IPEの果樹園2011

今週のReview

5/23-/28

 

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アフリカの変化 ・・・アラブ世界の変化 ・・・中国と世界 ・・・ユーロ危機 ・・・資本主義の楽園 ・・・IMF専務理事ストロス・カーン逮捕 ・・・左派の移民政策 ・・・エネルギー政策 ・・・エリザベス女王のアイルランド訪問

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times, The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l         アフリカの変化

FP MAY 12, 2011

Rediscovering Cong

BY JASON STEARNS

コンゴの内戦は1996年に最初に戦闘が激化してからずっと続いている。アメリカ国民が最近になってこの戦争に気付いたのはなぜか? 議会の公聴会、TVショー、ブロードウェイの舞台、などが取り上げた。

戦争が続く中で、9カ国がコンゴの各地を領地のように支配するようになっていた。2003年から統一が回復されてきて、ウガンダ、ルワンダ、ジンバブエ、アンゴラの軍隊がほぼ撤退した。2006年に大統領選挙が実施され、Joseph Kabilaが大統領になった。

東部の国境地帯について、ルワンダ、ブルンジとの和平協定が結ばれたが、紛争は続いている。武装集団は略奪し、地域は限定されたが、鎮圧部隊との残酷な戦争を繰り広げ、ある推定では、今も年間40万人以上の女性をレイプの被害者にしている。

こうした悲劇は以前からあったが、アメリカで注目を集めるようになったのは、草の根の運動が広がったからだ。コンゴ内戦は50以上の武装集団が参加しており、誰が正義で誰が悪としてジャーナリストの取り上げる話になりにくい。

2007年、アメリカの国家安全保障会議でアフリカ問題を担当する人権活動家・作家のJohn PrendergastEnough Projectを立ち上げ、その他の団体も現地の情報を伝えた。彼はthe International Crisis Groupにも協力していたが、その限界を感じていた。アメリカ国民が動かなければ、政治家たちは動かない。

そこで、複雑な原因や政治について説明するよりも、Enough Projectは二つのテーマに絞った。セックス暴力と資源紛争である。

紛争地帯のレイプに関する報告書も出たが、冷笑的な外交専門家が多かった。しかし、草の根運動は彼らが思うより政治上の抜け目なさを学んでいた。すなわち、紛争地帯の資源問題は、オバマ大統領が署名して成立したthe Dodd-Frank Wall Street reform actの求める企業の報告義務として、コンゴとの取引を公表させたからだ。市民団体や大学が抗議し、産業界はそのメッセージを即座に理解した。電力業界と関連産業は紛争地帯との取引を先行的に停止した。

金、スズ、タングステン、タンタルスのコンゴの輸出額は、年間3億ドルから14億ドルに達し、その一部は武装勢力に「課税」されている。他方、国民の80%12ドル以下の生活だ。

もし理想的な世界であれば、資源の世界市場は緊密に統合されており、アメリカの需要(電力産業は最大の消費者)が変化すればコンゴに影響する。その結果、コンゴ企業はパニックを生じて、政府に紛争地帯の非軍事化と、紛争地帯からの資源ではない証明を強く求めるだろう。

現実の世界は複雑だ。市場を介して衝撃は伝わったが、Kabila政権は旧兵士によって構成されており、貿易よりも武装集団の役割を重視する。また、非軍事化を進めても、それを証明する機関はなく、信用を得られない。腐敗した官僚と貧しい民衆が採掘に従事し、AK47で武装した兵士たちがどこに現れるかわからない。

アメリカ政府はこの点で十分な成果を上げていない。アメリカ企業が買わなければ、採掘は停止されるか、インドや中国の企業がやってくる。コンゴを支援する援助諸国は紛争地帯の資源を排除する国際行動を促す姿勢を示すべきだ。アメリカ政府は犠牲者への医療支援やコンゴ軍の訓練を重視するが、その戦略は広がりを欠く。

草の根の運動が国民を動かし始めた今、政治家と外交官が引き継ぐときだ。

SPIEGEL ONLINE 05/17/2011

The Booty Business

Price Tag for Somali Piracy Surges

FT May 18 2011

Africa: Ripe for reappraisal

By William Wallis, Andrew England and Katrina Manson

アフリカ経済を見る海外投資家、企業の眼が変わってきた。人口爆発や内戦ではなく、資源輸出からサービス部門への産業の拡大、急速な成長と市場に注目する記事です。

アジアからの資源需要が増大して成長を加速しただけでなく、政治的な安定化が見込まれる地域で、Carlyleのようなアメリカの機関投資家が投資物件を探しています。市場の自由化や政府によるインフラ整備、法律・規制の整備、教育と雇用促進、などが鍵となって、将来の成長を期待できる地域が増えたのです。中国を代表として、市場諸国からの投資も増えています。

資源採取にとどまらず、最近の投資は、銀行や通信など、サービス部門にも向かっています。その人口規模を考えれば、携帯電話の利用や、それに依拠した銀行サービスの拡大は大きな新興市場です。すでに、携帯電話利用者はアフリカ全体で10億人を超えました。

確かに道路は悪い。「アフリカは中国に30年、インドに20年遅れている。だから中国人やインド人は、低コスト製造業のアウトソーシングに利用できる地域をみなしていると思う。」 アフリカ向け直接投資の絶対額はまだ世界のごく小さな割合でしかないが、それでも急速に増えつつある。中国、インド、アメリカ、中東から、企業がアフリカで投資先を探している。

他方、ガバナンスの欠けた地域からは資本逃避が続く。個々の投資家の選択は、政治体制や政治不安の重要な決定要因になってきた。携帯電話に続いて電力供給などでも自由化が進めば、さらに投資が増えるだろう。


l         アラブ世界の変化

FP MAY 12, 2011

Too Big to Fail?

BY AARON DAVID MILLER

NYT May 12, 2011

What the Libyan Resistance Needs

By MAHMOUD GEBRIL ELWARFALLY

WP 05/13/2011

A European revolutionary on the Arab Spring

By Jackson Diehl

エストニアの大統領Toomas Hendrik Ilvesは、20年前、Radio Free Europeの調査員としてミュンヘンで働いていました。今、もう一つの大陸を超える民主化の波を観ています。長期にわたって凍結されていた中東の政治秩序が動き始めたのです。彼は、当然、エストニアの教訓を中東に当てはめます。すなわち、「すべての者が民主主義を求めたのではない。」 20年を経て、漸く、かつてのソ連圏の25%の人口が自由な政治体制に住めるようになりました。

この先20年で、中東はどうなるのか? Ilvesは、民主的制度や自由経済をどのように作るかが重要だ、と考えます。エストニアはそれに成功しました。NATOEUに加盟し、開放的な経済を作って、2008年の金融危機後も早期に成長を回復しました。アメリカ以上にインターネットの利用が進み、投票も、政府契約も、医療保険も、歯医者の記録まで、インターネット上で行えます。

なぜバルチックの小国、エストニアは成功したのか? その教訓は、1.共済主義体制下で独裁的な権力をふるった大統領制ではなく、議会を作った。2.積極的に民営化しつつ、ロシアのような、産業を支配する富裕層を作らなかった。3.民主主義を腐敗させないように、低率の単一課税と強い言論の自由を作った。4.比例代表制度を取り入れて、政治の両極化を防いだ。

Ilvesは、民主的な制度を築くだけでなく、正しく築くことが重要だ、と主張します。しかし、東欧の経験を中東民主化に生かす呼び掛けは彼らの不信を解消していません。そしてエジプトのように、強い大統領制、多数派支配、自由市場からの離反、など、Ilvesが指摘した制度状の失敗が見られます。

西側政府も同じ失敗を犯している、とIlvesは批判します。西側の指導者たちはエストニアが本当に自由を実現できるとは思わなかった。混乱から内戦やカオスに至ると心配した、そして、信用できないようなエリートたちとの外交や個人的関係を維持した。

「英語を話すエリートたちは居る。彼らはスーツを着て、ネクタイを締めて、西側の首都のことをよく知っている。しかし、彼らは自国で完全に信用を失った者たちである。」

アメリカもヨーロッパ諸国も、漸く、現状維持は続かないこと、新しい世代の指導者たちが現れたことを理解しつつある。そして、無名の学者やラジオ局の調査員が大統領や大無大臣になる。

東欧の指導者たちも間違っている。彼らからは、ルーマニアとブルガリアしかNATOによるリビア介入に参加していない。そしてEUの関心や資源が東欧から北アフリカに流れることを心配している。それは近視眼的な誤りだ、とIlvesは批判します。「ヨーロッパの大国は50年間もアメリカの保護に頼ってきた。冷戦が終わったとき、安全保障が東に拡大することを望まない国もあった。」

guardian.co.uk, Saturday 14 May 2011

A Marshall plan for the Middle East?

Jocelyne Cesari

オサマ・ビン・ラディンの死によって、アメリカの外交政策は新しい可能性を開いた。中東に向けてマーシャル・プランを始めるときだ。

政治経済の条件は大きく異なるし、冷戦との違いも大きいが、ヨーロッパを安定化し、敵国であったドイツを同盟国に変えて、ヨーロッパ共同体における重要な役割を担うようになったことは、今のアラブ諸国にとっても重要な意味を持つ。

 (China Daily) 2011-05-14

Humanitarian crisis

FT May 15 2011

Questions but no answers for Nato in Libya

By Max Hastings

シリア軍の市民殺戮、ビン・ラディン殺害、などで、リビア情勢への関心は低下した。しかし、60日、90日のNATOにおける情勢分析は政治指導者たちに選択を求めている。

アメリカと英仏の立場には相違がある。アメリカはリビア情勢に特別な関与を示さない。軍の指導部はカダフィへの軍事攻撃を強めて単人させるべきだ、と考えるものがいる。しかし、その場合は空爆だけでなく、地上軍が必要になる。

guardian.co.uk, Wednesday 18 May 2011

Obama can now define the third great project of Euro-Atlantic partnership

Timothy Garton Ash

オバマ大統領は二つの演説を行った。イスラエルのネタニヤフ首相が訪米することに対して、中東に関する方針を示す"Cairo 2"と、Westminster Hallで行った米欧関係に関する演説である。これら二つの間に関係はなく、米欧間に重要な計画が失われた、と思うのは間違いだ。

21世紀に向けて、米欧が協力して取り組む政治目標がある。アラブの春を支援することだ。

それは、冷戦が結びつけてきた「西側」に新しい何かが必要だ、ということで主張するのはない。むしろ、大西洋の片側だけでは成功しないから協力を目指すのだ。アメリカだけが、多くの入植者が反対しても、イスラエルに2国案を説得する力がある。地中海を挟んだヨーロッパからの市場と教育と支援策がなければ、誕生したばかりのアラブ民主主義は育たない。

アラブの春を助けることは、米欧による3度目の重大な政治目標である。すなわち、1度目はアメリカが主導したマーシャル・プランとNATO、その後のEU建設であった。2度目は、対等なパートナーとして参加した、中東欧の統合化であった。それはハベルら、中欧のヨーロッパ人が「ユーロ・アトランティック構造」と呼んだ、中東欧諸国の1999NATO加盟と、2004EU加盟であった。

3度目の目標では、ヨーロッパが潜在的な平和的転換を担う勢力として、遠く離れた、疲弊したアメリカよりも重要な役割を担う。北アフリカと中東は、ヨーロッパの近隣地域である。その自主解放運動においては、ヨーロッパがより優れた、経済。政治、法律、行政、文化的なパワーこそが、アメリカの軍事力よりも重要なのだ。ただし、ヨーロッパはまだ潜在的にパワーを持つだけで、これを行使しなければならない。

しかし、アメリカの外交政策はまだそれを唱えていない。

オバマの外交政策は、これまで、婉曲に「リアリズム」として示されてきた。それは超党派の外交政策であり、ブッシュの父親やケネディーに戻る、ときには、レーガンも含めたものだった。安全保障を最優先し、開発を次に重視し、民主主義や人権はその後にされた。しかし、市民的抵抗運動やマーチン・ルーサー・キングの伝統に従う、若い政治指導者として、オバマ大統領がこうした方針にとどまるはずはない。

今こそ、アメリカ外交の新しい時代を開くと好機だ。ビン・ラディン殺害で、オバマ大統領はジョージ・W・ブッシュよりもテロに対してタフで、有能な指導者であることを示した。もうFox Newsの非難(軟弱な、第3世界論者、コミュニティー運動家、テロに対して甘い、その源泉にも甘い)を恐れることはない。同時に、キング牧師の後継者に呼応するような、素晴らしい人民のパワーがアラブ世界で爆発した。この二つの事件で、すでに新しい時代は開かれたのだ。

ヨーロッパ世界でも、アラブ世界でも、人々はアメリカが指図することを嫌うだろう。アメリカはもっと利益よりも道義を唱え、アラブ民主化の支援者になるべきだ。そしてヨーロッパも、対等な戦略的パートナーになることを歓迎する。

オバマ大統領は、二つの演説を超えて、踏み出すときだ。

guardian.co.uk, Wednesday 18 May 2011

Mission impossible: Barack Obama's Middle East speech

Simon Tisdall

オバマは雄弁家であり、これまで重要な演説で世界を魅了してきた。しかし、アラブの春と中東和平を含めたアメリカの新しい外交政策については、その知性や雄弁を駆使しても人々を説得できなかった。

中東和平の外交特使George Mitchellは辞任し、イスラエルの首相は方針を改めていない。パレスチナのMahmoud Abbas大統領は、オバマを無視して国連総会に働きかけている。アメリカ政府はパレスチナ問題では砂の山に頭を突っ込み、自分に都合のよい問題だけ取り上げている。

イスラエルの駐米大使Michael OrenForeign Policyに書いている。もしイランの影響力が増し、また、トルコが西側から離反すれば、アメリカにとってのイスラエルの戦略的な価値は増すだろう。それは30年前にアメリカのAlexander Haig国務長官が述べたものと同じだ。「イスラエルは、世界最大のアメリカの不沈空母である。・・・それはしかも、アメリカの国家安全保障にとって重要な地域に位置している。」

オバマはこれに同意するだろう。

SPIEGEL ONLINE 05/18/2011

Has the Arab Spring Stalled?

Autocrats Gain Ground in Middle East

By Alexander Smoltczyk and Volkhard Windfuhr

FP MAY 18, 2011

Hope and Change

BY NATHAN J. BROWN

FT May 19 2011

Obama and the Arab Awakening

guardian.co.uk, Thursday 19 May 2011

Barack Obama's speech: no Cairo 2.0

James Zogby

WP May 19, 2011

Writing the Middle East’s new narrative

By David Ignatius

アラブの春は歴史的な比較を求める。1848年のヨーロッパの革命。1989年のベルリンの壁崩壊。1979年のイラン革命。

リビアやシリアにおける独裁者の反撃は、アメリカの築いた「気の進まない帝国reluctant empire」に動揺をもたらす。王族や独裁者はアメリカが救済する同盟者ではない。

他方、新しく解放された国には改革の目標が要る。1989年には東欧諸国がNATOを目指し、1918年にはオスマン帝国崩壊後に英仏がモデルを導入し、1945年後にはアメリカがそうなった。オバマはアラブの春に基本的な価値と政治経済のモデルを示すべきだ。

オバマが比較すべきは、1815年の「回復された世界」である。キッシンジャーはそのとき、ウィーンの保守政治家が、現状維持勢力(イギリス、オーストリア)と新興諸国(革命フランス、プロシア、ロシア)とを和解させた、と示している。権力は真空を嫌う、という。中東が脱アメリカの時代に入っても、変化する政治や社会に包括的な安全保障構造を維持するため、アメリカが関与する必要はなくならない。


FT May 12 2011

Who is winning in the race for recovery

By Samuel Brittan

先進工業諸国において危機後の回復はどこが早いか? 危機後の落ち込みから考察することはできる。アメリカが良く見えるけれど、金融の量的緩和によるものだ。円やユーロがこれほど嫌われてなければ、このような政策を維持できたかどうか。それでもアメリカ経済には雇用が不足している。日本は最悪で、イギリスはそれに近い。

ユーロ圏は最適通貨圏とは全く似ていない。ギリシャとアイルランドはユーロ圏の外にいるほうが成長するだろう。しかし、混乱に満ちた離脱より、救済計画が示されるようだ。


l         中国と世界

Global Times [20:23 May 12 2011]

US looks to resume leading role in Asia

Douglas Paal

カーネギー財団のDouglas Paalにインタビューしています。1986-93年にアメリカの国家安全保障会議のアジア局長でした。

Paalは、中国の英字紙に対して、アジア重視に向かうオバマ政権の安全保障政策を明確に説明しています。中国が600年の空白を超えて外洋に軍事力を展開し始めた。アメリカはリスクをヘッジする政策を取っている。しかし、必ずしもアメリカは中国と敵対しない。9・11以後、中国に対する関心は薄くなっていたが、ビン・ラディンが死んだことで、再び中国との交渉が重視されるだろう。

1997年の金融危機において、アメリカはアジアにおける役割を忘れていた。クリントン政権は冷戦後の外交でコスト削減できると見たからだ。それは間違いだった。

中国の経済規模がアメリカを超えることに不安を唱えるアメリカ人もいるが、政府の中にそのような意見はない。中国がアメリカに軍事的に対抗できるまでには70~80年を要する。経済規模も、人口規模によって大きく見えているだけだ。また、成長し続けることもできない。

世界に第二の大国が現れたとき、歴史は平和を乱すと教えているが、それは核兵器のなかった時代だ。現代の国家は戦争を手段として得られるものはない。抑止力は必要だが、それを使用することはできない。たとえ台湾海峡に危機が生じても、米中は戦わない。

人権は? 金融危機後の世界は? 資源争奪は? 日本の震災は? 

冷戦終焉から911まで、誰も、何が起きるか、わからなかった。中国は封じ込めではなく、アメリカがWTO加盟を支持した。1991年、インドは外貨準備が枯渇し、政策を転換した。ソビエトは崩壊した。世界の変化に、いずれの国もヘッジング戦略を採用した。アジアは1996年に戻る。19世紀の勢力均衡が再現されるだろう。上手く行動すれば、それは中国の優位にもなる。

アメリカは何度も後退する時期があった。しかし、必ず復活したのだ。期待よりも長い時間を要するだろう。他方、中国では多くの人が短期的な見方を取り、アメリカの衰退を重視している。「中国モデル」を何か特別な優位と見なすのは間違いだ。中国国民の賃金や消費を低く抑えているのは、それがエリート層の利益であり、資本家の利益になるからだ。

(chinadaily.com.cn) 2011-05-16

4 US misperceptions about China's economy

FT May 17 2011

Tokyo has no option but to cleave to China

By Yoichi Funabashi

日本の3重の災害は経済の脆弱性を高めている。東京電力の債券格付けは下げられ、日本国債にも動揺が生じている。それでも、歴史に多くの例があるように、危機を機会に変えるとしたら、日本の回復は対中関係の改善に拠らねばならない。日本の主要企業が、1923年の関東大震災から誕生したことも注目される。

震災と電力不足で、日本企業はそのサプライ・チェーンを失った。企業はその部品を中国企業からの供給に頼り、また、中国において工場建設を急いでいる。日本国内のエネルギー供給に不安があることも重要だ。中国政府は、日本企業の地位に代わる、という目標を掲げている。さらに、日本における復興需要は中国の成長を刺激し、日中間の貿易と成長を結びつけるだろう。

このことについても、日本の政治家たちが偏狭な利益にこだわる傾向は、危機を機会に変えることに失敗するかもしれない。中国企業の日本への投資や企業買収を政治問題化して騒ぐなら、日本の対中感情は悪化する。レアアース問題で強まった不信感は容易になくならない。

日本にとって重要なことは、政治・安全保障上のアメリカとの同盟関係を軸として維持しながら、新興市場、特に中国との関係も重視することだ。中国もまた、日本の被災地に海軍の医療船を派遣して、新しい姿勢を示した。対日外交には様々な矛盾した要素が混じるが、明らかに関係改善を望んでいる。

日中双方の政治指導者は、関係改善に向けた勇気を示すべきだ。日中間の緊密な協力関係こそ、地域の安定化をもたらし、また核エネルギーの安全性を高める技術は、中国のエネルギー政策にとっても死活的に重要な意味を持つ。

現状は、太平洋戦争後の復興に似ている。日本経済を一気に再建するうえで、アメリカとの経済的結び付きが重要であった。それは日米間の政治的安定性と相互信頼によって可能になった。今回の日本再建においては、中国との信頼関係がエンジンだ。

FP Tuesday, May 17, 2011

Ferguson vs. Kissinger on the future of China, and what it means for the rest of us

By Thomas E. Ricks

歴史家のNiall Fergusonは大きな構想を好む(Civilization: the West and the Rest)。西側が世界を支配した理由は、六つの思想(競争、ニュートン科学、法と所有権、近代薬学、消費社会、勤労倫理)にあった。今後、それを利用するのは中国やインドなど、アジア諸国だ。

600年前に火星人が地球を観たら、バラバラのユーラシア大陸を支配するのは中国だと思うだろう。しかし、第一次世界大戦まで、ヨーロッパから12の帝国が現れて、地球の60%を支配し、GDP80%を生産した。」

中国の台頭は加速し、数十年で、世界最大の経済というアメリカの地位に代わるだろう。そして2度と戻らない。西側の諸帝国が築いてきた国際秩序はこれで終わる。現状維持は幻想だ。アメリカのヘッジ戦略は間違っている。「チャイメリカ」は平和的な中国の台頭を支持すると言うより、新しい世界に向かうのだ。中国はより攻撃的になり、来年から世界を指導し始める。

それとは逆に、Henry Kissingerの中国論(On China)は、西側の帝国とまったく異なる伝統に中国は向かう、と予想する。帝国の秩序を拡大するより、Middle Kingdomの安定に満足するだろう。そして外部からの蛮族の侵入に備える。Kissingerは、歴史を通じて、中国の文明・文化は連続していることを強調する。

Niall Fergusonは、中国が西側の文明に追いつくだけでなく、それは結局、権力の概念をも吸収すると考える。ヘッジ戦略は、中国に対抗する同盟化と宥和策との、選択を避けている。

将来を予測することは難しい。二人とも間違っているかもしれない。しかし、希望は戦略にならない。21世紀に向けた真剣な論争が求められる。

Global Times [00:39 May 18 2011]

Sincere basis required for Sino-EU cooperation

アメリカの債務は上限に達するだろう。その最大の債権者は中国だ。アメリカの債券を保有することにリスクがある以上、中国はユーロへの分散を図ってきた。ファン・ロンパイ欧州大統領はEUの債務危機に関して中国との協力を期待する。EUが中国製の紙に補助金やダンピングを禁止する課徴金を導入した。中国はEUからのジャガイモ・でんぷん輸入に報復した。要するに、協力を求めるなら、EUは中国のことをもっとよく理解しなければならない。

WSJ MAY 19, 2011

Getting China Ready to Go Abroad

By KEVIN TAYLOR

Global Times [17:27 May 18 2011]

Potential US enmity no reason for fear

By Ding Gang


l         ユーロ危機

FT May 13 2011

Economical with the European truth

FT May 16 2011

How to ease the eurozone’s solvency crisis

By Paul Achleitner

世界的なドイツの保険グループ、Allianz SE、の財務部長が、金融危機後のレバレッジが縮小する世界について、民間の自主的な判断で保険を購入できる仕組みとして、新しいユーロ債の発行を提案します。

金融危機は、消費者から銀行へ債務を移し、銀行から政府へ債務を移した。そして、政府の債務は誰にも移せず、支払不能になる。ギリシャの救済融資が示したのは、流動性危機と支払不能危機とが結び付いたことだ。ユーロ圏の安定化融資は流動性危機にしか対処できない。

支払不能危機に対して、アメリカでは、すべての債権者にある手以後のコストを負担させて、債務者の負担を減らす。しかし、ヨーロッパでは、伝統的に債権者がより長期の、漸進的な調整を許すような融資を行った。債務者は常に、支払不能の問題を解消するため、ビジネスの整理を求められる。

債権者の多くはヨーロッパの銀行システムであるから、彼らはアメリカ式の債務削減より、長期的な整理を求めている。債務削減は、50~60%に及び、政府に拠る銀行システムへの資本増強策を要する。そして、次の債務削減を求める政府と債券保有者の不安が市場を破壊する。

債務者に融資する場合、支払不能を増大させないような工夫が必要だ。そのために債務国への金融支援の一部として、ESIMEuropean sovereign insurance mechanism)が損失を(たとえば10%までに)限定した債券を発行する。この債券には金利が追加されるから、債務国の改革を促す。しかも、これは政府間交渉で改革を促すために決めるから、投資家が市場で決定するCDSのスプレッドのように浮動的ではない。

ESIMは、既存のギリシャ債券を、保険付きの、より長期の債券にディスカウントした額で交換するよう促すだろう。保険の付いた部分を別に売ってもよい。こうして、投資家は債務の削減と、返済期間の延長とを、自主的に選択できる。こうして、民間投資をユーロ圏の政府債務危機から切り離し、債務危機も緩和できる。

FT May 16 2011

Dogmatists raise the costs of eurozone crisis

Wolfgang Münchau

ギリシャの債務は返済できないだろうという政策担当者やエコノミストの合意ができている。また英米ではギリシャがユーロ圏を離脱するだろうと宣伝されている。ECBはどちらも否定する。しかも、債務の組み換えに反対している。

救済融資を続けるのも、デフォルトさせるのも、ともにコストが大きい。ドイツのメルケル首相は2013年まで既存の債券はデフォルトさせないと約束した。しかも、ESMが既存債券を市場で購入することも排除した。その結果、2013年まで、選択肢は一つしかない。救済融資を続けて、緊縮政策を求め続ける。

こうした危機回避を続ける中で、債務国政府は緊縮策に耐えられず、デフォルトが発生して、結局、ユーロ債の発行で吸収するしかなくなるだろう。

SPIEGEL ONLINE 05/16/2011

Greece Reality Check

Euro Crisis Worsens as EU Leaders Play for Time

ドイツの蔵相も、ギリシャ債務は返済不能だと認めています。ドイツの政治意識においても、その組み替えは避けられない、と合意されつつあります。

WP May 16, 2011

Plan B for Europe

ギリシャやアイルランドは、1989年のラテンアメリカ債務危機を脱したブレディー・プランを採用すればよい。ただし、ラテンアメリカが成長を回復したのは切り下げたからだ。だから、債務負担の削減はユーロ圏離脱と組み合わせて行う必要がある。

FT May 17 2011

Europe’s decision time draws nearer

FT May 17 2011

The eurozone after Strauss-Kahn

By Martin Wolf

債務危機を脱するのに、ストロス・カーンは欠かせない指導者だった。彼が退場したら、債務国政府への融資と調整、コストの分担を決め、そして、金融市場のパニックを抑えるのは誰か? 決断力のある政治家でなければできないし、金融市場を理解できるエコノミストでなければできない。ストロス・カーンはIMFの金融危機対策を指導し、もしフランス大統領になれば、ユーロ圏の改革を指導できただろう。

guardian.co.uk, Tuesday 17 May 2011

Could Greece be the next Lehman Brothers? Yes – and potentially even worse

Larry Elliott

guardian.co.uk, Thursday 19 May 2011

Europe's denial of debt default will only make matters worse

Nuno Monteiro and Eduardo Sousa

guardian.co.uk, Thursday 19 May 2011

Mario Draghi: a saviour for the eurozone?

Adrian Pabst

SPIEGEL ONLINE 05/19/2011

The Myth of a Lazy Southern Europe

Merkel's Clichés Debunked by Statistics

By Sven Böll and David Böcking

メルケル首相は、南欧諸国が長い休暇を取り過ぎるし、早く引退し過ぎる、と非難した。ドイツ人の多くがそう思っているが、それは正しいか?

ドイツはかつて「ヨーロッパの病人」だった。500万人の失業者を抱え、労働市場や経済は硬直していた。国際比較においても、ドイツはいつも劣っていた。長期休暇、高賃金、早期退職、失業者の就労意欲は低く、消費を嫌うかのように、日曜日には店が閉まっていた。

メルケルは南欧を非難するが、その一部は間違いだ。ドイツの好景気は南欧への輸出にも依存している。危機後、ギリシャ、ポルトガル、スペインは公務員給与を下げたし、付加価値税を引き揚げてきた。長期休暇や怠け者という偏見で、債務危機の長期化を弁解するべきではない。

WSJ MAY 20, 2011

Europe's New Protectionists

By CÉCILE PHILIPPE


l         資本主義の楽園

LAT May 13, 2011

To restore jobs, U.S. has to ramp up exports

By Dimitri B. Papadimitriou

LAT May 15, 2011

The U.S.: Where Europe comes to slum

By Harold Meyerson

アメリカのスラムは、中国よりも、資本主義の楽園になりつつある。住宅の差し押さえは街を荒廃させ、スラム化した街をギャングが占拠している。その予防を怠ったとしてドイチェバンクが告発された。

ヨーロッパの優良企業や日本の自動車会社は、こぞってアメリカ南部の低賃金と規制のない地域に、(知的所有権を守らない)中国よりも優れた、搾取工場のための立地環境を見ている。彼らは本国で労働組合に認めている条件を、アメリカ人労働者には決して認めない。Boston Consulting GroupHuman Rights Watchの報告書を見てもそれが分かる。

南北戦争まで、アメリカ南部では奴隷たちがヨーロッパに輸出する綿花を栽培し、収穫していた。ヨーロッパ企業が、再び、アメリカ南部のスラムにやってきた。


SPIEGEL ONLINE 05/13/2011

Terrorists Have Rights Too

What International Law Says about the Killing of Bin Laden

NYT May 14, 2011

What Holbrooke Knew

By NICHOLAS D. KRISTOF

リチャード・ホルブルックは、アフガニスタンとベトナムが示す構造的な類似点に注目していた。これはオバマのベトナム戦争になるかもしれない、と。彼はアフガンへの増派に反対であったし、ビン・ラディンの抹殺を目指そうとしなかった。アフガニスタンの解決策とはタリバンとの和平合意であった。バルカンにおけるデイトン合意のように。そして、真の和解にはパキスタンとイランも参加するべきだった。

FT May 15 2011

Terror and the law

FP MAY 16, 2011

Leaving With Honor

BY JAMES TRAUB

ますますベトナムに似てきた。あるいは、ユーロ危機に。誰が見てもすでに破たんしているけれど、政治家たちの足並みはそろわず、少なくとも2014年までは作戦を続ける、と指導的な国の政治指導者は約束する。本当は、今すぐ、和解に合意する方が良い。

NYT May 16, 2011

The Long Overdue Palestinian State

By MAHMOUD ABBAS

NYT May 17, 2011

President Obama and the Arab Spring

FT May 18 2011

America must hug Pakistan ever closer

By Vali Nasr

FT May 18 2011

A last chance to avert a collision at the UN

By David Manning


LAT May 15, 2011

Defusing the population bomb


l         IMF専務理事ストロス・カーン逮捕

FT May 15 2011

Strauss-Kahn case reshuffles the deck

IMFのストロス・カーン(Dominique Strauss-KahnDSK)専務理事がNYのホテルで性的暴行により告発され、空港で逮捕された。John Lipskyが代行するが、彼は(慣例としてNo.2は)アメリカ人であり、経済学のPh.Dを持つ投資銀行家でもある。8月に退任する予定であったが、後継者は容易に決まらない。

しかも、フランスの大統領選挙でサルコジの再選を阻む重要な候補に挙げられていた。この告発によってフランスにおける極右候補Marine Le Penの人気が高まるだろう。

FP Sunday, May 15, 2011

IMF scandal: Meet the man who takes over the Fund

By David Bosco

連戦後のIMFは加盟国が187カ国まで増え、その主要出資国は、アメリカ、日本、ヨーロッパの4大国、そしてBRICsである。金融危機だけでなく、アラブの春においても、加盟国への安定化融資に難しい判断が求められる。国際機関の力(多角主義multilateralism)を信じるJohn Lipskyであるが、加盟国をパレート最適に導くことは難しい。

FT May 16 2011

The IMF needs another European head

By Wolfgang Münchau

guardian.co.uk, Monday 16 May 2011

The IMF must move with the economic times

Michael Burke

SPIEGEL ONLINE 05/16/2011

The Strauss-Kahn Arrest

The Fall of the Global Economy's Top Steward

By Gregor Peter Schmitz in Washington

FT May 17 2011

Feudal IMF job process must change

By Mohamed El-Erian

IMFのトップthe IMF managing directorは、今後も、ヨーロッパから決めるべきか? あるいは、アメリカやアジアからも、能力主義で候補を受け入れるべきか? 専門的なエコノミストではなく、政治家に委ねるべきか?

El-Erianは、2005年の決定の際にも、IMF専務理事が舞台裏の政治交渉で決まることを批判していた。それは1944年以来、第二次世界大戦終結時のパワー・バランスを反映したままである。候補はヨーロッパから決まり、全会一致で承認されるが、それは外交圧力と2国間交渉の結果である。今こそ、この封建遺制を取り除くべきだ。

ユーロ危機がIMFの今の重要課題であるからヨーロッパから専務理事を出すべきだ、とWolfgang Münchauは考えました。しかし、El-Erianは、このように不透明な決定過程がIMFの機能や各国の支援要請を妨げている、と指摘します。IMFの主要な関心は、ユーロ危機ではなく、もっと新興市場の安定化に向けるべきなのです。

SPIEGEL ONLINE 05/17/2011

Debate Over Strauss-Kahn's Successor

Europe and Asia Set for Battle over Top IMF Post

By Christian Teevs

IMFのパワー配分は今も、きわめて旧時代の経済秩序を反映している。24人の理事のうち9人はヨーロッパから出ており、アメリカの投票権は4倍もある。ブラジルの理事は9カ国を代表するが、その投票権はわずか2.4%だ。

中国外務省は、次の選考に「公平、透明、かつ、有益」の基準を求めている。

Bloomberg May 17, 2011

Emerging Markets May Name Strauss-Kahn’s Heir

By Simon Johnson

DSKの下でIMFEU内の債務危機を救済したが、その条件は他の新興国から見て不当に寛容なものだった。新興市場を代表する候補として、トルコ、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、など、特に中国も、IMFのトップを要求するだろう。

Bloomberg May 17, 2011

Strauss-Kahn Downfall Is Time for IMF Renewal

By Matthew Lynn

WP 05/17/2011

In Strauss-Kahn’s case, hints of Sarkozy

By Anne Applebaum

FT May 18 2011

Fund must turn away from DSK’s economic mistakes

By Desmond Lachman

SPIEGEL ONLINE 05/18/2011

Strauss-Kahn's Successor

Why the New IMF Head Can't Be European

by Thorsten Benner

ドイツのメルケル首相は次のIMF専務理事をヨーロッパから出すつもりだ。しかし、それは中国やインドの強い反対にあうだろう。それは2009年のロンドンG20の合意に反するからだ。

 (chinadaily.com.cn) 2011-05-18

The IMF after DSK

By Harold James

次のIMF専務理事は、西洋からではなく東洋から、政治家よりもエコノミストを、戦術に長けたものより優れた将来構想を持つという理由で、選ぶべきだ。

DSKのセックス・スキャンダルは、IMFそれ自体の矛盾や限界を注目させました。次の候補選びがこれまでにない関心を持たれるのは確実です。これまでのトップは、残念ながら、弱い人物か、あまりにも政治的な人物でした。

最初の二人(the Belgian Camille Gutt and the Swede Ivar Rooth)は影響力がなく、IMFは無視されていました。最近の二人(a German, Horst Köhler, and a Spaniard, Rodrigo Rato)は、ともに国内政治からワシントンに追放された政治家でした。サルコジ陣営が、当時は影響力のないIMFのトップとして、DSKをフランス政界から追放したのです。

IMFはユーロ圏の債務危機と救済融資にも関わって、ますます政治的な複雑さに巻き込まれた。それはIMFの正統性を損なうものだ。

最も優れたIMFのトップは、アメリカとの交渉にも長けた影響力のある人物として、3人を挙げることができる。スウェーデンのエコノミストであったPer Jacobsson、フランスの官僚であった2人、Jacques de Larosière and Michel Camdessusである。

地政学的にも、世界経済の重心も、東に向かっている。次のトップは新興市場経済に詳しい人物でなければ問題解決にふさわしくない。ただし、単にアジアの人物を指名するだけで、米欧の政治交渉を仲介するだけであれば、意味はない。

Bloomberg May 18, 2011

Sex Scandal Is Another Travesty at IMF’s Door

By William Pesek

guardian.co.uk, Thursday 19 May 2011

The IMF after DSK

Mark Weisbrot

IMFは、アメリカの意向を伝え、ネオリベラルなマクロ政策を押し付ける仲介機関であった。IMFの融資は、景気変動を増幅する間違った政策を強いてきた。IMF融資を受けた国は成長が損なわれ、大規模な失業が生じた。

アジア通貨危機以後、主な新興諸国は外貨準備を増やして、たとえ通貨危機になってもIMF融資に頼らなくなった。むしろヨーロッパがIMFに頼っている。DSKには、ユーロ圏の債務危機に対して、このような融資を行った責任がある。

DSKIMFも、誰が政策を決めたのでもない。IMFの幹部はアメリカ財務省やウォール街の投資銀行からきている。その次に、ヨーロッパだ。IMFの投票も制度も、少ししか変わらなかった。世界人口の圧倒的多数を占める諸国はIMFの投票の半数を欠いている。他方で、G7諸国は41.2%を占め、最大のアメリカは16.5%を支配している(重要案件で拒否権を持つ)。

guardian.co.uk, Thursday 19 May 2011

An outsider like Peter Mandelson could be perfect for the IMF

Martin Kettle

FT May 19 2011

Don’t let another politician run the IMF

By Raghuram Rajan

IMF融資で最大となったユーロ危機への対処に関しても、政治家でなければIMFのトップは務まらないように見える。しかし、政治手腕を基準にIMF専務理事を決めるのは間違いだ。IMFは金融・財政の管理に失敗した国に対して政策を正すために厳しく交渉するのであり、有権者の支持を競うのではない。

もし政治家が政治的に受け入れやすい融資計画を作れば、それはその国の改革を促すというIMFの役割を損なうことになる。それはその国の市民や債権者を欺き、IMFに資金を委ねた世界の納税者を欺くものだ。IMFは、政治家に愛されるよりも、政治家が非難するスケープゴートになるようなときこそ、もっとも優れた仕事をしているのだ。

他方、政治家と共謀するなら、IMFは合意のないところに政治的合意を創り出すという危険な領域に入る。それは選挙で有権者の判断にゆだねる政治家たちがするべき仕事だ。ギリシャやアイルランドへの融資はすでにそうなってしまっているが、ドイツやギリシャの有権者は融資計画を支持していない。歴史は、ストロス・カーンの下で行ったIMF融資を、ユーロ危機に解決に役立つものではなかった、と示すだろう。

政治家がトップに就くことの最悪のリスクは、その人物が自国の政界に復帰するための材料としてIMF融資を利用することだ。そのようなトップは世界の納税者に対して災いをもたらす。

世界には指導的な役割を担える官僚(Brazil’s Arminio Fraga, South Africa’s Trevor Manuel, India’s Montek Ahluwalia or Singapore’s Tharman Shanmugaratnam)やエコノミストたちがいる。その選考方法について、最も透明性が高いのは、主要なエコノミストや中央銀行総裁~なる候補者推薦委員会を設置することだ。そこが世界経済の幅広い観点から選考した候補者リストに対して、IMFの全加盟国が投票する。ただし、今回に限り、ヨーロッパとアメリカからは候補を出さない。

西側の政治家たちは、変化する世界で、国際機関が重要な役割を果たすべきだと言うなら、その責任として、権力の独占を手放すことだ。

SPIEGEL ONLINE 05/19/2011

DSK Successor Debate

Why the Next IMF Head Must Be European

A Commentary by Thomas Kleine-Brockhoff

国際機関においては、急速な変化を避けるべきだ。ヨーロッパは意見を統一し、米欧も協力してアジアへの部分的な権力移行を円滑に交渉によって進めるべきだ。

 (China Daily)2011-05-19

Chance to reform IMF

WSJ MAY 20, 2011

After Strauss-Kahn


l         左派の移民政策

The Observer, Sunday 15 May 2011

While the European left dithers, the right marches menacingly on

Will Hutton

移民流入、特に、イスラム教徒の流入に対する国民の不安は、デンマークで、国境の入国検査を復活させることにつながった。これはEUの重要な成果である移動の自由、シェンゲン協定、を破壊するものだ。

左派の対応が混乱している限り、ポピュリストや極右の移民排斥はなくならない。経済不況、雇用不安、ヨーロッパの国家が人々の安全を守れないのではないか、という感覚は容易になくならない。この悲鳴に対して、ヨーロッパの左派はもっと明確に答えなければならない。

資本主義を改善し、成長と雇用をもたらす、そのために技術革新や投資を促すことに政府はもっと積極的に関わる。ガバナンスの新しいルールを決めて、グローバリゼーションを深刻な脅威ではない、銀行は無意味な仕事ではなく、経済を動かす役割を担っている、そして、各国の文化が独自性を奪われることはない、と市民たちが確信できるようにする。

移民とは、公平性にかかわる基本姿勢の問題だ。移民たちは市民権を得る道筋を示されるべきだし、経済の論理と公平さの権利を確立することは、アイデンティティの喪失と切り離せる。

FT May 16 2011

Miserable times for Europe’s centre-left

By Philip Stephens

NYT May 17, 2011

Wagons North!


l         エネルギー政策

The Observer, Sunday 15 May 2011

A golden opportunity for Britain to lead the world in energy production

Robin McKie

イギリス政府は、今後20年間で炭素排出量を55000万トンから39000万トンに減らす、と発表した。社会を脱炭素化する計画だ。再生可能エネルギーで40%、原子力発電で40%を供給し、化石燃料は20%に抑える。また、炭素の吸収や固定化も行う。

そのためには、潮流や風力など、再生可能エネルギーの技術革新が必要だ。イギリスは化石燃料による産業革命で世界を動かした。再び、次の技術革新において世界に先行しようとしている。

(chinadaily.com.cn) 2011-05-18

The myth of green energy security

By Bjorn Lomborg

中東から北アフリカに広がる政治不安、石油価格の上昇が、エネルギーや安全保障、環境政策に影響するのは当然です。

環境懐疑論者のLomborgは、環境政策のコストとベネフィットを比較します。温暖化の予測とそれを抑える費用はどうなるのか? 同じ費用をかければ他に何ができるのか? エネルギー安全保障の定義はあいまい過ぎる。

SPIEGEL ONLINE 05/19/2011

The Nuclear Sell

Why One Swedish Town Welcomes a Waste Dump

By Thomas Hüetlin


Bloomberg May 15, 2011

Geithner Emerges as Obama’s Indispensable Man

By Albert R. Hunt

FT May 19 2011

Financial regulation: A shield asunder

By Tom Braithwaite, Brooke Masters and Jeremy Grant

金融危機後の国際的な規制はどれほど進んだか? 何を目指すのか? アメリカとヨーロッパは協力できるのか?


l         エリザベス女王のアイルランド訪問

guardian.co.uk, Wednesday 18 May 2011

We need a new British-Irish relationship

Gerry Adams

アイルランドとイギリスとは和解できる。かつてのIRAの指導者は、イギリスの女王訪問を歓迎する。そして同時に、イギリス軍の謀略である爆弾テロとその犠牲者を記念する行事にも参加する。イギリス政府はそれを認めないが。

エリザベス女王の訪問が、多くのアイルランド人にとって耐えられないことであるのはよくわかる。しかし、Sinn Féin党は、対等で、かつ、相互の敬意を基礎にしたイギリスとの関係を築くことを願っている。その成否は彼女が何を言うかにかかっている。彼女は、アイルランド解放のために戦い、亡くなったアイルランド人の男女を記念する公園で献花する。

私は、多くのイギリスの監獄で囚人として扱われた人間として “Her Majesty's pleasure” とあいさつする。ようこそアイルランドへ。そして、多くの犠牲者にも、そう思ってほしい。

イギリスによるアイルランドへの介入は、侵略、占拠、支配、そして、アイルランド人の抵抗とイギリス軍の反撃が繰り返された。分割とその結果も含めて、衝撃は今なお感じられる。

アイルランド共和国派がイギリス人民に多くの苦痛を与えたことも、認めなければならない。私はそれを残念に思う。

Sinn Féinは島の平和的な統一を目指している。それは多元的で、平等な社会である。その中では誰もが市民権を得て、等しく守られるだろう。Sinn Féinは新しい共和国を望む。内部の多様性を認めて、イギリスとの関係でも、主権と独立に敬意を払うだろう。

エリザベス女王の訪問は、それを助けてくれると思う。

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The Economist May 7th 2011

Now, kill his dream

Canada’s general election: Harper leads into new territory

China’s population: The most surprising demographic crisis

Education in Malaysia: A reverse brain drain

France’s National Front: Le Pen, mightier than the sword?

The surge in land deals: When others are grabbing your land

Economics focus: Safety thirst

(コメント) ビン・ラディンは、世界各地に溜まる不満や憎悪を吸収し、増幅する装置でした。彼を殺害しても、その不満は消えていません。その夢が聖戦ではなく、政治改革なら支援されます。

カナダの総選挙に関心などありませんでした。しかし、記事が興味深いです。ヨーロッパ型の社会民主主義、アメリカと違って、平等や労使協調、社会的負担を支持し、国民的な医療保険制度を守っている国でした。しかし、カナダも変化したのです。経済の重心は西へ移動し、資源採取に向かっています。個人主義や大平原の家族的価値観が、保守党に優位を与えました。

中国の人口問題(過剰ではなく不足)、マレーシアの頭脳流出ではなく流入、フランス政界を震撼させる「ル・ペンは剣よりも強し」、そして、世界各地で進む耕作地の長期契約(中国や産油諸国の投資)。いずれも面白いなと思いました。

なぜ格付けが下げられても投資家は気にしないのか? 日本も、アメリカも、その債券はすべて返済されない恐れが強いですよ、と警告されましたが、安全な資産への需要が強いのです。投資家はまだ不安を埋め合わせる方法を見出せません。しかし、これは新しい「トリフィンのジレンマ」だ。市場で不安が続く限り、政府は赤字を債券の発行で安く融資できる。それを前提に債券を発行し続ければ、いつか、その債券の返済に見合った成長などできない、ということに気づくだろう。

結局、ドルは金と交換されなくなり、その価値を大幅に失いました。

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IPEの想像力 5/23/11

移民を自由化するには、まだ日本の社会制度や政治意識、国際情勢が、何年も、何十年も待たねばならないでしょう。しかし、今すぐにできることがあります。

政治や経済が不安定な国から、国際的に養子を引き受け、育てることです。もちろん、現地の病院や学校を助けることが重要です。しかし、もし双方が望むなら、子供たちを日本において短期間でも育て、中には養子にする夫婦や大人がいてもよいと思います。

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土曜日、高の原の映画館で『八日目の蝉』を観ました。父が、力一杯、推薦していたからです。なるほど。映画の力を実感できる名作だ、と思いました。

子供が大切な存在であることは知っています。しかしこの作品では、母と娘に血のつながりはありません。子供を育てることに生きがいを感じる人は、自分が失ったものを、子供の中に見て、子供に自分ができなかったような素晴らしい体験や知識、温かい感情を与えたい、と願うのでしょう。子供を通して、自分が楽しむとか、満足するという次元を超えて、子供とともに充実した関係に生きる時間を得たのです。「謝罪するより、感謝したい」という、誘拐犯として裁かれる女性(希和子)の言葉は、かけがえのない愛情と、残酷な真実を表現しています。

この作品のテーマとして、母性、ということが言われますが、親性(親であること)だと思います。確かに女性は子を産み、子供を育てることに全生命を注ぐことも厭いません。他方、父親になっても、多くの男というのは、ストロス・カーン(フランス政治家・IMF専務理事)や、シュワルツェネッガー(映画俳優・カリフォルニア州知事)、ベルルスコーニ(イタリア首相)のように、何ともいい加減な、セックスと権力の快楽エコノミック・アニマルです。

海でも山でも空でも、この世界のすべての美しいものを見せてあげたい。母親として娘の薫に自分のすべてを与えたい、と希和子は願います(写真館で、薫の手を包み、すべてを与えました)。薫といっしょに明日も生きていることが幸せなのだ、と語ります。

しかし、こんな母親がいたら、子供はいつ独立できるのでしょうか? 薫は誰と結婚するのか?

人質となった女性が犯人に協力した、ストックホルム症候群、という言葉を思い出します。カルト集団の、マインド・コントロール、も有名です。Wikipediaを観れば、その逆に、犯人が人質に感情移入して殺せなくなる、リマ症候群、というのも紹介されています。

子供は、大人たちの作った世界に閉じ込められ、魔法をかけられ、そこから自立するまで翻弄され続けます。アフガニスタンには、土地や資産を交換する家族間の取り決めで結婚する少女がいるでしょう。アメリカには、離婚と再婚を繰り返す両親の下で、さまざまな親を持つ一種の拡大家族が形成され、子供たちは自分の地位を争います。

それは、親子や家族という生き方に社会(今ならグローバリゼーション)が与える、感情的な難しさです。

偽りの親子でも、その愛情が本物であり、尊いものであると信じるけれど、それが、本当の親子から奪ってきたということに、恐ろしいものがあります。もしその少女が貧しい国から難民船で日本にたどり着いた、しかも、彼女の両親が船中の争いや病気によって亡くなってしまった孤児であれば、親子の愛情は手放しで称賛されたのでしょう。

あるいは、死をも覚悟して子供と一緒に海を越えなければならない状況に生きていた彼らは、やはり、子供を奪われた、と死んでも悔やんでいるかもしれません。

自分が産んだ子供を、若い恋人と部屋で楽しむ間、邪魔になってヴェランダに出し、柱に縛り付け、段ボール箱に押し込んで窒息させてしまう母親もいます。しつけ(躾)だ、という親の特権的な正当化は、言葉や暴力で子供を血まみれにします。

映画の冒頭は、裁判のシーンです。「死ね! 死んでしまえ!」と絶叫し、希和子への憎しみを爆発させる本当の母親。夫婦や親子の関係に閉じ込められたまま動揺し、沈黙する父親。カルト集団として解体されたホーム(エンジェルさんの家)では、男から逃れた母子を保護して、奇妙な宗教的共同体を営みます。

偽りの母子が示すあまりにも深い愛情と、現実には耐えられないほど大切な関係が美しいほど、映画のテーマは残酷であり、それを苦しみながら克服する娘(薫=恵理菜)の人間的な成長が、自分の産む子供には双方の母親から学んだ愛情と苦しみを正しく伝えるかもしれない。

そんな希望を許す結末に、親であることを経験した人たちは、ようやく、救われます。

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