IPEの果樹園2016

今週のReview

3/21-26

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自由化と国際分業 ・・・世界秩序のセンターはどこか? ・・・オバマ外交 ・・・西側イデオロギーの終わり ・・・シリアのロシア ・・・難民危機とドイツ ・・・サウジと石油 ・・・中国の経済改革 ・・・コロンビアの内戦終結 ・・・トランプ,ベルルスコーニの嘘と笑い ・・・ヨーロッパにおける共通通貨の条件 ・・・全国民のベーシック・インカム ・・・アメリカにおける不平等

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  自由化と国際分業

Project Syndicate MAR 11, 2016

Trade in a Time of Protectionism

RANIL WICKREMESINGHE

中国の台頭やアジアの虎を支持した時代は終わった。スリランカの首相であるWICKREMESINGHEは、世界経済が減速し、保護主義が強まる中で、成長を持続する方法を模索する。

アメリカの大統領候補者争いでも、イギリスやEUの政治論争でも、自国民優先の姿勢と市場の閉鎖に向かう主張が顕著に強まっている。

しかし、アジアにおける成長は開放型の市場によって達成されてきたのであり、スリランカにとって南アジアの自由貿易協定SAARCthe South Asian Association for Regional Cooperation)が強化されることに期待する。気候変動によるリスクにさらされた貧しい農民たちが大部分の、20億人が市場開放に参加し発展するには、新しい協力メカニズムを設置することだ。

FT March 14, 2016

Review: The Smartest Places on Earth, by Antoine van Agtmaeland and Fred Bakker

Shawn Donnan

アメリカの赤さび地帯は経済衰退の象徴だった。かつて工業中心地として繁栄した地帯が、自由貿易と中国からの絶え間ない値下げ競争で、荒野のディストピアに変わったのだ。しかし、Antoine van Agtmael and Fred Bakkerは異なる意見を示す。それは再生の物語であり、「グローバルな革新の熱源」(“the emerging hotspots of global innovation”)が誕生した、と見るのだ。

脱工業化時代の新しい「ブレイン・ベルト」“brainbelts”となった都市とは、例えば、タイや産業が中国との競争に敗れた後、世界の指導的なポリマー生産拠点となったAkronであり、半導体生産の先端開発からナノテク技術にも進出したAlbanyであり、1990年代にPhilipsの大量解雇を乗り超えて半導体産業のハブとしてよみがえったEindhovenである。

不況は、才能ある人々を失業者のプールにするが、危機に直面した人々はそれを機会に変えた。大学が革新のハブとなり、地方の指導者たちが才能ある人々を新しいビジネス・ネットワークに結び付けた。

しかし、こうした「ブレイン・ベルト」の登場にも、その過程で勝者と敗者が生まれ、グローバリゼーションや技術変化によって顕著になった政治的雰囲気を強めるだろう。

NYT MARCH 14, 2016

The Era of Free Trade Might Be Over. That’s a Good Thing.

By JARED BERNSTEIN

NYT MARCH 14, 2016

Globalization and Growth

Paul Krugman

Bloomberg MAR 14, 2016

Free Trade Doesn't Have to Devastate Workers

By Justin Fox

NYT MARCH 15, 2016

On Trade, Angry Voters Have a Point

Eduardo Porter

アメリカの労働者たちがこの選挙で示した怒りを観れば、貿易自由化の利益がそのコストを正当化するわけではない、ということがわかる。

3人のエコノミストたちDavid Autor at the Massachusetts Institute of Technology, David Dorn at the University of Zurich and Gordon Hanson at the University of California, San Diegoが、貿易による衰退が速やかにグローバルな成長部門によって吸収される、という自由化の前提を疑うべき根拠を示した。

中国製品の市場拡大によって衰退した地域の調整過程は、決して起きなかった、と彼らは結論したのだ。地域の賃金水準は低く、失業者は減らない。アメリカ全体でも、その雇用減少を補う雇用増加は起きていない。MIT2人のエコノミストDaron Acemoglu and Brendan Priceによれば、1999年から2011年までに、中国製品の輸入増加がアメリカの雇用を240万人失わせた。

世界貿易の利益は疑いない。中国の貧困人口は減少し、その安価な労働力がAppleの製品を支え、アメリカの消費者を豊かにした。貿易がアメリカ経済を3%増大し、分配にも大きな影響を与えたが、政府がそれを緩和する措置を取ってこなかったのも確かである。

アメリカ政府は、他国が中国の台頭にどのように対応したのか、その政策から学ぶべきだ。ドイツは、中国からの輸入が増えただけでなく、ソ連圏が崩壊してから東欧諸国からの輸入も増えた。しかし、ドイツの貿易収支は均衡を保った。ドイツの製造業がこうした諸国への輸出を増やし、輸入によって失われた雇用を相殺したからだ。ドイツの高度熟練労働者は容易に中国の安価な労働力に代替できなかった、とRobert Gordonは考える。またドイツの労働組合は強く、雇用を守るために闘った。

アメリカの労働者が苦しむ結果になったことには、政府も責任を負っている。Stephen S. Cohen and J. Bradford DeLongは、中国からの輸入増加にアメリカ議会が人民元の切り上げを求めたことは間違いだった、と考える。むしろ、かつて繊維からジャンボジェットへ、玩具から半導体へ投資を移したように、将来の成長産業に積極的な関与を示すべきだった。

それに代わって、政府は住宅や金融部門の富を増やし、ウォール街が1930年代以来の最悪の恐慌に導くのを許したのだ。銀行・金融部門の転換は何の価値も生まなかった。

今後のアメリカ政府が選択する政策について、トランプやサンダースが主張するような、通商条約の破棄は破滅的であるし、改定交渉は容易でない。しかし、将来の貿易自由化はもっと慎重に、長い時間をかけて行うだろう。自由化によるすべてのコストを労働者に負わすことは、強固なセーフティー・ネットがなければ、続けられない。

FP MARCH 15, 2016

These 25 Companies Are More Powerful Than Many Countries

BY PARAG KHANNA

メタ国家企業群の時代the age of metanationalsへようこそ!

たとえばアクセンチュアAccentureは,アメリカン・ドリームを超えて,55ヵ国, 200以上の都市で373000人を雇用する.税率の低い,労働コストの安い,煩わしい規制のない,土地において利潤を最大化する.多くのアメリカ企業,ExxonMobil, Unilever, BlackRock, HSBC, DHL, Visaがそうだ.そして,アメリカの大企業,GE, IBM, Microsoftもそうだ.

アメリカを超えるのはどの国か,と心配するより,メタ国家企業が次のルールを決めるかもしれない.彼らが求めるルールだけが生き残り,彼らが見捨てる国はルールを変えるしかない.Appleはすでに世界のすべての国の3分の2よりも多くの資金を動かしている.

さらに国家の影響がおよばないバーチャル領域へ,企業は活動を移転するのだろうか? もはやシリコン・バレーはウォール街やアメリカ政府よりも強力である,とBalaji Srinivasanは考える.それはハイテク技術者のユートピアではない.クラウドに依拠する企業活動のルールが地上の諸国家を支配するのは不可避であろう.

FP MARCH 15, 2016

Can There Be War Without Soldiers?

BY ROSA BROOKS

NYT MARCH 16, 2016

Let Trump Make Our Trans-Pacific Trade Deal

Thomas L. Friedman

NYT MARCH 16, 2016

What Trump and Sanders Get Wrong About Free Trade

By MIRIAM SAPIRO

Bloomberg MAR 16, 2016

There's Trade, and Then There's Good Trade

By Noah Smith

NYT MARCH 17, 2016

Are Trade Agreements Good for Americans?

ROBERT E. SCOTT and JEFFREY J. SCHOTT

自由貿易協定はアメリカ人にとって良いことか?

YES: 貿易が果たす役割は,1960年代にはGDP10%以下であったが,今では30%近い.輸出市場は重要になっているし,輸入によってコストを下げ,消費を豊かにしている.アメリカ人の生活水準は,貿易をすることで高まっている.貿易赤字があっても,アメリカは景気がよいことで,昨年,雇用は260万院増え,失業率は4.9%と,完全雇用に近い.

貿易によって職が失われる分野もあるが,バランスを取れば,より多くの職が,しかも高度な熟練で高賃金の職場が増えている.雇用や失われるのは,貿易だけでなく,景気変動や技術変化,消費者の嗜好の変化によるものだ.もっと人的・物的なインフラへの投資を増やし,失業者に対する支援(失業手当,職業訓練,転職支援)が必要である.

NO: 貿易赤字は製造業に集中しており,工場労働者の待遇はよかった.この20年間で,アメリカの雇用は,メキシコや中国からの輸入が増加したことによって減少したのだ.貿易赤字は大学を卒業していない労働者の賃金を下げ,失業を増やした.NAFTATPPのような貿易・投資協定は,多国籍企業や大投資家の利益になる条件を示している.

過去20年の趨勢を見れば,メキシコや中国への貿易赤字が増えて,その間に雇用が失われている.中国など,20か国(日本,マレーシアなどのTPP諸国を含めて)は,通貨価値を捜査してアメリカに輸出している.また投資に関する条件の合意は,オフショア生産を促進した.1998年から2013年の間に,8万以上の製造工場が移転された.

NYT MARCH 17, 2016

What Donald Trump Gets Pretty Much Right, and Completely Wrong, About China

Neil Irwin

FT March 18, 2016

US presidential candidates’ focus on trade deals is misleading


l  世界秩序のセンターはどこか?

Project Syndicate MAR 11, 2016

Confronting the Fiscal Bogeyman

BARRY EICHENGREEN

世界経済が勢いを失う中で、G20はありきたりの宣言で終わった。構造改革を進め、近隣窮乏化を避ける、と。

再び金融政策だけが景気回復に向けた刺激策を担う。その動機は健全だ。誰かが何かをしなければならず、中央銀行だけがその手段を利用できる。しかし、問題は金融政策の効果も尽きつつあることだ。マイナス金利は銀行から利潤を奪い、そのコストを融資に転嫁することができない。

解決策は単純なものだ。政府による支出の増大である。研究開発や教育、インフラのために、政府が借り入れて支出する。生産的な公共投資は民間投資の利回りも改善する。

しかし、財政余力のあるアメリカやドイツで、財政支出を使って刺激策を支持する意見はない。第2次世界大戦後の西ドイツ経済政策を指導したオルド自由主義 ordoliberalism” はヒトラーやスターリンと同じくらい過度の支出を嫌った。その姿勢は、個人の責任と望ましい総需要の水準とを区別せず、ドイツ人にマクロ経済学を受け入れにくくした。

ドイツ人口の高齢化、1990年の東西ドイツ再統一とその後の財政赤字(それが構造的問題を緩和したより、悪化させた、と考えている)が、多くのドイツ人にとって1920年代とハイパーインフレーションの歴史(学校で教えられている)に重なり、政府による支出増を受け入れがたいものにしている。

アメリカには、連邦政府への権力集中、財政赤字の特権(連邦政府にだけある)、を嫌う2世紀に及ぶ感覚がある。独立から南北戦争まで、連邦政府が奴隷制を廃止するという不安から、特に南部ではそうであった。20世紀半ばの市民権運動でも、連邦政府の権力行使に反対したのは南部の政治エリートであった。リンドン・ジョンソン大統領の「偉大な社会」は、地方政府から人種差別するプログラムを奪うものであった。

政府は契約と競争だけを強制すればよい。景気悪化を抑えるマクロ政策を含めて、政府支出には反対する。こうしてドイツのショウブレWolfgang Schäubleと南部のクルーズTed Cruzとが重なるのだ。

現在の景気停滞を打破するには、歴史に根差すイデオロギー的、政治的な偏見を克服しなければならない。今がその時だ。

FT March 14, 2016

Troubling warnings for the US from the 1930s

Edward Luce

ヒトラー,ミュンヘン,大恐慌,ナチ,1929年の大暴落,そういった話は聞き飽きた.現代の脅威はそれではない.

西側の民主主義は厳しいストレステストを受けている.大西洋の両側で,人々は政府機関への信頼を失った.隣人への信頼も失いつつある.協力は弱まり,国境の開放が維持できるかも疑わしい.われわれは中心ではなく,それに値しないのかもしれない.

2008年の金融危機まで支配的であった楽観が,悲観主義に変わってから,今までずっとひどくなっている.第2に,分配に関する不公平感が広がっている.エリートたちは自分のポケットを膨らませることしか考えていない.第3に,文化的な退廃,ニヒリズムが広がっている.

最後に,グローバルな秩序の衰退である.先週,オバマはthe Atlantic誌のインタビューで,アメリカの同盟諸国の「フリー・ライド」,そして,エリートたちの社会に対する「フリー・ライド」を問題にした.それはアメリカ国民の世論をかなり良く反映している.1930年代のイギリスと違って,アメリカはまだ世界を指導しているが,それを好まなくなっている.

クリントンとトランプの大統領選挙で彼らが何を主張するのか,ロシアも中国も注目しているはずだ.


l  民主主義

Project Syndicate MAR 11, 2016

When Democracy Fails the People

KATHARINA PISTOR


l  オバマ外交

NYT MARCH 11, 2016

Dogs, Cats and Leadership

David Brooks

FP MARCH 11, 2016

Confessions of Barack Obama, Confidence Man

BY DANIELLE PLETKA

Bloomberg MAR 11, 2016

The Obama-Trump Doctrine

By Eli Lake

FT March 17, 2016

Fatalism taints the Obama doctrine

Philip Stephens


l  北朝鮮制裁

FP MARCH 11, 2016

America Is in Denial About North Korea’s Nukes

BY JEFFREY LEWIS

FP MARCH 17, 2016

Beijing Blasts New U.S. Sanctions on North Korea

BY DAVID FRANCIS


l  西側イデオロギーの終わり

FP MARCH 11, 2016

Why We’re Not Looking Up to the West Anymore

BY DALIBOR ROHAC

NYT MARCH 13, 2016

Walesa, Gorbachev and Freedom's End

Ivan Krastev Ivan Krastev

FP MARCH 14, 2014

Dropping the Political F-Bomb

BY CHRISTIAN CARYL


l  フランスの原発

FT March 12, 2016

EDF: At breaking point

Michael Stothard


l  シリアのロシア

FT March 12, 2016

Uncomfortable truths for David Cameron over Libya

FT March 14, 2014

Putin’s Syria ‘success’ has come at an amazing cost

Ivo Daalder

プーチン大統領のシリア軍事介入における「任務完了」宣言は本当だろうか? イラクでブッシュ大統領が示した失敗例に勝るものだろうか?

プーチンは国際的な和平プロセスが進むことを確認してから、宣言によって、軍事介入の主役から、政治・外交的解決の主役にもなろうとした。しかし、その「成功」には膨大なコストがともなっている。アサドは樽爆弾から化学兵器まで、220万人が内外で難民となるような住民への虐殺行為を推進した。ロシア軍もそうだ。

アサド政権が残れば、ロシア軍の軍事拠点も維持できるだろう。しかしロシア軍が去るシリアには、深い政治的・領土的な亀裂が残されている。アサドが権力に残るとしても、それは反体制派との和解を意味していない。むしろ、ロシア軍の圧力が失われれば、紛争は再発し、激化するだろう。

基本的な対立はそのまま残っている。スンニ派、クルド人、イスラム過激派の武装勢力はシリアを分断している。

ロシアは国際外交の舞台に復帰するとしても、ウクライナに関する制裁は続いている。軍事介入で達成された成果は、長期的なものではないだろう。

FP MARCH 14, 2016

Russian Withdrawal Could Set Stage for Assad’s Exit

BY PAUL MCLEARY, JOHN HUDSON

Bloomberg MAR 14, 2016

Don't Trust Putin's Syria Pullback

By Leonid Bershidsky

プーチンの撤退宣言は、西側に対して、ロシアが建設的な役割を果たすことをアピールするためのものである。それには隠された行動計画がある。

ロシア軍はシリアのすべての重要都市を掌握したわけではない。「根本的な進展」というのは、誇張である。「この撤退が、内戦にかかわるすべての勢力の信頼を高めるように」と主張したが、こうした武力行使の低下は、ウクライナにおける第1次ミンスク停戦合意でも見られたことだ。

ロシアは軍事顧問や武器を新ロシア勢力に送ったことを公式に認めなかった。それでも交渉のために適切な姿勢をアピールした。その後、戦闘はすぐに再発し、ウクライナ政府軍は重大な敗退を強いられた。第2次ミンスク合意の後も、OSCEはロシアからウクライナの反政府勢力に武器が供給されるのを止められなかった。

シリアでも、プーチンは交渉に応じるが、彼の好む条件だけである。人権監視団は現地に入れない。ロシア軍の撤退は、そもそも支援に何の透明性もないので、確かめることができない。ウクライナでそうであるように、プーチンを支持する勢力だけが地方政府や軍を握る。

The Guardian, Tuesday 15 March 2016

Putin’s high-stakes gambit in Syria has paid off – for Moscow

Jonathan Steele

The Guardian, Tuesday 15 March 2016

The Guardian view on Russia’s Syria U-turn: no kind of victory

Editorial

FT March 15, 2016

Vladimir Putin uses the Ukraine playbook in Syria

James Blitz

NYT MARCH 15, 2016

Putin’s Syria Surprise

NYT MARCH 15, 2016

What Quagmire? Even in Withdrawal, Russia Stays a Step Ahead

By MARK LANDLER

FP MARCH 15, 2016

He Came, He Saw, He Withdrew From Syria

BY LUCIAN KIM

Bloomberg MAR 15, 2016

Russia's Withdrawal Is Islamic State's Win

By Noah Feldman

FT March 16, 2016

Mercurial Putin keeps the west guessing in Syria

David Gardner

Project Syndicate MAR 16, 2016

Naming Names in Syria

ARYEH NEIER

FT March 17, 2016

Vladimir Putin’s hollow victory in the Syrian killing fields


l  難民危機とドイツ

FT MARCH 12, 2016

How has the EU mismanaged the migrant crisis?

難民危機に果たしたEUの役割は何か? それに責任はあるか? メルケルや各国の背に金はどうか? 政治家にとって、何を言ったか、ではなく、何を言ったと人々が思うか、が重要だ。メルケルは大規模な難民を歓迎したわけではないが、難民たちはメルケルの言葉をそう聞いた。難民が急増したことで、ドイツの文化やEU諸国のメルケルに対する反応は変わった。

The Guardian, Monday 14 March 2016

Germany’s election result is a warning to Merkel – not a far-right triumph

Mary Dejevsky

SPIEGEL ONLINE 03/14/2016

Germany's Election Hangover

The Right Wing Takes Flight

A Commentary by Stefan Kuzmany

FT March 15, 2016

German politics enters an age of fragmentation

FT March 15, 2016

The unravelling of Angela Merkel’s power

Gideon Rachman

メルケルの移民に対する「門戸開放」政策は、ロシアからアメリカまで、ナショナリストたちにとってリベラルなエリートが示す失敗のシンボルになっている。トランプはメルケルを、ドイツに破滅をもたらした、と非難した。

ドイツの地方選挙結果は、メルケルに反対する兆候が見られた、と世界中が注目した。しかし、欧米の水準で観れば、100万人の難民を1年間で受け入れたドイツの反応は非常に抑制されている。(イギリスの政治家に、メルケルのような難民政策を取った場合、イギリスはどれくらいの期間続けられるか尋ねた。彼の答えは、「24時間ももたない。」)

しかし、メルケルの政治的立場は大きく弱められた。その権力のピークは過ぎたのだ。先週、難民流入を止めるため、メルケルはEUとトルコの交渉による取引を進めた。同時に、地方選挙で与党が敗北した。

メルケルがEUに難民受け入れ政策を合意させることに失敗したことで、ドイツ国内でも彼女への支持は失われた。ドイツの有権者は彼女に反対し、そのことがEUにおけるドイツ首相の権威を損なった。EUとトルコの取引について、オランド大統領でさえも疑念を表明した。EUサミットがこの合意を承認するのはむつかしい。

しかし、メルケルを批判する者には代替策がない。たとえ彼らの主張するような、厳しい境界線の管理と難民受け入れ数の上限を低く設定しても、深刻な問題が生じるだろう。移動ルートが変わり、難民への扱いは悪化し、すでに弱体なギリシャの体制が混乱を深める。

メルケルの犯した失敗は、ユーロ危機と比較することでよくわかる。ユーロ危機に対して、メルケルはドイツ国民の関心や不安を熟慮し、モラル・ハザードや意図しない結果が起きることを理解しつつ、フィンランドからギリシャまで、EU諸国の中で中道の立場を選択した。それはドイツの金融力と相まって、メルケルをヨーロッパの指導者としたのだ。

難民危機は違う。メルケルはドイツ国民の忍耐力について賭けに出た。ヨーロッパにおける中道の立場を捨て、最も急進的な姿勢を取った。特に、EUトルコ間の取り決めは、信頼を欠く飛躍である。エルドアン大統領のような移り気な専制体質の指導者を、EUは信頼すべきか? EUの多くの国が反対しているのに、EUがトルコ人にビザなしの入国を認め、トルコのEU加盟を進めると、トルコ人が信用するだろうか?

この合意が失敗に終われば、メルケルの権威はさらに失われる。

NYT MARCH 15, 2016

Angela Merkel, Down but not Out

Anna Sauerbrey

FP MARCH 16, 2016

Europe Doesn’t Owe Migrants Fairness

BY JAMES TRAUB

The Guardian, Thursday 17 March 2016

Can Angela Merkel prevent Europe being eaten away at its core?

Timothy Garton Ash

ドイツの難民対策は、決定的に、2人の独裁者、トルコのエルドアンとロシアのプーチンに頼ることになった。外交におけるリアリズムは、ヨーロッパの基本的価値を否定する。

FT March 17, 2016

A refugee deal hinges on freedom of travel for Turks

Sinan Ulgen


l  サウジと石油

NYT MARCH 12, 2016

How Saudi Arabia Turned Its Greatest Weapon on Itself

By ANDREW SCOTT COOPER

FP MARCH 14, 2014

Saudi Arabia’s Destructive Oil Freeze

BY ROBERT MOSBACHER, JR.


l  中国の経済改革

FP MARCH 12, 2016

Can China Avoid the Middle Income Trap?

BY DAMIEN MA

中国の1人当たりGDPは、今年、15000ドルに達するだろう。それはBarry Eichengreenが推定した「中所得の罠」の水準にほぼ等しい。

習近平が目標とした経済規模を倍増するためには、新しい5か年計画の成長目標が必要だった。それには「中所得の罠」を回避する作業を求められる。すなわち、1.政府による融資を減らし、資本を市場で正しく評価・配分する。2.技術革新と付加価値の高い市場を成長の新しいエンジンとする。そのために企業家精神を尊重し、政府による市場介入を抑える。3.急速な高齢化に対するあらゆる手段を講じる。

Bloomberg MAR 14, 2016

Why Is Change So Hard for China?

By Christopher Balding

経済改革というのは,ダイエットを誓う新年の抱負と同じだ.簡単に宣伝され,簡単に忘れられる.

なお,中国人は西側と違うと思っているだろう.ほとんど一夜にして新しい産業を興し,2015年だけで30万人の官僚たちを汚職で処罰した,という国であれば.改革を公約した国家が実現できないわけはない?

それは認識の問題でもある.中国のほんとうの成長率はわからない.いつでも目標は達成している.しかし,中国の官僚制度には現状を維持する強い偏りがあるだろう.当局は,企業の倒産を好まず,新興部門を育成する.その損失は地方政府の債券で融資されるから,ゾンビ企業が増えるのだ.

経済を動かしているのは,中央政府ではなく,地方政府である.それは単に距離の問題だけでなく,政府支出の85%を地方政府が行うからだ.改革には強い文化的な障壁がある.官僚制には失敗や縮小を奨励する仕組みがない.政府は,1.奨励メカニズムを導入し,2.重要問題に向けた改革派を育成し,3.市場型のリスク・テイキングを促進する.

Bloomberg MAR 14, 2016

The Real Reason to Worry About China

By Narayana Kocherlakota

Project Syndicate MAR 16, 2016

China’s High-Income Future

ERIK BERGLÖF

Project Syndicate MAR 16, 2016

Maintaining the Emerging-Economy Growth Engine

LEE JONG-WHA

FP MARCH 16, 2016

Turns Out Economic Growth Doesn’t Mean Destroying the Planet

BY KEITH JOHNSON

FP MARCH 17, 2016

Why Xi Jinping’s Media Controls Are ‘Absolutely Unyielding’

BY DAVID SCHLESINGER, ANNE HENOCHOWICZ , YAQIU WANG

(China Daily) 2016-03-17

Why China needs to champion free trade

By Sridhar Kanthadai


後半に続く)