IPEの果樹園2009

今週のReview

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IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

中国の民主主義、 チェイニーの政権批判、 米中の共棲関係、 貧困と飢餓、 北朝鮮の核実験、 ヨーロッパ、 戦争の都市化、 カリフォルニアとユグノーユニクロ

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


CSM May 21, 2009

Get moving on worker mobility

LAT May 21, 2009

The COLA wars

By Andrew G. Biggs

The Guardian, Thursday 21 May 2009

America's hunger crisis

Sasha Abramsky

(コメント) 労働者の移動を促し、インフレ調整を破棄し、景気回復を促すことが正しいのでしょうか? しかし、他方で、十分な食事もできない貧困層がアメリカにも存在します。

豊富や飽食の中で、貧困や飢餓が広まるアメリカの姿をSasha Abramskyは訴えます。政府の食料切符を支給されている人口は3200万人、国民の10%を超えます。テキサス州だけで300万人です。しかも、支給されているのは、実際に必要な貧困家庭の3分の1、カリフォルニアでは半分程度でしかない、といいます。その支給額も、上限が週に50ドル、一食当たり2ドル余りと決まっています。


YaleGlobal, 21 May 2009

India’s Election Shows Equitable Globalization Can Succeed

Sadanand Dhume

WSJ MAY 22, 2009

India and the Future of South Asia

By MATTHEW KAMINSKI

WSJ MAY 22, 2009

The U.S.-India Moment

By ALYSSA AYRES From today's Wall Street Journal Asia.

The Guardian, Saturday 23 May 2009

India has chosen the middle path

Kapil Komireddi

The Japan Times: Wednesday, May 27, 2009

Regional challenges await Indian government

By HARSH V. PANT

(コメント) グローバリゼーションと平等とが両立するでしょうか? インドの選挙は、漸進主義的な経済改革と、その成果である、とSadanand Dhumeは考えます。

隣国とは核戦争の恐怖、領土紛争、国内にはテロリスト、・・・たとえ選挙に勝利してもインド政府の課題は多くあります。南アジアには、ますます、インドだけでなく、中国、アメリカ、ロシアの関与が強まるでしょう。


SPIEGEL ONLINE 5/22/2009

CHINA'S PUBLIC ENEMY NO. 1: How Beijing is Battling the Global Crisis

By Wieland Wagner

Asia Times Online, May 23, 2009

Easy bets with other folks' cash

By Chan Akya

WSJ MAY 23, 2009

Don't Monetize the Debt

By MARY ANASTASIA O'GRADY

WSJ MAY 23, 2009

Moral Hazard and the Meltdown

By SCOTT E. HARRINGTON

(コメント) アメリカの景気刺激策はその効果が不明であり、中国の景気刺激策は再び共産党の政治キャンペーンとなっています。ただし、国民の敵は世界不況です。

ウォール街など、世界の資産家たちが恐れるのは、プロレタリア革命よりも、政府による債務の貨幣化、インフレーションの加速です。

WP Sunday, May 24, 2009

The Money In Our Mattresses

By David M. Smick

The Guardian, Monday 25 May 2009

Waterboard the Fed?

Dean Baker

FT May 26 2009

Exploding debt threatens America

John Taylor

Asia Times Online, May 28, 2009

The government bond glut

By Martin Hutchinson

(コメント) アメリカは財政刺激策を自慢するより、富裕層への増税が彼らの消費を抑制し、貯蓄が増えて貧しい層にもますます雇用が失われ、消費を削ってしまうことを恐れた方がよい、という主張が現れます。

しかし、アメリカ議会が認めた7000億ドルの資金はどこに消えたのか? 連銀が融資した2兆ドルは何に使われたのか? この危機を生じた責任を最も負うはずの人物はグリーンスパンであるはずですが。

民間から政府に移された莫大な債務はどうなるのか? 増税するだろうか? それはできない。むしろインフレが起きるだろう。国際商品価格はすでに以前の上昇傾向に戻りつつある。

FT May 28 2009

Inflation can act as a safety valve

(コメント) Are we faced with inflation or deflation? とFTは問いかけます。金融システムを救済するためにどれほど貨幣や信用を供給しても、すぐに商品価格の上昇が雇用の増加を妨げるでしょう。

それは、サッチャーが登場した背景でした。

FTは、インフレ率で利回りを調整する国債を発行してはどうか、という提案に反対しています。それは、賃金のインフレ調整を認めるのと同じように、インフレの負担を他者に転嫁するものです。そして、もしすべての価格がインフレによって調整されるとしたら、それはインフレが急速に悪循環となって爆発することを意味するでしょう。

なるほど、サッチャーなど、保守革命の指導者たちは、労働組合を破壊し、国有企業や国有資産を次々に売却・民営化したのです。

Robert Shillerは、インフレだけでなく、デフレにも調整できる、としてインフレ調整の計算単位(“basket”)を提唱します。FTは、実質賃金を切り下げることは難しい、と反対しています。

WSJ MAY 28, 2009

Crazy Compensation and the Crisis

By ALAN S. BLINDER

(コメント) 税金で救済された金融機関の重役が高額の報酬を得ていることに批判が強まり、政府はそれを制限しました。しかし、ALAN S. BLINDERは、金融危機の条件として金融部門全体の給与システムが間違っている、と批判します。

他人の金で賭けを続ける以上、それを大きくして利益を増やし、損が出たら、それを取り返すために借りるのは当然です。たとえ失敗しても、彼らはせいぜい職を失って他の会社に移るだけです。金融機関は政府が救済してくれます。

「なぜそれほどの高収入を得られるのか?」 と問えば、彼らの答えは「ほかでも皆そうしている」・・・です。ALAN S. BLINDERは、金融部門の報酬システムを、金融機関の重役や弁護士、会計士たちがこれを改善するべきだったが、その失敗のせいで経済全体をこれほど損なうことが分かった以上、政府が介入・監督するべきだ、と考えます。


FP May 2009

Mired in Moldova

By Louis O'Neill


The Guardian, Friday 22 May 2009

Obama's military conundrum

Jeffrey Sachs

(コメント) 世界的な不況において選択される投資先は、歴史的に見て、開発のフロンティア地域か、戦場と兵器工場です。スーダン、ソマリア、パキスタン、アフガニスタンで、多くの兵器たちが命を失うより、できることなら、こうした地域の安定化と成長のために投資する方がよいでしょう。

貧困、失業、テロリストの掃討作戦がもたらす民間人の犠牲者、・・・こうした条件の下では、オバマ政権もこの戦いに勝てないでしょう。もっと開発に投資するべきだ、とSachsは主張します。


The Guardian, Friday 22 May 2009

Who says China can't have democracy?

Zhang Wen

(コメント) 民主主義と自由は西側の特産品ではない。中国人民にも十分な情報と選択の手段が許されれば、民主的な変革は可能である、とZhang Wenは主張します。実際、寒波に対して、地震に対して、粉ミルクの汚染に対して、中国人民は悲しみや怒りを共有し、政府に行動を求めてきました。

After much travelling and conversation, it confirmed my opinion that human nature has universal connections; so-called freedom and democracy can't be divided by west and east but are values shared by all. At the same time, I now feel America represents a model of future development of mankind and human integration.

私は心配です。アメリカを訪れた中国人が、自分たちも含めた未来の発展と統合の理想を感じるとしたら、日本を訪れた中国人は何を感じるでしょうか?

NYT May 24, 2009

Decline and Fall: A View From 2089

By BEN STEIN

(コメント) 2089年の中国で出版されたアメリカについての歴史書 “The Decline and Fall of the United States of America,” Beijing University Department of Western Hemisphere History (Beijing Press, 2089) を読む、という空想です。

無敵のローマ帝国も、内部の政策失敗で衰退しました。アメリカも同じであった、と書いてあります。財政赤字、インフレ、経済停滞、そして温暖化規制と国内産業の衰退、ドル建資産の買い手がいなくなる、・・・ 銀行家たちは議会の公聴会に引き出されて、まるで文化大革命のように自己批判させられた。

その参考文献は、“John Maynard Keynes and the Suicide of the West,” 2039, Hong Kong Press.

FT May 27 2009

Little leaps forward?

By Geoff Dyer

The Guardian, Wednesday 27 May 2009

As China destroys its culture, Hong Kong proves that its people care

Simon Jenkins

The Guardian, Wednesday 27 May 2009

China's race to supremacy

AC Grayling

(コメント) 中国は改革によって非常に豊かになりました。しかし、今回の経済危機で2000万人の工場労働者が職を失ったようです。

政治的自由も厳しく規制されています。それでも、共産党の市民生活への介入は、都市部の中産階級に関して、急速に弱まっていくでしょう。インターネットや携帯電話、さまざまな大衆文化において、特に若者への共産党の影響力は失われて行きます。すなわち、共産党の政治的支配は、都市の富裕層や若者の文化と妥協することで持続できるのです。


The Guardian, Friday 22 May 2009

US must rein in Israel's nuclear arms

Gideon Spiro

NYT May 24, 2009

Have We Already Lost Iran?

By FLYNT LEVERETT and HILLARY MANN LEVERETT

The Japan Times: Monday, May 25, 2009

Iran rules the hierarchy of Israeli emotions

By DOMINIQUE MOISI

(コメント) 中東和平に関わるオバマ政権は、イスラエルの核を管理できるでしょうか? イランの核保有という恐怖を払しょくできるでしょうか? あるいは、アメリカへの不信感は、イランへの空爆に至るのでしょうか? パレスチナ人たちの自由や再生は、どこにあるのか?


NYT May 22, 2009

Cheney Lost to Bush

By DAVID BROOKS

(コメント) ブッシュ=チェイニーの強硬路線は、すでに、2005年に政府内の闘争で敗北し、ブッシュ政権内部でも政策転換が進んでいました。オバマの大統領就任は、多くの面でその修正を継承しました。チェイニーはオバマと対立しているのではなく、自分の世界観を誇示するために架空の対立を強調し、オバマを攻撃しているのです。

FT May 22 2009

Obama’s balance of security and liberty

BG May 22, 2009

An end to Guantanamo values

The Guardian, Sunday 24 May 2009

If Obama cedes ground on torture to Cheney, we'll all pay a heavy price

Gary Younge

(コメント) 銀行の救済にも、自動車産業の破産処理にも、オバマの現実的な判断を支持する理由はあります。しかしオバマの強い支持者たちにも、拷問や虐待に関する情報を隠すような政府の判断は重大な間違いにつながる、と考える者が多いでしょう。

WP Sunday, May 24, 2009

Mars and Venus Collide

By Kathleen Parker

WP Sunday, May 24, 2009

One Worthy Debate

By David S. Broder

WP Tuesday, May 26, 2009

Worldviews Collide

By Eugene Robinson

(コメント) オバマ界とチェイニー界。それを選ぶのはあなただ。

オバマ界:朝。小鳥たちのさえずり。人は間違いを犯すが、慎み深く、合理的である。開明的な利己主義。大量破壊兵器はなかったし、イラクは9・11と関係ない。完ぺきではないが、今を精いっぱいに生きる。

チェイニー界:黄昏。オオカミの遠吠え。人の欠陥は是正できないし、修復もできない。証拠もないのに人の心の邪悪さを否定してはならない。やられる前に、やるべきだ。核テロの可能性を考えるだけでも、これを防ぐことが絶対に正しい。塹壕にこもって敵を待つ。


FT May 22 2009

A very British coup

By George Parker and Alex Barker

The Observer, Sunday 24 May 2009

A new democracy must emerge from this mire

FT May 24 2009

Fix up the House of Commons

FT May 24 2009

It is time to update the ancient constitution

By Larry Siedentop

(コメント) 20万円で自宅の池のアヒルのために公費で小屋を建てた。あるいは、ドッグ・フードを公費で買った(もちろん、自分で食べない)。・・・イギリスの政治スキャンダルは、何と質が高いことか? それは、西松建設が献金するより、納税者である市民たちにとって耐えがたいことなのです。

FTの記事も、その些細な不正に仰天します。それは情報公開の勝利であり、大きなスキャンダル以上に、政治家すべてと政治システムへの信頼が問われている、と。

「イギリスの社会構造の変化は、その伝統的な政治文化を受け入れられないほど大きく変化した。」とLarry Siedentopは考えます。中央集権化、政党システム、移民、多文化主義、EU、・・・「コモン・センス」を前提に政治を行うことが難しくなっています。法律によって、明確に、義務と権限を示さなければなりません。現代の憲法を書くことです。

The Times, May 25, 2009

The House where time stood still

William Rees-Mogg

The Guardian, Wednesday 27 May 2009

If this great reform is to be durable, we need to pin our politicians down

Timothy Garton Ash

(コメント) 10項目の政治システム改革を唱えています。いくつかの点でアメリカ議会の良い点を参考にしています。

1.議員の代表制を高める。2.議員や首相の任期を限る。3.委員会を重視する。4.議員の報酬を増やす。5.上院を貴族の集まりにしない。6.地方政府の強化。7.権利。8.データベース。9.表現の自由。10.憲法の成文化。


FT May 22 2009

The US dollar

SPIEGEL ONLINE 05/26/2009

CHINA'S YUAN: The Next Reserve Currency?

By Steve LeVine

WP Tuesday, May 26, 2009

Beijing's Would-Be Houdinis

By Sebastian Mallaby

NYT May 28, 2009

Geithner Prepares to Meet With Chinese Leaders

By JACKIE CALMES

FT May 28 2009

Geithner goes to China

(コメント) 国際通貨としての人民元は、交換性を保証し、政治的な安定性と開放性を確立できるでしょうか? それはいつごろになるか? アメリカはそれに協力するでしょうか? アメリカ自身の金融・財政的な混乱が生じる? あるいは、いよいよ国際通貨対立から経済戦争が生じる?

米中の経済首脳会議でも、アメリカから見れば、為替レートの適正化(人民元の切上げ)が問題であり、中国から見れば、対米投資のためにドル価値の安定化が問題です。双方の合意は不可能ではありません。容易ではないでしょうが。

WSJ MAY 29, 2009

Why Beijing Wants a Strong Dollar

By ZACHARY KARABELL

(コメント) 米中の相互依存、共棲関係(あるいは情熱的な同棲生活)に関する、相互確証破壊(MAD)に似た新しい「神話」です。

中国政府は2兆ドルに及ぶドルだけ資産を保有して、ドル価値の減少を心配しています。ドルを国際管理するべきではないか? ドルが国際準備通貨としてアメリカ政府の政策に支配される時代を終わらせるべきではないか? ・・・

しかし、ZACHARY KARABELLは、中国政府自身が選択したのだ、と考えます。1989年、天安門広場を占拠した学生たちを武力鎮圧したとき、中国政府はアメリカの成長する経済と結びつくことで中国国民を豊かにし、自分たちの政治的な延命を図ったのです。それは彼らが予想もしなかったほど成功し、この共棲関係を解消するのは、中国の所得水準がアメリカに並ぶほど高くなったときでしょう。

確かに、アメリカ政府は経済を再建するために中国からの投資を頼りにしています。しかし、中国政府はドルの価値やアメリカ経済の成長を回復することを誰よりも願っているのです。ドル資産を売るとか、アメリカ市場やアメリカの多国籍企業を切り離すとか、そのような妄想で中国のナショナリズムを満足させられると考えるエリートはいないでしょう。

天安門の再現を恐れるなら、ナショナリズムよりも、資本主義を中国政府は選択するはずです。


WP Saturday, May 23, 2009

A Handle on Derivatives

NYT May 24, 2009

That Freshman Course Won’t Be Quite the Same

By N. GREGORY MANKIW

(コメント) オバマ政権が示したデリバティブ規制の方向をWPは支持しています。N. GREGORY MANKIWは、いわばこの問題を経済学の講義に反映させています。金融危機によって経済学の導入科目が変更された太陽として、1.金融システムには政府が介在している。2.レバレッジは損失も膨らませる。3.金融政策を過信するな。4.経済予測は間違う。


NYT May 24, 2009

The Hidden Hunger

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT May 26, 2009

What Will Happen When the Baobab Goes Global?

By DAWN STARIN

The Zimbabwe Independent, 26 May 2009

African Land Grab

Gwynne Dyer

(コメント) 飢餓によって死ぬ子供たちが・・・まったく静かに息を引き取るのを見るとき、私はもっとも絶望する、とNICHOLAS D. KRISTOFは書いています。泣くことも、笑うことも、動くこともない。恐怖も、痛みも、関心も示さない。小さな、生きた屍が、最後のカロリーを失って、しおれてしまう。

そしてNICHOLAS D. KRISTOFは、飢餓ではなく、栄養不良が問題であり、欠けた鉄分やビタミンをサプリメントとして補給することを指摘します。しかし、飢餓に加えて、アフリカで栄養食品の配給制を敷くのでしょうか? 私には、むしろ悪夢のように思います。

また、アフリカの貧しい人々がバオバブの木の果実をジャムにして輸出できれば、彼らが豊かになる貴重な手段となるはずです。しかし、DAWN STARINは、バオバブがやせた土地でも自生する少数のアフリカの樹木であるから、国際商品として果実はすぐに不足し、その価格が上昇すれば人工的に植樹されるだろう、と指摘します。それは外国の資本がアフリカの土地を囲い込み、それまでは自由に遊牧していた人々を土地から追い出すことになりそうです。そうであれば、バオバブが増えても、人々の貧困が解消するとは限りません。

さらに、アフリカのビジネスが、しばしば示す汚職や生態系の破壊、貧困は、バオバブ・ビジネスにも生じるでしょう。しかしDAWN STARINは、バオバブの果実を国際市場から締め出すべきだ、と主張するのではありません。むしろ、労働者たちが十分な所得を得られるように、「フェア・トレード」として国際規制するべきだ、と主張します。

実際、産油諸国や中国の外貨準備は、他の大陸で肥沃な耕地を買収するために使われている、という報告があります。インド、韓国、イギリスも、アフリカの土地買収に励みます。Gwynne Dyerはそれらを「新植民地主義」と呼んでいます。しかし、結局は、地球温暖化や国際政治の不安定化が、そのビジネスを失敗に終わらせるかもしれませんが。


The Japan Times: Sunday, May 24, 2009 An offer Pyongyang can't refuse By HISAHIKO OKAZAKI

BBC 2009/05/25 Urgent talks after N Korean test

(コメント) 岡崎氏の論説は、その将来への期待において裏切られましたが、興味深いものです。

アメリカ政府が北朝鮮と交渉する姿勢には二つありました。一つはクリントン政権が合意した非核化の枠組みです。北朝鮮はIAEAの監視する非核化の代償として、重油の供給と軽水炉型の原子力発電所を建設してもらうことに合意したのです。他方、ブッシュ政権は北朝鮮の政治体制が崩壊することを前提に、「悪の帝国」の一つとして非難し、交渉を拒んで厳しい制裁を行いました。特に日米で金融封鎖をおこなったことは、あと数カ月持続できたら体制の崩壊も起きた可能性がある、と岡崎氏は考えます。

しかし、理由は分析されていないのですが(チェイニーらの強硬派からライスなど外交への重心移動)、ブッシュ政権は末期になって北朝鮮との交渉を再開し、日本が強く反対したにもかかわらず、テロ支援国家の指定を解除してしまいました。岡崎氏は、この失敗を繰り返したくない、と考えています。どうするべきか?

結局、クリントン政権が合意したのは、6カ国協議に従うのではなく、日米韓が緊密に交渉して意見を統一していたからだ、と主張します。そこで、交渉においては、三つの条件を必要とする、と日本政府が求めるのです。1.北朝鮮との国交正常化交渉は、日米で統合的な過程とする。2.日本は拉致問題の完全な解決を譲れない条件とする。3.アメリカは日米韓の統一意見を持って北朝鮮と交渉する。・・・

経済・金融制裁だけで北朝鮮の政治体制が崩壊するでしょうか? 中国を無視して、日米韓の意見が一致すれば、北朝鮮は従うのでしょうか?

通常の軍事力が衰える一方で、ますます核武装に依存する傾向が強まったのかもしれません。北朝鮮はその後、核実験とミサイル発射、朝鮮戦争の停戦合意を否定するという声明を発表して、事態のエスカレーションを進めました。

FP Mon, 05/25/2009 Was North Korea's test really a surprise?

The Guardian, Monday 25 May 2009 North Korea escalates the arms race Robert Fox

(コメント) アメリカはこの実験を全く予想できなかったのでしょうか? NATO総会でオバマ大統領が「核のない世界」を目指す演説をしても、北朝鮮の核実験は着々と準備されていたわけです。今度の核実験の日、韓国では南北対話を支持した金大中を引き継いだノ・ムヒョン前大統領の自殺が伝えられています。

北朝鮮には、核開発への自信があるだけでなく、(権力の継承や方針をめぐる内部分裂が生じて)時間がなくなっているのかもしれません。強硬姿勢は内部の不安を示すものだ、という観察があります。朝鮮半島情勢は、いよいよ加速するのでしょうか?

他方、アメリカから見れば、北朝鮮への対応はイランやパキスタン、アフガニスタンの戦略と同時に考えなければなりません。もし核拡散防止体制が有効な対抗策を示せないなら、今後15年間で、核保有国は2030カ国に増えるだろう、とRobert Foxは予想します。

The Guardian, Monday 25 May 2009 No more sunshine in North Korea Simon Tisdall

The Guardian, Monday 25 May 2009 North Korea: the world watches Obama Simon Tisdall

(コメント) Simon Tisdallは、三つの説明を提示します。1.権力の継承をめぐる内部対立が激しくなった。2.韓国の宥和(太陽)政策が終わることを心配した。3.中国は自分たちの国益でしか行動しないし、国際社会の対応には限界があるから、北朝鮮の体制は突如として崩壊する。その後、地域の安定化は合意されておらず、南から韓国とアメリカが、北からは中国が、軍隊を送り込む。朝鮮半島の厳しい歴史が繰り返すわけです。

Simon Tisdallは、オバマに多くの選択肢がある、と考えます。クリントンは和解に努め、オルブライト国務長官を送って話し合いました。ブッシュはそれを嫌って強硬策を続け、最後になって交渉しました。しかし、長期的には、二人とも成果を上げていません。オバマは融和策にせよ、対決策にせよ、単独で動けるが、その成果は乏しい。北朝鮮や、他の核武装を目指す国家は、西側の制裁が無能であると考えるでしょう。

SPIEGEL ONLINE 05/25/2009 Kim Jong Il Has Bombs for Barack By Andreas Lorenz in Beijing

NYT May 25, 2009 The Test Ban Treaty

WSJ MAY 25, 2009 U.N. Council Condemns North Korea's Nuclear Test By JOE LAURIA in New York, EVAN RAMSTAD in Seoul and IAN JOHNSON in Beijing

(コメント) この爆発はクリントン国務長官を招く狼煙である、とAndreas Lorenzは考えます。北朝鮮が望むものは、アメリカによる安全保障である、というのは矛盾あるいは皮肉です。南との経済開発特区も閉鎖して、いつ北朝鮮経済は崩壊するのか? と国際社会は問いかけています。

ソビエト連邦から核兵器製造の技術を学び、パキスタンに教え、それはイランにも流出した、とアメリカやイスラエルは批判します。北朝鮮は、アメリカと対等な核保有国として安全保障を合意しなければならない、と考えます。

安全保障理事会は、何か有効な強制力を持っているでしょうか? それ以前に、常任理事国の合意を形成できるでしょうか?

Asia Times Online, May 26, 2009 Yes, North Korea is a nuclear power By Donald Kirk

Asia Times Online, May 26, 2009 The last gambling chip By Anna Konopatskya

FP April 2009 Ending North Korea's Endless Nuclear Drama By Morton Abramowitz

(コメント) その規模は1945年の長崎に落とされた原子爆弾にほぼ等しい、というロシアの推定は、日本人にとって深刻なものでしょう。中国政府も、この実験を事前に知らされていなかった、と言われます。6カ国協議は、宥和策を引き出し、周辺諸国の対立を煽り、核実験までの時間稼ぎに使われたのです。

韓国軍の防衛体制は最高レベルに引き上げられています。さらに、北朝鮮の核軍拡と弾道ミサイルは、アメリカ、ロシア、中国の均衡と軍縮の交渉にも影響を与えそうです。

Morton Abramowitz は “to think outside the box”と主張します。・・・代償を支払え。深刻な結果が伴う。・・・アメリカ国務省は警告し続けています。しかし、アメリカ政府内部にも、日本と韓国という周辺の友好国にも、意見の深刻な対立があります。

そうであれば、強硬な発言を繰り返すより、交渉に戻ることです。非核化と、その検証作業について合意し、国交正常化を交渉します。そのための条件が経済援助(と国内改革)です。しかし、北朝鮮の指導部はすべてが得られるまで切り札を手放さないでしょう。より包括的な交渉を始めて、一気に決着することでしょう。

WP Tuesday, May 26, 2009 No Crisis for North Korea

The Times, May 26, 2009 North Korea's nuclear message to Kim Jong Il's own hardliners Richard Lloyd Parry

(コメント) 北朝鮮の核実験に対する最も有効なアメリカの対応は無視することです。「これは危機ではない。非常事態でもない。北朝鮮の常とう手段だ。」・・・北朝鮮の目的はアメリカ政府の関心を高め、交渉を有利に進めることです。そして、今後の、北朝鮮によるエスカレーションについては対応策を協議し、周辺諸国が合意しておくことでしょう。

すなわち、唯一の積極的な対応策は、(アメリカ政府ではなく)6カ国協議が示し、それは責任をもって中国が取りまとめる。アメリカは、その合意がない限り北朝鮮に経済援助を与えないし、国際機関が北朝鮮を認めることもない。

Richard Lloyd Parryは、金正日という独裁者を、もっと普通に考えてはどうか? と提案します。スターリン主義の独裁体制を築いたものの、経済の衰退は手に負えません。健康上の問題もあるし、後継問題では決断が遅れています。それは支配体制にとって最も危険な、システムの不確実性をもたらします。

すなわち、核実験はアメリカに対する威嚇ではなく、国内体制の団結と権力維持を図ったものでしょう。金一族が頼りとする軍の強硬派に権力をゆだねる(他を弾圧する)方針を示したものかもしれません。

The Times, May 26, 2009 The Waiting Game

BBC 2009/05/26 What is North Korea's game plan? By Aidan Foster-Carter

(コメント) 国連安保理の決議も、それだけでは、十分な効果がないでしょう。問題は、東アジア諸国や、潜在的な核保有を目指す諸国の反応です。

北朝鮮の国民にとって、地域の安全保障体制に参加し、世界市場に統合して、輸出や技術移転を介して成長を実現する、という道を選択することが正しいでしょう。中国やベトナムがやったように、それは可能です。しかしそれが、金正日の権力を維持する問題となると、核武装と切り離せないのです。

FP Tue, 05/26/2009 The best possible response to the North Korean nuclear test By Daniel W. Drezner

FP Tue, 05/26/2009 On North Korea's nuclear and missile tests Stephen M. Walt

FP Tue, 05/26/2009 North Korea Nuclear Test By Donald G. Gross

FP Tue, 05/26/2009 On North Korea's nuclear and missile tests By Stephen M. Walt

FP Tue, 05/26/2009 The nuke whisperers... By David Rothkopf

FP Tue, 05/26/2009 How to quarantine the spreading cancer of North Korea By Philip Zelikow

FP Tue, 05/26/2009 From Pyongyang to Tehran, with nukes By Siegfried S. Hecker

(コメント) 北朝鮮の政治がどうなっているのか、中国も含めて、誰にも分からない。周辺諸国の誰も北朝鮮の体制が急激に変化することを望んでいない。軍事的な選択肢は採れず、誰もが短期的な宥和策に満足している。

もしかすると、今度こそ、北朝鮮は国際体制からの逸脱を始めたかもしれません。そして、中国やロシアも本気になって、それを阻止するように動くでしょう。

あるいは、北朝鮮はあまりにも弱い、小国であるから、アメリカにとって特に対抗策は必要ない、というべきでしょうか? 中国や日本が考えるべきことです。

SPIEGEL ONLINE 05/26/2009 'North Korea Doesn't Hold All the Cards'

WP Tuesday, May 26, 2009 What to Do About North Korea By Dan Blumenthal and Robert Kagan

(コメント) 北朝鮮の核実験場や濃縮工場、核兵器の格納庫などを空爆して破壊する、という選択肢を求めています。周辺の同盟諸国には、北朝鮮からの報復を阻止する手段や方策について同意を得ることです。

この選択肢に比べて、中国を巻き込んで北朝鮮に圧力をかける、という選択肢が好まれました。しかし、たとえアメリカと利益を共有しているとしても、中国政府は北朝鮮の体制が不安定化することを望んでいません。中国は難民の流入を恐れており、また、統一した朝鮮半島が民主化されて、アメリカの同盟国と国境を接することを嫌うのです。

結局、ブッシュ政権は金正日が死んで体制が終わる時期を待ちました。オバマ政権は、ミサイル防衛網の予算を縮小し、その方針を逆転します。6カ国協議に復帰しても事態は改善しないでしょう。アメリカの目標は、北朝鮮の統一であり、朝鮮半島に中国の影響力が及ぶのを阻止することです。

そうであれば、アメリカ政府は交渉を再開し、非核化を含めて、朝鮮半島の問題に解決策を示すべきです。統一した、民主的な、コリアを求めるのです。経済援助も含めて、関与政策を発動し、中国から交渉の主導権を奪うことです。

もし中国がそれを好まないなら、金正日の軍備縮小に本格的な圧力をかけるでしょう。中国主導下の経済格格です。・・・それならそれで、良いことではないか?

NYT May 26, 2009 A Fast Way to Lose the Arms Race By JOHN R. BOLTON

FT May 26 2009 De-fang Pyongyang

WSJ MAY 26, 2009 Korea's Obama Test

WSJ MAY 26, 2009 North Korea Advertises Its Nukes By GORDON G. CHANG

Asia Times Online, May 27, 2009 World powerless to stop North Korea By Santaro Rey

Asia Times Online, May 27, 2009 Renewed drive for sanctions By Jim Lobe

The Guardian, Wednesday 27 May 2009 After Iraq, it's not just North Korea that wants a bomb Seumas Milne

(コメント) アメリカによるイラク戦争によって、世界の核軍拡競争は加速したのです。国連安保理ではなく、核を保有することだけが、アメリカに軍事攻撃を思いとどまらせる交渉材料です。

FT May 27 2009 North Korea

May 27 (Bloomberg) Kim's Nuclear Threat No Cause for Obama Panic William Pesek

BG May 27, 2009 Keep cool on North Korea

The Guardian, Wednesday 27 May 2009 How do you solve a problem like Korea? Robert Farley

(コメント) オバマは説得の名手でしょうが、北朝鮮の核実験を、アメリカ国内や同盟諸国、そして核武装を準備している諸国に対して説得するのは非常に困難でしょう。それゆえ、現状維持は困難です。

もし平和的な解決策があるとすれば、アメリカと中国が協力することです。

Asia Times Online, May 28, 2009 Beijing weighs its options By Jing-dong Yuan

Asia Times Online, May 28, 2009 Kim Jong-il tests US-China cooperation By David Gosset

IHT May 28, 2009 North Korea Misfires By BRIAN P. KLEIN

WSJ MAY 28, 2009 How to Reduce the Nuclear Threat By WILLIAM J. PERRY, BRENT SCOWCROFT and CHARLES D. FERGUSON

(コメント) アメリカは北朝鮮が入り込んだ地政学的な位置を(少なくとも短期的に)変えることはできません。北朝鮮に核による威嚇を行使させない方法は、1.ロシアや中国と北朝鮮の暴走を管理する協力関係を強化する、2.核拡散防止体制を強化する、3.同盟諸国の防衛に対する信頼を強化する、4.アメリカの核抑止力を確実にする、5.核兵器や核物質の国際管理を強化する。

特に、この最後の選択肢は重要かもしれません。

CSM May 28, 2009 Why Obama can't be soft on North Korea

SPIEGEL ONLINE 05/28/2009 'China Has Lost Face' over North Korea

NYT May 28, 2009 North Korea Tests

YaleGlobal, 28 May 2009 North Korea’s Nuclear Tantrum Shim Jae Hoon

Asia Times Online, May 29, 2009 A test of Washington's resolve By Donald Kirk

Asia Times Online, May 29, 2009 Size matters for North Korea's nukes By Matthew Rusling

IHT May 29, 2009 North Korea Will Never Disarm By B.R. MYERS


FT May 25 2009

The malady of manufacturing

WSJ MAY 27, 2009

Japan's Frankenstein Economy

(コメント) 日本の製造業に対する過度の依存も、ドイツと同じように、イギリスの発想(FT)からは間違いです。そしてアメリカの発想(WSJ)からすれば、もっと過激な、国家による介入・管理型経済改造への批判、すなわち、フランケンシュタイン経済論となります。

・・・経済を開放し、自由化せよ。市場による経済改革を推進せよ。国際競争に勝ち進んでいたとき、日本経済には活力がありました。今は政府によって消耗し、浪費された、企業と銀行の死骸だらけです。つぎはぎだらけのフランケンシュタイン経済は、ますます醜くなっていくばかりだ、と。


FT May 26 2009

What Europe must do to build a recovery

By Gordon Brown

FT May 26 2009

Feeble domestic demand is a chronic European ailment

By Martin Wolf

(コメント) 目標を示した効果的な支援がなければ、一時的な失業はそのまま永久に仕事を失わせるし、人々の技能も失われるだろう。金融が得られなければ健全な地域企業でも破産する。だからヨーロッパは、EU規模の融資機関を充実させるべきだ、とゴードン・ブラウンは主張します。

アメリカ発の金融危機がヨーロッパ経済を深刻な不況に巻き込んだ理由を、Martin Wolf4つ挙げています。1.ドイツ経済の輸出依存とその落ち込み、2.西欧におけるバブル崩壊後の需要の落ち込み、3.東欧における資本流出と支出カット、4.ヨーロッパの金融システムが持つアメリカ経済への脆弱性。

回復も輸出頼みで、国内需要は金融危機後に回復することはない。結局、低成長でさえ、その財政支出への依存が高まるだろう、と予測します。つまり、豚インフルエンザに似た、日本病への感染です。・・・強毒性に変異するか?

The Guardian, Wednesday 27 May 2009

Europe's moment of truth

Antony Lerman

The Times, May 28, 2009

America sneezes and the world is germ-free

Anatole Kaletsky

(コメント) 経済危機が示すのは、「ヨーロッパ」を強化する必要です。リスボン協定が成立しないまま、ヨーロッパは迷走しています。連邦主義を掲げながら、各国の主権を守り続ける。しかし、民主的に選ばれたヨーロッパ議会が権力を握る以外に、ヨーロッパは強化できません。

人々の想像力は今も国民国家のうちにあります。たとえそれが近代の人工的な制度であっても、また、とっくに効果的な領土を失ってしまったと分かっていても、人々が愛着を感じる限り、政治家たちの道具になります。危機に対して効果的な協力を組織できない国民国家と、ワシントンや北京で決まる世界の景気回復を待つしか失業者に有効な手だても示せないヨーロッパとにはさまれて、人々に高まる不満の声は、東欧のように、政治的分裂や過激な手段を要求し始めます。

"Europe is a fact. But it still needs to become a dream."

政治統合の根拠は明確です。それは20世紀が築いた、国境を超える相互依存です。ヨーロッパは2度の戦争だけでなく、教育を通じて、その重要性を教えてきました。しかし、各国が民主主義を強化し、説明責任を果たすだけで、ヨーロッパの相互依存を管理することには限界があります。特に政治指導者たちが過去の政治幻想を利用するばかりであるなら。

世界金融危機が示すのは、アングロ・サクソン資本主義が終わった、というよりも、中枢から周辺への新しいパワー・シフトが起きることだ、とAnatole Kaletskyは考えます。それは、たとえば、南アフリカやブラジルであり、その通貨価値が急速に回復したことに注目します。

もちろん、その背後には新興市場経済が成長して食糧や資源への需要を高めていることがあります。旧中心諸国(欧米日)が危機であれ、長期停滞であれ、新興市場経済群の形成する多角的世界市場の需給にとっては意味がなくなっていくでしょう。


The Guardian, Wednesday 27 May 2009

The urban map of terror

Saskia Sassen

(コメント) パキスタンや中東諸国が示すように、国家の軍隊による国際安全保障は、国内の無秩序や都市の反乱を拡大するのでしょうか?  Saskia Sassenは、そうだ、と考えます。わずか6週間の空爆で、アメリカはイラクの軍隊を壊滅しました。しかし、それは圧倒的な軍事的優位を示しながら、その後も、終わりの見えない戦場を拡大し続けています。

それを「戦場(戦争)の都市化」と呼びます。過去の戦争は、開放的な海上や平野において決着がつきました。しかし、第二次世界大戦では、都市を破壊することで戦意を失わせることが始まります。前線の戦いだけでなく、都市の防衛が重要になりました。前線でますます大規模に戦い、しかも兵器産業や兵站を守りながら、都市の市民を空爆から守ることは難しい、とわかります。

1998年以後、テロ攻撃の対象は軍事基地から都市の標的に変わります。都市は、商業や市民文化において重要な役割を競ってきたが、今では戦場としても重要になった、とSaskia Sassenは考えます。ギャングの抗争や麻薬戦争から、国際テロ集団まで、都市は世界を結びつける一つの戦場なのです。

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The Economist May 16th 2009

Three trillion dollars later…

A special report on international banking: Rebuilding the banks

Central and Eastern Europe: No panic, just gloom

Immigration and agriculture: No rural idyll

Asian economies: Crouching tigers, stirring dragons

Buttonwood: Birth pains

(コメント) 金融危機は世界で3兆ドルを失った後、改革によって健全になるのでしょうか? ふたつの問題が残っています。1.巨大銀行を分割することはできないだろう。2.報酬体系を制限することも効果はないだろう。・・・これがThe Economistの判断です。現実的な改善策も示していますが、私には同意できません。特集記事も、多くの紙面を費やしながら、現実に変化に合わせた金融システムの本質は見えてきません。普通の銀行がもっと見直される、ということでしょうか。

中東欧の経済危機を誇張してはならない、というThe Economistの主張にも、半分だけ感心します。そして、アジアから新しい国際金融秩序が誕生する、という記事には、金融のインフレ抑制要求がアジアで具体化する姿を求めています。


The Economist May 16th 2009

Banyan: Creative destruction

Winners in Japan’s recession: Gloom and boom

California: The ungovernable state

Gay marriage: Man and man in Maine

(コメント) 日本も政治的なマヒが懸念されますが、カリフォルニアの記事を読んでみると、その対照が興味深いです。有権者は直接選挙で税負担を拒み、社会的な給付を拒み、他方、政治家たちは議会で議論も妥協もせず、選挙区の変更や過激な社会的テーマで有権者を囲い込み、再選を確実にします。

ゲイの結婚を制度化し合法化する州が増えて、現代のユグノーのように、すぐれた起業家やゲイの資産家が州を移動しているのではないでしょうか? 他方、日本の不況では、無印、ユニクロ、といった新興企業が急速にビジネスを拡大しています。創業者の柳井氏は、フォーブズも認める資産家で、資産総額は61億ドル(約6000億円)というのですから、絶句します。

それは世界不況の原因(貧富の格差)や、中国人の労働者を搾取し、日本の多くの商店を破産させた、などという理由で厳しく非難するべきでしょうか? 私はそう思いません。これほどのビジネスを築いた人物の発想と行動力を称えたいです。そして、資産も含めて、その能力が雇用の創出や地域の活性化、日本やアジアの革新と統合にもおよぶ可能性を想うのです。