前半へ続く)


l  シリア内戦

NYT SEPT. 16, 2016

A Russian-Iranian Axis

By VALI R. NASR

SPIEGEL ONLINE 09/17/2016

Never Ending War

Why The Cease-Fire in Syria Won't Help

By Christoph Reuter


l  アメリカ外交の破たん

FP SEPTEMBER 16, 2016

The Broken Policy Promises of W. Bush, Clinton, and Obama

BY STEPHEN M. WALT

冷戦終結後の3人オ大統領は,選挙運動で約束したリアリスティックな外交政策を,大統領になってから変更し,大きな失敗を犯した.

クリントンは,「平和の配当」を国内の経済的繁栄のために使うと約束したが,NATOを東に拡大し,ペルシャ湾では「二重の封じ込め」を行った.彼は,民主主義国は互いに戦争しない,ロシアは永久に弱体だ,という前提で,安全保障のコストを考えなかった.しかし,彼が退任してから,911テロ攻撃や,ロシアによる反撃を起きた.

ブッシュは,それまで双方を許容していたが,911テロを受けて,パウエル=スコウクロフトのリアリスト外交より,チェイニー副大統領らのネオコン思想を採用した.イラクとアフガニスタンで破滅的な戦争に突入し,中東や世界に自由を拡大すると主張した.

2008年,ほとんど無名だったイリノイ州の上院議員が,その雄弁さと,最初からイラク戦争に反対していたことで支持を得た.彼は戦争を終わらせ,悪化した外交関係を修復する,と約束した.ブッシュ政権の行き過ぎを正し,グアンタナモを閉鎖する,拷問の禁止,令状なしの捜索を止める,秘密事項を減らす,透明性の高い説明責任を果たす政府になる,と.

しかし,それは守られなかった.

なぜアメリカ国民が望むような外交政策は実行されないのか?

大統領になると,アメリカの例外主義,グローバルな秩序にとってアメリカは欠かせない国だ,というエスタブリッシュメントのコンセンサスを無視できないのだ.そして,

1.アメリカは豊かで,しかも安全だ.他の国には,このような外交政策の失敗は耐えられない.

2.アメリカは冷戦期に膨張したグローバルな諸機関に重要ポストを得ている人々がいる.

3.アメリカの外交専門家たちは,政府,官僚,学校,シンクタンク,基金,主要メディアに広まっており,リベラルなヘゲモニーを信奉している.国民の多数が望む者とは逆に,組織されたマイノリティーが外交を独占できるのだ.他方,国民は大統領選挙のとき,いくつかの問題を知るだけで,無関心だ.

FT September 20, 2016

America’s Pacific pivot is sinking

Gideon Rachman

ドゥアルテ,南シナ海,TPP, いずれを見ても,アメリカ外交は長期的に戦略を欠いており,オバマの「アジア旋回」も太平洋の波間に沈みつつある.

FP SEPTEMBER 22, 2016

From Reset to Realpolitik, Clinton’s New Hard Line on Moscow

BY MOLLY O’TOOLE


l  アメリカ大統領選挙と経済

FT September 17, 2016

US election: Still the economy, stupid?

Sam Fleming


l  グローバリゼーションと不平等

FT September 17, 2016

Inclusive capitalism and the causes of discontent

グローバリゼーションが所得分配を悪化させるという問題が関心を集めている.元世界銀行のBranko Milanovic and Christoph Laknerが示した「像の図」がしばしば引用される.

しかし,不平等をグローバリゼーションにつなぐのは,過度の単純化である.所得分配の状態は国によって大きく異なる.グローバルな諸力によるより,各国の税制の影響が強い.


l  ロボットが働く世界

The Guardian, Monday 19 September 2016

A world without work is coming – it could be utopia or it could be hell

Ryan Avent

VOX 22 September 2016

How computer automation affects occupations: Technology, jobs, and skills

James Bessen


l  メルケルは謝罪しない

SPIEGEL ONLINE 09/19/2016

Down and Out?

How Merkel Could Win Re-Election Next Year

An Analysis by Roland Nelles

Bloomberg SEP 20, 2016

Angela Merkel Isn't Backing Down

Leonid Bershidsky

アンゲラ・メルケルは謝罪するべきだ,と多くの人は思っている.100万人を超える難民の流入につながった,メルケルの決断に関してだ.地方選挙で,メルケルのキリスト教民主同盟CDUの敗北が続いている.

しかし,メルケルは謝罪しなかった.「われわれは事態を掌握できる」と語ったが,ドイツ官僚制の異常に高い水準からみて,その後の事態は混乱し,公的な情報交換がパニック状態になっていた.「もしもっと,ずっと時間をさかのぼることができるなら,ドイツはもっと準備して,事態に対処できただろう」とメルケルは語った.

今,関連するスタッフは増員され,事態は沈静化したように見える.最近の難民と極右団体との衝突も,警察によって整然と分離され,負傷者を出さなかった,テロ事件も続いたが,犠牲者の数は,フランスやベルギーよりはるかに少ない.

メルケルの強みは,事態が沈静化するまで冷静さを保つことだ.CDUの支持率は30%に落ちたが,他の政党に比べて圧倒的に高い.メルケルは4期目に挑戦するだろう.メルケルなしに,それは不可能だ.


l  最後の貸手と政治構造

VOX 19 September 2016

Political foundations of the lender of last resort

Charles Calomiris, Marc Flandreau, Luc Laeven

中央銀行による最後の貸手(LOLR)は,19世紀の半ばまでに西ヨーロッパで行われていたが,他方,アメリカには1913年,ニュージーランドには1935年,オーストラリアには1959年まで,中央銀行がなかった.

世界のLOLRに関する歴史を見れば,それは経済学の視点だけでは説明できない.LOLRは,各地における歴史的な制度であり,その政治的なバランスの焦点として成立した.

FT September 21, 2016

A clear message that central banks are not all-powerful

Eswar Prasad


l  国連改革

FP SEPTEMBER 19, 2016

How to Fix the United Nations

BY KEVIN RUDD

FP SEPTEMBER 20, 2016

U.N. Chief Blasts World Leaders in Farewell Address

BY COLUM LYNCH


l  日銀の政策決定

Bloomberg SEP 19, 2016

Fed Meeting Shouldn't Obscure BOJ's Big Moment

Mohamed A. El-Erian

日銀の決定は,過去の政策の検証を欠いたまま,特定の金利を目標にしたものだ.世界金融危機後の不確実な世界で,金融政策担当者が陥っている過大な責任と政策の有効性への疑問を,顕著に示している.

NYT SEPT. 20, 2016

Japan’s Negative Interest Rates Explained

By JONATHAN SOBLE

Bloomberg SEP 21, 2016

Japan's Central Bank Experiments at the Wrong Time

Mohamed A. El-Erian

日銀は,もっと安倍政権に「第3の矢」である,構造改革による成長率の引き上げを実行するように求めるべきだ.

FT September 22, 2016

The Bank of Japan steels itself for further easing


l  ハードBrexit

FT September 20, 2016

Theresa May limbers up for a hard Brexit

Martin Wolf

メイ首相の目指すBrexitは,ヨーロッパ単一市場から離脱する,ハードBrexitになる.それは,EUからの移民を規制し,EUによる規制の権限を取り戻すことが,国民投票によって求められた,と考えるからだ.そして,その結果,例えばイギリスの金融機関はヨーロッパで活動できなくなる.

メイが2度目の国民投票も議会の解散もしないのであれば,イギリスは貧しく,けちな国になるだろう.

Project Syndicate SEP 20, 2016

The End of the European Supernation?

ANA PALACIO

FT September 21, 2016

The City of London strategy for Brexit talks faces hurdles

Chris Giles


l  北朝鮮の核開発

Project Syndicate SEP 20, 2016

The Coming Confrontation with North Korea

RICHARD N. HAASS

2020年のある日,CIA長官が大統領と緊急の会談を求める.北朝鮮が核弾頭の小型化に成功した情報を得たからだ.アメリカは,直接,北朝鮮の核攻撃にさらされる.

これは空想であるが,5回目の核実験で,開発は大きく前進したようだ.北朝鮮がアメリカの軍事攻撃を抑止できると考えた場合,韓国に対して通常兵器による攻撃を始めるかもしれない.他方,韓国や日本は,アメリカによる安全保障の約束を信用できなくなり,自国の核武装を始めるかもしれない.その議論は中国に対する警報となり,世界で最も多くの人口と経済力,軍事力が集まる地域で,紛争もしくは戦争のリスクが高まる.

アメリカには選択肢があるけれど,いずれも好ましいものではない.

1.核保有した北朝鮮と共存する.北朝鮮には,核の使用が体制の消滅であることを確認する.2.制裁を強化する.制裁の実効性を高めるため,中国との外交を深める.そして,将来の朝鮮半島に関する合意を形成する.再統一後の朝鮮半島では,米軍をもっと南に下げてもよい.3.北朝鮮が核兵器を使用する情報があれば,ミサイル基地に対して,古典的な予防的攻撃を行う.

しかし,いずれの選択肢の限界も明らかだ.次の大統領が誰であれ,こうした局面を経験するだろう.

YaleGlobal, 20 September 2016

Unpalatable Choices: Facing North Korea's Nuclear Reality

Bennett Ramberg

Bloomberg SEP 20, 2016

Preparing for North Korea's Inevitable Collapse

Eli Lake

北朝鮮の体制が長期に持続することはないだろう.その崩壊に際して,核兵器がどうなるか,アメリカは中国と話し合うべきだが,中国の対応は望めない.


l  トランプ

FT September 22, 2016

The Trumpian threat to the global order

Philip Stephens


l  新興市場経済

FT September 22, 2016

Guarded optimism beats gloom for emerging economies

Arvind Subramanian

IMF/世界銀行の総会で集まる主要諸国の政策担当者たちは,世界経済の低迷に関心を集中しているが,それは間違いだ.

新興市場諸国による旧富裕諸国への追い上げは今も続いている.中国の高い成長率は低下することが予想されていた.それでも新興市場諸国は成長を維持している.旧開発諸国でグローバリゼーションへの反対が強まり,開放的な防疫体制が破壊されるなら,中国もインドも,その開放政策を続けられないだろう.

世界経済の停滞に対する政策目標を求めるより,新興市場経済は独自にダイナミズムを追求するべきだ.

Project Syndicate SEP 22, 2016

SOS for China’s SOEs

YAO YANG


l  財政政策

Project Syndicate SEP 22, 2016

Helicopter Money Is in the Air

ROBERT SKIDELSKY

財政政策が復活した.ヘリコプター・マネーの1つの形態が,中央銀行の資金を使った公共インフラ投資である.


l  誘拐と虐殺

Project Syndicate SEP 22, 2016

Mothers of the Disappeared

ANNE-MARIE SLAUGHTER and ALICE DRIVER


l  イラン外交

NYT SEPT. 22, 2016

Saad Hariri: Iran Must Stop Meddling in Arab Affairs

By SAAD HARIRISEPT. 22, 2016

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The Economist September 10th 2016

Art of the lie

Elections in Hong Kong: A not-so-local difficulty

Economic reform in the gulf: Time to sheikh it up

Ireland and Europe: Upsetting the Apple cart

(コメント) 「真実後の政治」に関して,考察されています.大衆の不満に応え,SNSがメディアを侵食し,真実とウソとを区別するインフラが機能しなくなる世界.

香港の選挙は住民たちの政治意識を形成し,湾岸諸国は真実の瞬間に直面しています.Appleという世界企業が促すグローバルな政治構造と税制に向けて,何が必要なのか?

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IPEの想像力 9/26/16

Brexitについて,研究会で報告しました.ばったり先輩の先生に会い,報告してよ,という話になって.

Brexitは不思議です.それは姿がよく見えない,咆哮だけが聞こえる山奥の怪獣のようです.

私の報告の構成は,1.「恐怖プロジェクト」と「嘘つきプロジェクト」.2.イギリスの4つの顔.3.国際秩序を築く.4.国際関係論と国際経済学.です.

私は,Brexitは起きない,と思いました.確かに,政治キャンペーンは激しさを増し,EUには良くない話ばかりが重なりました.しかし,EUの意義はイギリス人も認めるだろう.まさか,EU抜きに,イギリスが孤立するような選択を,有権者がすることはない.冷静に考えるなら.

「離脱だよ」と聞いて,ゲッ,と絶句しました.

なぜだろう? いくつも理由は考えられます.特に,国民投票,という決定方法です.二者択一.離脱か,残留か? 残留のイメージは,このまま.でも離脱のイメージは,何でもありです.残留派が,離脱によって生じるコストに焦点を当て,他方,離脱派はさまざまな不満や不安を吸収し,離脱後の勇敢なイギリス人と愛国心を称賛したのです.かつて,ヒトラーを退けたように.

残留派は,もっと根本的な問題に答えるべきでした.これはグローバリゼーションとネオリベラル政策に対する反対であった,と指摘されています.グローバリゼーションは,必ず敗者の不満を高め,それが制度によって吸収されなければ維持できません.世界金融危機以後のイギリス保守政権による緊縮策の主張は,ロンドン以外のグローバリゼーション不満を高める結果になったと思います.

結局,Brexitとは何なのか? この怪獣は,まだ,山から出ていません.これから進むUKEUの政治的再編,秩序をめぐる論争や制度の組換えが,具体的な姿を決める,というわけです.

イギリスで起きたことは,ティモシー・ガートン・アッシュの考察に見事に描かれている,と思いました.イギリスには4つの顔があるのです(あるいは,2つの顔です).すなわち,島,世界,ヨーロッパ.アメリカ.しかし,こうした論評に,何も決定的な根拠はないと思います.それはアッシュが言うように,歴史的な物語を形成する道具立てです.

Brexitにおいて,離脱はヨーロッパを拒むことでした.あるいは,ヨーロッパを介してグローバリゼーションに対抗する戦略に失望したのです.むしろ,ヨーロッパは危機の巣だ,と.

国民投票に向かう選挙運動が,そうした政治的均衡を探る国民的な模索過程であったのは確かです.国家という歴史的な構築物を,繰り返し,新しい条件の中で再生する政治的な試みに,積極的に取り組むことを,イラク戦争やさまざまなテロ事件,EUをめぐる重大な3つの危機,あるいは,世界金融危機やアメリカ大統領選挙の不安は,イギリス政治家と有権者に求めたわけです.

国際秩序の姿も,危機によって形成される,とスティーブン・ウォルトは考えます.国家を超える秩序は,決してネオリアリストが言うようなパワーの配分で決まる構造がすべてではないし,国際経済学や国際金融論が描く,さまざまな市場均衡と調整過程ではない,というわけです.

それは,予測不能な,ショックの連続です.未来は予想外の事件に満ちており,それに対応する決断の背後にあるのは,政治指導者たちの信念である,と.あるいは,ホフマンが言うように,国際秩序には,あまりにも多くの暴力と不正義が存在しており,それを無視して合理的な議論はできない.価値と規範的な姿勢が求められる,と.

私のBrexit報告は,ここがポイントでした.国家という,内部の政治バランスによって動く構築物が,しばしば,激しい雷のような衝撃に撃たれます.旧来の構造において地位を確立していた社会的アクターも,解体され,秩序の再編を模索します.

国際経済学・国際金融論も,こうした構造変化を受けて,その構造や調整過程を変える条件を得るのではないか.あるいは,それらを反映できないような貿易構造や国際収支の在り方は,根本的に不安定化する.帝国であれ,国際通貨制度であれ.

国際秩序の調整を,社会的アクターの形成や再編まで含めて,歴史的・社会的に議論することが,国際政治経済学の目標なのです.

だから,日本にとってのBrexitとは,グローバリゼーションに対抗する戦略国家の形成,保守的ポピュリズムに負けない,憲法改正や朝鮮半島再統一の,未来に向けた構想を問うことなのでしょう.国家とその想像力は,モンスターを生み出します.

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