IPEの果樹園2018

今週のReview

8/27-9/1

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労働の世界を変える ・・・トルコの経済危機 ・・・韓国の危機 ・・・ギリシャ救済プログラム ・・・ベネズエラの経済崩壊 ・・・中国のハイテク産業

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 労働の世界を変える

NYT Aug. 18, 2018

It’s Not Technology That’s Disrupting Our Jobs

By Louis Hyman

われわれが学校で産業革命について学ぶとき、工場制度、蒸気機関、あるいは、力織機といった技術革新が社会を変えた、労働の世界が根本的に変わった、と教わる。

同様に、スマートフォン、AI、アプリについて、議論されている。伝統的な労働が破壊されたのは技術革新が起きたからだ、と。

しかし、この説明は間違っている。通常、技術が社会変化を決めるのではない。その逆だ。世界を組織する仕方について、われわれの決定が変化し、社会も変化する。この点は、ギグ・エコノミーの不安定さや欠陥を議論する場合、重要だ。仕事の性格は社会的な選択であって、アルゴリズムの結果ではない。

19世紀の産業革命に先行して、「勤勉革命」があった。それ以前、人々が働く場所は住む場所と同じであった。彼らは自分で働き、雇用されていたのではない。

しかし勤勉革命で、製造業者は労働者たちを1つの建物に集め、仕事を分割し、監督するようになった。初めて大規模に、居住の空間と職場とは分離された。人々はもはや仕事を管理せず、その努力から得た利益を直接に分配するのではなく、賃金を支払われるようになった。

工場の技術は、人々の職場における関係が代わっていたから、実現可能になった。力織機は、住居内で布を織る農民のネットワークでは無意味である。同じことは現代のギグ・エコノミーについても言える。

すでに1970年代以来、少なくとも40年に渡り、戦後の安定した職場の労働関係は崩壊してきた。そして脱工業化やサービス経済の拡大につながった。この10年間では、新しい職場の94%は伝統的な雇用関係の外で生じた。すでに労働者全体の3分の1、若者の雇用の半分は、この新しい世界である。

インターネット技術がこの発展を加速したのは間違いない。しかし、すでに不安定化した労働の世界に応じたビジネスや消費の問題を解決するために、こうした技術は普及している。Uberは変化の兆候であって、その原因ではないのだ。

実際、第2次世界大戦後すぐに、ミルウォーキーで、秘書の一時雇用を仲介するビジネスManpowerが設立された。大企業の労働者削減に役立つと宣伝したが、それに応じる企業は少なかった。そうした利潤増は、大不況を経験した企業にとって、被雇用者との道義的な協力関係を維持することに比べて、重要ではなかったのだ。

何が変化したのか? 1970年代に、厳密に財務的な企業観が登場し、生産よりも株価や債券価格、長期投資より短期利益を重視する思想が広まった。こうした「リーン」な(ぜい肉を落とした)企業は、労働コストの削減を推進し、職場は不安定になった。

私は一時雇用やコンサルティング、フリーランスの広がりに、賛成も反対もしない。しかし、ギグ・エコノミーの自由とは、労働者の自由ではない。アメリカの人々は、かつて苦労して勝ち取った法律や慣習における雇用の保障を失った。われわれは時計を逆転させることはできないが、不安定な職場が不可避のものではない。デジタル技術が労働者たちの利益になるように、新しい規範、制度、政策が必要である。

われわれが選択するのだ。

FT August 19, 2018

Platform companies have to learn to share

Rana Foroohar

FT August 24, 2018

How Adam Smith predicted the power of Big Tech

Merryn Somerset Webb

NYT Aug. 24, 2018

Beware Rich People Who Say They Want to Change the World

By Anand Giridharadas

「世界を変えよ」というのは、長い間、抑圧された者たちの叫びであった。しかし、近年では、富裕層と権力者たちが協力して世界を変えている。

マッキンゼー&カンパニーの報告書、ダヴォスの世界経済フォーラム、モルガンスタンレーの広告、Facebookのマークザッカーバーグの発言。それらに共通するのは「世界を変える」メッセージだ。

しかし、それは彼らの、富を惜しまない、寛大な姿勢を示すのではなく、勝者が語る「偽物の変革」、フェイク・チェインジである。

アメリカのエリートたちは、一般に、問題を起こしたそのシステムを維持しようとしている。そして、フェイク・チェインジがトランプに大統領への道を拓いた。システムは操作されている。エスタブリシュメントの利益に奉仕するものだ。それにもっとも憤慨する者たちの感情をTwitterで煽った。

成功する社会は進歩の機会である。それは、革新や偶然の発展を、皆が共有する前進に変える。


 トルコの経済危機

NYT Aug. 18, 2018

The West Hoped for Democracy in Turkey. Erdogan Had Other Ideas.

By Peter S. Goodman

FT August 19, 2018

Investors have the power to tame Erdogan and Trump

Barry Eichengreen

トルコの経済危機には、すべての危機と同様に、多くの理由がある。過度に野心的なインフラ投資が持続不可能なブームをもたらし、まったく予想されたような結末に至った。アメリカの関税引き上げが輸出を困難にした。アメリカ連銀の金利引き上げがトルコの経常赤字を融資困難にし、また、既存債務の借り換えを難しくした。

しかし最も重要な点は、明らかに、エルドアンが中央銀行を批判したことだ。彼が本気で金利上昇によってインフレが起きると信じているのか、それは重要ではない。明らかに景気減速を中央銀行のせいにしている。彼は中央銀行総裁を決めたし、同様に、それを解任することができる。

トルコの中央銀行は大統領との衝突を避けるかもしれない。あるいは、独立性を確認するために主要金利を一気に引き上げるだろう。問題はエルドアンの反応だ。トルコの制度が頑健であることを示すために、譲歩するのか、銀行を強化するための資金をカタールから得るのか、野心的な財政支出計画を抑制するかもしれない。

あるいは、彼の過去の行動を観れば、むしろ中央銀行の権威を破壊するだろう。それはリラやトルコ経済への信認、大統領自身への信認を、影響に失わせる。

この事件から、ドナルド・トランプは何を学ぶのか? 理性的な大統領なら、トルコの危機を、独立の中央銀行に行政府のトップが介入することへの警告と考えるだろう。しかしトランプは、自分の関税やTwitterの効果がトルコ危機をもたらした、と思うかもしれない。

もちろんアメリカはトルコではない。その債券や通貨の、安全な避難所、という地位は揺るがない。アメリカに通貨危機や財政危機の兆しはない。

しかし、もしトランプが再び連銀を批判すれば、金融市場の反応は厳しいものであるだろう。投資家たちは、大統領の圧力で連銀がインフレに対する姿勢を軟化させる、と懸念する。あるいは、連銀は独立性を維持するために、金利引き上げを早めるかもしれない。いずれにしても、トランプは株価の急落を観るだろう。

エルドアンも、いずれはトランプも、市場からその姿勢を問われるはずだ。

FP AUGUST 21, 2018

Turkey’s Losing Economic War

BY AYLA JEAN YACKLEY

PS Aug 22, 2018

Has the Emerging-Economy Crisis Cycle Ended?

JOSÉ ANTONIO OCAMPO

何十年も、新興市場はブームとバストを繰り返してきた。ブームの時期には経常赤字、財政赤字、民間部門の赤字を外国資本が埋めて、債務が増加する。しかし、対外融資は突然ストップし、さらに信認の破壊は他国にも感染する。ときには新興市場全体に及んだ。

1980年代、ラテンアメリカ債務危機、1990年代、東アジア危機、1998年の危機は新興市場の全体に及んだ。しかし、2008年お危機は少し性格が異なる。危機の始点はアメリカの投資銀行リーマンブラザーズの倒産であった。危機は新興市場に広がったが、その後、発展した地域の中央銀行が極度に拡大的な金融政策を採用し、投資が新興市場に向かったのだ。

先週、トルコ・リラが急落し、他に多くの通貨が減価した。特に、南アフリカ、アルゼンチンだ。ラテンアメリカ諸国、チェコ、ポーランド、ロシア、そして、中国を含む、いくつかの東アジア諸国。

新しい広範な金融危機に向かうのか、だれにも確かなことは答えられない。しかし、旧パターンがもはや作用しない、という理由がいくつか存在する。もはや単純な感染ではない。投資家がカントリー・リスクを個々に判定するようになったからだ。

保護主義や、主要諸国間の対立など、新興市場には今も不安がある。賢明な政策と、IMFが提供するグローバルなセーフティ・ネットが重要である。

FP AUGUST 22, 2018

Erdogan Is Poised to Reform the Turkish Lira

BY ESTHER OWENS

PS Aug 24, 2018

The Economic Costs of Erdoğan

TIMUR KURAN, DANI RODRIK

PS Aug 24, 2018

Emerging Vulnerabilities in Emerging Economies

MICHAEL SPENCE


 中国

The Guardian, Sun 19 Aug 2018

The Guardian view on China: unease at home and abroad

Editorial

PS Aug 24, 2018

Drugs, Gunboats, and China’s Score to Settle

MINXIN PEI

1次アヘン戦争(1839-1842)は、中国のいわゆる「恥辱の世紀」の始まりであり、それは技術的に優れた西側の大国(日本を含む)に負け続ける時期である。19世紀の初めまでに、世界最大の経済を持つ中国が、経済発展と技術の点で、西側の後方に位置した。

アヘン戦争が近代中国のナショナリズムを生み出した。その切れ目なく続く犠牲者の物語は、近代中国のナショナリズムが誕生し、共産党は犠牲の物語を宣伝の主要な部分に利用した。


 韓国の危機

FT August 19, 2018

South Korea: the fear of China’s shadow

Bryan Harris in Seoul

アジア第4の経済規模を持つ韓国の首都、ソウルの権力層の間では、会話が1つの話題だけで占められている。それは、crisis危機だ。

彼らは、輸出による成長を維持することは、中国企業との競争が厳しくなり、また、日本と同様の高齢化と長期の低成長に入ることを恐れている。

ムン・ジェイン大統領の選挙運動は、人々の生活を改善し、より平等な国を作る、というものだった。その希望は支持されたが、政策は成果をともなわない。もっと根本的な、全体的な改革が必要だ、と批判する声がある。

特に、一握りのチェボルが主要産業と輸出を支配する構造は、中小企業や新興企業の発展を妨げている、と批判される。例えば、造船業においても、積極的な政府支援を受けた中国企業に世界シェアを奪われつつある。

Ulsan蔚山は、現代重工業の拠点として繁栄したが、今は韓国のラストベルトである。経済の衰退は自殺者の増加にも示されている。若者たちの流出は、1970年代に比べて4倍になり、2016年委は人口が減少し始めた。韓国政府は35億ドルの補正予算で若者への雇用創出を試みるが、今も失業率は10%だ。

韓国最大の企業、サムソンは、中国企業との半導体開発競争に勝つため、1600億ドルの投資を決めた。韓国にとって、最大の輸出先である中国が、同時に最大の競争相手である。

ムン政権は2重の戦略を推進した。1つは、「所得主導型成長」である。労働条件の改善、賃金上昇を促す政策を取り、消費を増やして、雇用と成長をもたらす好循環にするのだ。しかし、中小企業の利潤が失われ、消費者は債務の負担で支出を増やせない。

もう1つは、「革新的成長」である。大幅な規制緩和で「付加価値」の大きなハイテク産業を刺激し、生産性を高める。それはコングロマリットに抑圧されているスタートアップや小企業を励ます「平等な競争条件」を実現するものだ。

Goldman SachsのエコノミストKwon Goo-hoonは、韓国の将来に楽観的である。ハイテク分野に強く、教育を受けた良質の労働力がある。多くの人々がグローバリゼーションに否定的である。しかし、韓国は「より少なくではなく、より多くの」グローバリゼーションを必要とする。

人口学的な重圧、中国企業の脅威、それらは日本が過去20年間経験した成長とインフレの長期停滞を連想させる。しかし、Park Chong-hoonは、日本下の衝撃を抑え、延期できる、と考える。IMFのエコノミストEdda Zoliは、韓国の財政状態が先進諸国の中で最も良好である、という。

1997年のアジア金融危機では、国民が自発的に保有する金を提供した。韓国人には常に闘う意志がある。また、北朝鮮との和平から経済再建による「東アジア鉄道共同体」を構想するムン・ジェインは、半島の孤立した地位を脱して、中国・ロシアとも統合する地域ブロックを目指す。


 インド

FT August 19, 2018

India risks reputation if millions are left stateless


 ロシアとシリア

FT August 19, 2018

Merkel and Putin to discuss Syria and Ukraine at landmark meeting

Claire Jones in Frankfurt and Guy Chazan in London

FT August 20, 2018

Russia launches a diplomatic offensive on rebuilding Syria

David Gardner

崩壊寸前のアサド体制と政府軍を、イランの革命防衛隊とロシア軍が救った。今、クレムリンは、ロシアとトルコに加えて、ドイツとフランスを外交の受け皿にしようと考えている。そんなことができるのか?

1.アサド体制は安定化の既存にならない。アサドは自国の多数派、スンニ派に対する総力戦を行った。50万人が死亡し、人口の半分が難民となった。体制は過激派を呼び込む政策を選択した。

2.難民たちが帰還する望みも容易に実現しない。アサドは、多数派のスンニ派に対して、少数派支配体制にもどることを恐れている。

3.アサド政府軍は、ロシア空軍とともに、イドリブ奪還を実行するかもしれない。しかし、イドリブには、アルカイダなどの過激派、多数の難民がいる。

アメリカやEUはシリア問題から撤退したがっている。しかし、問題は終わっていない。

PS Aug 23, 2018

Navigating the Syrian Endgame

CARL BILDT

NYT Aug. 24, 2018

In Syria, an Ugly Peace Is Better Than More War

By Jimmy Carter


 移民・難民危機

FT August 20, 2018

Europe risks failure on migration

Tony Barber

これは危機なのか?

数字から言えば、危機は存在しない。EUの規模や財政、行政の能力からみて、この程度の移民・難民を受け入れることはできるはずだ。

しかし、ナショナル・アイデンティティをめぐる政治家たちの論争は過熱し、ヨーロッパにおけるイスラムの地位をめぐって過激な主張が広まった。それが極右政党の支持を増やした。

各国の政府、主要政党は論争に振り回され、EU改革やユーロ圏の議論が進まない事態になっている。また、EUの外交的な魅力が、特にアフリカ諸国に対して損なわれた。

EUも、各国の指導者も、良質な制度を、移民がEUに受け入れられる法的な枠組みを、難民の公正な手続きと国際法による扱いを、積極的に実現するべきだ。

FT August 21, 2018

Something is stirring on the German left

Frederick Studemann

NYT Aug. 21, 2018

A New Deal for Refugees

By Tina Rosenberg

発展途上国に負担が偏っており、不安定化が拡大している。負担を分散し、難民を地域社会に統合する新しいアプローチが必要だ。


 北朝鮮

NYT Aug. 20, 2018

How to Break the Impasse on North Korea

By The Editorial Board

NYT Aug. 22, 2018

Why Should North Korea Give Up Its Nuclear Weapons?

By David C. Kang

YaleGlobalThursday, August 23, 2018

Trump’s North Korea Nuclear Deal Flounders

Shim Jae Hoon


 コフィ・アナン

FT August 20, 2018

Kofi Annan, UN leader in difficult times, 1938-2018

Alec Russell

FP AUGUST 20, 2018

The Death of the Gentle Peacemaker

BY JAMES TRAUB


 ギリシャ救済プログラム

FT August 21, 2018

Muted cheers as Greece exits its eight-year rescue

ある国が金融救済プログラムから出ることは、それが経済の極端な縮小、失業と社会不満の増大、政府的混乱をともなったのであるから、大いに祝福すべきことだ。経済は成長し、政治システムは少なくとも当面安定し、もはやギリシャがユーロ圏に深刻な金融的脅威となることはない。

しかし、問題の多くは未解決だ。救済者たちが教訓をすべて学んだとは言えない。つまり、危機はそれが正しく対処された場合よりも悪化したし、将来も容易に繰り返される、ということだ。

ギリシャには救済融資の莫大な債務が残っている。それは大幅に譲許的な金利とはいえ、なお実質的に債権者のコントロールに従うことを意味する。ギリシャ政府は引き続き、財政黒字を出すことが求められている。

ユーロ圏とIMFからの融資がなければ、ギリシャの財政における調整過程はより急激で、破壊的な過程であっただろう。しかし、債権者たちは過度に楽観的な計画に基づいて、債務の削減ではなく、その返済を要求してきた。

NYT Aug. 25, 2018

Inviting the Next Financial Crisis


 

The Guardian, Wed 22 Aug 2018

The Guardian view on Donald Trump: the company of crooks

Editorial


 ベネズエラの経済崩壊

FT August 22, 2018

The desperate plight of Maduro’s Venezuela

FT August 23, 2018

Nicolás Maduro will not reverse Venezuela’s economic collapse

Ricardo Hausmann

ベネズエラの経済崩壊は、戦争や、ソ連崩壊のような、外部のショックによるものではない。ハイパーインフレーションも起きている。8万%のインフレが続き、IMFの予測では今年100万%を超える。

崩壊の理由は2つある。1つは、チャヴィスタ革命だ。チャベスの時代に市場メカニズムを破壊した。第2は、原油価格の下落と生産減少、ブームの時代に行った過剰な借り入れで、極端なドル不足になっている。輸出に対する公的債務額の比率は600%を超え、世界最高だ。政策の失敗は石油生産をさらに減少させた。

生産も輸入も崩壊したために、税収は失われた。政府は公的部門の賃金や年金を削減し、そして、紙幣の印刷に頼った。

経済が回復する唯一の路は、市場メカニズムと回復させ、外国からの支援を受けることだが、それはマドゥロが失脚し、その政治体制が崩壊した後である。

FP AUGUST 23, 2018

Latin America Has an Open-Door Policy for Venezuelan Refugees

BY BENJAMIN N. GEDAN, NICOLÁS SALDIAS


 トランプとドル

PS Aug 22, 2018

Trump’s Strong-Dollar Weakness

BENJAMIN J. COHEN

トランプの目指す「偉大なアメリカ」は、貿易赤字に執着した政策であり、ドルが強くなることに反している。またトランプが中国との貿易戦争を促し、イランの石油を取引する国に対する制裁を行えば、彼らは人民元の使用や物々交換を始める。それは、長期的に観て、ドルがその国際的な地位を損なう姿勢である。


 民主主義

PS Aug 22, 2018

How to Prevent Winner-Takes-All Democracy

KAUSHIK BASU


 中国のハイテク産業

FT August 23, 2018

The US cannot halt China’s march to global tech supremacy

James Kynge

習近平は長江の三峡ダムの上に立って、中国は技術覇権国家になる、と演説した。

「過去、われわれはベルトをきつく締めて、歯を噛みしめて、2つの爆弾(原爆と水爆)を作り、人工衛星を作った。」「技術の次の段階へ進むときだ。幻想を棄てて、われわれ自身の力に拠らねばならない。」

しかし、そのレトリックにもかかわらず、三峡ダムを建設したのは確かに中国企業だが、電力を生み出すタービンは外国企業が作ったものだった。この矛盾は、技術ナショナリズムの行動計画に現れている。「中国製造2025」である。

中国がアメリカとの貿易戦争に対処する中身も、長期の目標に注意深く沿うものだ。アメリカの技術に対する依存、サプライチェーンにおける知的財産への依存、を削減することだ。アメリカは危険すぎる。それに代えて、ヨーロッパ、日本、台湾などの企業が採用される。

アメリカ無しに中国は生きていけるのか? 中国国内で生産されるアメリカ企業の利用は除外されるかもしれない。米中の半導体産業でも、摩擦は明白だ。しかし、ZTEへの制裁を観て、中国の技術を打破できる、と思うのは間違いだ。

10年前には、だれもスマートフォンのグローバルな独占状態を打破することができるとは考えなかった。しかし昨年、Huawei, Oppo and Vivoのような中国企業が、スマートフォンのグローバル市場で販売額の43%を占め、アメリカのAppleと韓国のサムソンをしのいだ。

たとえアメリカの反対がそのスピードを抑えるとしても、中国の技術における地位上昇は避けられない。


 社会主義者

NYT Aug. 24, 2018

The New Socialists

By Corey Robin


 アメリカ外交

FP AUGUST 24, 2018

America Needs the Muhammad Ali Doctrine

BY STEPHEN M. WALT

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The Economist August 4th 2018

In the line of fire

Euro-zone austerity: The Greece-y pole

Trouble in Tianjin: Where are the people?

Argentina’s beef exports: Bull market

Saving the world order: Picking up the pieces

The technology industry: FATWIN v MAGA

Liberal thinkers: John Stuart Mill: Against the tyranny of the majority

(コメント) 温暖化を抑える国際合意は現実に対して遅れています。化石燃料の使用は増え続けます。崩れゆく世界秩序は、どうすれば救えるのか?

中国の北京集中に対する天津への開発計画は、空虚な建設プロジェクトを残したまま、停止しています。アルゼンチンの牧場主は、牛肉輸出の活況に自信を深めているでしょう。他方で、ハイテク大企業には、産業に関わるものと、消費者の嗜好に依存するものがあります。

J.S.ミルの『経済学原理』を読んだことを思い出します。リベラルの思想と政治経済学をつなぐ名著です。

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IPEの想像力 8/27/18

領土国家風に、大阪都構想の「維新の会」によって、大阪の政治意識はねじれました。その時間は、茶番になりつつ、IR(統合型リゾート/カジノ法案)や2025万博の誘致へと、今も続いているようです。

朝日新聞「変わる万博、描く未来は 開催地決定まで3カ月」は、万博の変化を伝えています。「巨大産業見本市」、「インフラ整備」、「国威発揚」・「権力者の政治的威信」として求められた万博が、豊かになった諸国の要望とは一致しなくなったこと。むしろ既存都市の財政赤字や莫大な建設・維持コストを民営化することの限界。郊外の都市再開発に便乗しても、もっと魅力的な遊園地や娯楽手段に比べて、わざわざ来園する者は減ってくる・・・

領土国家の前途は多難です。

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学生たちと志摩スペイン村に行きました。その広大なスペースと、どう見ても来園者数に釣り合わない投資規模に驚き、本当にこれが維持できるのか? と不思議な印象を持ちました。

これほどの規模の投資が、もっと生産的な、社会的、長期的に、有益な分野で行われていたら、豊かな成果を生み出すことができるのではないか? それとも、地域の衰退を逆転する開発計画として、あえて挑む価値があったのでしょうか?

私が「不思議」と思った点は、たとえば・・・

● 遠い。息抜きや気分転換、友達とちょっと遊びに来るには、伊勢志摩は遠すぎます。

● 債務はないのか? 誰が資金を提供するのか? もちろん、大幅な黒字で、十分な収益が出る事業ならよいのですが。破たんした事業に追い貸しすることは厳しく再評価されるべきではないか?

● これ自体が、巨額の地方債務を政治的・強制的に維持する仕組みの一部なのか? ギリシャや東京電力のような? あるいは、アベノミクスで超低金利が続くから維持されている? 長期的に、次のバブルを待っているのか?

● リゾート開発という発想の本質は何か? 近鉄は、住宅地開発や百貨店を組み合わせて経営する手法を、しかも、在来線に並行するのではなく、新しい視点で、直線的な経路を開拓する革新的企業家であったと思います。

大阪市はギャンブル合法化や万博誘致に動いています。ギャンブルや観光、遊園地で地域経済が復活する、というシナリオは、本当に成功するのでしょうか? これがゼミ生の卒業研究なら、具体的なケースを示してほしい、と私は質問するでしょう。

ラスベガス、シンガポール、モナコ、厦門、ドバイ・・・ その歴史的な現実に示された政治経済過程を、どのように理解するべきか?

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学生と話しながら、私は、ギャンブルや観光、遊園地のようなサービス分野で成長する戦略に疑問を示しました。それは、日本やアジアが成功した輸出向け工業化と明らかに異なります。

輸出向けの製造業が拡大する場合、国内に多くの雇用をもたらし、急速に優れた技術を導入して生産性を高めることができました。製造業の労働者は組織化することが比較的容易で、労使間の協力を維持するために賃金や労働条件が改善されました。

サービス産業はそうではない、と思います。金融ビジネスやIT技術を活用する(雇用の少ない)サービスを別として、サービスの生産性は容易に上昇しない。為替レート、他国の景気変動、季節的な要因、風評・伝染の被害、などがある。たとえ企業が大きな利益を上げても、労働者は組織されず、賃金上昇につながらない。外国資本だけでなく、外国人客や外国人労働者が重要になる。建設期などを除けば、地域経済への影響は限られるのではないか?

帰りのバスを待ちながら、しかし、せっかくのインフラ設備を活用して、これが長期的な地域の経済活性化につながるイメージを描いてみたいね、と話しました。

● 日本には子供がいない。ターゲットの世代を上げる? 都市・若者層のための大規模ヴァーチャル・コンサート(初音ミク?)とか、USJのホラー・ナイトを都市国家版で?

● 子供が多い家族を近隣に増やす? スペイン語系のラテンアメリカから、移民労働者を工業団地とともに誘致し、定住化を推進する?

● 平日やシーズンオフの需要が少ない。もっと異なるパターンの市場を開拓する。・・・高齢化世代に適応する。秋冬は、むしろ伊勢神宮や熊野古道かもしれない。・・・登山やロングトレイルの拠点として、スキューバダイビング、サイクリング、トレイルラン、エコツーリングなど。

● 京阪神の若者向けに、安いフェリーによるアクセスはないか? 豪華客船でも来ないかな? (来ています。)

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ツーリズムの限界を、政府は考えているのでしょうか? 2020年の東京オリンピックに向けて、日本は観光客を増やし続ける? 貿易収支であれ、インフレ率であれ、為替レートであれ、それは誰の利益なのか? 特に、貧困層を引き上げ、多くの市民が充実した生活を実感できるような経済を、ツーリズムが地方に広めるメカニズムになるのでしょうか?

そんなことは絶対に無理だ、と断言するわけではないけれど、観光客が増えた京都を観ても、切り取られた法隆寺の悲惨な景観を観ても、比叡山の開発を観ても、彼らが具体的構想をもって現実を変えた(投資・融資した)とは思えません。

● 非日常性の演出よりも、連帯感や運命共同体の回復へ。

ツーリズムが何をもたらすか、は、住民たちの経済活力と結びつく有機的関係、自治能力、政治意識の水準に拠るのです。

外国からの移民労働者たちが家族を連れて出稼ぎに来る町として、日本語教育や教育・技術・資格システム、企業の雇用慣行や家族の在り方、医療や福祉を考える、新しい地域政策に向けて合意を形成します。地方自治政府は、日本の主要企業が中国や韓国、台湾、インドの企業と組んで、メイド・イン・アジアの、安価で優れた製品を開発・輸出する拠点となることを推進します。

30年後、志摩スペイン村の半分は産業開発地区となり、多くの子供たちが学校に通い、親たちは日本語や新しい職場のための技能習得に励んでいると思います。

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