(前半から続く)


l  ロシアと日本の合意は可能か?

Bloomberg SEP 5, 2016

A Russian Deal With Japan Finally May Be Possible

Leonid Bershidsky

単に経済協力のために領土を売ったというのではなく、東アジア安定化のためにロシアは日本にとっての戦略的な同盟国であると国民が納得するような合意を、プーチンは求めている。

Bloomberg SEP 7, 2016

Japan's Aid Needs More Imagination

Mihir Sharma


l  グローバリゼーションの逆転

FT September 7, 2016

The tide of globalisation is turning

Martin Wolf

移民だけでなく、貿易や投資に関してもグローバリゼーションは逆転するのか?

1次世界大戦前のグローバリゼーションが逆転したときと同様、アメリカ政治が変化するかもしれない。労働集約的な製造品の貿易、世界史的に見ても最大規模の投資ブームが中国で起きたことに対する国際商品貿易の増加、さらに国際融資やFDIの増大する周期が終わった。

各国政府は、貿易自由化ではなく保護主義に関心を向け始めている。金融危機とその後の景気低迷、排外主義が各国政治を変質させた。

いかにしてもグローバリゼーションの進展は止まった。それは逆転できるのか? できるとしたら、主要な大国間の平和が必要だ。もし覇権国の存在を考えるなら、アメリカと中国の戦争が可能性として考えられる。しかし、その破壊的な影響は計り知れない。

グローバリゼーションを、経済変化のもたらす諸問題についてのスケープゴートにしてはならない。過去から学んで、内外の政策を転換するべきだ。

Project Syndicate SEP 6, 2016

Leadership Icons of a Globalized World

HAROLD JAMES

現在のグローバルな文化状況において、ドイツのメルケルとロシアのプーチンの異なる国民指導者が、その複雑性に1つの意味を与えている。

かつて、第1次世界大戦後に、民主体制が崩壊していったとき、世界はイタリアのムッソリーニとロシアのレーニンに注目した。1920年代、ムッソリーニは社会を組織する最適な方法を見つけた、と外国の観察者たちも確信した。伝統的なリベラリズムがもたらすアナーキーと自己破壊的な性格を克服する、と。ムッソリーニの下で、イタリアは世界経済に統合し、しかも、資本と労働との利害の調和を説く、公式のコーポラティズムを推進した。

ムッソリーニのファシスト・インターナショナル運動は、各地に影響を及ぼした。ヒトラーだけでなく、イギリスでも、ルーマニアでも、中国でも、ファシズム運動が起きた。

この時代に、ムッソリーニに対抗したのはレーニンであった。レーニンも階級のない社会を建設すると主張し、そこでは政治対立がなくなると考えた。

現代の指導者たちが政治の将来に見ているのは、メルケルとンプーチンが示す開放性と防衛性の対立である。フランス国民戦線の党首で、大統領選挙に立候補すると思われるマリー・ル・ペンは、メルケルがEUをヨーロッパに対するドイツの支配の道具に使う、と考え、難民の寛容な受政策を「奴隷」輸入と主張した。

メルケルが代表するのは、効果的な政治的管理によって世界は改善できる、という希望である。他方、プーチンは、社会的な保守主義、政治的な権威主義、ロシア正教によるユーラシアの統合を目指す。こうしてメルケルとプーチンは、グローバリゼーションの到達した交差点を代表する政治的なイコンとなった。

Bloomberg SEP 7, 2016

Globalization Hits a Wall

Justin Fox


l  ノアの箱舟

NYT SEPT. 7, 2016

We Are All Noah Now

Thomas L. Friedman

われわれはすでにノア世代だ。地球の生物種は減少し、動物園でしか見られない。そして、生物種を失うことで、地球環境も変化していく。地球を保存する取り組みは始まっている。


l  難民危機

NYT SEPT. 6, 2016

The Crumbling Case for a Mexican Border Wall

Eduardo Porter

Bloomberg SEP 6, 2016

The EU's Migration Crisis Is Far From Over

Leonid Bershidsky


l  オバマ外交

FP SEPTEMBER 6, 2016

The Unfinished Legacy of Obama’s Pivot to Asia

BY VICTOR CHA

TPP、南シナ海、北朝鮮の核実験。オバマのアジア旋回は失敗したのか?

Bloomberg SEP 7, 2016

Obama's Pivot to Asia Fails to Deter China

Eli Lake

NYT SEPT. 7, 2016

Obama Leaves Unfinished Business in Asia

By THE EDITORIAL BOARD

YaleGlobal, 8 September 2016

China’s Non-Peaceful Rise Already in Play?

Harry J. Kazianis


l  ISIS

FT September 8, 2016

End of the Isis old guard signals more danger ahead

Roula Khalaf


l  内戦地帯の核兵器

Project Syndicate SEP 7, 2016

Nuclear Weapons in Civil War Zones

BENNETT RAMBERG


l  中国とカンボジア

FT September 9, 2016

FT Investigation: How China bought its way into Cambodia

James Kynge, Leila Haddou and Michael Peel

中国からの膨大な投資は無条件のものであるが、東南アジアに関するASEANの合意が中国の利益に反するようなとき、それを拒否するために、カンボジアとの戦略的な同盟関係を強化する役割を果たしている。それはカンボジアの独裁的な支配者、フン・センの個人的な結びつきを基礎にしている。

SPIEGEL ONLINE 09/08/2016

The Maritime Silk Road

China's High Seas Ambitions

By Bernhard Zand


l  外交における一角獣

FP SEPTEMBER 8, 2016

My Top 5 Foreign-Policy Unicorns — and Why I Want to Kill Them

BY STEPHEN M. WALT

一角獣を見たことがありますか? ・・・もちろん、私もない。しかし、お話では様々な望ましい、幻想的な性質を持っている。また、ひどい怪物の話もいろいろあるが、幸いなことに実際には存在しない。

しかし、政治においては、しばしば、ユニコーンやいろいろな怪物を信じるように求められ、それを生み出すとか、消滅させるという政治家たちに投票するよう頼まれる。そのために貴重な現実の機会を失い、とんでもない危険を引き受け、国内の崩壊するインフラや教育システムを無視するのだ。

外交政策に現れるこうした生き物たちのトップ5を紹介しよう。

1.完全な軍縮(核廃絶)・・・武器のない世界、戦争のない世界、深刻な政治対立のない世界。

2.核兵器を持つ無法国家・・・抑止することのできない、大量殺戮の脅迫を行う、自殺的な戦争も避けようとしない国家。Joseph Stalin, Nikita Khrushchev, Mao Zedong, North Korea’s Kim family, along with assorted Pakistanis, Iraqis, Libyans, and Iranians

3.テロ組織の指導者・・・911が示すような、世界を隷属させる天才的なテロ組織の指導者。

42国家独立案・・・パレスチナとイスラエルが独立国家として和平と安全保障を確立する提案。

5.(アメリカに)フリー・ライドしない同盟諸国・・・ヨーロッパでもアジアでも、アメリカは安全保障を引き受けてきた。同盟国は軍事費を負担したがらない。

FP SEPTEMBER 8, 2016

Is the United States Giving Up on Supporting Democracy Abroad?

BY THOMAS CAROTHERS

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The Economist August 27th 2016

Colombia and FARC: Ending a half-century of war

Monetary policy: When 2% is not enough

Central banking: The Jackson four

Banyan: A spot of localist bother

Six big ideas: The Mundell-Fleming trilemma – Two out of three ain’t bad

(コメント) コロンビアにおける内戦終結.金融政策の改善策を国際会議で議論しました.香港「雨傘革命」を弾圧したことが民主派を「独立派」に向かわせた.

最後のアイデアは「政策トリレンマ」もしくは「不可能の三位一体」です.あらゆる政策がこの議論に集約されているわけですが,記事は2つの指摘をします.このテーマはすでにJ.M.ケインズが述べていた.また,最近では,変動レート制でも金融政策の自律性を守れない,と分かった.

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IPEの想像力 9/12/16

NHKドキュメントWAVE「ジャカルタ・パンク:インドネシア 抑圧された人々の叫び」を観ました。パンクの意義をこれほど強く示したバンドを知りません。

ここには反逆する理由があり過ぎる。

学生を中心にした反体制デモは一般市民を巻き込み、大暴動化。抑圧と恐怖、経済危機と混乱をもたらした30年間のスハルト政権が終焉した。それから15年経った今、近年話題になるほどの経済成長と共に貧富の差は拡大している。貧困層が人口24千万人の半数近くにも達すると言われ、富豪トップ40人の総保有財産は、最貧困層6,000万人の財産とイコールになるという調査報告もある。

アジアで唯一貧困層が増え続けているこの国は、汚職と腐敗と不条理に埋め尽くされている。町は公害に侵され、インフラは整備されず、教育は高額で、医療制度は機能していない。警察や教師は賄賂を受け取り、官僚は富んだ暮らしに浸り、国民の多くはスラムに生きる。信号待ちをする車に幼児が裸足で駆け寄り、小銭をせがんでいる。パンクな出で立ちの幼い少年はウクレレを抱え、バスの乗客の前で一曲奏でる。よくある光景だ。貧しさが生んだフラストレーション。怒り。怒りが火をつけたパンク・ムーブメント。パンクは、瞬く間に若者の間に広がった。将来への夢や希望がない多くの若者に、パンクはアイデンティティを与え、感情をぶつける場所となり、さらにはストリートで生きる子供たちにとって生きる術となった。巨大化した彼らの存在を政府も無視する事ができなくなった。」(マージナル:ジャカルタ・パンク/中西あゆみ,解説文)

マージナルの代表曲「ネグリ・ングリ(Negeri Ngeri=恐怖に襲われた国)」を,歌詞の日本語訳とともに,聴きてみたいです.

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本山先生の大阪労働学校を訪ねました。かつて居留地であった土地にある学校再興を,先生は篤い思いで語っておられました.

私が参加したのは「第1回公開市民講座」です.日本軍は,侵略戦争の過程で,中国・海南島を占領しました.各地で強制労働や略奪,強姦,性奴隷化(軍の慰安婦),大量虐殺を行い,しかも,敗戦後はその事実を隠し,責任者の追究や謝罪,補償を行わなかった,と批判する記録映画の上映会です.

海南島虐殺に関わった日本軍の関係者,兵士はわかっている,と言います.なぜ,何があったか,日本でも調査しないのか? という質問に,誰1人として,そのことを証言しなかった,と「海南島近現代史研究会」は説明しました.

帰り道は,喫茶店,中華料理店をはしごしました.マルクス主義も近代経済学も偽物だ,と断言する本山節に,私は独自のコンストラクティビズムを感じました.

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北朝鮮の核実験は、国際関係の本質を変えるものではありません。(本山先生の上映会での言及には,この問題を扱う日本側の姿勢に対する不満も込められていました.)

しかし、大陸間弾道弾と潜水艦発射ミサイルの開発にも前進し,中国やロシアを含む周辺諸国,そしてアメリカにも,その脅威は及びました。

この問題を語り合うNHK日曜討論を観ました。・・・中国政府は、南シナ海などで紛争を抱えているときに、北朝鮮の体制を動揺させるような強い制裁は拒否するだろう。・・・北朝鮮は,核武装を拡大しながら,同時に,経済開発にも成功したアイゼンハワーのアメリカ,ソ連,インドの先例を意識しているだろう.・・・いや,北朝鮮は,むしろイラクやリビアのケースに近い.

何とか核戦争を回避しながら,国家犯罪の時代に終止符を打ち,人道・開発援助や市場開放,核保有国として地域安全保障に組み込む形を模索するのでしょうか?

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