IPEの果樹園2018
今週のReview
2/26-3/3
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簡易版
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
Bloomberg 2018年2月16日
What the
Euro Zone Can Learn From the U.S.
By Ferdinando Giugliano
PS Feb 16,
2018
Ending
America’s Disastrous Role in Syria
JEFFREY D. SACHS
この7年間、シリアで起きた殺戮の多くはアメリカとその中東における同盟者のせいであった。新しい戦争が激化するのを回避して、国連安保理が介入するときだ。
基本的な経過はこうである。2011年にアラブの春を観たアメリカ政府は、サウジアラビア、カタール、トルコ、イスラエルの政府とともに、シリアのアサド大統領とその支配体制を打倒すると決意した。それは明らかな国際法違反である。少なくとも2012年には、アバマ大統領がCIAに、同盟者とともに、反政府勢力を支援するよう命じた。それはシリアの反政府派や外国の戦闘員から成る勢力であった。アメリカの政策担当者たちは、アサドがすぐに失脚すると思ったのだ。
アサド体制は、75%のスンニ派に対して、10%のアラウィート・シーア派が指導する体制であった。イラン、ロシアを含む、地域の諸勢力がアサドを支持した。
アメリカがアサドを退陣させる目的は、主に、イランとロシアの影響を断つことだった。トルコはその影響を旧オスマン帝国の領域に拡大しようと意図し、最近のクルド人によるシリアとイラクにおける自治区の獲得を挫こうとしていた。サウジアラビアはシリアにおけるイランの影響を抑え、自分たちの影響を拡大しようとした。イスラエルもまたイランの影響を抑えたかった。イスラエルは、レバノンのヒズボラ、ゴラン高原に近いシリア、ガザ地区のハマスを脅威と見ていた。カタールは、スンニ派のイスラム体制が権力を握ることを望んだ。
しかし、アメリカの期待は実現しなかった。その間に大量の犠牲者と難民流出が起きた。その多くがヨーロッパに向かい、難民危機によって、反移民の極右勢力に政治的な支持を集める結果となった。
アサドを退陣させることができなかった理由は主に4つある。1.アサド体制は、アラウィート派だけでなく、キリスト教徒など、スンニ派イスラム体制を恐れる少数派によって支持された。2.アメリカが指導する連合に、イランとロシアが対抗した。3.アサドを退陣させるより、ISISに合流したイスラム聖戦主義者を敗退させるのに資源の多くを費やした。4.反アサド勢力は、慢性的に、深刻な分裂状態に苦しんだ。
アメリカはロシアとイランがシリアに影響力を及ぼしていると激しく非難するが、アメリカと同盟者たちはシリアの主権を何度も侵害した。アメリカはシリア国民の内戦とみなすが、そうではなく、これはアメリカ、イスラエル、ロシア、サウジアラビア、イラン、カタールの代理戦争である。
アメリカとその同盟者は現実を受け入れ、アサド体制が続くことを認めるべきだ。アメリカ、ロシア、主要諸国の支持する国連安保理が、平和維持軍によってシリアの主権と公共サービスを回復する。同時に、アサド体制派が反政府勢力やその支持者たちに報復することを阻む。
アメリカの介入でアサドを排除することはできない。国連安保理が、サウジアラビア、トルコ、イラン、イスラエルのプラグマティックな平和を回復するべきだ。
PS Feb 19,
2018
What Does
the US Want in Syria?
CHRISTOPHER R. HILL
7年前、アサドの退陣を要求したオバマ政権は、事態がさらに悪化することを予想していなかった。今や、イスラエルがイランの軍隊を攻撃し、トルコはシリア領内のクルド人を攻撃し始めている。アメリカはシリアの反政府勢力を保護するため、ロシアの軍関係者を空爆して、多数を殺害した。さらに、NATO加盟国であるトルコが、ロシアの最新鋭爆撃機を購入した。
アメリカとロシアの代理戦争になる危険は高まっている。ティラーソン国務長官は、関係諸国の主要利害を反映した和平工作を進めるべきだ。
SPIEGEL
ONLINE 02/20/2018
No Peace
after Islamic State
Foreign
Powers Compete for a Slice of Syria
By Christoph Reuter
The
Guardian, Wed 21 Feb 2018
The
Guardian view on eastern Ghouta: the powerful compete, Syrian civilians pay
Editorial
PS Feb 21,
2018
America’s
Forgotten Allies in Syria
MAHMOUD BERKHDAN
PS Feb 22,
2018
The Syrian
Time Bomb
JOSCHKA FISCHER
NYT FEB.
21, 2018
Who Has
Innocent Syrians’ Blood on Their Hands?
By THE EDITORIAL BOARD
PS Feb 16,
2018
In Search
of a Global Refugee Strategy
ALOYSIO NUNES FERREIRA
ラテンアメリカとカリブ海域の諸国は、協力して、難民に対する地域合意を形成してきた。例えば、ブラジルは緊縮財政にもかかわらず、2012年、人道ビザ計画を導入し、2010年の大地震に遭ったハイチから難民を受け入れた。8万5000人以上がブラジルに入って、速やかに法的な資格を得て、就労、学習、公共医療システムを利用できた。
国連は、こうした経験を基礎に、「難民に関するグローバル・コンパクト」を総会で決議する予定である。
SPIEGEL
ONLINE 02/21/2018
Preventing
the Migrant Wave
Germany
Exports Employment Offices to Africa
By Marian Blasberg in Accra, Ghana
PS Feb 16,
2018
The AI
Debate We Need
SAMI MAHROUM
われわれの生活を想像できないほど変えるとしたら、AIについてはどのようなことを議論するべきか? PSの意見を整理する。
Christopher Pissarides and Jacques Bughin ・・・多くの職場が失われるという暗い予想は宿命ではない。政府が適切に対応すれば、生産性上昇は新製品、新雇用、成長をもたらす。
Bill McDermott ・・・危険な、反復する仕事から人間を解放する。協調型のロボットを開発する。
Laura Tyson ・・・すでに技術革新は製造業における雇用、中産階級の所得、の80%を消滅させた。教育、職業訓練、所得補償、セーフティーネットが必要だ。
J. Bradford DeLong ・・・ロボットやAIの不安を煽ることは非生産的だ。市場経済であれば、未熟練労働者の生活を悪化させたケースは少ない。
Mady Delvaux、Bill Gates ・・・情報時代の所得格差拡大を抑えるには、ロボットに課税するべきだ。
Robert Shiller ・・・ロボット化には政府介入を支持するほど大きな外部性がある。もし大規模な累進課税やベーシックインカムを支持する声が限られているなら、ロボットの導入を抑制するべきだ。
Yanis Varoufakis ・・・ベーシックインカムより、ユニバーサル・ベーシック配当を実現する。ロボットに投資することで得られた利益から国民すべてに配当するべきだ。
Kaushik Basu ・・・市場による成長を損なわずに、利潤シェアリングを拡大する。新技術における独占化は不当に大きな「規模の利益」を発揮する。
Stephen Groff ・・・ロボットの代替できない分野に労働者の移動を促す政策を実施する。
Kemal Derviş ・・・「ジョブ・モーゲージ」として、将来必要なスキルを育て、雇用機会を提供して、企業が労働者を育成する。
Andrew Wachtel ・・・AIやロボットの開発者に、新技術が人間と共存するように、必要なスキルや倫理を学ばせる。
Robert Skidelsky ・・・雇用と消費が結び付き、成長のダイナミズムになるモデルが意味を失った。資本蓄積は十分な雇用を生まない。デジタル化、プラットフォーム経済は、土地の価値を破壊し、AI革命は労働を時代遅れにする。ますます多くの消費財を生産する機械と競争して、人間は十分な所得を得られず、消費できない。
Adair Turner ・・・異なる未来も予想できる。太陽発電でロボットが動き、生産し、AIがシステムを管理し、人間の生活を改善する財やサービスを提供する。
Jeremy Rifkin ・・・プラットフォームもビジネス・モデルも共有される。
Maciej Kuziemski ・・・すでにフリーのサービスをFacebook,
WhatsApp, and Wikipediaで享受している。人々は情報システムに多くの時間を費やし、クリックとわずかな広告料が収入を生み出す。
ネットワーク効果、「集団的な知性」による「フリーミアムfreemium・エコノミー」が拡大する。AI先進経済では、伝統的な職場が減り、政府の税収も減り、GDPは減少するが、すべての人が生活を改善し、多くの財を所得と関係なく消費する。
Harold James ・・・仕事を失い、新しいレジャーに代えることは、人間社会を退廃に向かわせる。
Kuziemski ・・・AI時代に人々が繁栄するには、大企業ではなく、彼らが創り出すデータを彼らのものにするべきだ。
Hernando de Soto ・・・すべての人々にデータのフリー・アクセスを保証する。
Guy Verhofstadt ・・・AIの基準(スタンダード)にわれわれの価値を反映させる。
Susan Leigh Anderson ・・・倫理的に受け入れ可能な分野にだけ導入する。
Peter Singer ・・・AIは、チェスや碁のような、固定されたルールで人間とのゲームに勝っただけである。現実の世界は予測不能な環境であるから、AIを解放することが災厄をもたらす。
Simon Johnson and Jonathan Ruane ・・・公共サービス、データ管理の分野に飛躍をもたらす。
Luciano Floridi ・・・AIについての責任体制がなければ、民主主義を形骸化する。数十億の人々がAIの深化に関わっている。
Nouriel Roubini ・・・工業化がそうであったように、フリーミアム経済への移行を円滑に実現するには、その弊害を最小化する介入や政策手段が必要だ。
FT
February 19, 2018
Why
workers need a ‘digital New Deal’ to protect against AI
RANA FOROOHAR
その宣伝にもかかわらず、社会的な緊張は高まっている。ハイテク大企業とAIやロボットを恐れる労働者たちとの間で、ニューディールが合意されねばならない。
FT
February 21, 2018
Alibaba’s
social credit rating is a risky game
JOHN GAPPER
FT
February 22, 2018
How can we
protect workers from AI? FT readers respond
RANA FOROOHAR
Saule T. Omarova ・・・AIの普及にともなう問題を解決するために必要なら、大規模に投資する政府系投資信託を設ける。
Paul A. Myers ・・・労働市場を教育とを革新して、新しい雇用を増やす。
Emanuel Derman ・・・少数者の手にAIの利益が集中するのを防ぐため、企業と法人格という性格を変える。
Jeffrey D. Sachs ・・・労働時間を減らす。未熟練労働の賃金を減らす。資本の定義を多様化し、それに課税する。ベーシックインカムではなく、低賃労働に補助金を与える。
FT
February 21, 2018
Gaza,
Yemen and a lesson for Big Tech
HANNAH KUCHLER
FT
February 23, 2018
Limiting
the downsides of artificial intelligence
NYT FEB.
17, 2018
Russia
Isn’t the Only One Meddling in Elections. We Do It, Too.
By SCOTT SHANE
VOX 19
February 2018
Growth-equity
trade-offs in structural reforms
Jonathan D. Ostry, Andrew Berg, Siddharth
Kothari
FT
February 20, 2018
US
economy: The growth puzzle
Sam Fleming in Chattanooga
PS Feb 22,
2018
Prisoners
of the American Dream
STEFANIE STANTCHEVA
アメリカ人は今も高い社会的移動性を信じ、再分配による平等を支持しない。しかし、それは神話でしかない。
FT
February 20, 2018
Rebuild
internet governance before it is too late
VINT CERF
PS Feb 20,
2018
International
Cooperation 2.0
NGAIRE WOODS
アメリカの姿勢が変化しても、国際協調は可能である。それは1984年のAfter
HegemonyにおいてRobert
Keohaneが主張したことだ。国際協力を支持する機関は、その設立に明確な指導的国家が欠かせないとしても、その維持・運営はアメリカの支配がなくても可能である、と。
さらに、国際機関の性格も変わり始めた。国際協力は国家間の合意だけでなく、非国家の主体による、多様な関係に依拠して実現するようになっている。気候変動の抑制に関するパリ協定も、TPPも、NATOも、トランプ政権によって破壊することはできない。アメリカは孤立するだけだ。
NYT FEB.
20, 2018
The
Destructive Dynamics of Political Tribalism
By AMY CHUA
アメリカは政治的部族主義に陥っている。
資本主義は、ごく少数の者に富を蓄積するが、民主主義は貧しい多数派に権力を与え、富が集中するのを是正させる。しかし、条件が悪いと、社会的な緊張が破滅的な政治サイクルに向かう。特に、市場を支配する少数派が他の人々を部外者と見なし、その国の富の大部分を支配するときがそうだ。
それは発展途上諸国に多く見られる現象であり、彼らは部族によって政治を分断した。分断された社会に自由市場型の民主主義を導入するのは破滅のレシピである。ゼロサムの対立を引き起こすからだ。アメリカがそのサイクルを避けられたのは、過去200年間、政治的に安定した白人多数派が、経済、政治、文化を支配していたからだ。
しかし、今やそれが変化した。民族が貧困層を分断し、階級が白人多数派を分断している。
トランプ主義が広まったのもグローバルな変化の一部である。それはヨーロッパの極右ナショナリスト運動に似ているが、それ以上に発展途上諸国のポピュリズムに似ている。トランプ大統領は世界最初の“tweeter-in-chief”ではなく、リアリティー番組司会者から最高権力を得た人物でもない。むしろベネズエラのチャベスがそうだろう。
私が知る限り、この問題をうまく解決した国はない。世界中で、このダイナミズムに陥った国では、制度や選挙を信頼できなくなった。そうした国は権威主義体制に向かい、憎悪を煽り、民主的な支持を得ることからエリートたちは離反した。
部族主義的政治サイクルを超えて、国民の団結を呼びかける指導者は、どこにいるのか?
YaleGlobal,
Tuesday, February 20, 2018
Job and
Cultural Insecurity, More Than Inequality, Fuels Populism
Pranab Bardhan
NYT FEB. 21,
2018
What Does
a True Populism Look Like? It Looks Like the New Deal
By DANI RODRIK
アメリカにおけるポピュリズムの初期の歴史において、ニューディールはその頂点であった。それはより生産的で、破滅的なポピュリズムではなかった。成功したポピュリズムは、見せかけの最善策に流れず、経済的な不正義の根幹を正そうとした。
政府は積極的に介入し、不平等を是正する再分配を行ったが、アメリカ政府はそれを拒んだ。勝者に課税すれば、彼らは他の国に逃げてしまうだけだ、と。それっゆえWilliam
Jennings Bryanと人民党は産業の国有化を求めたのだ。
NYT FEB.
20, 2018
What We
Owe to Others: Simone Weil’s Radical Reminder
Robert Zaretsky
FP FEBRUARY
20, 2018
America’s
IR Schools Are Broken
BY STEPHEN M. WALT
FP FEBRUARY
20, 2018
It’s Never
Been a Better Time to Study IR
BY FRANCIS J. GAVIN
FP FEBRUARY
20, 2018
If America
Is First, Is NATO Second?
BY ROBBIE GRAMER
FP FEBRUARY
20, 2018
Grand
Strategy Isn’t Grand Enough
BY ALASDAIR ROBERTS
Bloomberg 2018年2月20日
Why
Europe's Google Rulings Don't Benefit Consumers
By Leonid Bershidsky
NYT FEB.
20, 2018
Venezuela
Launches Virtual Currency, Hoping to Resuscitate Economy
By KIRK SEMPLE and NATHANIEL POPPER
FT
February 21, 2018
Britain’s
road to becoming the EU’s Canada
MARTIN WOLF
FT
February 21, 2018
Happily
there’s more to Japan Inc than the Bank of Japan
HENNY SENDER
アベノミクスは黒田の日銀によってだけ支持されたのではなく、競争力を高めた日本企業の改革によって実現したものだ。
FT
February 22, 2018
South
Korea’s Garlic Girls conquer the Winter Olympics
NATHAN PARK
PS Feb 22,
2018
The Next
Stage of Women’s Emancipation?
ROBERT SKIDELSKY
PS Feb 22,
2018
The
Economic Message from Equity Markets
JEFFREY FRANKEL
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The Economist February 10th 2018
The economy: The great
experiment
Lexington: Honest Injun
Bagehot: Meritocracy and
its discontents
(コメント) これは、ニューヨークから世界に波及した株価下落が注目された週です。上がり続ける、金融政策はショックをいつでも吸収する、という前提は失われました。
しかし、トランプ政権の減税策が、通常の批判に見られるものとは異なる実験かもしれない、と記事は考えます。好景気の中で財政刺激策を採れば、インフレが高まって金利を引き上げることになる、とは限らない。その理由は、1.生産性が上昇する、2.金融危機の遺産である余剰生産力、3.賃金も物価も安定し続けている。
ロケとの発射や中国の人口政策より、私には、アメリカ政治とイギリス政治に関するエッセーが面白かったです。
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IPEの想像力 2/26/18
小平奈緒選手の一つ一つの言葉に心を打たれます。LS北見のカーリング・チームが示す笑顔を見ると嬉しくなります。
私たちが彼女たちの活躍を喜ぶのは、多分、それがなかなかむつかしいからでしょう。金メダルや銅メダル、ということではなく、小平さんの理想とした「求道者、情熱、真摯」が大きな成果をもたらし、藤沢さんたちのチームの笑顔が困難を克服する力を与えてくれる、という状況のことです。
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The
Economist Feb 10th 2018の2つの記事、イギリス政治蘭Bagehot( “The merits
of revisiting Michael Young” )、アメリカ政治欄Lexington( “Looking at Indians, white Americans see themselves” )を興味深く読みました。
「メリトクラシー」は、政治における能力主義という意味だと思っていましたが、イギリス社会を改革したいと、60年前、社会学者マイケル・ヤングが創った言葉のようです。もし優れた知識が社会を改善するのであれば、貴族や富裕層ではなく、優れた知識を持つ者が支配的な地位に立つことが望ましいわけです。ヤングによれば、近代社会は、民主主義でも、資本主義でもなく、メリトクラシーが広まることで成立したのです。
その端的な仕組みとは、教育によって知識を伝え、自分の能力に見合う職業を得られることです。ところが、記事はイギリスの富の44%が上位10%の家計によって所有されている現実を、メリトクラシーの悪夢、ディストピアになっている、と考えます。
親たちは子供を良い学校に入れたいと奔走し、政府や公共部門も、労働者を「人的資源」として効率的に利用する、経営独裁者が運営し、労働者階級出身の議員の数は減り続けている。メリトクラシーは富によって大きく偏り、また成功した者がけた外れの傲慢さを発揮することと結びついてしまったのです。高齢者のBrexit支持、若者のCorbyn支持が示したのは、メリトクラシーへの幻滅です。
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アメリカ政治を描く記事は、「ネイティビズム」に見るイメージや歴史の政治利用に関する考察です。ネイティブ、というのは、トランプを支持する白人至上主義者やネイティビストと違い、「インディオ」、アメリカ原住民のことです。
私は知りませんでした。記事によれば、ワシントンDCにある国立アメリカ・インディアン博物館が説明していることですが、コロンブスが来て植民地化が進む前のアメリカには、私たちが思うより、はるかに多くの人口が、洗練された文明を築いていたのです。当時のイギリスとフランスを合わせたよりも多い、1800万人が、見渡す限りの原野で狩猟するのではなく、農耕によって暮らしていた、ということです。
ヨーロッパの独裁から自由になった入植者たちは、アメリカ原住民に学び、自分たちを同一視したそうです。しかし、1830年には政府がインディオを排除し、白人入植者が狩猟の領域を拡大するにつれて、インディオを制圧して行きました。世紀末になると、その人口は25万人に減少し、わずかな辺境の居留地に追いやられたのです。
「アメリカ人とは何か」という文化戦争が政治を震撼させています。メキシコなどからの移民を恐れて「ネイティビズム」を叫ぶ白人たちは、これまでインディオたちを称賛し、迫害し、殲滅し、再び理想化したアメリカの歴史の一コマにすぎません。驚異的なナショナル・ストーリーの柔軟性によって、むしろ解決の可能性を示す、と記事は楽観します。
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小平奈緒が李相花とともにリンクを一周し、カーリング女子チームが、英国チームのミスショットで得た銅メダル以上に、その喜びを北見で応援してくれた人たちと分かち合う。
能力を存分に発揮できる場を与えて、バラバラになって苦しむ人を社会につなぎとめる、そこに政治の使命はある、と思いました。
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