IPEの果樹園2016
今週のReview
3/28-4/2
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ロシア外交の思想 ・・・国際通貨と外交 ・・・アメリカの大統領選挙 ・・・国連改革の訴え ・・・オバマ外交の思想 ・・・Google,
Gazprom, and Appleと戦う ・・・AIと人類の闘い ・・・カラジッチへの判決 ・・・中国企業による国際企業買収 ・・・トルコとの難民送還協定 ・・・新しい「ゲームのルール」 ・・・EU離脱論争 ・・・インターネットと政策革新 ・・・ベルギー国家とテロリズム ・・・経済学の適用 ・・・経済政策の挑戦 ・・・ユーロ危機の解釈 ・・・ニュージーランド国旗投票
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign
Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York
Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l ロシア外交の思想
The
Guardian, Friday 18 March 2016
Putin’s
long game has been revealed, and the omens are bad for Europe
Natalie Nougayrède
今週,ロシア外務省の報道官Maria
Zakharovaから,EUの指導者たちが集まる会議の前にトウィッターが流れた.「移民危機は,西側民主主義を中東に拡大する無責任な試みによって起きた.」
NATOの総司令官が,ロシアはヨーロッパを不安定化するために難民危機を「武器」として利用している,と言及したが,それには議論の余地があるだろう.しかし,明らかに,EUが多くの危機に直面する中で,ロシアが何を考えているかを知ることは重要だ.
ロシアの雑誌にラブロフ外相Sergei
Lavrovが雑誌(Russia
in Global Affairs)に書いた論説が参考になる.ラブロフはロシアの外相を2004年以来務め,その論説は明らかに,シリアで優位を確立し,ヨーロッパが難民危機に動揺する中で,プーチンが描く国際戦略を反映している.
ロシアが求めているのはヨーロッパの政治・安全保障アーキテクチャーに関する公式の条約である.ロシアがそれを得られない限り,ヨーロッパ大陸の安定はないだろう.「過去2世紀において,ロシアを欠いた,もしくは,ロシアに敵対したヨーロッパ統合の試みは大きな悲劇で終わった.」
難民危機はロシアが起こしたわけではない.すでに2013年のLampedusa島沖における難民船沈没で危機の意識が高まっていた.しかし,アサド政権は危機を拡大し,ロシアの空爆で,特にアレッポ周辺から難民が急増した.
ラブロフはその主張をロシアの視点で歴史的に説明する.エカチェリーナ2世,ナポレオン戦争,1853-56年のクリミア危機,である.それは,西ヨーロッパの人々がロシアを犠牲にし,ロシア人を侮辱してきたという偏執的な歴史観だ.ラブロフは,プーチンをピョートル大帝に似せて描く.「国内的な強肩と決断により,外交の成果を上げ」,ロシアを「わずか20年で」ヨーロッパの指導国の1つにした,と.
ラブロフは決まり文句を繰り返す.・・・ロシアは冷戦の敗者ではない.ヨーロッパの小国にとって支配する者が替わっただけだ.小国はワシントンとブラッセルが認めないことは何もできない.EUの機構はソ連の全体主義と同じだ.
今年,ロシアにとってヨーロッパを要求に従わせる絶好の年だと思うだろう.難民危機,イギリスのEU離脱に関する国民投票,独仏関係の悪化,メルケルの権力衰退,ウクライナ,バルカン,ポピュリストたち.アメリカは大統領選挙で,孤立主義を強めている.
プーチンの狙いは,中東ではなく,ヨーロッパにある.
FP MARCH
18, 2016
Putin’s
Master Plan for Syria
BY RANDA SLIM
FP MARCH
18, 2016
Why Talk
of Federalism Won’t Help Peace in Syria
BY MICHAEL MEYER-RESENDE
Bloomberg
MAR 18, 2016
Putin's
Syria Gamble Has Already Paid Off
By Tobin Harshaw
FT March
21, 2016
Russia is
following a clear strategy in Syria
Fyodor Lukyanov(editor of
‘Russia in Global Affairs’ and research professor at the National Research
University, Moscow)
プーチンがロシア軍をシリアから撤退するよう決断した,というニュースは世界中を驚かせた.しかし,それはロシアが公式に表明してきたことだ.ロシアが軍事介入した目的は,アサドを助けることではなく,シリアの体制を強化することだ.将来の政治体制はシリア国民が政治対話で決めるべきである,と.
なぜ,今,撤退するのか? ロシア軍の介入は予想以上に長引いた.それはシリア政府軍の準備が足りなかったせいだ.今,アサドの体制は強化され,地上における勢力バランスは変化した.反政府軍は,軍事的な勝利が不可能であると分かったときだけ,和平交渉に応じる.シリア政府もロシア軍が撤退することを止められない.モスクワは現在の体制でシリアが安定できるとは考えていない.
ロシアは撤退後も軍事拠点を残すだろう.それはイラクやアフガニスタンの教訓を引き継ぐものだ.モスクワは国際的な影響力を示した.これはウクライナとの交換条件ではないが,ウクライナに関する交渉にも影響するだろう.ISISを完全に崩壊させるためには,シリアの政治体制が反政府勢力も含めて強化されるべきだ.
Project
Syndicate MAR 21, 2016
Revitalizing
the Minsk Agreement
CARL BILDT
ロシアとウクライナ,西側諸国は,ミンスク合意を再生するべきだ.それは行き詰まりに陥っている.
最大のボトルネックは,ウクライナ政府の憲法改正が遅れていることだ,とロシアは非難する.ドネツクなど,反政府勢力が支配する地域に,大きな自治権を与える連邦制を,憲法に認めるよう求めている.しかし,憲法改正に関するミンスク合意の内容はあいまいだ.
重要な点は,誰が支配するのか,である.事実上のロシア占領地域となることを,憲法が承認することはウクライナ政府が受け入れない.憲法改正の条件として,自由で公平な選挙を求めている.
地域の選挙をめぐって激しい外交交渉が戦われた.分離主義者たちはウクライナの政党が選挙に参加することを望まない.150万人の離散した住民が投票することも望まない.しかし,そのような条件はウクライナ政府もEUやアメリカも受け入れない.
結局,ミンスク合意とその和平プロセスは,何らかの国際管理による選挙を実施することになるだろう.ロシアがそれに反対し,この地域を内戦状態のまま固定化することは,ロシア自身の経済的な利益を大きく損なうだろう.経済制裁はロシア経済に深刻な打撃を与えているし,その原油生産量は減少している.西側の技術援助がなければ原油生産を回復できない.
時間が経てば,軍事介入によって,ウクライナ政府が不安定化する,と考えるのは間違いだ.より結束し,強い国家になるだろう.西側は,こうした視点から,制裁の体制を堅持し,ミンスク合意を再生しなければならない.
Project
Syndicate MAR 22, 2016
A Million
Ways to Die in Syria
DEBARATI GUHA-SAPIR
5年間の内戦は多くの人々をさまざまなやり方で死に追いやった.シリアは,国際的なビザンチン式パワーゲームの遊戯室となっている.
飢餓や暴力だけでなく,ここでは,医師や医療施設に意図的に攻撃が行われている.その結果,多くの子どもたちが防げるはずの病で死亡し,多くの母親と胎児が出産のときに適当な医療器具や補助がないために死亡した.
国際社会は,病院に対する爆撃を公表し,非難し,それを究明しなければならない.国際的な人道支援団体はシリアの医療機関や関係者と協力し,何が必要かを把握して,支援を増やすべきだ.
NYT MARCH
23, 2016
Three
Rules of Kremlin Power
Maxim Trudolyubov
FP MARCH
23, 2016
How to
Crowdsource the Syrian Cease-Fire
BY COLUM LYNCH
Bloomberg
MAR 24, 2016
How Russia Is 'Weaponizing'
Migration to Destabilize Europe
Josh
Rogin
l 移民
The
Guardian, Friday 18 March 2016
Migration
is a fact of life – yet our deluded leaders try to turn back the tide
Simon Jenkins
移民の流れを阻止することはできない.「何かしろ」という声に応えるために政府が示すショーに過ぎない.近隣で戦闘が激しくなれば,人々が非難するのを阻止することはできない.どこかで難民となった人がその国を目指すなら,それはもはやその国の問題である.人口の移動は歴史の一部であり,その社会的な軋轢が高まるとしても,吸収するしかない.アメリカやオーストラリアがそうだ.
l ブラジルの政治混乱
NYT MARCH
18, 2016
Brazil’s
Political Crisis Deepens
By THE EDITORIAL BOARD
FT March
19, 2016
After
Lula-era excess, the Car Wash generation upends Brazilian politics
Misha Glenny
l 国際通貨と外交
FP MARCH
18, 2016
Too Big to
Sanction
BY TODD WILLIAMSON
2015年11月,IMFのラガルド専務理事は中国の通貨,人民元RMBを,SDRと呼ばれる国際準備を構成する通貨の1つとして追加すると発表した.
人民元はグローバルな通貨市場で,ドル,ユーロ,ポンドに次いで4番目に取引の多い通貨である.SDRのバスケットで3番目に大きな比率を占める.IMFの決定は中国に通貨の自由化を促すシンボリックな意味があるだけでなく,人民元が現実に中国の外で取引を増やしていることを反映している.
人民元はいくつかの産業で現実に(ドルに代わる)選択肢となっている.2015年,ロシアの巨大な国営ガス企業Gazpromが,ウクライナの分離独立派をモスクワが支援したことに対するUSとEUの制裁を受けた.Gazpromは中国に石油を販売し始めていたが,それは人民元による契約であり,同時に,ドルと西側の金融システムから離脱し始めた.またオーストラリアの鉱山会社は,中国企業に対して人民元での取引を認めることがグローバルな競争を有利にできる,と気が付いた.
イギリスのキャメロン首相が,昨年9月,北京訪問中に,中国の中央銀行は人民元建ての短期債券をロンドンで発行し始めると発表した.また10月に,ドイツのメルケル首相が北京を訪問した際,李克強首相とCEINEX(the China
Europe International Exchange)の創設に調印した.それは中国の外で人民元建の債券・為替取引を行う初めてのファンドである.
こうした動きにはマイナス面が伴う.USドルによって行われる制裁の効果を失わせることだ.この15年の間に,制裁はますます軍事的なものから経済的なものに変わってきた.特に,政府が支援するテロ活動,資金洗浄,人権侵害,境界線をめぐる制裁だ.2014年,アメリカ政府は,スーダン,キューバ,イランだけでなく,フランスのBNPパリバにも制裁を科した.その衝撃は,彼らが人民元での取引をすることで緩和された.
FT March
19, 2016
A welcome
calm in the global currency markets
Bloomberg
MAR 23, 2016
A Welcome
Cease-Fire in the Currency Wars
By Mark Gilbert
l アメリカの大統領選挙
Project
Syndicate MAR 18, 2016
From
Tolstoy to Trump
CHRIS PATTEN
FT March
20, 2016
The new
class warfare in America
Edward Luce
トランプは自分の市場を知っている.「私は高学歴でない人たちを愛している.」 この全くアメリカ的でない,政治から締め出されてきた「労働者階級」という言葉が日常的に論争で現れる.
The
Guardian, Monday 21 March 2016
I helped
create Donald Trump the politician. Now I bitterly regret it
Christopher R Barron
NYT MARCH
21, 2016
On
Invincible Ignorance
Paul Krugman
トランプ主義の根は,富裕層への減税を繰り返した政府に対する不満,人種差別主義,など,長い間,共和党が耕した土地に広まったのだ.彼らは認めようとしないが.共和党の政策は,人々が急速に高所得層に参加できる,富裕層への減税によって成長と雇用を刺激できる,という間違った前提を,いつまでもゾンビのように正しいと信じている.
NYT MARCH
21, 2016
What
Mexico Thinks About Trump
By IOAN GRILLO
トランプ主義はすでに隣国に対するアメリカ政治のレトリックを変えてしまった.トランプに歓声を上げるアメリカ人たちはトランプ以後にも残る.アメリカ社会が外国人を嫌うように,メキシコ人もアメリカを嫌うだろう.この感情は双方向に強められる.
Bloomberg
MAR 21, 2016
This
Election's Big Question: What Makes America Great?
By Leonid Bershidsky
2016年のアメリカ大統領予備選挙を見て歩くと,アメリカが20年の支配の末にアイデンティティー・クライシスを味わっていることがわかる.「アメリカが偉大である,とはどういう意味か?」
外国から来た旅行者にとって,アメリカ社会には今も素晴らしい活気がある.これほど堅実な競争の精神が行き渡った偉大な国民は世界のどこにも存在しない.
しかし,候補者たちの「偉大さ」をめぐる論争は終わらない.
トランプは,レーガンのスローガンを採用し,アメリカを再び医大にする,と言う.それは,ゼロサム的な交渉によるものだ.ヨーロッパやアジアが行う妥協や合意ではない.アメリカは勝者になり,相手は敗者になる.
クルーズは,アイオワで勝利した後,アメリカの偉大さを語った.すなわち,自由市場,憲法が保障する自由,そして,「ユダヤ・キリスト教的価値」である.アメリカの憲法は聖なる牛であり,侵してはならない宗教だ.他方,ケーシックの考えでは,アメリカを偉大にするのは効率の改善,マネージャーとしての良識である.
ルビオがアメリカに見るのは,民主党の行った過剰な規制と政府の肥大化によってアメリカン・ドリームを裏切られた人々の姿である.偉大さは,彼の地盤であるフロリダを見るなら,多くのキューバ系移民,零細商店・企業,アメリカ社会の中にあふれている.
他方,サンダースの考える偉大さは異なる.偉大な国とは,関与した戦争の多さで図るのではなく,紛争を平和的に解決し,社会の最も弱い者たちに接するやり方で判断できる.もっと正義と思いやりを求めているのだ.しかし,それを富裕層や企業に対する増税で実現する,というのは疑わしい.政治が社会を改造するのは危険である.公正さより混乱を招くかもしれない.
ヒラリー・クリントンはプラグマティックで,こうした議論から離れている.アメリカが偉大でなかったことはないのだから.むしろ,この国をもう一度1つにする,という.さまざまな課題で,アメリカが国際的なリーダーシップを発揮する.
アメリカの指導者たちも,ロシアと同じように,偉大な国であることに執着する.それは遺伝子のようなものだろう.
FT March
23, 2016
A week
that makes some sense of Trump’s foreign policy ideas
Roula Khalaf
FP MARCH
23, 2016
Is This
the Trump List We Have Been Waiting For?
BY PETER FEAVER
Bloomberg
MAR 23, 2016
The
Trump-Cruz Police State Exists. It's Called France.
Eli Lake
FT March
24, 2016
The
unpalatable choices facing the US Republicans
l マクロプルーデンシャル規制
VOX 18
March 2016
Everybody
right, everybody wrong: Plural rationalities in macroprudential regulation
Jon Danielsson, Andreas Tsanakas
l 国連改革の訴え
NYT MARCH
18, 2016
I Love the
U.N., but It Is Failing
By ANTHONY BANBURY
私はこの30年間のほとんどを国連のために働いた.国連がその原則に従って組織されることを強く願うからこそ,私は退職を決めた.
国連は民生から軍事まで,さまざまな重要な人道支援に関わっている.しかし,その行政の混乱によって使命が果たせていない.これほどのオーウェル的な暗黒世界,ルイス・キャロルの不思議の国であるとは予想していなかった.税金や人々の志が,果てしないブラック・ホールに消えていく.
第1に,人事やルールが化石化している.適当な人材を得ることができず,ルールを破るしか活動できない.第2に,政治的な配慮で多くのことが決まる.国連平和維持軍の兵士たちが人道的な罪を犯した.しかも,それを責めることがない.
今年,新しい国連事務総長を選出する際に,諸政府は真剣に考えるべきだ.
Global Times 2016-3-24
Will UN resolution bring N.Korea to
table?
By
Jin Canrong
l オバマ外交の思想
NYT MARCH
18, 2016
Obama's
Flawed Realism
Roger Cohen
オバマの間違った21世紀型リアリズムのせいで、トランプの攻撃的なアメリカ優先主義が生まれた。アメリカが2つの戦争につまずいた後では、オバマの自制が必要だった。しかし、シリアに対して介入を抑えたことはひどい間違いであった。オバマはアメリカ外交を「信認の妄信」と呼ぶが、アメリカがシリアの住民を見捨てたことは、各地で紛争や混乱を悪化させている。
FT March
21, 2016
Obama’s visit
to Cuba justifies the long view
FT March
21, 2016
Libya:
Stoking conflict
Sam Jones and Heba Saleh
The
Guardian, Monday 21 March 2016
The
Guardian view on Obama’s Cuban visit: high time in Havana
Editorial
オバマのキューバ訪問は歴史的な外交の成果である。彼が大統領候補として、キューバとの和解を呼びかけたとき、それが成功する保証は何もなかった。しかし、今も反体制派は釈放されていない。キューバに対する禁輸措置を解除できるのは議会であって、オバマではない。正常化がテレビの中だけでなく、キューバ国民のものであるには、彼らがこの体制を変えることだ。
SPIEGEL
ONLINE 03/21/2016
Last
Chance, Amigo?
You Can
Never Be Too Late in Havana
By Jochen-Martin Gutsch In Havana
ローマ法王が来た。オバマも来た。そして、ローリングストーンズもすぐに来る。誰もがキューバの社会主義は終わると思っている。しかし、東ドイツの市民が来たら、何と思うだろうか?
なぜ、この小さな国は東ドイツよりも長生きしたのか? 人々は58年間の社会主義の記憶を好んでいる。資本主義を学ぶことは容易でない。私もそうだったが、彼らのイメージでは、資本主義とは単にお金がいっぱいあることだ。しかし、そう簡単ではないとわかる。やみくもに競争し、利潤が最優先で、不道徳だ。まるでトランプだ。
ハバナのエレベーターはいつも故障している。東ドイツでも、なんでも待つことが社会主義だった。観光業は素晴らしく成長している。そしてキューバの人々はとても魅力的だ。東ドイツとは違う。今ではヨーロッパの貴族たちも、キューバで古き良き社会主義のリゾート休暇を楽しむ。
社会主義体制の末期にはロックバンドが来た。キューバもそうだ。
NYT MARCH
21, 2016
Cuba Heads
for Miami
Roger Cohen
FP MARCH
21, 2016
Obama’s
Cuba Reset Is Now in the Hands of Congress. Too Bad It Won’t Budge.
BY DAVID FRANCIS
FP MARCH
21, 2016
Obama Says
Climate Change Is a Security Risk. Why Are Republicans Laughing?
BY KEITH JOHNSON
FT March
22, 2016
Barack
Obama has risked US credibility in the Middle East
Nicholas Burns
Jeffrey Goldbergによるオバマ外交の考え方に関する整理は重要な到達点を示した記事だ(The
Atlantic. April 2016).それはまた,アメリカが現在の世界政治における,立ち止まりがちな,不確かな大国であることも説明している.
オバマは重要な国際的成果を上げた.イランとの核合意.気候変動に関する歴史的な協定,アジア,そして,ヨーロッパとの通商協定である.
アメリカ大統領は,Goldbergとの対話で,もっとも難しい外交政策の問題に正しく焦点を合わせた.すなわち,大統領は国境の外での戦争に軍事的な介入の命令をいつ下すべきか,そして,いつ介入を止めるべきか?
しかし,彼は以前の大統領たちの軍事力行使に関する原則を比較して決めたように見える.そうすることで,「オバマ・ドクトリン」が登場する.
冷戦終結から,アメリカの世界戦略は成功と失敗を重ねたが,アメリカ外交は,強い軍事力によって保証され,それを必要なら行使する意思を示したとき,しばしば最も効果的であった.それゆえ,オバマが2013年に,シリアのアサド政権の化学兵器使用に反対する強い警告を発しながら,空爆しなかったとき,大きな問題が生じたのだ.
オバマは,彼の自制が中東におけるアメリカの信認を損なった,という考えを拒否する.しかし,古来,大国が友好国から敬意を集め,敵対国を恐れさせたいなら,軍事力によって脅すことだった.オバマが軍事的な脅しをする意図でなかったとしたら,あのような警告はすべきでなかった.結果的に,アメリカは信認を低下させ,他方,プーチンのロシアが地位を高めた.
また,アメリカがグローバルな強さを示すには,ヨーロッパとアジアにおける同盟と安全保障の協約ネットワークが重要である.2011年のリビアに対するNATOの空爆に際して,オバマ大統領が最も緊密な同盟国,イギリスとフランス,を「フリー・ライド」(ただ乗り)と批判したことは関係を損なうものだった.
アメリカの防衛予算の75%はNATOに関わる支出であり,NATOは常にアメリカの軍事同盟の中心であった.それゆえ,オバマがこの歴史的な作戦行動で2次的な地位を認めたことが重大な失敗であった.
友好国を公然と非難することは間違いである,とオバマは学んだ.サウジ王家を非難する言及は適当でなかった.彼はアメリカの友人を非難するのではなく,真の敵対勢力,イラン,ヒズボラ,シリア政府,ロシアを非難するべきであった.外交には不文律がある.同盟者と議論するときはドアを閉めて行い,公表するな.同盟者を弱めるようなことはせず,その敵対勢力を利してはならない.
アメリカが今後も栄光を維持するかどうかは指導者にかかっている.オバマはアメリカが何のために行動するかより,行動すべきでないことを強調した.それはアメリカの政策を制限したのだ.
外交に戻るときだ,というオバマの主張は正しい.外交と軍事力の組み合わせは,古いワシントンの台本ではなく,複雑で,危険な世界において,大国が成果を上げ,平和をもたらす最も確実な方法である.
キューバが,ラテンアメリカの市場改革に挑んだ左派政権に加わるとしたら,南北アメリカ大陸の新しい市場統合=社会改革モデルが誕生するかもしれません.
Project
Syndicate MAR 22, 2016
America
Returns to Cuba
JEFFREY D. SACHS and HANNAH SACHS
1928年にCalvin Coolidge大統領が訪問して以来,アメリカ大統領としてオバマは初めてキューバを訪問した.投資家,亡命者,旅行者,研究者,芸術家などがキューバに向かうだろう.
57年前のカストロが指導したキューバ革命はアメリカ人の精神にとって大きな屈辱となった.アメリカの例外主義を信じる指導者たちは,まともな国はすべてアメリカ型のモデルに従うべきだ,と考えていた.外国政府がアメリカのやり方を拒むことは,アメリカの世界的な利益を害するものであり,アメリカの安全保障に対する脅威であるから,報復されて当然だ,と.
ハバナはフロリダから90マイルしか離れておらず,アメリカによるキューバへの干渉は絶え間なかった.1898年には,ついにスペインの支配に反抗するキューバ人を支援し,この島に対する経済的・政治的なヘゲモニーを確立した.
アメリカはグアンタナモに海軍の基地を得て,キューバに対する将来の介入権限をも確保した.悪名高いプラット修正条項である.アメリカ海軍は繰り返しキューバに介入し,アメリカ人は利益の大きな砂糖とタバコのプランテーションを所有したし,カストロが打倒したバティスタ将軍は,アメリカが助けた多くの抑圧的な支配者の1人であった.
カストロは農業改革と国有化を進めたが,それはアメリカの砂糖に関する利害を損ない,貿易規制に至った.キューバからアメリカへの砂糖輸入が制限され,アメリカからの石油や食料の輸出が制限された.カストロがその穴埋めのためにソ連に接近すると,アイゼンハワー大統領はCIAに政権転覆を命じ,1961年,ピッグズ湾事件が起きた.ジョン・F・ケネディ政権は始まって2か月しかたっていない.
その後も,CIAはカストロの暗殺を試みた.フルシチョフ書記長はアメリカの侵攻を阻止するためにキューバに核ミサイルを設置しようとした.世界は核戦争の直前にまで近づいた.
核ミサイルは持ち込まれず,アメリカも侵攻を止めたが,その代わり,アメリカ政府は禁輸措置を強め,国有化された財産の返還を求めて,キューバをソ連側に追いやったのだ.
半世紀に及ぶソ連型経済と,アメリカによる禁輸措置で,キューバの経済は抑圧された.購買力で見た1人当たり所得水準はアメリカのおよそ5分の1である.しかし,識字率や公衆衛生でキューバが達成したものは本当だ.平均寿命はアメリカに等しく,ラテンアメリカ諸国よりはるかに長い.キューバ人医師たちはアフリカの医療に貢献してきた.
国交正常化により,2つのシナリオが考えられる.第1は,悪しき時代への回帰.2国間の経済関係を「正常」にする見返りに,キューバに厳しい選択を強要する.革命で国有化された財産の返還,キューバの土地その他をアメリカ人が買収する権利,国有企業を入札で民営化する,公衆衛生など,進歩的な社会政策の廃止,など.
第2は,アメリカの自制と歴史的な方針転換.キューバにアメリカのモデルを強制することなく,議会は貿易を正常化する.革命後の国有化も認める.国家の資金で行われている国民医療システムを廃止するような圧力はかけず,医療部門をアメリカの民間企業に開放することを強制しない.
これはキューバが市場型の改革を遅らせることを意味しない.キューバは通貨の交換性を回復し,民間所有を拡大し,(慎重かつ透明な形で)企業の民営化を急ぐべきだ.市場型改革と公共投資の組み合わせは,キューバ経済の成長と多様化を促すだろう.同時に,キューバの医療,教育,社会サービスで達成したものを守ることだ.アメリカの野蛮な資本主義ではなく,コスタリカのような社会民主主義を目標にすべきである.(私は25年前にポーランドの改革で同じ可能性を信じていた.)
アメリカの自制が,キューバに近代的で多様化した経済をもたらす時間と自由を与えるなら,それは北の隣人によってではなく,キューバの民衆自身に所有され,運営されるようになるだろう.
FP MARCH
22, 2016
The Big
Lie About the Libyan War
BY MICAH ZENKO
NYT MARCH
23, 2016
Does Obama
Have This Right?
Thomas L. Friedman
オバマのインタビューは,彼が中東の指導者たちを強く嫌悪し,その主要な目標がアメリカの中東におけるパワーの限界を国民に知らせて,信頼できない指導者たちの戦争からアメリカを外すこと(米兵の死者を減らす)であった,と示した.
それでよかったのだろうか? ブラッセルでのテロ攻撃の後でも,そう言えるのか?
もっと新興の民主主義国家,チュニジアやクルド,を支援するべきだ.アメリカは軍事侵攻によらず,新興民主主義勢力を支援することができる.それがオバマの遺産になる.
Project Syndicate MAR 24, 2016
The State of the United States
RICHARD
N. HAASS
FP MARCH 24, 2016
Hotels and Wi-Fi in Cuba Now, Human
Rights, Eventually
BY
WILLIAM M. LEOGRANDE
(後半へ続く)