」である、とキーンは書きます。人々の心配を食い物にして、デモクラシーの生きている中身を抜き取ってしまい、その死せる貝殻を異質の物質で満たしたのだ、と。

こうして、21世紀にデモクラシーは死んだ、と女神は語りました。

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