IPEの果樹園2015
今週のReview
8/10-15
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ヨーロッパの移民・難民危機 ・・・イランからイスラエルへ ・・・資本主義と所得格差 ・・・ギリシャ危機後のユーロ圏 ・・・イランの核合意 ・・・広島・長崎原爆投下70周年
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg,
FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York
Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist
(London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l ヨーロッパの移民・難民危機
The
Guardian, Friday 31 July 2015
Europe
could solve the migrant crisis – if it wanted
Daniel Trilling
真っ赤に焼けた鉄の棒を握って指紋を焼く.そうすればEUの指紋データで照合できない.それはヨーロッパを目指す難民たちが行う絶望的な方法の一つである.その後,住む場所を求めて,彼らは数年をこの大陸で移動する.
こうした話は,同情されることもあるが,嫌悪されることもある.こうした人々の生活を,イギリス人の多くは想像できない.彼らについて読むと,リベラルな移民政策を支持する気持ちになる一方で,彼らを「ゴキブリ」と呼び,「人の群れ」と,キャメロン首相のように,言いたくなる.
われわれの反応の違いは,彼らを保護が必要な難民と見るか,良い条件を求めてシステムを利用する者たちと見るか,それによって変わって来る.残念だが,真実はその両方だ.私があったスーダン人は,世界のメディアが10年前に注目し,その後は忘れてしまったダルフールの虐殺から逃れた難民だった.彼らがカレーに就いたとき,すでに何年もヨーロッパ各国をさまよった後だった.
難民たちは,スーダンだけでなく,シリア,エリトリア,アフガニスタン,など,多くの国から非合法な形でやって来る.難民の資格を与える国としては,人口比で見て,イギリスはヨーロッパ諸国の中位でしかない.名目としてはヨーロッパが共通の難民システムを実施しているように見えるが,その現実は宝くじと同じだ.快適な住宅や統合化のための訓練を提供してくれる国もあれば,テント村や拘留地,街頭で飢えたまま放置される国もある.
辺境国における新しい移民・難民の増加に対して,他のEU諸国は分担しようとしない.ヨーロッパは境界線をなくして移動を促したが,それは資本や市民にとって良かったのか? あたかも有毒廃棄物を論じているように,このまま辺境の軍事化と難民の割当に関して紛糾を続けるのか,どこであれ保護を求める難民に基本的な生活を保障するような,公正な難民システムを築く勇気と政治的指導力を発揮するのか? 不平等に関する政治の姿勢,自国の有権者間で公民権付与に関する矛盾した感情,それらが反移民政策を広め,難民をレイシズムや暴力の対象にしている.
解決策は手が届くところにある.さまざまなNGOが難民たちを救出している.われわれの社会には十分な資源があるのだから.
l イランからイスラエルへ
The
Guardian, Friday 31 July 2015
Iran has
signed a historic nuclear deal – now it’s Israel’s turn
Javad Zarif
ウィーンにおける核合意が正しいとすれば,中東地域から大量破壊兵器を完全になくすことがその目標でなければならない.P5+1は,イスラエルの核兵器を廃棄するべきだ.
核拡散防止体制は,連戦終結後,核兵器を保有する諸国に対して,もっと明確に要求するべきだ.
l 中国の株式市場
FT July
31, 2015
Echoes of
1989 are bad news not just for China’s markets but the world
Jonathan Fenby
株価暴落は,一層の改革を掲げた習体制の選択にかかっている.それは今も,鄧小平が1989年に示した選択と同じものだ.すなわち,市場自由化による成長を共産党の支配に対する政治的正当性に結びつける.自由化によるインフレと汚職とが顕著になって,体制への批判が高まったとき,鄧小平は天安門の民衆に戦車を送って鎮圧させた.
株価暴落後の共産党の選択は,世界第2の経済がこれからどうなるか,世界にも重要な意味を持つ,中国経済の進路を決める.
NYT JULY
31, 2015
China’s
Naked Emperors
Paul Krugman
好景気は政治家を自信過剰にする.バブルによる好況を得て,その破裂前に任期を終えたジェブ・ブッシュも,1980年代の日本の官僚たちも,そうだった.
中国経済は改革によって労働力の余剰を吸収し,高い成長率を達成してきた.その条件が変化し,成長率が低下していくことを知りながら,中国政府の改革は不十分だ.社会保障は未整備で,人々は個人の貯蓄に多くを頼り,それゆえ消費が伸びない.政府は,もっぱら政治的な理由で,高い成長率を維持しようとし,信用の膨張や株式市場のバブルを奨励してきた.
バブルが破裂しても,政府はそれを介入によって阻止することができると考えている.それは一時的に成功するとしても,共産党に対する評価も含めて,急速に悪化するだろう.
l 資本主義と所得格差
Project
Syndicate JUL 31, 2015
The
Profit-Sharing Economy
LAURA TYSON
この35年間,アメリカの実質賃金は生産性の上昇と同じペースで増えなかった.その利益の多くは労働者の頂点だけ,特に,CEOの高報酬と株主や他の資本所有者に与えられた.実際,最下位10%の実質賃金は約6%減少し,中位の労働者は5-6%という微増,それに対してトップ1%は150%以上も増えた.
1つの解決策は,広い範囲で利潤をシェアすることだ.労働者に職業訓練や就労の機会を与えることと並行して進めるのが良い.そのようなプログラムがあれば,被雇用者は企業への関与を高め,忠誠心を持ち,転職が減って,生産性や利潤率も改善する.
利潤シェアリングは労働者の利益にもなる.こうした制度を持つ企業は,持たない企業よりも賃金が高い.では,なぜもっと採用されないのか?
第1に,既に利潤から多くの報酬を得ている経営陣が反対する.第2に,労働者たちも,確実な賃金が削られて,不安定な利潤の一部を与えられるだけではないか,と不安になる.第3に,「労働者会議」が設立されていない.そのやり方を知らない.団体交渉が重要な他の先進諸国に比べて,アメリカには少ない.第4に,企業文化を変えなければならない.
利潤シェアリングの利益は,不確実で,即座に効果を発揮せず,採用する動機が起業重役にはない.現行のアメリカ税制では,「パフォーマンス連動型」給与について,企業に税控除を認めている.しかし,それは利潤シェアリングだけではない.
ヒラリー・クリントンの提案は,こうした点を考慮して,利潤シェアリングを普及させ,それによって労働者の所得を増やすだろう.
NYT JULY
31, 2015
Two Cheers
for Capitalism
David Brooks
資本主義の本質に関する論争が始まった.
新しい論争では,市場とセーフティーネットを議論するのではなく,システムの根本的条件を変えようとする.そのための政策や介入手段を支持している.彼らは拡大する所得格差に対して,市場だけでは十分な答にならない,と考えるからだ.
グローバルな資本主義は,中国やナイジェリアが示すように,多くの人々を貧困から解放した.また,アメリカの流動的な資本主義は,移民を吸収し続け,革新のダイナミズムを発揮している.
しかし,最近のNGOやジャーナリストは,例えば,3つの点を攻撃した.1.富裕層は,政治的・金融的なパワーを行使して政策を変える.2.リスクや浮動性を労働者や弱者に負担させる.3.資本の所有者たちは,ますますコミュニティーの利害から乖離している.
ヒラリー・クリントンのように,アメリカ大統領候補たちも論叢に参加している.
FT August
5, 2015
Shortsighted
complaints about short-term capitalism
Sebastian Mallaby
資本主義や株式公開企業の「短期主義」を罰するべきか?
株主は長期の視点で企業を評価し,短期で売買している.短期の売買を禁止することにはコストがともなう.個人投資家は,調査能力や情報収集にコストをかけることができないから4半期の業績に注目する.株式公開企業は,それが現れて以来,活発な技術革新を助けてきた.今でも,企業には株式を公開しないという選択肢がある.
必要なのは,外科手術ではなく,心理療法である.
l ギリシャ危機後のユーロ圏
Project
Syndicate JUL 31, 2015
Can the
Euro Be Repaired?
JEAN PISANI-FERRY
ドイツのショイブレ財務大臣がギリシャのユーロ圏離脱を検討したことは,通貨同盟の規律から逃れる国は許さない姿勢を示すものだ.そして,ユーロの原則やガバナンス,その存在理由が論争になった.
市民たちは,なぜ通貨を共有するのか,どんな意味があり,将来に向けてどんな合意ができるのか,疑問を感じている.
国家と同じように,通貨もその誕生についての神話が重要だ.通常は,ユーロとはドイツが東西再統一をフランスに認めさせるため支払った代価である,と説明される.しかし,ドイツ再統一は1980年代の長期に及ぶジレンマを解決するプロジェクトにとって最後の衝撃であった.ヨーロッパの諸政府は,単一市場を破壊する為替レートの変動を強く嫌っていたが,同時に,ドイツの支配する金融体制が永久に続くことも歓迎しなかった.ドイツ的な原則に基づく真にヨーロッパの通貨を持つことが最善の道に見えたのだ.
ふり返ってみれば,ドイツ再統一は祝福ではなく呪詛であった.1999年に為替レートが固定されたとき,ドイツにとっては過大評価で,経済を不況にした.他方,フランスにとっては過小評価で,好況が続いた.その後の10年間で,ドイツは復活し,他の諸侯で低金利による信用拡大が生じたため,不均衡は緩やかに増大した.2008年の世界金融危機がぼっ発したとき,嵐の条件はそろっていた.
誰も,事実に反する過程について,確実なことは言えない.ユーロなしに,ヨーロッパはどうなったのか? 固定為替レート制が維持できたか? 貿易障壁が再現したか? 不動産バブルは生じたか? ガバナンスの改革は進んだか?
しかし,少なくとも過去15年間の経済成果は失望するものでしかなかった.ユーロ圏の政策は,これに責任がある.
ヨーロッパの共通通貨が維持されるには未来が重要だ.ユーロを解体するコストが大き過ぎて,解体できない,というのは答にならない.離婚するコストを心配して結婚を続ける夫婦のようなものだ.
共通通貨は3つの利益をもたらすはずであった.
1.経済統合を促し,長期の成長をもたらす.しかし,ユーロ圏内の貿易や投資はわずかに増大したが,成長はむしろ低下している.それは各国の政府が残された政治権力に固執したからだ.政治的な論理により,巨大なユーロ圏市場が生かされていない.
2.ユーロは主要な国際通貨になる.これはおおむね実現し,ヨーロッパはグローバルな経済秩序に発言力を維持することができた.
3.経済政策の質を高める.各国の経済政策より,ヨーロッパ規模の経済政策は効果的であるはずだった.このリトマス試験紙は2008年の世界金融危機だ.財政的にも,金融的にも,危機後のユーロ圏はアメリカやイギリスより悪かった.
それゆえ,ユーロ圏には政策システムの改革が必要だ.かつてリチャード・クーパーは,世界伝染病に関する国際協力を妨げた理由として,異なった伝染モデルを指摘した.各国は協力を求めたが,その国境を超える伝染メカニズムについて理解が異なったために,計画に合意できなかった.ユーロ圏もそうだ.
幸い,ESMや銀行同盟が合意されたように,解決は可能である.ガバナンスの制度は重要なのだ.しかし,改革には時間がかかり,危機の圧力のもとでしか動かない.通貨同盟が繁栄のエンジンになるには,ガバナンスや政治が変わらなければならない.
加盟諸国が繰り返し論争し,改革がとん挫するなら,市民は忍耐を失い,市場は信頼を失う.何が必要不可欠で,何が受け入れがたいのか? 何を放棄することで,何を得るのか?
FP JULY
31, 2015
The Last
Thing the Eurozone Needs Is an Ever Closer Union
BY PHILIPPE LEGRAIN
ユーロ圏の財政統合,ヨーロッパ政府を求めるフランス,オランド大統領は間違っている.ドイツに支配されたユーロ圏のガバナンスが間違っているのに,一層の財政・政治統合を進めることが答にはならない.
ユーロ圏のルールを決めるのはドイツである.ドイツはかつてのようにフランスとの共同支配を目指していない.オランダやスロヴァキアのような仲間を同盟として,単独支配を避けたドイツ帝国を求めている.ドイツの好む財政規律重視の市場経済原理は,ケインズ主義的なフランスなどの伝統において機能しない.
和解不可能な政策思想である以上,むしろ分離することが望ましい.ESMのような恒久的財政救済制度を設けて,ドイツがユーロ圏全体の公的債務を管理するより,マーストリヒト条約の救済禁止に戻る方が良い.そして,破綻した政府の債券を保有する民間銀行も救済しない.銀行はその国に応じて,高い金利を要求するだろう.各国政府は異なった政策を追求し,ECBは支払能力はあるが短期的な流動性危機に陥った国に対して,最後の貸し手として明確な行動を約束する.
フランスの唱えるヨーロッパ政府は白昼夢でしかなく,ユーロ圏内のドイツ支配を解体することが望ましい.
FT August
5, 2015
GDP bonds
are answer to Greek debt problem
Charles Goodhart
このままではギリシャがその債務を支払えないことは明らかだ.IMFもそう考えている.
問題は,どうやってギリシャの債務負担を軽減し,しかも,アイルランドのように,世界金融危機で大きな債務を負ったユーロ圏内の他の諸国にとって公平な扱いにするか,だ.また,ギリシャよりも貧しいユーロ圏内の債権諸国にとっても公平であるべきだ.
1つ方法がある,と思う.ギリシャ債務のほとんどを実質GDPに連動する債券に組み替えることだ.1人当たり実質GDPが以前のピークを超えない(成長しない)限り,ギリシャは返済しない.同様に,以前のピークを超える限り,ギリシャは高い返済率を守る.満期も,たとえば40年と,長くなるが,明確に固定しておく.そうでなければ,成長する国は過重な負担になるからだ.
この転換にはいくつかの目的がある.1.債権諸国は,ギリシャが成長する場合,その場合にだけ返済される.それゆえ,ギリシャに緊縮策を強いるより,むしろ成長策を求めるようになる.2.利子・配当の支払いが景気循環に対して逆の方向に大きく変化する.3.実質GDP連動債券に転換する,という同じ選択肢を,アイルランド,キプロス,ポルトガルのような他国にも利用できる.そのような支援融資を受けていない,イタリアのような債務国も,債権者との交渉によって,この選択肢を採用できる.
実質GDP連動債券は,債務ではなくイクイティ(株式,国家資本)であり,債務を累積した現在の世界経済で,国家がイクイティ・ファイナンスに転換する必要があるのは明らかだ.そのために重要な条件は,企業でも国家でも,どうやってデータに信用を得るか,投資家から信頼を得ることである.実質GDP連動債券を発行するEU諸国は,その国のデータとしてだけでなく,Eurostatがデータを確認しなければならない.
実質GDP連動債券は,以前からジョン・ウィリアムソンが強く支持していた.しかし,統計の問題と,新しい金融手段を導入するコストが障害となって,採用されなかった.ユーロ危機の中からギリシャの問題を解決するために,これを導入することには大きな意味がある.
l イランの核合意
FP AUGUST
3, 2015
Why
America Will Never Hit Reset With Iran
BY STEPHEN M. WALT
オバマ政権によるイランとの核合意は成立するだろう.それを阻止する議会の法案は大統領の拒否権によって敗北する.しかも,この合意は成功するだろう.すなわち,イランを今後10年間,そして,その後も永久に,核武装しないままの状態を維持するだろう.なぜなら合意には,イランの利益が盛り込まれているからだ.
軍事的な矯正でない限り,国際合意には双方の利益がなければならない.
ただし,イスラエルとの特別な関係を維持するために個人資産家が組織した親イスラエルのロビー活動は,この敗北にもかかわらず,アメリカ外交を支配する戦いを続けている.
l 広島・長崎原爆投下70周年
FT August
6, 2015
Japan
commemorates 70th anniversary of Hiroshima atomic bombing
Leo Lewis in Hiroshima
戦争を早く終わらせた,というアメリカ政府の原爆投下を正当化する理由は疑われている.他方,被爆者たちは,広島の記憶が世界を新しい原爆の被害から守っている,と考える.
FT August
6, 2015
We will be
lucky to go 70 years without another Hiroshima
Richard Haass
過去の党かをめぐる論争とは別に,重要な問題は,未来のことだ.この先,70年間も,原子爆弾は使用されないと確信できるだろうか?
簡潔に答えるなら,NO,だ.しかも,近年,核兵器を利用する蓋然性は高まっており,さらに高まると予想される.
アメリカ,ロシア,中国,イギリス,フランスの,公式に核保有を認められた5か国は,核兵器を使用する蓋然性が低い.なぜなら,十分な通常軍備を持っており,第1劇に耐えて反撃することが可能である.外交とそれを支える諜報システムを持つので,誤算から核兵器を利用することもないだろう.
他方,新しい核武装国であるパキスタンや北朝鮮は,こうした条件を持っていない.政治システムも弱く,内外の危機が核兵器の使用を促す状況はあり得る.核兵器を強硬派やテロ集団に奪われる,もしくは,経済的な苦境から核兵器を売却する,ということも考えられる.
中東地域の不安定化は,核武装とその利用を強く懸念すべき状況だ.イスラエルはすでに核軍備を蓄えているし,イランも今回の合意で核武装できる高い能力を獲得する.他の諸国も同様の方針を取るだろう.
それは小説の話のようだが,現実だ.
FP AUGUST
6, 2015
Did
Hiroshima Save Japan From Soviet Occupation?
BY SERGEY RADCHENKO
ソ連軍は北海道を占領する計画を立てていた.しかしスターリンは,直前に,その実行を認めなかった.
アメリカが広島と長崎で原子爆弾の力を示したことが,トルーマンに強気の外交姿勢を取らせた.しかし,スターリンは原子爆弾を信用しなかった.むしろ,1945年には,ルーズベルトと合意したヤルタ会談で認められた利益を重視していた.
l アメリカと開発問題
Project
Syndicate AUG 6, 2015
America in
the Way
JOSEPH E. STIGLITZ
新興市場,発展途上諸国は,膨大な長期投資を求めている.成長のために,インフラ投資,都市の建設,環境問題を解決しなければならないからだ.しかし,国際投資にはルールが確立されていない.アメリカが大西洋や太平洋を越えて推進する条約は,こうした成長する国の投資需要を反映していない.むしろ,彼らから医療や年金,労働条件に関する決定権を,また多国籍企業がその国で上げた収益に対する課税権を奪ってしまう.
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The Economist July 25th 2015
Asian
security: Small reefs, big problems
Wages and 2016: Ways of seeing
The Iran deal: Not déjà vu all over again
(コメント) 中国は日本の軍事的対抗に,アメリカ軍を含めて,エスカレートの危険を避けたため,沈静化している.他方で,より明確な支持をアメリカが示していない南シナ海では,攻勢を続けている.それは米中が「ツキディデスの罠」を回避する対話の継続にかかっている.
しかし,長い目で見たとき,台湾はすでに自力で安全を確保する力を失い,日本も遠方の島々に対する安全を失いつつある.日本は次第に台湾と似た防衛戦略を南の諸国にも広めつつある.封じ込めが成功することを願うより,中国を地域の安全保障協力体制に参加させることが目標ではないか?
アメリカの次期大統領と外交戦略を左右する,採点賃金に関する論争,イラン核合意に関する評価は,中国に対する外交にも影響します.
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IPEの想像力 8/10/15
なぜ空母は建造できて,海上基地は建設されないのでしょうか? 軍事技術や基地の条件を満たしていないかもしれませんが,私は普天間基地に代わる空港を,浮遊構造基体を連結して,海上に建設することを考えてほしいと思います.
北海道には,ソ連軍が侵攻して北朝鮮型国家を樹立し,沖縄は,台湾あるいはシンガポール型の独立国家として,アメリカと中国の間で発展していたかもしれません.そのとき,日本という国や安全保障の在り方はどうなっていたか? 広島,長崎,敗戦を受け入れた日に,考えます.
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7月29日に行われた朝日新聞シンポジウム「いま,沖縄と本土を考える」を観ました.
http://www.asahi.com/special/okinawa/
翁長知事は,沖縄の言葉で話し始めました.それは日本語と全く違う,異国の言葉に思えます.
サンフランシスコ講和会議でも,沖縄はアメリカの占領地として残りました.議会や知事ではなく,高等弁務官がアメリカから来て支配したのです.米兵の犯罪も思うように裁かれませんでした.
沖縄は日本から切り離され,返還は27年後でした.戦後70年の日本と言うけれど.平和国家,東京オリンピック,高度成長.そのような歴史を沖縄は共有していないのです.サンフランシスコ条約の発効4.28を記念する式典への違和感が,政府官僚には理解できない,と言います.
保守政治家として翁長氏は,沖縄の自然,歴史,伝統を守る,と言います.日米安保体制を支持するか? と訊かれると,支持すると答えます.逆に,辺野古の海を埋め立てて基地を作るのか? と訊くのです.沖縄の基地は占領されたのであり,本土の基地と違う.
人口との比率で見てどうか? 0.6%の土地に,74%の基地が集中することをどう考えるか? 基地による資金や雇用で沖縄は生活できている,という誤解がある.沖縄県のGDPに占める軍関連支出は50%から5%へ下がった.
官房長官は「粛々と進める」と言うが,同じ言葉を他の県民にも使えるだろうか? 自由,平等,人権,民主主義,自国の中でそれを支持しない日本が,日米安保体制によって守られるのか?
沖縄は,日本とアジアの懸け橋.平和の緩衝地帯になろうと思う.
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寺島実郎,・・・江戸期の琉球国.日本近代史のなかの沖縄と朝鮮半島は,日本が領有し,朝鮮は独立したが,沖縄はできなかった.幕末,アメリカは琉球国家と条約を結んでいる.沖縄には2度,独立のチャンスがあった.終戦と1972年.戦後はあまりにも破壊されていた.また,1972年の中国は四人組の時代であった.沖縄は日本として生きる道を選択した.
普天間基地移転に関して,アメリカとの5年前の合意は変えられないか? 1993年,ドイツは全アメリカ軍基地と地位協定を見直した.民主党政権は,「負担軽減問題」と捉えてしまった.しかし5年間で,沖縄の意識が明確になった.日米同盟,日米安保を受け入れる保守政治家が,辺野古移転に反対している.
日米同盟の意味は何か? 尖閣問題でアメリカの姿勢は明確だ.(台湾と同じ)「あいまい作戦」である.安保条約は守るが,尖閣諸島の領有権については答えない.アメリカの影響力の最大化でしかない.日中の間でバランスを取っている.米中戦略対話のほうが進んでいる.日中の領土問題で,米中戦争にはしない,と両国は合意している.
辺野古の問題を孤立させては答が無い.全米軍基地の評価を,日本とアジア安全保障を考えるべきだ.沖縄はアメリカ海兵隊の,世界に3つしかない基地の1つである.
抑止力の罠.日本は中国と政治で対立し,経済は深く統合化している.日本政府が,外交ではなく,中国を仮想敵国として抑止を唱えることは間違いだ.
知事の訪米では,アメリカも沖縄を重視している.安倍政権は沖縄の説得に失敗した.
アメリカと真剣に対話せよ.アメリカは多様である.アメリカに問題提起をすれば,状況は変えることができる.
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佐藤優,・・・構造化された差別問題.自覚されない差別.抑止力,地政学は無意味だ.
植民地支配の内地と外地.4つの沖縄人が存在する.1.「完全な日本人」というコンプレックス.2.違いは考えない.ルーツが沖縄という日本人.3.日本系沖縄人.日本人だが,沖縄のことをアイデンティティとして重視する.4.日本人ではない.独立するべきだ.2から3へ,そして4へ.スコットランドの独立問題,チェチェンなど.99%の多数派は,少数派の違和感を正しく理解できない.日本政府は沖縄人の同化には失敗した.民族問題の初期段階だ.
沖縄人に自己決定権を認め,その選択を重視するべきだ.
安倍政権の反知性主義.客観性,実証性,を無視して,自分の要求だけを信じる姿勢が問題である.
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アジアでは冷戦と移行経済,日本の敗戦後の国際秩序構築が,今も続いています.
海底油田の掘削基地が海上に敷設できるなら,軍事基地を会場に移転することもできると思います.基地の本体は海上にも,海中にも,移動することができるでしょう.浮遊構造基体は,一部が破壊されても入れ替えることが容易であり,移動することができるでしょう.必要な重量を支える浮力と支柱があれば,埋め立てに比べて,環境への負荷を大きく抑制できると思います.
巨大な艀や海底油田の技術があれば,海上基地の技術を確立し,たとえば南シナ海でも,海洋の勢力均衡を維持することが可能になるでしょう.
そして,この軍事的な均衡から,慎重に海上基地を平和利用に転換するとき,沖縄の描く平和の緩衝地帯は実現します.
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