IPEの果樹園2013

今週のReview

1/14-19

 

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アメリカの世界戦略 ・・・財政の崖と安全保障・戦略 ・・・インドの強姦事件と改革 ・・・ヘーゲル国防長官 ・・・アジア外交の新展開 ・・・ユーロ危機2013と歴史・文化 ・・・ギリシャとドイツ ・・・金融政策と制度改革 ・・・安倍・麻生の秘策

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  アメリカの世界戦略

NYT January 3, 2013

How to Talk to Iran

By SEYED HOSSEIN MOUSAVIAN and MOHAMMAD ALI SHABANI

イスラム革命後のイランは,指導者の面子faceを守るという意思決定を重視してきた.特に,ブッシュ政権はイランを「悪の枢軸」として侮辱し,核開発計画を交渉によって解決する道を閉ざした.イラン政府指導者は,彼らの尊厳を損なういかなる合意にも関心が無かった.こうして平和的な解決の機会を失ったまま,30年がたったのだ.

1979年の革命後,政府は自己利益を重視したが,同時に面子を重視した.核不拡散条約に従った開発という道を採らなかったのだ.しかし,もし再選されたオバマが,互いに信頼を損なった現時点から相互に合意を守りながら前進するなら,まずP5+1(米ロ中英仏+独)の交渉で,イラン政府のメンツを守る交渉の道を提供するべきだ.

WP January 4, 2013

Iran should be key topic at hearings

By Zbigniew Brzezinski

国務長官と国防長官の指名は,アメリカの役割に関する広範な論議を呼んでいる.イランとの戦争と平和の問題は,特に重要である.アメリカが交渉によって核不拡散条約にイランを参加させることができない場合,核施設を攻撃して,イスラエルとともに,あるいは,単独で,戦争を始めるべきなのか?

次の点を十分に考慮しなければならない.1.イランの核施設をどの程度破壊できるのか? また,イランの犠牲はどうなるか? 2.アランによる報復と,地域の安定性に及ぼす破壊的影響はどうなるか? 3.アメリカによる攻撃は,国際的基準,そして,中国やロシアを含む安保理で支持されるか? 4.イスラエルがおよそ100個の核兵器を持つとわかっているのに,イランは核兵器を得て攻撃するだろうか? 5.イランの核の脅威を抑えるアメリカによる戦略的関与は,戦火を広げやすい地域情勢で戦争するよりも優れているか?

攻撃による効果は一時的であり,繰り返し攻撃することは人的な犠牲を拡大し,ナショナリズムや反米感情を強める.イランは,アフガニスタンやイラクで暴力を広め,シリア,レバノン,ヨルダンさえ不安定化する.石油価格は上昇し,それはヨーロッパやアジアの経済に打撃を与え,アメリカが非難される.他方,利益を得るのはプーチンのロシアだ.

イランの核の脅威に対しても,ソ連や,最近では北朝鮮に対してと同様に,アメリカの友好国に対する攻撃は,アメリカに対尾する攻撃と見なして軍事的に報復する,という約束を与えることができる.

こうした諸問題を外交委員会で真剣に議論することが国民の間に強固なコンセンサスを形成し,無思慮な戦争に至るより優れた代替案があると知るだろう.

FP January 4, 2013

Eve of Disaster

BY CHARLES EMMERSON

(第一次世界大戦は,the Great Warと呼ばれた.)

指導的な諸国は相対的に地位を低下させ,内外の政治危機に苦しんでいた.世界の隅で興隆し始めた新大国は国際秩序における地位上昇を求め,あるいは,既存秩序の正統性を疑った.民主主義と独裁とは困難な競争を続けていたが,しかも,貨幣,貿易,移民,さらに,新しい長距離輸送のかつてない拡大による距離の破壊で,世界経済はこれまで以上に結合されていた.グローバルな社会,グローバルな道徳意識が誕生しつつあった.アメリカの小さな町はウォール街の権力に不平を言い,アジアは復活し,中東には紛争があった.

1913年の世界は,the Great Warの前年であるが,多くの点で,100年後の現在と似ている.

もちろん,2013年の中国を1913年のドイツにたとえたり,現在のアメリカを当時のイギリスにたとえたりするが,それは間違っている.歴史は繰り返さない.Mark Twainが述べたように,「歴史は繰り返さない.韻を踏む.」歴史から現在を観るとき,それを解釈しなければならない.

歴史は誤解されるし,濫用されることもある.しかし,最も危険であるのは,われわれが歴史を避けられる,と思うことだ.

FP Monday, January 7, 2013

The top risks of 2013

Posted By Ian Bremmer

2013年のリスクは何か?  Eurasia Groupの報告書がある.

1.新興市場.2.中国と情報世界との対立.3.アラブの夏.4.アメリカ.5JIBs(日本,イスラエル,イギリス).6.ヨーロッパ.7.アジアの地政学.8.イラン.9.インド.10.南アフリカ.

さらに,憂慮するテーマがある.エネルギーの地政学.グローバルな保護主義.開発世界におけるラディカリズム.ヨーロッパの分離独立運動.そして,北朝鮮.

FP January 9, 2013

Risk #1: Emerging markets

Posted By Ian Bremmer

Project Syndicate 09 January 2013

The World in 2030

Joseph S. Nye

20年後の世界を予言することはできない.しかし,政府も企業も20年以上の長期投資を行うから,20年後の世界を予測しなければならない.

この問題について,the United States National Intelligence Council (NIC) Global Trends 2030: Alternative Worldsを発行した.それは,アメリカも,中国も,その他のいかなる国も覇権を持たない世界を考えている.しかし,4つのメガトレンドがある.1.個人に権力が移り,グローバルな中産階級が広がる.2.国家から非公式ネットワークや連合体への権力移行.3.都市化,移民,高齢化という人口変動.4.食糧,水,エネルギーへの需要増大.

しかし,メガトレンドを実現する過程は予測不可能で,驚異に満ちているだろう.第一に,世界経済の浮動性,不均衡は,突然の崩壊をもたらす.各国政府が正しく対応できるとは限らない.第二に,国家間紛争は減っても,国家内での紛争が増えるだろう.若者の人口が増加し,アイデンティティ政治が広がり,資源が枯渇することで,地域的な紛争が激化する.第三に,技術革新の普及に関わって多くの問題が起きる.それは人口や都市化,温暖化の問題を解決するのか,わからない.最後に,アメリカの将来の役割が変わるだろう.2020年ころに中国が経済規模でアメリカを超えても,アメリカの国際的な影響力はまだ優位にあるだろう.しかし2030年には,高まる要求と限られた能力において,アメリカの過剰拡大というリスクが高まる.

オバマの第二期は,世界の様々な課題に対して協調を促す役割を重視するだろう.たとえば,中国は温暖化ガスの抑制に協力する重要な役割を担う国になる.クリントン国務長官がすでに述べたように,世界は「多極化」するのではなく,「多元化したパートナーシップ」によって動くようになる.

軍事紛争は今後も重要であるが,いかなる軍事的な枠組みも,それだけではグローバルな課題を解決できない.そして新しいグローバルな変動は,伝統的な軍事紛争以上に,多くの人々の安全を損なう.指導者たちは協力し,制度を築き,公共財を供給しなければならない.

FP JANUARY 9, 2013

A New U.S. Grand Strategy

BY PATRICK DOHERTY

21世紀の戦略像がようやく現れた.グローバルなプロジェクトは,反共でも,反テロリズムでも,表面的な自由の観念でもない.世界には30億人の中産階級が加わるだろう.この地球上の資源,紛争,生態系を考慮して,それが平和的に実現するために,われわれは戦略を必要とする.

アメリカ経済のエンジンは,21世紀の脅威と機会に対応していない.それは,戦後の郊外都市化,消費財需要,ヨーロッパと日本の戦後復興に対応してデザインされたものだ.その条件は1970年代初めに完全に失われた.海外でも,冷戦後の冒険主義と増大する危機管理は不確実さを増した.主要諸国はグローバルな秩序の転換を求めることなく,旧システムへの負担を増す.資源はますます希少になって,大国間の紛争が攻撃性を帯びる.各地の紛争は長期化し,解決する見込みがない.

4つの戦略的な欠陥が生じている.1.経済的格差,分離,対立の拡大.2.生態系の破壊.3.世界不況の回避.4.経済的活気の不足.インフラは劣化し,銀行システムにも脆弱さが目立つ.しかも,これら4つの要因は,今後,世界の中産階級が30億人追加されるなら,爆発するリスクが高まるだろう.

大戦略が必要だ.歴史上,アメリカの大戦略は2つの極論をめぐって展開した.アメリカ帝国とアメリカ要塞である.21世紀の大戦略を示す新しいコンセプトはそろっている.アメリカは世界を持続可能な姿に導く.経済政策,外交政策,アメリカのガバナンス.


l  財政の崖と安全保障・戦略

NYT January 3, 2013

Fiscal Deal Fails to Allay Doubts on U.S. Global Power

By DAVID E. SANGER

2年前にMike Mullenが述べたように,アメリカの財政赤字が防衛費を圧迫し,アメリカの最大の「脅威」になっている.Richard N. Haassは,外交を無視して,アメリカ政府・議会は(財政の)ルーレットに興じている,と批判した.オバマ政権は,財務を理由に,グローバルな関与を低下させつつある.

今後数十年,人口の高齢化と医療コストの増大は財政赤字をさらに増やし,支出削減と増税の議論を過熱させるだろう.政府は,ますます,海外の投資家,中国人の投資家に頼ることになる.安全保障とは,通貨市場に対するアメリカの脆弱性を抑え,中央銀行の国債管理が財政と対立しないように友好的関係を維持することだ,とHaassは言及する.

エコノミストや歴史家はアメリカのパワーと債務のもっと複雑な関係を示す.第二次世界大戦後,アメリカの連邦債務はGDP100%を超えていたが,アメリカは超大国になった.冷戦期においても,ベトナム戦争を経ても,その比率は3分の1に抑えられた.他方,今や唯一の超大国として,アメリカは防衛費や対外援助を自由に削減できる,と思っている.

しかし,アメリカの有利な条件は失われている.1950年代,60年代のような工業力拡大はなく,冷戦期のような外交目標の一致もない.アメリカが外交に関心を失う間に,困難に直面した諸国は投資や援助の新しい供与国を探している.すなわち,中国に向かうだろう.アメリカが自国の資本主義や民主主義に深刻な問題を抱えているとき,世界はアメリカだけをモデルとは見なさない.

「アラブの春ファンド」が進行民主主義諸国の支援に必要だ.エジプトのモルシ大統領は明晰に理解している.中国人がケニアやウガンダに投資するなら,エジプトにも投資するように求めるだろう.アメリカはもっと,新興民主主義国家にとってのベンチャー資本家になるべきだ.

オバマは選挙戦で,アメリカ衰退論を受け入れず,回復の足取りは遅いが,石油・天然ガスのブームを加えて,アメリカ経済の復活を信じている.安全保障や外交の再生も必要だ.

Global Times | 2013-1-5

Better ways to cut debt than selling Alaska

By Xu Qinduo

Washington Post の編集者Steven Mufsonも含めて,アメリカの財政の崖については,アラスカ州を他国に(中国にも)売ったらどうか,という声があちらこちらで上がっている.もちろん,これはワシントン(アメリカの政治システム)の無能さに対する憤懣を示すものだ.

たとえアラスカを売っても,アメリカの財政赤字は解決しない.11日に合意したことは,債務が増大する原因を放置したまま,数年後の次の危機を待っている.また,中国から見ても,アラスカを売るという冗談には関心がない.鄭和Zheng He (1371-1433)の遠征が示すように,歴史的な意味で,中国は拡大主義的な国家ではない.

中国が成長のために多くの資源を必要とするのは真実であるが,直接投資や貿易といった経済的手段で得ることができる.アラスカは中国の投資先,貿易相手として重要であるだろう.同時にアメリカは,敵対的な姿勢や禁輸を続けるより,中国との貿易や投資をもっと歓迎するべきだ.中国企業の対米投資はアメリカの雇用にも貢献している.中国向けの輸出は,特に,アメリカのハイテク製品への需要は無尽蔵である.

アメリカはその利益を認めていないようだが,アラスカを売るのも,アメリカ政府はわずかに免れたにすぎない.

FT January 6, 2013

US joins misguided pursuit of austerity

By Wolfgang Münchau

ヨーロッパから見ると,アメリカ政治の財政論議は,気味が悪いほど聞いたことがあるものだ.アメリカもヨーロッパになった.アメリカも,ヨーロッパが犯した,間違った半自動的緊縮計画に向かうかもしれない.問題は債務の規模ではなく,その対応である.

アメリカで先週合意されたGDPの約2%に当たる歳入増は,スペイン,ポルトガル,ギリシャほどではないが,イギリスよりも大きな財政緊縮策である.アメリカもヨーロッパの緊縮クラブに参加したのだ.

ユーロ圏の危機から学ぶべき教訓とは,緊縮策が大きな乗数をともなう,すなわち,予想外に大きな不況をもたらす,ということだ.なぜなら,金融緩和が限界に達しており,各国が一斉に緊縮策を採ったからだ.IMFは,昨年,危機後の乗数が大きくなった問題について論争した.

乗数が小さくなるほど,経済はまだ常態に復帰していない.ヨーロッパの2013年は不況が始まり,中期的な見通しはさらに悪い.たとえ景気変動を考慮したものでも,ユーロ圏はドイツの求める財政均衡協定を受け入れ,緊縮策を続けるだろう.もし長期の成長率が低下しているなら,雇用を維持する構造的な赤字水準はもっと上にするべきだ.

ヨーロッパの政治家たちが緊縮のための「構造改革」と言うとき,増税は困難であるから,社会的給付を削る方に偏るだろう.地方への財政移転や,税制の抜け穴をふさぐ,補助金を止める,というのはなかなか実行されない.そんな中で,南欧には深刻な貧困の増大がみられる.スペインのOxfamは,貧困水準以下にある国民の比率が,今後10年間で27%から40%に増えると予測する.

ヨーロッパ中で,政府が緊縮策を採用するのは大参事につながるだろう.この失敗の原因は,集団的な関心を政治システムが擁護するのに困難を生じることだ.可能な限り,不況を早期に終わらせ,その後,債務の超過を是正していくべきである.しかし,ヨーロッパでは政治的意思決定が分散し,ユーロ圏の合意を形成できない.他方,たとえ主権国家内でも,経済政策を導く社会的な合意が失われれば,同じことが起きる.

アメリカでも,病理学的に見て,ユーロ危機が起きる状態を示している.

NYT January 6, 2013

The Big Fail

By PAUL KRUGMAN

アメリカ経済学会の年次総会が,新しいPh.D.取得者の職探しや,本,アイデアの売り込みの場であるのはいつもの光景である.

しかし,そうではなかったはずのことが起きていた.会議に出席したエコノミストたちが不況の続く原因を議論していることだった.3年前に聞かれたら,多くのエコノミストは不況が終わると予想したはずだ.そして今,われわれは不況がどのように終わったかを議論しているはずだった.

なぜそうならなかったか? 間違った思考が勝利したからだ.

標準的な経済学は正しい答えを示していた.しかし,政治指導者たちは,あまりにも多くのエコノミストたちとともに,われわれが学んだはずのことを忘れて,間違った答えを採用した.

事態の経過はかなり単純だ.金融危機が起きて,民間部門の支出が減った.バブルが破裂した住宅投資尾は減ったし,架空の富は消滅して債務だけが残ったのだ.それは,世界不況が避けられない状況だ.

1990年代末,ドット・コム・バブルの後のような,小さな金融ショックは,金利引き下げで対処できる.しかし,2008年の危機ははるかに大規模で,金利引き下げでは不十分だった.ここで政府が行動する.民間部門がバランス・シートを回復させる間,政府が経済を維持するのだ.失業手当や財政刺激策など,この場合,財政赤字が増えることは正しいのである.それこそが大恐慌の再来を防いだ.

ところが,2010年,ギリシャ危機が起きてから,各国は間違った財政緊縮策に転じた.ECB総裁は,緊縮策が不況をもたらすという考えを間違いだ,と主張した.今年の総会では,IMFの主任エコノミストであるOlivier Blanchardが,IMFの政策が間違ったことを認めた報告書が話題になった.

IMFは間違い,それを認めたが,他の諸国はもっと大きく間違ったし,それを訂正しようともしていない.われわれはまだ,この大失策の序の口にいるのだ.

FT January 7, 2013

Washington is fixing the debt crisis

By Roger Altman

Project Syndicate 07 January 2013

The Post-Crisis Crises

Joseph E. Stiglitz

ユーロ危機とアメリカの財政危機のせいで,われわれは長期的なグローバル経済の問題を忘れてしまいがちだ.

地球温暖化.技術革新とグローバリゼーションにともなう急速な構造変化.人的資本,特に,健康や教育への投資.グローバル・インバランス.その解決は,おそらく医療サービスや教育のような,非貿易財の消費が黒字諸国で増える,という形をとるだろう.そして,不平等.増大する不平等が,景気回復の遅い理由であり,また,グローバルな経済の構造変化が進行していることの結果でもある.

同時に,先進地域と新興地域との格差は減少している.そして,医療や教育という,政府が積極的な役割を期待される分野で投資が必要なときに,われわれは緊縮策を求められている.むしろ,需要を拡大する最もふさわしい分野は,こうした長期的問題への,われわれの未来への,積極的な投資であるだろう.

WP January 9, 2013

A tax deal only the ultra-rich could love

By Harold Meyerson


l  インドの強姦事件と改革

BLOOMBERG Jan 3, 2013

Rape Wakes India to Its Shame

By William Pesek

ニューデリーの少女が強姦され,殺害された事件に関連して,奇妙な影響は,それがインドと中国の優劣に関する論争材料になったことだろう.

中国メディアは,自国における人権侵害については知らせないまま,23歳のインド人女性が強姦,殺害されたことを大きく伝えた.12億人の民主主義が機能していないことに,中国で強い関心が喚起されたのだ.

インドの首都では抗議のデモが起きた.他方,中国の検閲に関してもマイクロブログなどで抗議の群衆が集まった.インドの指導者たちは事件の国際的な影響を見逃している.

強姦事件が示すように,インドの超近代的な外観は偽物だ.光り輝く高層ビル群や,ソフトウェアの充実したキャンパス,ボリウッド映画などは,インドの旧世界が示す恥ずべき側面を隠している.もしインドが繁栄し,前進するとしたら,2013年は正義の年でなければならない.

6人の男性は,この女子医学生をサディスティックに拷問し,内臓まで損なったと告発されている.レイプ事件は一部のインド・ウォッチャーにした注目されていなかったが,インドが女性の権利を蹂躙し,指導者たちが後ろ向きの態度をとっていることを示している.すでに妊娠・出産において,女児は殺されている.

この事件の1か月前に起きた強姦で,パンジャブの10代の少女は,強姦犯の一人と結婚するように警察に説得され,その後,毒物を飲んで自殺した.

FT January 6, 2013

India finally speaks about sexual violence

By Supriya Sharma

16歳の少女が少年たちに強姦された.彼女は生き延びたが,父親は彼女の生涯にわたる恥辱に絶望して自殺した.それがニュースになったのは,少女が下層カーストDalitsで,少年たちがより上位のカーストJatsであったからだ.

23歳の女性がバスに乗ったところ,6人の男たちに繰り返し強姦され,鉄の棒で殴打され,路上に放置されて死んだ.彼女が強姦されたのは,首相官邸から半時間のところであった.

彼女がデリーの病院でまだ苦しんでいたとき,怒りの声は通りに満ち,首都の中心で抗議行動が起きた.寒い土曜日の朝であったが,学生たちはデリーの大通りを平和的に行進し,政府の重要な建物が集まるRaisina Hillに向かった.そして最後は,植民地支配を思わせる催涙ガスと放水車によって阻まれた.

私はテレビの映像を観て,その場に駆け付けたいと願った.抗議を伝える記者としてではなく,彼女らに連帯する者として.インドのすべての女性たちが,生涯を通じて,性的なハラスメントともっとひどい状態を耐えている.

これは通常の抗議行動ではなかった.彼女らは解放後の世代,ソーシャル・メディアが世界のどこからでも支援する,抗議の新しい文法を発明した1990年代の子供たちだ.政治家はいない.指導者もいない.政治家たちがこれまで扱ってきた群衆とは違う.

インドでは多元的な権力の移譲が進んでいる.女性が,若者が,中産階級がより大きなパワーを得ている.23歳の無名の女性は,この時代の希望を示していた.彼女の聡明さに勇気を得た父親は,そのわずかな土地を売って,彼女を大学へ進学させたのだ.

都市中産階級の政治的無関心は著しい.しかし,彼らもこの女性の不幸を無視できないだろう.この憤慨がインド政治を変えるかもしれない.

FP Monday, January 8, 2013

Can India Defeat Poverty?

BY AMANDA GLASSMAN, NANCY BIRDSALL

新年になって,世界最大の民主国家インドで,史上,最も野心的な反貧困計画Direct Benefit Transfer (DBT)が始まった.貧困家庭に,直接,現金を支給する.銀行システムを通じて,最初は20万人以上に,その後は,数億人にまで届ける.DBTは,インドの貧困ライン,156セント以下で暮らす35000万人に対する公的支援を革命的に変えるだろう.

インドの旧支援システムは無駄の多い,物資の配給によって貧困に対処している.食糧,肥料,燃料,などを政府は購入して,配給所に蓄え,資格のある貧困層が割引価格で購入し,あるいは政府機関で配給する.それは行政の非効率と汚職によって機能しなくなっている.2010年,アジア開発銀行の調査では,貧困が減らないだけでなく,受益者の70%は貧困層でなかった.インドが急速に成長した(一人当たり所得が$460から$1489に上昇した)10年間も,貧困層はほとんど減少しなかった.

旧システムからDBTへの移行は慎重に進め過ぎているから,改革の成果を示すのは不十分であろう.しかし,DBTは成功する.すでに各国で採用され,成果を上げた.エチオピア,ケニア,マラウィで採用され,消費水準,通学率,栄養状態を改善した.コンゴ民主共和国のような政治不安が深刻な国でも成果を上げた.メキシコやブラジルでは,この制度の導入が政治的な利用されるのを防ぐ措置が取られた.

インドでは,新しい生体的なID情報システムが導入されることによって,この計画が一層信頼できるものになるだろう.貧困層は,国籍を示す書類がなくても,申請も無料で,IDを獲得できる.


l  ヘーゲル国防長官

NYT January 7, 2013

Nominations for Defense and the C.I.A.

オバマ大統領は,Chuck Hagel を国防長官に,John BrennanCIA長官に指名した.しかし,両候補者は上院における質問に答えなければならない.

Hagelには,14年前に示したゲイの外交官が赴任することを批判した発言と,その後の立場の変化を質問するべきだろう.ネイコンやイスラエルの支持勢力から強い反対運動が起きているように,イランとの交渉を重視し,戦争を拒む姿勢,イスラエルの安全保障や二国家独立案を支持し,核兵器の削減を求めている.

Brennanは,オバマの対テロ戦略,オサマ・ビン・ラディン殺害を助言した顧問であり,ドローンによるテトリスと暗殺を指揮している.その暗殺リストの根拠や情報を公開しようとしない.

FP Monday, January 7, 2013

Chuck Hagel's Biggest Task

BY JAMES HOLMES

ヘーゲルChuck Hagel 国防長官の重要な使命は,オバマ政権が示した米軍の「アジア旋回」“pivot to Asia”を,海軍の戦略として,外交として,世界観として洗練することだ.歴史的,地政学的な思考を重んじる新長官として,ヘーゲルは,海軍や海兵隊,沿岸警備隊の再編に手を付けるだろう.

外交における「ピヴォット(旋回・枢軸)」“pivot”の概念を重視するべきだ.「ピヴォット」とは,機会が旋回する中心軸,心棒である.政府はそれを物理的,地理・空間的な意味で使う.私は「ピヴォット」を,ある離れた,潜在的に競合する海外展開に関する,外交政策の実行において,地理・戦略・外交の要素が結合したものと定義する.

それは軍事的な意味で,戦略的・政治的な目標のために,東・南アジアに軍事的な主力を展開することを意味するかもしれない.「ピヴォット」は,軍事力や戦略,同盟関係の組み替えであり,優先順位の設定でもある.どこであれ展開するなら,他の地域は軽視される.

アメリカの外交は「ピヴォット」の変遷であった.1940年代の地政学的な戦略家,Nicholas Spykmanが書いたように,コロンブスの大航海以来,新世界は旧世界の闘争目的であった.大西洋と太平洋を越えて,アメリカの海岸には影響力が及んだ.ユーラシアの諸帝国が南北アメリカにおける優位と繁栄を競ったのだ.

Pivot 1.0は,モンロー・ドクトリン(1823年)の時代である.アメリカは北米からカリブ海,メキシコ湾に展開した.アメリカ政府は,ヨーロッパの諸帝国からアメリカにおける諸政府の独立の保護者であると自認した.それはイギリス海軍との暗黙の協調であった.当時の最大の海軍があることを利用し,フリーライダーとなった.指導者たちは,「アメリカの地中海」(Spykman)とその南に,戦略を集中した.

スペインとの戦争(1898年)に勝利して,アメリカはPivot 1.5に進む.ハワイとグアムを抑えた.しかし,北米の東海岸から太平洋を越えて,極東地域,アジアの富に至るには,パナマ運河の開通(1914年)が必要だった.

Pivot 2.0は,実際には,東海岸からヨーロッパに向かう旧勢力と,アジアを目指す新勢力の間で,アメリカ外交を分裂させた.外交・軍事における太平洋旋回は,大規模な物資の戦略的移動を意味したのだ.アメリカはユーロシアの西と東における沿岸に注目し始めた.西欧と東アジアのどちらか,あるいは両方で,帝国が形成されるのを,Theodore Rooseveltら,アメリカの政治家は恐れた.その姿勢は,2度の世界大戦と冷戦を通じて示される.

Samuel P. Huntingtonが示した,第二次世界大戦に続く,アメリカの「超大洋」"transoceanic"軍事展開をPivot 2.5と呼ぼう.アメリカの関心はユーロシア内部の紛争に向かうだけでなく,さらにその周囲に多くの軍事拠点を広げた.

どのようなピヴォット・旋回も,財政の制約下にあるから,同盟政治と後背地への浸透に関する論争を必要とする.オバマ政権が目指すPivot 3.0は,1.西欧からインド洋への旋回,2.南アジア沿岸のアクセス強化,3.財政負担を考慮した外交の重視,を特徴とするだろう.

FP Monday, January 7, 2013

The Disengagers

BY DAVID ROTHKOPF

guardian.co.uk, Tuesday 8 January 2013

Chuck Hagel: is the enemy of their GOP enemies the Democrats' friend?

Ana Marie Cox

WP January 8, 2013

The tarring of Chuck Hagel

By Richard Cohen

BLOOMBERG Jan 8, 2013

Chuck Hagel Is No Susan Rice

By Margaret Carlson

FP January 8, 2013

Welcome to the Jungle

BY CHARLYNE BERENS

NYT January 9, 2013

In Defense of Hagel for Defense

By NICHOLAS D. KRISTOF

The Guardian, Thursday 10 January 2013

Drones are fool's gold: they prolong wars we can't win

Simon Jenkins

WP January 10, 2013

Time to be like Ike

By David Ignatius


l  アジア外交の新展開

YaleGlobal, 4 January 2013

Nationalism Rises in Northeast Asia

Jean-Pierre Lehmann

NYT January 6, 2013

In Asia, Ill Will Runs Deep

By ODD ARNE WESTAD

中国と日本ほど,互いに補完的な経済と社会は,この地球上にほとんど存在しない.中国人は比較的若く,貧しく,ゆとりが無い,過酷な成長を追い求めている.日本人は比較的に年老いて,落ち着いており,技術的に進んだ,今の高い生活水準を守ることに執着する.両国の近接性は,互いに最も多くの利益を得る条件だろう.

しかし,日本は中国の台頭を恐れ,中国は日本を邪魔に思う.両国間で領土紛争が過熱し,日本の拡大主義が数百万人の中国人を犠牲にした日中戦争の歴史によって,現在の関係を制約されている.いずれの国も歴史を自国の視点でしか教えていない.日本の新しい安倍首相は,右翼の思想を持ち,平和憲法の改正と,愛国心を育てる学校教育の見直しを唱えている.

さらに歴史をさかのぼれば,中国はこの地域の覇権を握って当然である,という意識がある.中国の文化,特に儒教思想は,周辺の重要な国家,韓国,日本,ベトナムに輸出された.「儒教圏」では,中国の支配秩序を受け入れることが前提だった.

日本は,中国への文化的同化と競争・敵対とを繰り返してきた.日本人の多くは,今も,中国との貿易や投資が重要であると知っているが,安全保障をより重視している.日本はその過去に関する軽視が外交政策を損なっているだけでなく,中国における歴史的な覇権の感覚と,政府が指導する反日教育が続く限り,日中関係を改善する打開策を見出せない.

独仏関係が示すように,国益が求めるなら,相互の認識も変わる.しかし,中国が階層的な秩序から協力に転換するには,強い政治指導力と国益に関する微妙な言動が求められる.そうした期待は満たされそうにない.

FT January 7, 2013

Australia shows west how to pivot to Asia

By Irvin Studin

冷戦の勝者は鄧小平であった.今や,すべての国が中国の台頭に反応しなければならない.オバマの「アジア旋回」の影に隠れて,オーストラリアのJulia Gillard首相(そして前首相であるKevin Rudd)が進める,もう一つの「アジア旋回」が無視されている.

それは,「アジアか,さもなくば破滅か」“Asia or bust”と呼ぶアプローチだ.教育から情報,市場,外交まで,すべてを駆使してアジアに深く関わる.オーストラリアのすべての学生は,少なくとも一つ,アジアの言語を習得しなければならない.オーストラリアの心性・魂はますますアジアに近づいている.

他方,アメリカやヨーロッパの「アジア旋回」は中途半端だ.アメリカはもっぱら軍事的に展開している.アフリカやラテンアメリカも,中国を目指す.

北京は様々な「アジア旋回」がもたらすメリットを評価している.中国を,そしてアジアを,本当に深く理解しようと思うなら,それは資金や軍事力だけでなく,その文化を変えなければならない.オーストラリアはそれを知っている.

YaleGlobal, 9 January 2013

Island Nations Play China, India

Harsh V. Pant

Project Syndicate 09 January 2013

The New Mercantilist Challenge

Dani Rodrik

経済学の歴史では二つの思想が対抗してきた.「リベラリズム(自由主義)」と「マーカンティリズム(重商主義)」である.経済的な自由主義は民間企業と自由市場を強調し,現代の支配的な思想になっている.しかし,自由主義の知的な勝利は,重商主義の重要性や素晴らしい成果を隠してしまう.

重商主義を,金の獲得に代表される間違った主張として批判するのは,アダム・スミスが見事に示したところであるが,その意義を見失うものだ.重商主義とは,国家と経済を組織する異なる仕方を意味する.自由主義と違って,重商主義は共通の目的に向けた国家と民間企業との協力関係を重視する.特に,アジア諸国の成功例が示すように,政府は積極的に民間企業を支援し,消費者の利益ではなく,雇用や産業構造の目標を追求する.

現在,重商主義の思想を継承して,その成果を示しているのは中国だ.中国が,輸出補助金や為替レートの管理,税制による優遇で輸出を増やしたことは,自由主義から見れば,自国の消費者を犠牲にして,外国の消費に貢献したものだ.しかしそれは,中国にとって,近代的な経済を実現し,将来の繁栄をもたらすことであった.

豊かな諸国の事由主義と新興諸国の重商主義とは,敵対するのではなく,この60年間,補完し合って成長を加速してきた.しかし,金融危機後の世界では,ますます幸せな共存関係が維持しにくくなっている.


後半へ続く)