IPEの果樹園2016

今週のReview

6/13-11

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TPPと反TTIP ・・・中国の成長減速 ・・・イギリスのEU離脱国民投票 ・・・ベーシック・インカム否決 ・・・低成長とポピュリズム ・・・トランプの選挙戦術 ・・・モハメド・アリ ・・・ブラック・ホール経済学 ・・・オランダとイタリア ・・・ISISとの戦争 ・・・反民主主義とG7 ・・・移民政策の見直し ・・・クリントンとトランプ ・・・財政刺激策 ・・・技術、戦争、雇用について

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  TPPと反TTIP

NYT JUNE 2, 2016

If the Trans-Pacific Partnership Crumbles, China Wins

Roger Cohen

ベトナム戦争から40年が経って、アメリカはベトナムで高い支持を得ている。それは、オバマの訪問の間にも熱い歓迎に示された。アメリカは歴史的な宿敵である中国に対する対抗として、また若者たちにとっては成功のシンボルとして、支持されている。

もしベトナムの熱意を冷ます最も効果的な方法があるとしたら、それは議会がTPPを承認しないことであろう。それはアジアにおける安定化を促すアメリカの役割を損なう。

しかし、トランプは中国もインドがアメリカを利用していると攻撃し、その両国とも含まないTPPを「裏切りだ」と非難する。また、ヒラリー・クリントンも「21世紀の金本位制」というTPP称賛を取り消し、戦術的な後退を唱えている。

Project Syndicate JUN 6, 2016

Germany’s Strange Turn Against Trade

MARCEL FRATZSCHER

ドイツ人のTTIPthe Transatlantic Trade and Investment Partnership)に対する反感が増えている。ヨーロッパ平均の約2倍、70%が反対しているのだ。ドイツの利益にならないと考えている。低熟練労働者の賃金が下がる。大企業の利益が消費者を犠牲にして増える。情報や環境の規制が弱まり、市民の権利が侵される、と考えている。

しかし、ドイツは貿易や国際投資によって成功しており、TTIPで最も大きな利益を受ける国である。これほど多くのドイツ人が反発している理由はいくつかある。

1.ドイツの経済は非常に好調である。経済成長が持続し、失業率は4.6%で、記録的な低さだ。賃金も上昇した。経常収支黒字はGDP8%にも達する。

2.ポピュリストやナショナリストの政治的反感が広まっている。国民国家を超えた官僚制に主権を奪われている、という反感が、TTIPにも向けられる。ドイツ人はユーロ圏の問題でさまざまな支払いを求められ、これもそれを増やすと感じている。

3.ドイツ国内で所得格差が拡大している。ユーロ圏内で最大の不平等を示している。難民流入を政治的に悪用する者がいる。「システム」は不公平で、だまされている、という感覚が広まっている。

しかし、ドイツ経済は国民が考えるほど理想的ではない。OECD諸国の中では民間投資も公的投資も最低だ。労働人口の減少が進むだろう。TTIPを阻んで一番困るのはドイツである。


l  中国の成長減速

Bloomberg JUNE 2, 2016

China's Forgetting the Keys to Success

Michael Schuman

NYT JUNE 3, 2016

How China Fell Off the Miracle Path

By RUCHIR SHARMA

トランプが攻撃する中国の成長は、今では脅威ではない。むしろ、中国経済の脆弱さがアメリカの脅威になっている。

4つの重要な力が、2008年の金融危機以後、諸国の興亡を決定した。中国はどこよりもそれが重要だ。1.債務が急速に増えている。2.貿易の伸びがいたるところで崩壊した。3.多くの国が専制的な支配に戻った。42008年に関係していないが、それ以前から世界の労働力人口が減少してきた。

この10年、中国は世界経済に最大の貢献をしたが、それは脆弱なものであった。奇跡的な成長の時代から、債務の呪いに苦しむ時代に入った。

NYT JUNE 5, 2016

U.S. to Press China to Curb Industrial Output

By CHRIS BUCKLEY and JANE PERLEZ

アメリカでは大統領選挙、中国では来年、指導部の交代が話題になる。これがオバマと習との最後の米中戦略経済対話である。中国の過剰生産力が重要なテーマになる。中国側もこの問題を話し合うことを認めている。「供給側の構造改革」と呼んでいる。

Bloomberg JUNE 6, 2016

The Shadow Looming Over China

Christopher Balding

FT June 8, 2016

Coping with a world of too much Chinese steel

中国の鉄鋼生産力が過剰であり、輸出価格を下げて世界市場に深刻な影響を与えている問題は、EUにとって扱いが難しい。一部の不利益を解消するために、他の分野の不利益を強いる政策は、自己破壊的である。

赤字の鉄鋼業を国有化する、など、持続的な救済策は間違いだ。一時的な補助金も、しばしば、永続化する。むしろ通称的な政策、反ダンピングによる相殺関税などが望ましい。しかし、その場合も、輸入品と競争する部門では明らかな利益であるが、それをインプットにする産業や消費者にとっては不利益だ。EUは、その場合、「コミュニティ(EU)益」を考慮するように求めている。開放的なイギリスから、保護主義的ないアtリアまで含む、共通の関税政策として、EUの判断はむつかしい。

NYT JUNE 9, 2016

China Should Shut Down Zombie Businesses to Help the Economy

By THE EDITORIAL BOARD

Bloomberg JUNE 8, 2016

China Has a Robot Problem

Adam Minter


l  イギリスのEU離脱国民投票

The Guardian, Friday 3 June 2016

Dear Britain, if you stay in the EU, you will ruin our lives. Here is why

Jean Quatremer

The Guardian, Friday 3 June 2016

Leave or remain – Britain’s fortunes hinge on a Europe in need of repair

Simon Jenkins

FT June 5, 2016

Immigration could swing it for Brexit

Gideon Rachman

残留派は経済を語り、離脱派は移民を語る。

離脱派にとって、移民問題は3つの重要なポイントを示すことができる。1.主権の喪失。2.エリートの失敗。3EU改革のむつかしさ。

主権とは、多くの人々って、その国家に誰が属するかを決め、誰が公共のサービスを利用できるかを決める権利である。EU加盟国は、この権利を失っている。4つの基本的な自由として、加盟諸国は人の自由移動を認めているからだ。加盟国のどこに住み、どこで働くか、市民は自由に決めることができる。

しかし、私が知る限り、ヨーロッパからの移民はイギリスにとって利益であった。医療機関やコーヒー・ショップなど、多くのイギリス国内の活動は移民労働者によって支えられている。

同時に、実質賃金は停滞し、住宅価格は上昇し、公共サービスは不十分であり、多くのイギリス人がそれを移民増大と結びつけている。

FT June 6, 2016

The liberals leading the Brexit charge are riding a statist tiger

Janan Ganesh

FT June 6, 2016

My British and European identities are intertwined

John Kay

NYT JUNE 6, 2016

Only in Europe Can Britain Be Great

By GORDON BROWN

かつてアメリカのアチソンDean Acheson国務長官はイギリスの将来の役割について語った。イギリスが世界において影響力を示すには、アメリカとの特別な関係を含めて、さまざまな関係がすでに有効性を失った。ただ1つだけが残されている。それは、ヨーロッパに積極的に関与することだ。イギリス自身の抵抗がそれを阻んでいる。

離脱派は今も、イギリスが一人で立つときこそ最も愛国的である、と主張する。ヨーロッパから独立し、島となるのだ。残留派は、イギリスはヨーロッパの中心にあり、最も外向きの姿勢を持っている、と語りたがる。

しかし、保守党政権は、党内のヨーロッパ懐疑論に押されて、ネガティブな論争から抜け出せない。EU加盟をより小さな悪として擁護している。もっとポジティブな論争を指導するべきだ。

伝統的な愛国主義は現代の現実と対立するとは言えない。相互依存した世界では、各国が自律性と協力との間のバランスを取っている。EUに加盟していることで、イギリスはヨーロッパの超国家システムにアイデンティティを従属させることや、「小イングランド」の精神に後退することなく、建設的な役割を果たすことができる。

ローマ法王Pope Francisは、かつて偉大なヨーロッパは、その精神を高める魅力を失い、制度を維持するテクノクラートに変わった、と嘆く。イギリスは、大陸の魂を生気づけ、国際社会が求める同盟を回復する手助けができる。ヨーロッパが自己中心の内向きの存在になっているとき、強力な外交と通商関係を世界的な規模で展開するイギリスの役割こそが重要だ。

イスラム国家を鎮圧し、気候変動に対策を取り、金融危機後の世界に、ヨーロッパが成長のエンジンとなるには、イギリスが加わって新しい活動を展開するべきだ。

EUが超国家の連邦機関としてイギリスの主権を消滅させることはない。むしろEU加盟諸国は、28か国の政府を残すだろう。EUの将来は、ヨーロッパ合衆国United States of Europeではなく、ヨーロッパ諸国の統合体United Europe of Statesである。

The Guardian, Tuesday 7 June 2016

Two fingers to the world: is that your message, Brexiteers?

Chris Patten

議会制民主主義を国民投票によって破壊することは間違いだった。たとえ残留派が勝利しても、彼らは、外国人を排斥する、膨張したナショナリズムに対処しなければならない。

離脱派が愚かなことを示す5つの点は明白だ。

11970年代前半にイギリスがEECに加盟したとき、われわれはフランス、ドイツ、イタリアに劣る「ヨーロッパの病人」だった。しかし、その後の40年で、われわれは大いに改革し、最も規制の少ない、最も高い成長と多くの雇用をもたらす経済に変身した。

2.イギリスは最大の市場から離脱して、経済的成果を失う。ヨーロッパの単一市場に代わる市場は見つからない。われわれの輸出の44%はヨーロッパに、彼らの輸出の7%がわれわれに向かうとき、通商交渉は容易でない。

3.経済的な不利益を承知で、イギリスの主権を取り戻すのか? しかし、住宅、福祉、医療、外交、防衛はすでにイギリスの手にある。それらが移民や外国人によって妨げられている、というのは間違いだ。イギリスに移民が多いのは成長しているからだ。移民労働者を排除して、年金生活者が畑でジャガイモを収穫するのか?

4.イギリスの未来を拓く起業の多くは移民たちによる。移民を排除すれば、科学研究も大学も衰退してしまう。

5.離脱後のイギリスは世界秩序にどのように関わるのか? EUは多元主義、民主主義、福祉経済、法の支配を信じる諸国が集まり、主権を共有することでレバレッジを得るために成立した。離脱後のイギリスについて、何を期待するのか?

The Guardian, Tuesday 7 June 2016

There is still time for hope – Brexiters can be persuaded

Polly Toynbee

FT June 7, 2016

Britain found a role but is in danger of losing it again

NYT JUNE 7, 2016

Why Britain Is Edging Toward ‘Brexit’

Peter Eavis

The Guardian, Wednesday 8 June 2016

The EU is an outsized behemoth beyond reform – the Green case for Brexit

Jenny Jones

EUはグリーン(環境保護派)の視点から見て大きすぎる。それは改革不可能な組織である。

FT June 8, 2016

Northern Ireland cannot afford a British EU exit

FT June 8, 2016

Brexiters’ idea of unilateral free trade is a dangerous fantasy

Martin Wolf

一方的な自由貿易により、WTOルールだけに従う、というのは、自由貿易を実現してきた歴史を無視し、現実性を欠いた議論である。香港やシンガポールのように、競争的な民主主義を欠いた国家体制なら、自由化を維持できる。しかしEU離脱後のイギリスは、むしろ保護主義的な、より介入主義的な国家になるだろう。

イギリスは19世紀に戻れない。サービス分野では、ルールに関する調和が欠かせない。

Bloomberg JUNE 8, 2016

Europe's Big Opportunity for a New Start

Leonid Bershidsky

Project Syndicate JUN 9, 2016

European Integration With or Without Britain

KEMAL DERVIŞ

YaleGlobal, 9 June 2016

Does Europe Need Brexit?

Alan Stoga


l  ベーシック・インカム否決

FT June 3, 2016

A simple basic income delivers little benefit to complex lives

Alan Beattie

ベーシック・インカムもしくはシティズン・インカムは右派にも、左派にも大いに魅力的なアイデアであり、関心を集めている。それは複雑な福祉のシステムを、無条件の1人当たり給付に置き換える。その単純さが先進諸国で高く評価されている。

日曜日、スイスで国民投票が行われる。すべての住民に年3万スイスフランを基本にするベーシック・インカムを採用するかどうか。世論調査が正しければ、それは否決される。

ベーシック・インカムのアイデアは1世紀ほど前からあるが、煩わしい政治を回避して、単純な、クリアな物事の解決を求める人に支持されている。その理論では、怠惰を促すより、働く意欲を刺激する、ということになる。最低賃金水準より多くを受け取る者から財源を徴収するが、税率の上昇は緩やかだ。

しかし、納税額が減る人は喜ぶが、その代償は貧しいものがさらに貧しくなることだろう。リバタリアンと左派の同盟がベーシック・インカムを支持するとしても、一方は最小国家の楽園、他方は北欧型の福祉の楽園を実現できると考えるのだから、同盟崩壊は間違いない。

たとえ増税と給付削減とのバランスを取れたとしても、所得が増えると課税される家計は労働供給を減らすだろう。最低労働の必要条件を加えると、ベーシック・インカムの最初のアイデアから離れていく。

そもそも、社会が特定の人々に給付を行うのは、身体障碍者、扶養家族、高齢者など、労働することが難しく、追加の給付がなければ、彼らが十分な生活水準を維持できない、と認めているからだ。ベーシック・インカムの根本問題は、こうした人々の事情に応じた社会的給付を、民主的な社会が認めた、という点で、福祉政策の複雑さが生じていることを無視していることだ。

ベーシック・インカムに移行することは、身体障碍、高齢、育児、特定地域の住居費用高騰、といった問題が、行政の簡素化、所得証明の煩雑さより、軽視されることを意味する。むしろ問題は、どのような福祉政策をわれわれは望むのか、ということだ。誰にでも単純に一定の所得を給付すればよい、というのでは解決にならない。

Bloomberg JUNE 6, 2016

Universal Basic Income Is Ahead of Its Time (to Say the Least)

Megan McArdle

国民のすべてにベーシック・インカムを与えるUBIのためには財源が必要だ。その具体案は示されていない。それを支持する者は、最近のロボットによる職場の消滅を恐れる傾向から、増えているのだろう。

Bloomberg JUNE 6, 2016

Swiss Rejection Won't Doom Universal Basic Income

Leonid Bershidsky

スイスの国民投票はUBIを否定した。UBIは必ずしもユートピアではない。それは時代に先行しただけである。富裕層の多い、失業率の低いスイスは、UBI採用の実験にふさわしくない国だった。UBIによって働くことをやめてしまうかどうか、など、多くの疑問が残されている。その答えは小さな規模で実験するしか得られない。国やコミュニティーによって異なるだろう。

Bloomberg JUNE 8, 2016

Silicon Valley's Basic-Income Experiment Is Worth Watching

Noah Smith


l  アメリカの金利据え置き

FT June 3, 2016

The Fed faces bigger problems than Brexit

アメリカ連銀が6月に金利を動かさなかったのには2つの理由がある。1つは短期的な、もう1つは、より強い、長期的な理由だ。

前者は、イギリスのEU離脱に関する国民投票だ。後者は、中国の債務膨張である。もし債務が削減されなければ、急激な債務の逆転で成長が損なわれ、資本が流出し、人民元が減価し、新興経済に影響するかもしれない。


l  低成長とポピュリズム

Project Syndicate JUN 3, 2016

Populists and Productivity

NOURIEL ROUBINI

世界金融危機以降、アメリカ、ヨーロッパ、日本で、生産性の上昇率が大きく低下している。しかし、シリコン・ヴァレーなど、世界の技術中心ハブでは技術革新の黄金時代が来たと信じられている、特に6つの分野だ。ET (energy technologies)BT (biotechnologies)IT (information technologies)MT (manufacturing technologies)FT (financial technologies)DT (defense technologies)

なぜこうした技術革新が生産性の上昇率を引き上げないのか?

いくつかの説明が示されているが、確かなことはわからない。1.革新の性格が変わった、という技術ペシミスト。2.情報に偏った技術革新が成長として測定されない。3.影響の遅れ。4.高齢化や投資の減速など「長期停滞」の履歴効果。

しかし、生産性上昇の低下と低成長がこのまま続くとすれば、自由貿易、グローバリゼーション、移民、市場型の経済政策に対するポピュリストの反発は強まるだろう。先進諸国の政府はこうした問題に取り組みを強める必要がある。

Project Syndicate JUN 3, 2016

Confronting the Global Threat to Democracy

NGAIRE WOODS

グローバリゼーションの成果が大きな不平等をもたらすとわかったとき、民主主義政治はそれに反対し始めた。それを放置する政治エリートに対して、反発と反対運動が世界中で高まっている。グローバリゼーションは規制と管理を必要としている。

Project Syndicate JUN 3, 2016

Do We Want Powerful Leaders?

JOSEPH S. NYE

権威主義的な支配体制に向かう傾向が世界中で強まっている。しかし、権力の濫用は歴史上に多く存在する。権力者を暴走させるのは追従者の要求である。ここで制度が重要な意味を持つ。指導者も追従者も天使ではないから、制度が規制しなければならない。アメリカ建国において、政府の効率を最優先するより、市民の自由を守ろうとした。

NYT JUNE 3, 2016

The Timeless Temptation of Despots

Nikos Konstandaras

Project Syndicate JUN 3, 2016

Generation Jobless

Edoardo Campanella


l  トランプの選挙戦術

FP JUNE 3, 2016

The Trump Trap

BY DAVID ROTHKOPF

ヒラリー・クリントンの競争相手がドナルド・トランプであるのは、彼女にとって贈り物であるが、罠でもある。勝利するには、これまでトランプの競争相手がしたような、何かに反対する姿勢では足りない。有権者に対して、もっと自分が何のために闘っているのか、示すべきだ。

指導者は、国民をどこに向けて進むか、新しいアイデアや新しい顔を必要とし、国民をそこに向ける情熱を必要とする。クリントンには、トランプを恐れる人々が集まるだけでは不十分だ。トランプが集める情念と挫折感には対抗できない。

大統領候補には、人々に情熱を吹き込む力、有権者の頭脳だけでなく、その情緒と強く共鳴する力が求められる。

NYT JUNE 3, 2016

And if Elected: What President Trump Could or Couldn’t Do

By ERIC POSNER

NYT JUNE 4, 2016

Italy Feels Our Pain

Frank Bruni

アメリカにトランプが登場したとき、イタリア人は喜んだ。なぜならSilvio Berlusconiベルルスコーニで物笑いの種にされてきたからだ。今度はアメリカの番である。

ベルルスコーニも暴言を好み、ヨーロッパ中で嫌われた。アメリカはますますイタリアに似てきた。これはイタリア人のリベンジだ。ナショナリストの醜い政治がヨーロッパにも広まっている。オーストリアは民主的選挙で、第2次世界大戦後、初の右翼指導者を大統領にする寸前であった。イギリスはEU離脱を決めるかもしれない。ファシズムの復活が真剣な話題になっている。

ベルルスコーニは、自分自身を政治家階級の部外者、大胆な例外として、ファッションにした。汚職のスキャンダルが広まっていた。ベルルスコーニは超富裕なビジネスマンであり、メディアの操作方法を知って、しかも、それを所有していた。イタリア経済のダイナミズムを取り戻す、と約束した。「イタリアの新しい奇跡」を生み出す、と。

トランプにも、多くのノスタルジアが作用している。政治に対する深刻な不満がある。そしてベルルスコーニと同様に、超富裕層と一般の男女とを結びつける露骨な表現を知っている。ベルルスコーニは、判事たちや共産主義者を攻撃し、トランプは、メキシコ人やイスラム教徒を攻撃する。しかし、大衆と話すとき、いつもポケットに太陽を入れておく、とベルルスコーニは述べた。

トランプが異なるのは、アメリカがイタリアと比べ物にならないほど、世界中に脅迫する材料を持っていることだ。アメリカ人がトランプに従うなら、イタリア人がベルルスコーニを支持したよりも、はるかに危険である。

ベルルスコーニは道化師であり、イタリア人や外国人を笑わせ、最後は掃除された。しかし、トランプは違う。彼のポケットにあるのは、太陽ではない。

NYT JUNE 4, 2016

No, He’s Not Hitler. And Yet ...

Justin E.H. Smith

FT June 4, 2016

The economic consequences of a Donald Trump win would be severe

Lawrence Summers

トランプの大統領当選は、イギリスのEU離脱と同じか、それ以上に深刻なリスクである。

Project Syndicate JUN 7, 2016

Springtime for Fascism?

IAN BURUMA

言葉や思想には結果がともなう。今のポピュリストの指導者たちを、虐殺を好んだ最近の独裁者にたとえるべきではない。しかし、同じような大衆の気分を刺激する点で、彼らは毒された雰囲気を醸成し、再び、政治的な暴力を主要な表現とするだろう。

NYT JUNE 7, 2016

Dump the G.O.P. for a Grand New Party

Thomas L. Friedman

NYT JUNE 8, 2016

Why Republicans Won’t Renounce Trump

Andrew Rosenthal

Bloomberg JUNE 9, 2016

Five Reasons Decent People May Want to Back Trump

Megan McArdle


l  天安門事件

FP JUNE 3, 2016

China’s Youth Think Tiananmen Was So 1989

BY TEA LEAF NATION CONTRIBUTOR


l  ウーバー反対

Bloomberg JUNE 3, 2016

Europe Isn't Quite Ready for the Sharing Economy

Leonid Bershidsky


l  モハメド・アリ

NYT JUNE 4, 2016

Muhammad Ali: Worshiped. Misunderstood. Exploited.

By ISHMAEL REED

The Guardian, Sunday 5 June 2016

Muhammad Ali knew he had a job to do on this planet – inspire people

Gary Younge

ブラック・パワーを示すためにオリンピックで拳を突き上げた陸上選手John Carlosがいた。アリもボクサーとして天才であっただけでなく、地球上に生きている者が何かをすることで人々を勇気づける、ということに成功した人だった。

アリは、黒人の分離主義運動を支持するthe Nation of Islamに加わったことで、また、ベトナム戦争に反対したことで、政治エリートによってパリアとみなされ、排除された。ボクサーとしてのタイトルも、試合の機会も失ったが、その信念を変えなかった。

アリは時代の産物であったが時代を超え、スポーツの世界で評価を得たがスポーツを超え、黒人であったがそのアピールは黒人を超えた。アメリカがアリを見る目は50年間で大きく変わったが、それは時代が変わっただけではない。アリが世界を変えたのだ。


後半へ続く)