IPEの果樹園2012

今週のReview

4/16-21

 

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アメリカの金融政策 ・・・ユーロ危機 ・・・アラブの春 ・・・アメリカの指導する世界 ・・・金融と社会改革 ・・・ルセフ大統領の訪米 ・・・シリア政策 ・・・ミャンマー(ビルマ)の将来 ・・・グローバル経済と米中の改革 ・・・新しい戦争 ・・・経済学の革命 ・・・イランの核開発と国際交渉 ・・・キッシンジャーのハーヴァード訪問

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ソマリア

FP APRIL 5, 2012

We're Winning This Fight

BY ABDIWELI MOHAMED ALI

昨日のような,自爆テロによる政治的不安定化を許さないほど,ソマリアの変化は大きく前進している.国際的に承認された政府の下,この4か月間で,新憲法,新議会,そして大統領選挙を進めてきた.

近年,暴力が慢性化しているソマリアだが,紛争は避けられないものではない.たとえば1966年のAP通信は,ソマリアを「アフリカで最も民主的な国」と伝えていた.いくつかの政党が自由な選挙を戦い,政府職員は普通の給与を得て,普通の自動車に乗っていた.


l  アメリカの金融政策

NYT April 5, 2012

Not Enough Inflation

By PAUL KRUGMAN

共和党員は,この3年間,間違った理由で連銀を批判してきた.ドルの価値が失われる,インフレが襲う,という主張だ.その品位を失った攻撃には連銀を貶める悪意がある.これをグリーンスパン前議長は止めるべきだと発言した.

しかし,連銀が非難されるのは,インフレを抑えるだけでなく,完全雇用の実現にも努力していないからだ.連銀は二重の目的を示されている.インフレを警戒する必要はあるが,それは完全雇用を無視して良いことにならない.たとえ完全雇用を実現する積極的な金融政策がインフレを招いても,二重の目的に反するとは言えない.

ところが,現状では,連銀は共和党の激しい攻撃を恐れて,完全雇用に注意を向けていない.緩やかなインフレを実現する方が,バブル後の債務処理に迫られて消費を抑制している家計を救えるだろう.また,緩やかなインフレは余分の現金を持ちながら投資しようとしない企業部門を諸別することになる.どちらも景気と雇用にプラスの刺激をもたらす.

連銀議長は政治的な中立性を主張する.しかし,本当は恐れているのだ.その怯えが労働者たちを苦しめている.


l  ユーロ危機

guardian.co.uk, Friday 6 April 2012

The Irish question

Elaine Byrne

アイルランド国民は再び,531日に,EUの将来を国民投票にかける.それまで4週間におよぶ激しい政治討論が続けられる.大使や学者,政治家,様々な利益団体が議会の調査委員会で意見を述べる.

アイルランド中央銀行が発表したデータによれば,アイルランドの家計はヨーロッパ最悪の資産破壊に直面した.家計の保有する純資産は,2007年以来,35%も減少した.北アイルランドの紛争を記憶しているアイルランド国民は,ギリシャのような暴力的抗議に訴えたいとは思わない.しかし,中産階級の不満は高まっている.

アイルランドに住宅保有税を導入し,政府は家計に負担を求めている.Enda Kenny首相は,アイルランドを他のヨーロッパ諸国と同じESMの保険に入れることで,投資家の信頼を得よう,と訴える.しかし,この主張は,アイルランドの銀行が負う債務とは切り離されたものであり,その改善を意味しない.

リスボン条約反対のキャンペーンを指導したDeclan Ganleyは,賛成の条件として,ヨーロッパ合衆国への実現,直接選挙によって決めた指導部と,ヨーロッパ規模の課税によって維持されるユーロ債,を要求する.ECBは債務を連邦化する道義的な責任を負っている,と考える.債務の上限を貸す協定は,フランスやドイツのような国に対して強制されなかったことも重要だ.マーストリヒト条約は加盟国が支払い不能になった場合について何も決めていない.

最大野党Fianna Failの指導者Éamon O'Cuivは,金融規制をヨーロッパの中央で決めること,また,これ以上,選挙を経ないテクノクラート指導者を増やさないこと,を求めた.

FT April 9, 2012

Europe has yet to make Europeans

By Gideon Rachman

イタリアの知識人Massimo d’Azeglioは,1861年のイタリア統一直後に述べた.「我々はイタリアを作った.さあ,今度はイタリア人を作らねばならない.」 この難問は今のEU にも言えることだ.EUは作ったが,ヨーロッパ人はまだいない.

ふつう,集団的なアイデンティティーが形成されるには数世代を要する.しかし,EUには時間が無い.ユーロ危機の克服には,今すぐに,5億人がEU規模のアイデンティティーを求められる.

今でも,イタリアやフランスには分離主義の動きがある.確かに,集団的アイデンティティーは危機や戦争によって急速に醸成される.しかし,現行の危機は,ヨーロッパレベルの意識より,イタリア北部の反発や各地のナショナル・アイデンティティ回避,という流れを変えた.

FT April 9, 2012

A growth agenda for the eurozone

FT April 10, 2012

Why the Bundesbank is wrong

By Martin Wolf

ユーロ危機の原因には国際収支不均衡がある,という理解は次第にヨーロッパでも共有されるようになった.共通通貨を採用するだけで,ブレトンウッズの通貨危機を永久に解決できる,とはならないのだ.不均衡を解消する調整(均衡化)過程が問題だ.

資本自由化とユーロ統合のユーフォリアで,赤字国に黒字国の低金利融資が行われた時代は終わった.赤字国への資本流入が突然止まって,急激なデフレ調整を強いられ,その不況と債務危機・金融不安・財政悪化が周辺諸国にも波及する.ユーロ崩壊の危機に直面するより,EUは公的な救済融資を繰り返した.

このECBによるヨーロッパ安定基金はどうなっていくのか? ドイツはこの状態を間違いとみなす.そして,赤字国のより迅速な調整を促すのだ.すなわち,デフレ政策で国内需要や賃金を抑え,輸出を伸ばして返済せよ,と.

Jens Weidmannpresident of the Bundesbank)は,黒字国の役割を否定する.赤字国はデフレ政策,競争力の改善を強いられるが,黒字国がインフレ政策,競争力の改悪を求められるのは,ヨーロッパの利益にならない,という.ヨーロッパはもっとダイナミックで,生産的になるべきだから.

これは間違いだ.なぜなら,競争力とは相対的なものだから.アメリカは中国よりも生産的だが,競争力は劣る.そして,米中間の不均衡と異なる問題は,ユーロ圏内に,競争力の相対的な調整を行う為替レートの仕組みはないことだ.

Goldman Sachsの優れた調査報告は,もし為替レートを用いて競争力を回復するとしたら,各国が切り下げるべき大きさを示している.すなわち,ポルトガル35%,ギリシャ30%,スペイン20%,イタリア10-15%,アイルランドは既に競争力を回復した.

調整は,黒字国の切り上げでも達成できる.あるいは,ユーロ圏全体が年2%で物価を上昇させるなら,赤字国は物価を一定のまま維持して調整してもよい.ポルトガルとギリシャは15年間,スペインは10年間,イタリアは5-10年間,物価を抑えておく.

為替レートが無くても,こうした内的な調整は可能である.実際,ECBは拡大的な金融政策を実施している.ドイツの銀行も融資を増やしている.もしそうしなければ,ユーロ圏全体は需要の落ち込みに対して,輸出を増やすだろう.それは世界の景気が悪化する中では,近隣窮乏化政策とみなされる.それにもかかわらず,ユーロ圏の赤字国を救済する融資にIMFまで参加するとしたら,世界は反対する.自分たちの内部で調整せよ,と.

ユーロ圏諸国は,内部の不均衡を調整する過程について合意しなければならない.

VOX 10 April 2012

The EZ breakup contest: Take ignorance seriously

Richard Baldwin

Project Syndicate Apr. 12, 2012

The ECB’s Lethal Inhibition

Barry Eichengreen

ECBの金融緩和でユーロ危機が終わった,と思うのは間違いだ.スペイン,イタリアのようなもっと規模の大きい経済が再び不況,金利上昇,財政赤字,緊縮策,不況,という悪循環を深めつつある.経済改革はますます政治的に困難になり,銀行危機が広まる.

ECBが再び金融緩和するべきか?

目標のインフレ率,2%0.5%超えているが,ECBはその政策を変更しないと決定した.IG Metallや公務員の賃金引き上げにより,ドイツのインフレが懸念されたが,それはむしろ歓迎するべきものである.なぜなら,ユーロ圏全体が高失業率にある中で,ドイツの賃金が上昇するとしたら,それこそユーロ圏内における不均衡を調整する過程であるからだ.ECBがこれに反対してはならない.

他方で,ECBがこれ以上に金融緩和することも,政治的な譲歩とみなされるだけで正しくない.確かに,成長しないまま構造的な改革を進めることは政治的な反対を強めるだろう.しかし,支出削減や構造改革,労働市場の弾力化,はいずれにせよ避けられない.この問題で,金融政策が効果的な手段であるとは決して認められない.金融緩和で政府を助けることは,その改革圧力を緩和するだけで,政策の決断を遅らせるだろう.

ECBは,モラル・ハザード(改革を遅らせる)とメルト・ダウン(金融パニックを生じる)の双方のリスクにはさまれているのである.金融政策は改革の手段ではないが,改革を実行する政府には助けも必要だ.

VOX 12 April 2012

Regulators should encourage more diversity in the financial system

Charles A.E. Goodhart & Wolf Wagner

WP Friday, April 13, 2012

Europe now sees its financial crisis never really went away

By Robert J. Samuelson


l  アラブの春

SPIEGEL ONLINE 04/06/2012

In the Eye of the Storm

Israel Wary of Changes in the Arab World

By Juliane von Mittelstaedt

NYT April 7, 2012

The Other Arab Spring

By THOMAS L. FRIEDMAN

アラブの春がチュニジアの果物売りが抗議したことで始まったのは興味深い.なぜ果物の価格は高騰したのか? あるいは,シリアの紛争が国境の非公式な土地売買で始まったこと.イエメンの高官たちが自分の裏庭に井戸を掘って,国の水不足問題を解決できないこと.

土地,水,食料をめぐる争いが中東紛争の背後にはある.政治や社会の混乱をもたらすのは,人口増加と水不足・気候変動なのだ.それを緩和できなければ,中東の社会は安定化せず,平和も築けない.

シリアもそうだ.この数年間,シリアは多くの社会・経済危機,環境・気候変動にさらされてきた.それは市民と政府との社会契約を破壊したのだ.2006-11年,シリアの土地の60%が史上最悪の干ばつと不作に見舞われた.

干ばつは中東から北アフリカに広がっている.周期的に襲う干ばつは悪化し,不安定化と独裁政権をもたらす.しかも,その被害は機構だけでなく,人為的な失敗や紛争が拡大している.

Lester Brownは,20年前に,石油採掘の技術を利用してサウジアラビアが井戸を掘った,と紹介している.その結果,井戸水は完全に枯渇してしまい,今や,サウジアラビアはエチオピアやスーダンの農耕地に投資している.それは,すでに危機に瀕するナイル川の水を奪い,塩害を拡大することになる.

・・・気候変動,人口増加,水不足,食糧価格高騰,破綻国家の増大,・・・我々の文明が地球規模で崩壊し始めるまで,あといくつ破綻国家が増えればよいか?

トロツキーはかつて,「あなたは戦争に関心を持たないかもしれないが,戦争はあなたに関心がある.」と述べた.同様に,「あなたは気候変動に関心を持たないかもしれないが,気候変動はあなたに関心がある.」

FP APRIL 9, 2012

Bush Was Right

BY GARY C. GAMBILL


WP April 6, 2012

G-8 should tackle issues of aging

By Michael W. Hodin

世界で最も重要な社会,政治,経済変化は,高齢化である.

WSJ April 12, 2012

The Real Population Bomb

ドイツ政府は,社会保障の赤字を埋めるために,25歳以上の国民から,所得の1%を「人口税」として徴収する.左派は,老人のために若者に,また,所得だけに課税することを批判する.キリスト教民主同盟は,2030年以降に赤字が増大する前に,付加税を課すことを批判する.

警告のために付加税を課して,成長を損なうことは愚かである.

Project Syndicate Apr. 12, 2012

Budgetary Wishful Thinking

Jeffrey Frankel

豊かな工業諸国の多くの政府が,社会保障費のコストを膨張させて赤字に苦しむのは,有権者と政治家が増税を嫌うからだけでなく,成長の予測が楽観的すぎるからである.

それを解決するには,2000年にチリ政府が行ったように,専門家による独立機関が構造的な赤字を予測することだ.


(China Daily) 2012-04-06

Positive regional signals

(China Daily) 2012-04-06

Safeguarding sovereignty

By Qiao Xinsheng

(peopledaily.com.cn) 2012-04-09

Hold mainstream of China-ASEAN relations


l  アメリカの指導する世界

NYT April 7, 2012

America’s Place in the New World

By CHARLES A. KUPCHAN

選挙を意識して,ロムニーもオバマもアメリカの衰退を強く否定し,「アメリカの世紀」が続くことを誇示している.確かに,二つの戦争に苦しみ,景気回復が遅く,中国や新興諸国へのパワー・シフトが起きているにもかかわらず,今もアメリカの優位は明らかだ.それは今後数十年も続くだろう.

しかし,アメリカはもっと違う意味で深刻な挑戦に直面している.それは,ガバナンスや資本主義に関するアメリカと異なるモデルが競合し始めたことだ.

民主主義や競争的な自由市場というモデルを,中国やロシア,湾岸諸国は受け入れない.中東世界の民主化も,インドからブラジルまで,新しく交流する諸国の民主主義も,西側が唱えるイデオロギーを嫌い,自分たち独自の民主主義を主張する.アメリカは,世界に向けてイデオロギー的な支配を目指してはならず,異なる諸価値があることを認めるべきだろう.そして,ますます多様で扱いにくくなる世界における合意や妥協を形成するために,指導的役割を果たすべきである.

たとえば,この30年間の中国の発展は,欧米が歴史的に遂げた中産階級の形成よりも,西側と競争しながら,はるかに多数の貧困層に生活水準の改善をもたらす,国家の優位を支持してきた.それは産業革命をもたらした企業家や技術革新の創意工夫,封建領主や国王の絶対権力を抑え,教会と国家を分離してきた,西側の理想と全く異なるものであった.

そして,ロシアやベトナムも,(政治的には敵対する面がある)中国の発展モデルに従うのは,急速に変化するグローバル経済において,それが一定の優位を示していることを認めたからだ.

中東の民主化は,必ずしも,アメリカの思うような政治体制を生まず,宗教と政治は分離されず,イスラム政党が多数の議席を占める.インドやブラジルの台頭は,必ずしも,外交におけるアメリカへの支持を意味せず,国連においても異なる立場をとる.彼らは西側の支配を再生することに協力しない.

主要な大国が異なるガバナンスと通商のモデルを採用したのは,21世紀が最初ではない.17世紀にも,神聖ローマ帝国,オスマン帝国,ムガール帝国,清王朝,徳川幕府,が非常に異なる支配と文化を維持していた.しかし,各帝国が自制的であった時代と異なり,緊密に結びついた現代では,パワーの分散した,バラバラなイデオロギー間で,共通の合意を形成することでしか効果的なグローバル・ガバナンスは成立しない.もはや西側の描くグローバリゼーションは実現しないだろう.

アメリカが人権や民主主義の理想を捨てることなどない.しかし,西側の価値を広めるために外国政府を倒すような進軍ラッパを吹いてはならない.むしろ異なる形で,アメリカの呼びかけに呼応し,責任ある対応を取るガバナンスがある,ということを受け入れ,相互の志向と権威を認め合うことだ.

WSJ April 9, 2012

The Myth of America's Decline

By WALTER RUSSELL MEAD

世界のバランス・オブ・パワーは変化している.中国,インド,ブラジル,トルコが重要な地位を占め,ヨーロッパと日本は後退した.世界はかつてアメリカと,ヨーロッパ,日本の3極で運営されたが,今やこれらが加わった7極で管理される時代になった.その中でもアメリカのモデルは,中心的に位置を占め続けている.

金融危機や戦争,「国家資本主義」の急成長を重視して,アメリカの衰退,を説くのは間違いだ.冷戦下,アメリカはヨーロッパと日本を国際システムの運営に加え,3極型の管理体制を実現した.衰退したのはこのシステムである.ヨーロッパはソ連崩壊後の東欧を包摂して,内向きになった.日本は台頭する中国の圧力に怯えて,アメリカの背後に隠れている.

しかし,アメリカの目指す国際システムのモデルは優れているから,それがアメリカ的であるという理由で嫌われても,グローバル・ガバナンスを指導するのはアメリカになる.3極型管理がそうであったように,アメリカは7極型管理体制を形成するために対話しつつある.かつてと同じようなネットワークと制度のリンクが,7か国間で形成されるだろう.そして,シンクタンクや,研究者,学生,芸術家,銀行家,外交官,軍人,などが相手国の関係者と交流し,新しい時代に繁栄を分かち合う方法を模索する.


l  金融と社会改革

NYT April 7, 2012

Democratize Wall Street, for Social Good

By ROBERT J. SHILLER

金融を学ぶ学生たちやウォール街を占拠した人々の重要なメッセージが,ウォール街を民主化せよ,であった.

たとえば,金融革新とソーシャル・ネットワーキングとを結びつけた革新的アイデア,crowdfundingはオバマ政権の雇用促進策に盛り込んで法制化(the Jump-start Our Business Start-ups, or JOBS, Act)された.オンラインで見たプロジェクトに少額の投資を行えることで,それが無ければ資金が枯渇した企業を助ける仕組みだ.

そのような多くの例を,新しい著書“Finance and the Good Society”で取り上げている.

1936年の著書“The Good Society” において,Walter Lippmannは民間企業のもたらす最も深遠な人間的利益を取り上げた.すなわち,「ますます多くの人を解放し,より大きな広がりのある活動へ導く」と.現在の金融ビジネス批判とは逆に,金融の歴史は,様々なベンチャー資本家,住宅購入者,様々な保険,貯蓄,年金を作り出す仕事に人々を導いてきた.


WP April 7, 2012

Five myths about water

By Charles Fishman


l  ルセフ大統領の訪米

FP APRIL 7, 2012

Carnaval Is Over

BY BILL HINCHBERGER

ルセフ大統領がホワイトハウスを訪問したとき,国民の77%に支持されているという,その自信を示していた.またBRICsの一角を占め,世界中の投資家たちが注目して,資本規制にもかかわらず投資を殺到させている.

ルーラ・ダ・シルバ前大統領がワールド・カップとオリンピックのブラジル開催で国民の祝祭的な高揚感を最高レベルにまで高めてしまったから,ルセフ大統領が大いに自信を示すのはよくわかるが,ブラジル経済の基盤は脆弱になっている.レアルの価値が高騰することで,すでにオランダ病は進行し,ブラジルの脱工業化も進みつつある.次の危機が周期的に来るのは確実であり,自己満足で改革を進めていない現状では,それが深刻で,長期に及ぶものになるだろう.

FT April 8, 2012

Rousseff should leave US with a trade deal

By Moises Naim

10年前に,私はジョージ・W・ブッシュ大統領がブラジルとの二国間合意で自由化を進めるべきだ,と主張した.2年前に,ディルマ・ルセフが大統領になったとき,同様に,ブラジル大統領が亜米利加に呼びかけるべきだ,と書いた.だが,何も起きなかった.今,ルセフがホワイトハウスを訪問しているが,重要なことは何も起きないだろう.

そして,この重要な二国間関係が変革のチャンスを逃がし続けていることは非常に残念だ.アメリカはラテンアメリカを重視していないし,ブラジルはラテンアメリカのフランスだ.アメリカに反対することを力で示そうとする.

しかし,この両国が貿易や投資を自由化し,その合意に地域の他の諸国が参加することを認めるなら,それは西半球の南北アメリカ大陸を経済安定と繁栄の土地にする憲章に現実味を与える力になる.

FT April 8, 2012

Ms Rousseff goes to Washington

LAT April 9, 2012

A U.S.-Brazil respect deficit

By Peter Hakim


後半へ)