前半から続く)


l  ドイツの覇権とは

Project Syndicate DEC 5, 2014

German Foreign Policy Comes of Age

JOSCHKA FISCHER

ユーロ危機に対する慎重な対応と異なって,メルケルは対話を重視しつつ,西側の統一を主張した.プーチンはドイツを西側から切り離そうとしたが,メルケルは明確にこれを拒否した.

ユーロ危機に加えて,ウクライナ危機が起きた今,ドイツの外交は自分たちの足で立つ決意を示している.

NYT DEC. 7, 2014

In German City Rich With History and Tragedy, Tide Rises Against Immigration

By ALISON SMALE

FT December 9, 2014

Europe’s lonely and reluctant hegemon

Martin Wolf

1次世界大戦から100年,ベルリンの壁崩壊から25年が経つ.これは歴史の皮肉である.ドイツは軍事力によって達成できなかったものを,平和的な手段で獲得した.ヨーロッパにおける中心の地位を占めたのだ.

ドイツの支配力は,その経済規模や地政学上の位置だけによるのではない.ヨーロッパの大国の中で,ドイツが最も安定し,成熟した民主主義を実現している.外国人を差別するポピュリズムは,他の国と違って,ドイツに広がっていない.アンゲラ・メルケルは,円熟した,責任を果たす指導者だ.

こうした優位にもかかわらず,ユーロ圏の経済は停滞と超低インフレに苦しんでいる.そしてドイツの政策担当者たちは改善のために行動することを拒む.また東方では,失地回復を求めるロシアがウクライナの混乱を生み出し,さらに旧ソ連圏へも脅威を与えている.

ドイツが新しい役割を担いたがらないのは理解できる.ドイツはユーロを望んでいなかった.逆に,他国が愚かにも,ドイツ再統一の代償としてユーロに合意するよう,求めた.ドイツの政策担当者たちは,通貨同盟の政治的・経済的な意味を正しく理解していた.

さらに,戦後ドイツの経済原理は大規模で多様なユーロ圏に当てはまらない.ドイツの成長を支えた政策は,「小国開放経済」というモデルに依拠していた.ドイツの責任は,その地政学と同じく,アメリカ,フランス,イギリスの依拠するグローバルな秩序を守ることだった.

しかし,「小国」としてのドイツの視点は,それ以前の戦争を意識した,強いられたものであったが,もはや適当でない.ドイツが埋めるべき政治の真空が生じているのだ.

ドイツ連銀総裁Jens Weidmannが言うように,ユーロ圏の低成長,超低インフレを,ECBの金融政策だけで解決することはできない.しかし,ユーロ圏が賃金引き下げ競争で繁栄することもできない.

もしドイツが覇権国として成功したモデルを実現するのであれば,国内需要を増やすべきだ.ドイツには何も改革することはない,と思っているが,他国では不況が深刻で,合理的な政策を拒む政府が成立するだろう.債権国として,ドイツはその黒字をどうするのか,示さねばならない.

ドイツは債務の削減・組み換えを交渉しなければならない.金融危機後のマクロ調整に責任を果たすべきだ.賢明な覇権国になるとは,自国の行動が,そこから利益を受け,大きな責任を持つシステムの,安定化と良好な機能に,どのようにかかわるかを明確に自覚することだ.

それは経済学であり,地政学でもある.ドイツは小国ではない.あまりにも強力で,あまりにもヨーロッパの中心を占める.より大きな責任を果たすときだ.


l  イスラエル

Project Syndicate DEC 5, 2014

Israel’s Terrorist Aid

ARYEH NEIER

FP DECEMBER 5, 2014

One Nation, Divided Under Law

BY AARON DAVID MILLER

FP DECEMBER 11, 2014

Can Europe Stop Israel From Electing Another Right-Wing Government?

BY MATTHEW DUSS


l  移民政策の神髄

NYT DEC. 5, 2014

Where Dutch Racism Lurks

By HARRIET DUURVOORT

FT December 7, 2014

Rightwing populists in Europe make mischief

Project Syndicate DEC 9, 2014

Immigration and the New Class Divide

IAN BURUMA

労働党の影の内閣でヨーロッパ担当大臣であるPat McFaddenが,最近,もっとグローバル経済を活用するべきであり,移民流入を疫病のように扱うべきではない,と労働党員たちに警告した.「人々の不満を煽るのか,人々にチャンスを与えるのか? 我々の政策はチャンスを与えることに集中するべきだ.」

こうした賢明な言葉は,不満に支配された世界で,めったに聞くことができない.移民を嫌い,銀行家を嫌い,イスラム教徒を嫌い,「リベラルなエリート」を嫌い,「ヨーロッパの官僚制」を嫌い,世界市民を嫌い,何であれ,よそ者を嫌う.

アメリカのティーパーティと彼らが支援する共和党員は,長年アメリカで暮らし,働いてきた人々に,オバマ大統領が市民権を与えようとしたことを嫌い,連邦政府を閉鎖すると脅した.イギリス独立党UKIPは移民の永住権を5年間禁止するよう求める.ロシアの副首相Dmitry Rogozinは,「クズどもをモスクワから一掃する」,と約束した.それは主に旧ソ連諸国から来た移民労働者たちだ.

景気が悪化することで自分たちの雇用を守りたいと思う気持ちは強い.しかし,ティーパーティを支持する,地方に住む中年白人アメリカ人は,貧しいメキシコ人と雇用を争うことなどない.UKIPの支持者が多い地域には移民が少ない.彼らが共有するのは,ますます移動が容易になる,超国家機関や,グローバルなネットワークに満ちた世界で,自分たちが置き去りにされる,という不安である.

右派は,移民労働者や超国家機関から利益を得ているビジネスの関係者と,彼らによって脅かされていると感じる集団とに分裂する.左派は,人種差別や不寛容を否定する人々と,自国生まれの労働者階級に「連帯」し,雇用を守れという人々とに分裂する.

移民に対する不安を単に,偏見,反動,とみなすのは間違いだ.民族や,宗教,文化的アイデンティティは変容しつつある.しかし,それは移民よりも,グローバルな資本主義の結果である.その経済過程には,明白な勝者と敗者が現れるからだ.教育を受けた,多様な国際ネットワークにおいて効果的に情報交換する人々は受益者だ.教育や経験を欠く,多くの人々は苦悩する.

新しい階級分裂が生じている.教育を受けた都市のエリートたちと,洗練されない,弾力を欠く,あらゆる意味で小さな土地に縛られた人々だ.

オバマ大統領が大衆的な敵意を生む理由もそれだ.アメリカ人はずっと前から知っている.白人はマイノリティであり,有色の人々が権力を握る.だからティーパーティや,同じような集団は叫ぶのだ.「われわれの国を取り戻せ!

それは不可能だ.アメリカ人も,他の誰も,ますます多様化する世界に住むしかない.経済的なグローバリゼーションを逆転できない.しかし,規制は改善できるし,するべきだ.文化,教育,生活スタイル,職場,など,市場の力にゆだねず,守るべき価値あるものは多くあるから.

その解決策の本質を,McFaddenは的確に語った.グローバル化した世界から利益を受ける手段を,人々に与えること.緊密に結びついた世界が,人々にとって好ましいものになることだ.ただし,こうした主張を支持するのは,すでに受益者である人々,特権層が多く,不安を感じている人々ではない.

それゆえ,左派の政党は都市エリートの代弁者として嫌われ,右派の政党は土着のポピュリストたちに攻撃される.

FT December 7, 2014

Ageing Europe needs the new blood immigration brings

Tony Barber in London


l  年末の贈り物

NYT DEC. 6, 2014

Gifts That Inspire

Nicholas Kristof

FT December 7, 2014

2014 Seasonal Appeal: Syria’s stolen childhoods

Erika Solomon

FT December 7, 2014

2014 Seasonal Appeal: Letter from the editor

Lionel Barber

FT December 11, 2014

South Sudan’s displaced people

Katrina Manson in Juba


l  アメリカ大統領選挙

NYT DEC. 6, 2014

Hillary 2.0 Would Be Hillary XX

Frank Bruni

NYT DEC. 7, 2014

A New Age of Activism

Charles M. Blow


l  イスラム国家

NYT DEC. 6, 2014

How ISIS Drives Muslims From Islam

Thomas L. Friedman

Project Syndicate DEC 9, 2014

The Ransom Dilemma

PETER SINGER

FT December 10, 2014

Isis extends its reach but the roots of other groups go deeper

Ahmed Rashid

すべての主要なテロ攻撃がISISと結びつけられる.しかし,多くの国でテロを行っているのはISISではない.ISISは彼らを刺激し,同調者を集めたかもしれないが,組織しているのではない.各地で抵抗してきた人々はISISを必要としない.

NYT DEC. 10, 2014

Authorizing Military Force Must Have Limits

By THE EDITORIAL BOARD


l  EU悲観論を超えて

The Guardian, Sunday 7 December 2014

Let the next generation speak up for Europe

Timothy Garton Ash

EUの将来について,これほど人々が悲観的になっているのは初めてだ.3つの不満がある.1.ユーロ圏の失敗.デザインも加盟国も間違いだった.大きすぎるし,性格が違いすぎる.共通の財政もない.経済文化を無視してドイツは緊縮策を求めている.2.政治がひどい.選挙と世論調査が行われるたびに,政治エリートへの幻滅が強い.有権者の不満は,あらゆる種類の反対政党に吸収されている.ブラッセルの官僚たちは他の星の住民である.ヨーロッパ規模の政党も,政治の舞台も存在しない.誰も欧州委員長の選挙に関心がない.3.さまざまな提案や政策は,いずれも老人たちが作る.引退した政治家たちの主張に,50歳以下の人々は自分たちの声を代表していると感じない.

誰がEUを救うのか? という質問に,私はECBのマリオ・ドラギ総裁だと答えるが,もう一人の若いマリオも重要だ.若い世代がEU統合を支持しなければ,その将来は悲観から抜け出せない.

それは1989年以降の世代も含めて,EUの交換学生制度Erasmusによりヨーロッパ市民となり,結婚し,子供を育てている若者たちだ.カタロニアの青年がベルギー・フランドル地方の少女に出会って,恋に落ち,彼らは結婚してヨーロッパ人の子供たちを生んだ.

若い世代がEUに魅力を感じるのは,どこでも旅行し,学び,働く自由があることだ.高齢の政治家や学者たちに意見を聞くより,若者たちに提案させることだ.

もしこれらを失ったら,彼らは静かにEUから去り始める.ローマ帝国が滅んだように.


l  国際情勢の新思考

The Guardian, Sunday 7 December 2014

Why the world is like a real-life game of global domination

Paul Mason

世界では5つの帝国が経済戦争を開始した.そこに勝者はいない.

プーチンの演説でルーブルは下落した,ECB総裁の講演で株価が下落した,OPECの会合が終わって石油価格が下落した,日本の首相が議会を解散し,円安を加速した.これらはここ数週間の事件だ.

最初に気になるのは中国と日本の経済戦争だ.多くの者にとって,日本の円安には1930年代を感じさせるものがある.次に,アメリカ,ロシア,OPECの石油価格をめぐる戦争だ.

エコノミストはしばしばゲーム理論を使う.しかし,ここではゲーム機の利用者に人気のある帝国建設ゲームで考える.

帝国A: 裕福だが停滞し,高齢化した国.高度な社会給付を,GDP250%に達する債務で維持している.その名は<日本>だ.

帝国B: 貧しいけれど高齢化が進み,専制支配に従う.高率の成長と近代化を実現してきたが,今や減速する国だ.その名は<中国>.

帝国C: 狂人が支配し,12か月で2度も隣国を侵略した.歴史的な敵を求めて戦闘機を飛ばす.慢心していた富裕な中産階級は通貨価値の下落でパニックになり,その経済状態は石油価格だけに頼っている.名前を言う必要もない.

帝国D: 800年前には神聖ローマ帝国と呼ばれた.エスニックも宗教もバラバラで,ガバナンスは壊れやすい.その名は<ヨーロッパ>.

帝国E: 石油を求めて1世紀も世界をめぐったが,突如,自給できるようになった.ガバナンスは麻痺し,市民社会は分裂している.その名は<アメリカ>.

ゲームが協力的であれば,<ロシア>を除いて,帝国はそれぞれの目標を追求できていた.しかし,2014年,ゲームは競争的になった.資源が枯渇し,成長が減速して,各国が自分の利益を最大化することを<最適化>とすれば,すべての帝国が戦争状態に向かい,誰も目標を達成できない.

・・・皆さん! 「ゲームのルール」を逆転せよ,という警告が出ていますが,このままゲームを続けますか?

FT December 7, 2014

The bold and the sold: Barack Obama spoils diplomacy

Edward Luce

FT December 8, 2014

Chess moves to transform world politics

Gideon Rachman

国際情勢の悪化は,かつてニクソンとキッシンジャーがしたように,外交政策の新思考を求めている.どのようなものがあるか?

FP DEC 10, 2014

U.S. Ambassador: Diplomats, not the Military, Will Solve Ukraine Crisis

BY DAVID FRANCIS

Project Syndicate DEC 10, 2014

Global Energy Realism

ANA PALACIO


l  小さな政府は間違い

The Observer, Sunday 7 December 2014

Forget austerity – what we need is a stronger state and more taxation

Will Hutton

もっと税収が必要だ.国家の規模が小さすぎる.

FT December 7, 2014

Crumbling infrastructure is a sign of lost collective faith

Larry Summers

FT December 8, 2014

Food banks are a blight on modern Britain

VOX 11 December 2014

Growth slowdowns: Middle-income trap vs. regression to the mean

Lant Pritchett, Lawrence H. Summers


l  ユーロ危機の解消

FT December 7, 2014

The ECB, demigods and eurozone quantitative easing

Wolfgang Munchau

FT December 9, 2014

Q&A: What is behind Greece’s snap presidential election?

Kerin Hope in Athens

FT December 9, 2014

Snap election in Greece reignites fears for eurozone

Elaine Moore and Robin Wigglesworth in London, Kerin Hope in Athens and Peter Spiegel in Brussels

早期の解散と選挙で,左派が政権を取るかもしれない.その不安から株価が下落した.ユーロ危機の再来だ.

FT December 9, 2014

A high-risk gamble on the future of Greece

FT December 10, 2014

Europe’s guardians of monetary orthodoxy need not fear the printing press

Reza Moghadam

FT December 10, 2014

Look, no gilts: why ECB should ape BoE

Laurence Mutkin

SPIEGEL ONLINE 12/10/2014

Reforming France

Emmanuel Macron's Impossible Mission

By Julia Amalia Heyer

Project Syndicate DEC 10, 2014

Europe’s Misguided Investment Mania

DANIEL GROS

投資ではなく,消費を重視せよ.

Bloomberg DEC 10, 2014

Is Tomorrow Too Late for Greece?

By Megan McArdle

Project Syndicate DEC 11, 2014

Putting Deflation First

BARRY EICHENGREEN

ECBにできる最善の策は,財政再建を促し,デフレの亡霊を除去するために,今すぐ量的緩和を行うことだ.


l  重役の女性割り当て

NYT DEC. 7, 2014

Boardroom Quotas Won't Help Women

By CARRIE LUKAS


l  ウーバーを信頼できない

NYT DEC. 7, 2014

We Can’t Trust Uber

By ZEYNEP TUFEKCI and BRAYDEN KING


l  アメリカの移民政策

Bloomberg DEC 7, 2014

Immigration Threatens Republicans From Within

By Albert R. Hunt

FT December 8, 2014

The US labour market bears deep scars from the financial crisis

Gene Sperling


l  景気回復

NYT DEC. 7, 2014

Recovery at Last?

Paul Krugman

Project Syndicate DEC 8, 2014

A Year of Divergence

MOHAMED A. EL-ERIAN


l  企業のパワー

The Guardian, Monday 8 December 2014

Taming corporate power: the key political issue of our age

George Monbiot

NYT DEC. 9, 2014

Supreme Court Rules Against Worker Pay for Security Waits at Amazon Warehouses

By ADAM LIPTAK

Bloomberg DEC 9, 2014

Supreme Court Doesn't Understand Wage Labor

By Noah Feldman

The Guardian, Wednesday 10 December 2014

Inequality is killing pensioners like me. We must keep up the good fight

Ken Savage


l  超国家的解決策

FT December 8, 2014

World without water: six solutions to a shortage

Pilita Clark, Environment Correspondent

FT December 9, 2014

Strengthen the ICC to address its imperfections

NYT DEC. 11, 2014

The Path to Zero Ebola Cases

By JIM YONG KIM


l  外貨建て債務

FT December 8, 2014

The emerging problem of foreign currency debt


l  スウェーデンの危機

Project Syndicate DEC 8, 2014

Sweden in Crisis

CARL BILDT


l  アフガニスタン

FP DECEMBER 8, 2014

All the President’s Strongmen

BY DEEDEE DERKSEN


l  戦争と民衆

YaleGlobal, 9 December 2014

Arms and Men: Technology’s Shadow Over Democracy

John Ferejohn and Frances Rosenbluth

戦争はますます機械化され,少人数の志願兵,民間軍事サービス,政府債務,ハイテク兵器によって遂行されるようになった.アメリカ国民の小さな割合しか線上にはいかない.しかし,市民生活に及ぼす影響は大きい.市民が,政府の戦争行為に関する監視活動を,もっと強化しなければならない.

FP DECEMBER 10, 2014

What Do We Really Know About Wartime Rape?

BY PAUL KIRBY

戦時のレイプ,性的暴力について,われわれは少ししか事実を知らない.その犠牲者を減らすためにも,もっと知る必要がある.


l  不平等

FT December 9, 2014

House price rises give birth to generational inequality

John Kay

Project Syndicate DEC 11, 2014

Inequality and the American Child

JOSEPH E. STIGLITZ

Project Syndicate DEC 11, 2014

Good and Bad Inequality

DANI RODRIK

平等と経済効率を,誘因を根拠に,トレード・オフの関係とみなすのは間違っている.高度に不平等な社会は教育の機会を奪ってしまい,非常に貧しくなる.他方,平等な北欧諸国は経済的繁栄をもたらしている.

社会によって異なる不平等に関して,一般法則はない.


l  バーレーンの錬金術

FT December 10, 2014

Bahrain land deals highlight alchemy of making money from sand

Cynthia O’Murchu in London and Simeon Kerr in Dubai

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The Economist November 30th 2014

Race in America: The fury of Ferguson

The new Silk Road: Stretching the threads

Investing in government debt: Where others fear to tread

The falling Yen: Low-calibre munitions

(コメント) アメリカの人種差別がファーガソンのような郊外で蓄積されていることと,差別を禁止する法律の強化より,その背景になっている政治の怠慢,警察の武装化や低賃金,訓練不足,銃規制の甘さ,不況と黒人の失業,などを解決するべきだ,というのは説得的です.

中央アジアや東南アジアに向けて,中国が建設する新しいシルクロードが注目されます.他方,日本が仕掛ける通貨戦争,というのは大げさである,と批判します.円安は日本の輸出を増やしておらず,安倍首相の憲法改正論より,支持されます.

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IPEの想像力 12/15/14

選挙が終わって,まるで選挙などなかったかのような,静かな,政治的失望状態があります.自民党や公明党の支持者が歓喜するのは,政治的<バブル>です.

もっと選挙を楽しみたい,と思いました.政治を通じて,自分たちの集団としての力を高める機会が来た,と期待できるなら,選挙はとても重要です.

「先生は誰に投票するのですか?」と聞かれて,学生たちには,自分の関心と政治家・政党の主張を比較できる手段を紹介しました.日本政治.comの「投票マッチング」や,毎日新聞「えらぼーと」,朝日新聞社と東京大学谷口研究室の共同調査,など,とても役に立ちます.本当に多くの人が利用するようになれば,政治家や政党もこれらを意識して,選挙の「効果」を高めるでしょう.

ただし,問題もあります.選択肢を見ていると,「どちらとも言えない」という答えが多いのです.私もそう思いました.つまり政治は,2者択一の,Yes/Noの答えにはならないわけです.では何が正しいのか? 違う選択肢を,もっと具体的に提案し,議論するのが良い,と思いました.

また,自分の選択では,投票すべき政党が「公明党」や「維新の党」になったのは意外でした.私が,アベノミクスを否定せず,高負担と社会保障を支持し,原発はいらないと信じ,安全保障や憲法改正も否定しない姿勢を選んだからでしょう.

欧米の選挙と違うのは,日本では外交・安全保障が論争にならない.移民問題が取り上げられない.「ポピュリスト政党」が目立たない,と思います.ある意味で,維新の党や,幸福実現党,社民党は,日本独特の,新旧世代・ポピュリスト政党です.

社会保障と景気が選挙で主に取り上げられるのは,高齢者とビジネスマン,商店街が主要な投票者だからです.若者たちが投票することをあきらめるのも,こうした争点と彼らの関心との乖離を意味します.

どうしてインターネットで投票できないのか? と質問されました.少なくとも,郵便局やコンビニの端末で送金や振り込み,決済ができるのであれば,投票もできると思います.それは,特に若者に,もっと多くの可能性を開きます.

政治家がネット上で対談し,インタビューを受け,討論会に参加し,一般質疑に答える機会を増やします.そして,「自分はだれを代表しているのか?」を訴え,政治の全体像も示してほしいです.

多くのテーマがあるのだから,こうしてばらばらの政党に投票するより,テーマごとに投票できるほうがよいでしょう.各人が10票を持って,重要と思うテーマにウェイトをつけて投票します.

これだけ政党が分裂しているのだから,国民にも多数の票を与えてくれたらよいのに,と思いました.定数是正が進まないのであれば,地方の有権者に都市部の何票かを与える,とすればどうでしょうか? 海外からも,日本の政治と経済に関心が高い人々には,(参考に)投票してもらいます.アメリカ大統領選挙ほどではないとしても,世界投票にふさわしい,優れた,魅力的な政治指導者を日本から出してほしいです.

テレビで,一人の出席者が,安倍首相の暴走を予見していました.選挙で圧倒しておくことで,この先に政府が多数を背景とした重大決定を強行しても,野党は解散したいと言わない,その気力も資金もない,と.

なぜ<バブル>か,と言えば,日本が直面する様々な政治課題に対して,答えなければならないことに答えないまま,与党があまりにも多くの議席を得たからです.日本の産業や雇用が復活する見通し,農業や地方経済,非正規雇用・派遣の労働者を含めて,労働のあり方がどうなるか,社会保障と財政再建,中国や韓国との関係改善,外交・安全保障に関しても,沖縄の米軍基地問題や憲法改正に関しても,議論しないまま,政府が得た「信任」です.

与野党で,日本政治の「保守的」再編が進みます.しかし,保守政治家の間で対立が激しくなり,もっと過激な右翼政治家がそれを批判するでしょう.それはリベラル政党の理想と政治本来の使命を刺激します.そして,社会改良を求める支持者たちの組織化に優れた,若い政治家たちが育つかもしれません.

どうです.次の選挙が楽しみですか?

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