IPEの果樹園2007

今週のReview

9/24-9/29

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

グリーンランド, ノーザン・ロックの取り付け, 金融政策‚PC‚Q, 日本, グリーンスパン回想録, ベルギー, スウェーデン

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


The Japan Times: Thursday, Sept. 13, 2007

Lashing out at U.S. won't help Taiwan

By BRAD GLOSSERMAN

The Guardian Monday September 17, 2007

Bullying and diplomacy

Ian Williams

(コメント) 台湾の独立派が選挙に勝ってから,何度も政治的な危機が起きました.中国は軍事的威嚇にも及び,アメリカも自制を求めていますが,独立派は北京オリンピックを独立宣言の好機と考えて行動を起こすようです.

独立を要求することが国民の利益なのか,民進党の利益なのか? たとえ国民投票で台湾が独立を決めても,中国とアメリカはそれを許さないでしょう.なぜなら6カ国協議で,両国は朝鮮半島の非核化に協力しているからです.台湾の問題は,現状維持,ということで合意しています.・・・たとえ軍事衝突が起きても?

しかし,各国とも世論の動きを無視できません.Ian Williamsは,イギリスがフォークランド紛争に軍事介入したように,アメリカも参戦する可能性を否定しません.民主的な政府の要求にミサイルを並べて嫌がらせをしているのは中国です.共産党や毛沢東も,植民地が解放されたとき,住民が独立を宣言することを支持していたではないか? 本国政府の承認で独立を祝った方が,アイルランドやジブラルタル,その他の島とともに,幸せになれたのではなかったか,と考えます.

問題は,アメリカ政府の態度です.陳水扁大統領がワシントンを訪問するどころか,アラスカを経由して帰国するのに,10分しか認めなかったブッシュ政権は,結局,フォークランド紛争に軍艦を送ったサッチャー首相と同じ状況に追い込まれるだろう,と.もちろん,全然,その規模が違うでしょうが.


NYT September 14, 2007

A Surge, and Then a Stab

By PAUL KRUGMAN

NYT September 14, 2007

No Exit, No Strategy

FT September 14 2007

A hopeful end to optimism

By Christopher Caldwell

NYT September 15, 2007

The Nightmare Is Here

By BOB HERBERT

(コメント) KRUGMANは,アメリカがイラクの石油について何をしたか見れば,ブッシュ氏の失敗がよくわかる,と主張します.なぜならイラクにもし石油が無ければ,そこは争いの続く軍閥の土地でしかなく,石油収入をイラク市民のために使う,というのが戦争の目的の最重要項目であったからです.

イラクの石油を共有・分配する法律は成立せず.逆に,クルド人地区の政府はアメリカ・ダラスの石油資本と組んで開発する合意を発表しました.

これは変だ,とKRUGMANは噛み付きます.その会社は,ハント・オイルであり,社長兼会長のハント氏はブッシュ大統領の後援者の一人です.いつものように,こうした人物がブッシュ政権で重用され,この場合,Foreign Intelligence Advisory Boardのメンバーになっています.その地位ゆえに,イラクの事情をよく知っているハント氏の会社が,イラクの石油を分割して,勝手に開発する契約を結び,他方,ブッシュ大統領は戦争の成功を語り続けています.

いずれの論説も指摘しているように,ブッシュ氏の説得は真実を告げていません.彼には,自分が引き起こした混沌を収拾する道が見えないのです.そして,「戦争は平和だ!」という,オーウェル的なスローガンを連呼するしかないわけです.

ブッシュ氏は,撤退を受け入れず,しかし軍事介入の拡大も国民が望まない以上,それを「増派」と呼んで,撤退の条件であるかのように事態の改善を試みました.それも失敗に終わったわけです.

シリアやイランは,イラクが分裂すれば最も大きな損害を受けるはずです.周辺諸国と,フランスやドイツ,イギリスにも協力を求めて,アメリカは戦略を転換するべきですが,ブッシュ氏にそのつもりはありません.議会がブッシュ氏の延長工作を断固拒否して,撤退期限を強制せよ,とNYTは主張します.

Christopher Caldwellは,ペトレイアス将軍の証言が,新しい戦略を示すか,苦しい撤退の選択を示すか,その期待を高めたことを後悔します.証言は何の答も示せず,しかもその理由は,アメリカ国民の厭戦気分にあるから,というのです.

政治は楽観と悲観とを循環しており,この変化をつかむ人物が政治を大きく動かします.ルーズベルトやレーガンがそうであったように,楽観によって支配する大統領は誰をも従わせます.しかし,国民は楽観だけでなく優れた政治判断を求めています.どこにリスクがあり,どうやってそれを回避するか,政府が正しい判断を示さなければなりません.

楽観は機会を大きく見せ,リスクを小さく見せます.他方,悲観はリスクを多く見せます.戦争は大統領の示す楽観の頂点でした.

BOB HERBERTは,議会証言がイラクの市民生活に起きている悲惨な状態を伝えていない,と批判します.特に,国内避難民(I.D.P.)を取り上げています.国民の1割に当たる200万人が国外に逃避し,他にも約200万人が国内難民となっています.国外に避難する人々の多くは医師や看護婦,教授などであり,イラクの医療事情を絶望的な状態にしてしまいました.

また,イラク戦争の前からひどい状態であった子どもたちには,最も過酷な生活が続いています.多くの子供が死亡し,孤児やホームレス,栄養不良になっています.

それでも,アメリカ政府は戦死者以外の犠牲者を一切数えず,推定もしていません.


The Guardian, Friday September 14 2007

Greenland is now a country fit for broccoli growers

Isabel Hilton in Qassiarsuk

(コメント) グリーンランドでブロッコリーの栽培!? 冗談かと思いましたが,本当のようです.温暖化によって狩猟は衰え,今までにない農耕の機会が見出されて,この夏,初めてグリーンランドでブロッコリーが栽培され,期待されている,というわけです.

いつかグリーンランドがデンマークからの財政援助を必要としなくなり,資源が開発されて,人口の増加と経済繁栄を背景として,政治的独立を達成する日が来るかもしれません.


NYT September 14, 2007

British Lender Offered Emergency Loan

By ERIC PFANNER

914日,イギリス金融当局が,本日,大手の住宅金融銀行を救済するために緊急融資を拡大した,と発表した.アメリカのサブプライム融資ビジネスで発生した危機は世界で最も沸騰していた住宅市場に飛び火し,世界的クレジット・クランチの影響が広まっている.

イギリス政府は,イングランド銀行がニューキャッスルに本拠を置く住宅融資( a mortgage lender )のノーザン・ロックに,規模を決めない流動性支援を提供することを認めた.ノーザン・ロックはここ数年に積極的な拡大を行ってきた.

そのニュースはノーザン・ロックや他の銀行の株式の売却を引き起こした.投資家たちは同様の問題を他の金融機関が抱えていることを心配し,またより広い経済に脅威を与えると心配していたからだ.

FTSE100の株価指数はロンドンの本日,正午前後に,130ポイント以上も下落した.

ノーザン・ロックの緊急融資要請は世界金融市場の危機がどれほど広がっているかを示している,とアナリストは述べた.なぜなら,今までは,ヨーロッパの銀行が直接にアメリカのサブプライム・ローンに投資していたことが問題であったから.

これに対してノーザン・ロックは,サブプライム・ローンには少ししか投資していないと述べていた.イギリスの監督局も,帳簿は健全であると述べた.

資本市場の収縮が銀行のビジネス・モデルを損なったとき,問題が発生した.ノーザン・ロックは銀行預金よりも,

資本市場での資金調達に大きく依存し,住宅に融資していた.

他の銀行が次第に新規融資を嫌いだし,ノーザン・ロックは既存の債務を支払えない可能性が生じた,という.

問題は潜在的に一層拡大しており,この危機に直接関わりのない機関にも及ぶ可能性がある.

メルビン・キング,イングランド銀行総裁が,アメリカの連銀やECBのような他の中央銀行の動きについて,この数週間,金融システムに流動性を供給してきたことが過度のリスク・ビジネスに褒美を与えて奨励するものだ,と警告してから,わずか2日後のことである.

イングランド銀行は,金曜日,ノーザン・ロックに対する融資を市場金利に上乗せして行った,と強調した.

FT September 14 2007

Don’t blame the foreigners

By John Gapper

FT September 14 2007

Stopping a run

FT September 14 2007

Northern Rock bail-out

FT September 14 2007

Bank of England

(コメント) イギリスで銀行の「古典的な取り付け騒ぎ」が起きたのは驚きです(ただし,特別融資は1973-74年の「救命ボート作戦」がありました).しかもキング総裁は,金融市場に対して慎重すぎるバーナンキの対応を批判していました.それだけに皮肉であり,大きな議論を呼んでいます.そしてイギリスでさえ(驚くことではないのでしょうが),問題は外国人(特にアメリカ)が起こした,と非難し,ナショナリズムを意識したコメントが増えている,と言います.

John Gapperは,アジア通貨危機の前とも比較して,開放型の高成長・高雇用・ポンド高を続けてきた,というイギリス人の自信過剰が調整されていることを認めます.ノーザン・ロックの経営は不安定で脆弱性を秘めていたし,インドランド銀行や政府の開放政策も同様の問題を隠していました.それが今まで称賛されすぎていたために,逆にショックに対してアメリカや世界的な金融危機の問題が強調されています.

「銀行に金を預けていても大丈夫なのか?」 ノーザン・ロックの取り付け騒ぎを観ながら多くの預金者は心配したわけです.しかも,イングランド銀行は世界でもっとも銀行救済を嫌っている,という評判だが・・・

「ノーザン・ロックは,ニューキャッスルの古い造船町にある三流の住宅貯蓄組合だった.1997年に銀行になって,市場型金融の新しい魔法の世界を発見した.巨額の融資をするのに,多くの預金者を必要としないのだ.資金は資本市場から借りて,これを顧客に融資した.融資は証券化して売却してしまった.こうしたたった76の店舗しかない銀行が,イギリスでも最大規模の有宅融資銀行になった.」

アメリカのサブプライム・ローン危機は,こうしたビジネスの基礎を破壊し,銀行間融資に,そしてイングランド銀行に頼りました.しかし取り付けを防ぐのは正しいが,病人を回復させるのはイングランド銀行の仕事ではなく,危機が過ぎれば強い銀行に値段を決めさせて買収させるのが良い,とFTは主張します.

アメリカのCountrywideは早期に買収されましたが,こうした新しいタイプの住宅融資が崩壊した際には支払い可能であることを判断するのが難しくなっています.他の投資銀行やヘッジファンドも同様です.

イングランド銀行は,結局,自分の主張を取り下げたのです.ノーザン・ロックへの融資は期限がなく,その担保には不動産しかなかったからです.システム・リスクに対応しても,投資家は救済しない,という原則の整合性を説明しなければなりません.株主たちが相応の負担を迫られねばなりません.競売の結果が注目されます.

The Guardian Saturday September 15, 2007

Banks and markets: Northern exposure

The Guardian Saturday September 15, 2007

The roots of moral hazard

Gavyn Davies

The Observer Sunday September 16, 2007

When net income won't cover gross habits

Will Hutton

FT September 16 2007

Bail-out that will damage Bank’s credibility

Willem Buiter and Anne Sibert

FT September 16 2007

Northern Rock

(コメント) 失敗の原因は,昔と同じく,不健全な経営でした.規模の拡大に走る,かつてよく批判された日本企業(今の中国企業?)のようです.住宅価格の上昇を期待して,債務への依存が増えていました.そんなとき金利が上昇してきたのです.それを監視していた金融監督局はどうなっているのか? また,労働党政権は何をしていたのか?

確かに,サブプライム・ローンというのは聞いたこともない,新しい問題です.証券化によってリスクが分散できるから,貧しい黒人やヒスパニックでも家が買える,という話でした.銀行にも政治家にも好まれたわけです.強欲と不健全な経営が金融システムをむしばんでいました.監督の責任は重大です.モラル・ハザードを避けるには,それしかありません.

たった1日で,10億ポンドが引き出されただろう,と言います.融資を拡大するのに,預金を市場に頼り,リスク評価も市場に頼って,その結果が市場のパニックによる破たんです.日本でも,土地神話がバブルに結びつきました.住宅融資は庶民を巻き込んで深刻な危機に発展します.どの金融機関が支払い不能であるかを,単に技術的に決めることはできません.危機になる直前は,金利の上乗せや大口の融資に頼ります.預金者(そして中央銀行)はそれを知りません.

今や,1974年の危機と違って,金融市場にすべての金融機関が結びつき,アメリカや中国の金融事情とも結びついています.イングランド銀行は,次々に救済融資を繰り返すしかないでしょう.その損失は納税者が負担します.

Willem Buiter and Anne Sibertは,中央銀行の責務が「物価の安定」であるなら,これほど拡大した金融市場に「最後の貸し手」という責務を引き受けることは矛盾する,と考えます.後者の合意を変えるときです.すなわち,イングランド銀行は決済システムの主要な機関の支払いを守るだけで,救済融資はFSAと大蔵省に任せます.

FT September 16 2007

Brace for Act II when the crisis goes global

By Wolfgang Munchau

(コメント) 世界金融危機が回避されたか・・・と思ったとたんに,イギリスで取り付け騒ぎが起きました.この危機は数か月でも終わらないだろう,とWolfgang Munchauは警戒します.

今は,第1幕の終わりに過ぎません.第2幕は実物経済で起き,第3幕がアメリカ経済の深刻な成長減速です.このアメリカ経済の減速はどこまで進み,どれくらい波及するだろうか?

まずユーロの増価が懸念されます.それが長期化すればEUの輸出と成長が損なわれます.金融危機に国際収支不均衡の調整が加わって,ドル暴落を引き起こす危険があります.Maurice Obstfeld and Kenneth Rogoff2004年の論文でも,アメリカの不況が不均衡を調整する始まりでした.アメリカはさらに金利下げ,ECBは金利を引き上げると思われます.

FT September 18 2007

Nationalising deposits

By Martin Wolf

先週,金融パニックがイギリスの大衆と政治家を襲った.そして二つの結果がもたらされた.一つは,1866年にOverend and Gurney が倒産して以来,初めて銀行取り付けが起きた.そして,ペンを動かしただけで,銀行預金が公的債務に変わった.これは歴史的な事件である.

どうしてこのような驚くべき事件が生じたのか? その答えは,伝染である.10年前にアジアで起きた金融危機と同じだ.19977月にタイがバーツの切り下げを発表したときに,危機が拡大すると予想したものはほとんどいなかった.しかし危機はでたらめに生じたのではない.この病気に強い国も,弱い国もあった.

ノーザン・ロックでも同じことが言える.それは大衆から預金を集めるコストの上昇を節約するために,融資を大口市場で売却していた.アメリカでサブプライムの不動産融資に危機が発生し,証券融資が投資家の疑いを招くまでは,それが有利な戦略だった.ノーザン・ロックは感染を免れなかった.クレジット,すなわち信用を失って,ビジネス・モデルが崩れた.

市場が干上がったことで,銀行は金融当局に助けを求めた.彼らは融資を約束していたからだ.しかしノーザン・ロックの救済は,劇場で「火事だ!」と叫ぶに等しかった.大衆は警戒し,金を取り戻そうとした.

大衆がパニックになれば,政治家もパニックだ.支払い能力のある政府なら,人々の預金が大幅に失われることを放置しないだろう.預金保険があるからそれは起きないはずだが,イギリスの保険は最初の2000ポンドまで全額保証し,さらに33000ポンドは90%を保証する.さらに悪いことに,その金融機関が支払い不能であれば,預金者は引き出しの列に並ぶしかない.イギリスの預金保険制度は問題のある銀行に取り付けが起きるのを妨げない.それを保証しているのだ.だから取り付けは全く合理的であった.

イングランドからの流動性供給はパニックを取り除けなかった.大衆はノーザン・ロックが支払い不能であるかもしれない,と恐れたからだ.金融当局がそうではないと言ったが,無駄であった.結局,彼らが扉を閉ざすことはない,と述べるべきだったのか? 大衆は金融市場よりも金融制度をもっと信頼すべきだったのか?

政府がすべての預金を報奨すると決めたことは完全に理解できることだ.第一に,預金者は有権者である.第二に,規制を受けているはずの金融機関に多くの人々が金を取り戻すため行列する光景は,政府の能力に対する致命的な信用失墜をもたらす,とどんな政治家でも知っている.第三に,普通の人々が長く経営されてきた金融機関の戦略を評価するとは期待できないし,特に,短期間に融資を増やしたとすればそうである.最後に,伝染が広がった.月曜日,住宅融資に資産をささげた機関の株価は買い手がつかなくなった.ノーザン・ロックは金融システムにとって重要ではないが,その崩壊はシステムにとって重大になった.

私は,肉親の一人がノーザン・ロックに資金を持っている.だから個人的に,今回の措置を喜んでいる.しかし,厳格なコメンテーターとしては,それを残念に思う.とはいえ,どのイギリス政府であっても他の行動は取れなかった.もしそうしなかったら,「大きすぎて潰せない」ような金融機関への資金移動が奔流となっただろう.

とはいえ預金の公的保証には問題がある.預金の払い戻しが国有化されたが,金融システムの資産は,規制があるとはいえ,民間の手にある.もしそのことの意味が分らないなら,金融部門で怒ってきたことについてあなたは注意を欠いている.

第一の問題は,破局を未然に防げたか,である.問題があったのは,ノーザン・ロックの融資戦略ではなく,その借入である.金融制度は,融資に必要な金融市場が混乱する可能性を排除するはずではなかったか? 今や問題は拡大している.

第二に,危機をもっとうまく扱えたか,である.イングランド銀行が優良な担保と懲罰的高金利で融資する,しかも,金融市場には介入しない,という「ビクトリア時代」的な姿勢を弱めていたら,危機を回避できた,と主張する者もいる.しかし,3か月の金利を低くしてもノーザン・ロックは助からなかった.イングランド銀行がもっといろいろな担保を認めれば,より多くの金融機関が融資を受けただろう.それによりノーザン・ロックは特別な不安に落ち込まなかったかもしれない.懲罰的な金利を減らすのもそうだ.それは経営の失敗した金融機関に莫大な補助金を与えることになる.

他方で,イングランド銀行は他の金融機関による買収に融資し,アレンジできたはずだ,という意見もある.つまりあからさまに「最後の貸し手」となるより,内密に救済するのである.それは先週ならできたが,今では不可能だ,という.ノーザン・ロックは利潤が減少する警告を発しており,どのような買収提案も(買い手の)株主が承知しない.預金者はその取引が彼らにとって破滅的であると知っているだろう.金融機関の透明性が取り付けを確実に発生させた,と.

第三に,将来の対策だ.通常の支払い不能機関に対する扱いは銀行に適用できない.さらに,預金保険はもっと寛大で,迅速にしなければならない.破たんした金融機関の株主は救済されない.だから私は,イングランド銀行が優良な担保に応じて懲罰的金利を取ることを今も支持する.株主は慎重な経営を要求するインセンティブを持たねばならない.

しかし,より広い問題がある.政府が預金者を苦しめておけないなら,モラル・ハザードが生じる.当然,その答えは,銀行を厳しく規制することだ.より多くの自己資本,長期の劣後債による資金,特別な流動性の維持,などである.

最後に,これで危機や伝染は終わったのか? と言えば,「とんでもない」と思う.もっと条件が悪いときに起きたらどうしよう,と私は恐れている.過去の過剰はより大きな苦しみと驚きをもたらす.しかし,それは必要であり,健全なことだ.

John Kay Helping savers and attending to credit risk FT September 18 2007

Regulators against a bank run FT September 18 2007

Matthew Lynn Wanted -- A New Governor for the Bank of England Sept. 19 (Bloomberg)

Northern Rock: Politics of a crisis The Guardian Wednesday September 19, 2007

Jonathan Guthrie Who dares comes unstuck FT September 19 2007

U-turn erodes Bank’s credibility FT September 19 2007

Bank U-turn FT September 19 2007

Will Hutton Mervyn's terrible misjudgement The Guardian Thursday September 20, 2007

(コメント) 大蔵大臣Alistair Darlingは救済融資を嫌っていたかもしれませんが,銀行の窓口にできた人々の行列をテレビで見た途端,そんな迷いは吹き飛んだだろう,とJohn Kayは書きます.例外として2001年,それでもアルゼンチン政府のカバロ経済相はドル預金の封鎖を解かず,当然,政府が倒されました.

イギリスはポンド預金ですから,それを拒むことなどなかったわけです.日本でも金融危機の際に,特別融資をどうするか,預金保険をどうするか,議論されたことを思い出します.John Kayは預金保証の下限を25万ポンドまで一気に引き上げるよう提案します.日本では,確か,上限なしの全額保証でした.

Matthew Lynnは,イングランド銀行総裁,Mervyn Kingの責任を重視し,交代を求めます.それほど国民と市場において信用を失ったからです.サブプライム・ローン危機がイギリスにも及ぶ危険を軽視し,それが起きた際の行動計画を持たず,さらに,学術的な態度で「モラル・ハザード」を論じて預金者を不安にした,と.

キング総裁の態度は,柔軟な対応を示したECBのトリシェ総裁やアメリカ連銀のバーナンキ総裁とは対照的な結果になりました.彼らはインフレ目標を主張しても,危機を予防するために果敢に対応したわけです.キング氏はそれを変節と見たのでしょうか? 大蔵省からの圧力でイングランド銀行も救済に動いた,という見方があります.

イングランド銀行を独立させ,金融サービス局(FSA)と大蔵省の三極体制を作った責任者でもあるゴードン・ブラウン現首相も,その責任を問われます.

Will Huttonは,金融街が求める規制緩和の声に抵抗することが難しいこと,を問題として指摘します.多くの危機にもかかわらず取り付けを起こさず,ロンドンはその自由化と信用を誇りました.しかし,規制があるから市場は機能できるのです.

FT September 19 2007

A less risky way to protect savers

By Charles Goodhart

(コメント) 預金の100%政府保証について,Charles Goodhartは述べています.もしそうなれば,銀行は預金を奪い合って金利を上げます.貸出金利は下げて,あるいは危険な融資を増やして,利益を増やすでしょう.アメリカでS&L危機が起きる前のように.

それが機能するには,強烈な監視体制が必要です.銀行を閉鎖できる権限を持ったチェック機関が,監獄のように銀行の経営内容を監視・検査します.金融検査官の一大軍団と銀行の流動性規制,金融子会社の規制が伴います.ますます世界化する金融市場で,それを各国が守らねばなりません.もっと他に方法が無ければ.そこでGoodhartは提案します.

「支払期日を守れないという証拠があれば,あるいは,イングランド銀行の融資に頼り続けねばならないなら,しかも,その銀行の破たんが伝染する危険があるという総裁からの文書を受け取ったら,大蔵大臣が一時的に(最大で2年程度)その銀行を国有化する権限を持つべきだ.」

大蔵大臣は,義務ではないが,経営陣を辞めさせることができる.すべての預金は,その通貨建てや地域,相手にかかわらず,保証される.ただし,劣後債への利子や配当金は支払われない.期間が終わるまでに大蔵大臣は銀行を売却する.買い手が競争を妨げないように配慮しなければならない.

こうして,モラル・ハザードの蔓延も,監獄型の金融市場規制も,回避できます.

FT September 20 2007

The Bank loses a game of chicken

By Martin Wolf

(コメント) 友人であり,原則を重視する優れたエコノミストでもあったメルビン・キング総裁は,世界で最も無責任な業界とのチキン・レースで負けた,とMartin Wolfは悲観します.銀行協会は100%の預金を支払うため,いっさいの追加の金利なしに融資してほしい,と求めています.こうした要求には従うべきでないのに,反対することができません.

なぜなら中央銀行は経済全般の悪化を防ごうとしているのに,個別の銀行は生き残りだけを求めているからです.銀行は仲間が破たんするのを見捨てても,イングランド銀行の行動を促します.確かにキング総裁に勝ち目はないが,それでも彼に懲罰的な金利というムチを委ねるべきだ,と.

FT September 20 2007

Northern Rock: modern-day parable

By Philip Stephens

(コメント) ノーザン・ロックの破たんは,現代の寓話である,とPhilip Stephensが書いています.すなわち,不確かで,信用できない,無力であるような世界,です.国際システムの揺らぐさまをグローバリゼーションと呼び,これまで信用されていた制度が崩壊していくのを止める力も政府にはない.そして,すでに1970年代のBCCIスキャンダルに言及します.

イギリスの金融システムやメルビン・キング総裁,ブラウン首相の信用と政治生命がかかっているこの事件に,最も影響したのはテレビ映像です.

この世界が我々を豊かにしているというのは分かっている.世界が,もはや,過去の堅実な時代に戻ることができないことも.しかし,我々素人は誰を信用したらよいのか?


WP Friday, September 14, 2007

What I Saw in Darfur

By Ban Ki-moon

(コメント) 潘基文国連事務総長がダルフールへの介入について現状を述べています.世界には,あまりにも多くのことが起きるために,迫害された難民や戦争状態を生きる人々の救済を考えるための時間もお金も,いつの間にか失われてしまうのです.

潘氏は,国連事務総長として,難民キャンプの子供たちに平和を約束しました.・・・否,全力を尽くす,と.実際,国連安保理は26000人の国連軍を送ることに決めました.ここではさまざまな危機が複雑に重なり合って,周辺の地域にも広がっています.国連は問題を,総合的に,一気に解決するように訴えています.なぜなら,困難でも,それによって平和が持続するような状態を作り出せるから.


FT September 14 2007

Japan’s no-frills alternative

By David Pilling

BG September 17, 2007

Japan says no to Abe

Sept. 19 (Bloomberg)

Good Morning, Japan -- Time Your Leaders Woke Up

William Pesek

The Japan Times: Thursday, Sept. 20, 2007

Another Japanese prime minister falls

By TOM PLATE

The Japan Times: Thursday, Sept. 20, 2007

Decline of the Liberal Democratic Party?

By GWYNNE DYER

(コメント) 安倍首相が,まだ首相なのか・・・? ともかく入院させてしまって? 次期首相の決定を急いでいます.不思議な空白に沈む国会を抜け出し,自民党だけの総裁選挙?がテレビ中継されます.

BGは,日本が国内の改革を真剣に進め,近隣諸国とも信頼できる友好関係を結んで,国際的な役割を果たせる国になることを求めています.ブッシュ政権が,事実上,日本に平和憲法の破棄を求めたことは失敗でした.

しかし,福田や麻生について,欧米のコラミストたちが理解する限り,何も新しい要素など見いだせないようです.老人で,政治家を世襲し,改革にはお世辞にも向いていない.

William Pesekに言わせれば,自民党総裁を評価しているのは自民党の議員や党員だけではありません.むしろ投資家たちです.日本の国債はStandard & Poor's AA評価しか受けていません.これは,スロヴェニアやチリと同じです.日本の格付けが改善されないのは,成長にもかかわらず債務の削減が行われないからです.

金利が上昇すれば債務は累増します.日中関係も,債務削減も,人口減少も,日本は新しい指導者の下で問題に取り組む時間が残されているのか?

日本は多くの点で優れているが,政治システムは最悪だ,と言われます.特に「合意」に傾き,「指導力」が見いだせない.その反面,小泉マジックを絶賛します.しかし,それは日本社会に走る亀裂を観ていないように感じます.

もっとましな議論として,自民党が衰退するかもしれない,という指摘を挙げます.自民党は選挙に負けてもすぐに回復してきました.しかし,今回はどうか? 新ナショナリストやポピュリズム,社会不安に対して,自民党政治が機能しなくなるとしたら.


FT September 14 2007

Not a penne more

(コメント) あまりの価格上昇に怒った消費者団体が,パスタの不買運動を始めました.年間,体重の半分に及ぶパスタを食べるイタリア人です.その憤慨は大きいでしょう.

「基本食料の価格上昇は笑いごとではない.パリの群衆は1789年に小麦不足を悲観していた.ケーキを食べたら,などと言われたが.ローマ時代のパン暴動(サーカスだけでなく)は共和制を転覆し,ボストンのパン暴動(お茶だけでなく)はアメリカ革命の開幕を告げた.それらはエジプトのパン・インティファーダ,インドのオニオン暴動,メキシコのトルティーヤ騒擾,ジャワの米暴動につながる.食糧をめぐる複雑な政治が,常に,政府の本質的な操縦手段であった.では,パスタの政治学とは?」


SPIEGEL ONLINE - September 14, 2007

Germany Shows Red Card to EU's Blue Card Idea

FT September 16 2007

Europe can feel at home with 16m Muslims

Simon Kuper

Sept. 17 (Bloomberg)

People Should Never Be an Economy's Main Export

William Pesek

(コメント) 移民政策をめぐる議論です.一つは,EU版のグリーン・カード(永住権),すなわち「グリーン・カード」です.熟練技術者に適用されます.EU規模でこうした計画を実行することにドイツのメディアは否定的です.それは各国の労働市場の相違を無視している.非合法移民を減らす効果はない.貧しい国からの未熟練労働者を合法的に受け入れるルートにもならない,と.

Simon Kuperは,イスラム教徒がヨーロッパに統合されることはない,という主張に反対しています.19世紀にはイタリア人が教育のない,異なる信仰を持った,決して統合されない集団とみなされていました.その後も,ポルトガル人,ポーランド人,ユダヤ人がそうでしたが,彼らは移民としてやってきて,フランスの社会に統合化してきたのです.

「1.住宅の隔離を解消せよ.もしゲットーに住んで,地元の人間と誰にも会わないとしたら,イギリス人やフランス人になるのは非常に難しい.2.移民たちにその国の言葉を学ばせること.それは唯一の不可欠なビジネス・ツールだ.3.政府は人々の変化する思想を心配するな.法律に従う限り,人々がどこのクリケット・チームを応援しても,ゲイであっても,問題ない.統合化を妨げる最悪の方法は,人々に統合化を強制することだ.」

William Pesekは移民送金を扱います.移民送金はますます増大しており,貧しい国にとって,国際金融システムを支える役割を果たしています.しかし,移民が増えることは,石油輸出とおなじ「呪い」があり,自国工業の発達を妨げます.また,頭脳流出が起きています.長い目で見て,発達した国が労働者を輸出し続けているということはないのです.


FT September 16 2007

Societies under the magnifying glass

(コメント) 人類学者のジェームズ・ミードはかつてこう言った.「思想的に結びついた市民たちの小さなグループが世界を変える可能性があるのは明白だ.実際,それこそが起こったのだ.」 近代政治における真実とは,何かを強く信じる一人の人間が,10人の穏やかに意見が食い違い10人よりも,より大きな影響を出来事に及ぼした,ということである.・・・

ブッシュの政治を演出したのがカール・ローブであれば,ヒラリー・クリントンを演出するMark Pennがそのような個人です.


Krishna Guha A global outlook FT September 16 2007

Krishna Guha Autobiography’s real hero is capitalism FT September 16 2007

PAUL KRUGMAN Sad Alan’s Lament NYT September 17, 2007

EDMUND L. ANDREWS A DisappointedGreenspan Lashes Out at Bush’s Economic Policies NYT September 17, 2007

Jonah Goldberg Bashing Bush with Greenspan LAT September 18, 2007

Mr. Greenspan Spins the Bubble NYT September 18, 2007

MAUREEN DOWD Alan (Not Atlas) Shrugged NYT September 19, 2007

Robert J. Samuelson Greenspan's Age of Tranquility WP Wednesday, September 19, 2007

(コメント) グリーンスパンの回想録"The Age of Turbulence: Adventures in a New World."に関心が集まっています.ブッシュの権力衰退,金融危機の発生,その他,グリーンスパンとの比較が盛んに意識されるからです.グリーンスパンの時代とは,人々が資本主義の偉大さを信じ,市場自由化によるインフレの低下と繁栄の拡大を彼は体現してきたはずです.スミス,シュムペーター,グリーンスパン!

しかし,この回想録は,世界資本主義の不安定さや市場の機能不全を強調したものです.それに対して自分が取った金融緩和策を支持し,他方,ブッシュのイラク攻撃を批判しています.その言葉には「フェド・スピーク」と呼ばれた呪文のような曖昧さはなく,自分の立場を擁護しているようです.

次のインタビューで,グリーンスパンは,フェルドスタインと異なって,インフレを軽視しませんでした.革新の余地は小さくなって,企業の利潤は減るだろうと予想し,同時に,グローバリゼーションによるインフレ抑制の時代は終わる,と警告しています.石油も含めて,コストの上昇がすでに明らかです.

現在のサブプライム・ローン危機の背景にも,中国やアジア諸国の為替・金融政策があり,長期金利を低くしすぎてバブルを促した,と考えます.フェドが多くのバブルを育てたではないか,という批判に対しては,それほどの影響力はなかった,と反論します.アメリカ経済がどうなるかも世界経済と切り離しては予測できなかった,と.また,金融政策が政府から完全に独立していると前提するのは間違いである,と指摘しました.

グローバリゼーションは自由化によって力を得ました.そして,たとえば,日本が行った巨額の外貨準備や為替レートへの介入政策もまったく効果がなかった,と市場の力を支持しています.そして市場に委ねれば,長期においては,生産性の変化が報酬を変化させる,と.競争を促すことで,企業重役と労働者との格差是正も進むだろう.

経営コンサルタントのカリスマから,ニクソン,フォード政権で経済政策の顧問となり,一貫して共和党の支持者で,リバタリアンでした.バーナンキと違い,世界貯蓄の長期的な調整を信じていません.

PAUL KRUGMANは,ブッシュが当選したとき,富裕層にだけ有利な減税策が実現する見込みは少なかったのに,クリントン時代とすっかり意見を変えたグリーンスパンの支援を得てそれが成功した,と指摘します.すなわち,財政赤字がなくなってしまう危険を示唆したのです.ブッシュ政権の赤字放置が正当化されました.当時は支持していながら今になってイラク戦争を非難する人々が増えているように,グリーンスパンも人気の落ちたブッシュ大統領を批判している,と.

Robert J. Samuelsonは,グリーンスパンの高い人気が記録的な成長とインフレ抑制の実現した時期による,と認めます.その原因としては,株価上昇やドル高によって流入した資本,低金利によって促された消費,安価な輸入財によって抑制されたインフレ,などでした.さらに,IT投資などによる生産性上昇,中国やインドも参加した世界市場における価格低下,そして,前任者ボルカーによるインフレ退治,などがあったのです.

グリーンスパンは,こうした一回きりの有利な条件を果敢に使い果たして,成長と自由化,資本市場の擁護に努めました.住宅バブルを例として,人々はその後遺症に苦しむでしょう.


LAT September 17, 2007

The EU's trial balloon Walloons

Gregory Rodriguez

FT September 18 2007

Lessons for Europe if Belgium fails

By Robin Shepherd

(コメント) 人口1000万人のベルギーが人種(フレミッシュとワローン)や言語(フランス語,オランダ語,ドイツ語),文化による分断化・政治的分割に向かっているというのでは,人口3億のEUが同じ運命をたどるのは当然ではないか?

ベルギーは言語と文化によって三つの部分にわかれています.政治システムも分割して営まれてきました.イラクのように自動車爆弾やハイジャック,ナタを振り回す対立はありませんが,エスニック間の協調モデルにはなっていません.EUの首都であり,その多文化主義のモデルにもなるはずでしたが.

北部と南部の政府が3か月前に選出されて統一政府を作るはずでしたが,北部のフレミッシュは(台湾のように)一方的に独立を宣言する勢いです.彼らにベルギー人という自意識はなく,ベルギー王室だけが統一の歴史的象徴です.ナショナリズムを越えた,左派的な理想主義が,ソビエトやユーゴ,チェコに続いて,ベルギーでも崩壊するのでしょうか?

EUは,各地のナショナリズムを機械的に尊重するより,もっとプラグマチックな統一を目指すべきでしょう.そして左派的な補助金による権益の制度化は,拡大に伴う市場型の改革を拒み,人々がEU統一にプラスの効果を見出せず,マイナスの自由化強制策として激しく反対することになります.


NYT September 17, 2007

The Nordic Option

By ROGER COHEN

(コメント) スウェーデンの大蔵大臣は39歳のAnders Borgです.その長髪をポニーテールにまとめ,左の耳は金のリングで飾っています.社会民主党の長期政権を倒して政府を組織した新中道党の人気者です.彼は高税率の社会福祉国家を見直し,困った人々に助けを与えるけれど,その生涯を福祉国家に捧げはしない,という改革の原則を示します.

労働市場を弾力化し,教育や医療保険によって社会的公平さを実現し,高税率や再分配をやめます.勤労意欲や企業家精神を回復させます.33歳の移民大臣,Tobias Billstromは,さまざまな色のボタンが付いたシャツを着て,福祉国家の改革を進めます.なぜなら彼は,この国へ来る移民たちが福祉手当を集めて,闇市場で雇用を得る事態を望まないからです.

スウェーデンは失業率をフランスの半分,4.4%に抑え,成長率はアメリカを超える3.2%,ヨーロッパ最高に高めています.すべての国民が社会保険に参加し,学校教育の水準も高いのです.世界最初のポニーテールの大蔵大臣が主張した,アメリカ的な企業家精神とスウェーデンの福祉を合体させる社会は,彼らの手で築かれているのです.


NYT September 17, 2007

European Court Rejects Microsoft Antitrust Appeal

By KEVIN J. ORIEN

FT September 17 2007

Use the Microsoft mandate wisely

FT September 17 2007

Microsoft ruling

LAT September 20, 2007

Microsoft vs. Europe

(コメント) マイクロソフトと言えば,私は以前のコピーを思い出します.ウィンドウズが毎年更新されて,そのたびに買うしかないような風潮がありました.「そろそろ年貢の納め時!」 マイクロソフト社がPCによる情報世界を支配する封建領主であることを実感したコピーです.

EUが超国家になることを歓迎する声は弱いですが,今回は別かもしれません.マイクロソフト社に「そろそろ年貢の納め時!」と言えるのは,EUだけです.マイクロソフト,アップル,インテル,など,市場独占を利用している企業が反トラスト法の対象とされます.技術的に,競争相手が市場参入する余地を開けなければなりません.原則として,・・・多分? ある独占的地位を利用して,他の分野で競争を損なったこと(ワードやメディア・プレーヤーのセット販売)が問題だ,と書いてあるようですが.

欧州委員会は,コンピューターの基本ソフトについて(発売する前に)コードを共有せよ,と強制しています.罰金は,49720万ユーロ,です.

LATは,市場の勝者を罰するEUの姿勢に批判的です.10億ドル以上の罰金,と書いてあります.それはむしろ革新や競争を妨げ,消費者の利益を損なう,とアメリカ司法省は考えているようです.競争相手が誕生する経路は多様にあり,政府が介入して市場を平準化する必要はない,と主張します.


FT September 17 2007

Germany’s north-south split

By Bertrand Benoit in Berlin

(コメント) ベルギーが分割する心配よりも,せっかく東西を統一したドイツが南北の格差を広げ,経済的に分裂する危機に至るのでしょうか? 停滞する北部と,躍進する南部です.


The Guardian Tuesday September 18, 2007

It is unjust and absurd to apply economics to this hell

Karma Nabulsi

NYT September 19, 2007

Isolation of Gaza Chokes Off Trade

By STEVEN ERLANGER

(コメント) 和平を止めたまま,ガザ地区への経済封鎖は続いています.

「政府が示した最新の呼びかけは民間投資で事態を改善することであった.イスラエルによって封鎖され,パレスチナ人が自分の町と外の世界との間で取引するにも検問を受けるこの地獄で,投資を刺激する,というばかげた提案は,また現在の経済的な破滅は軍事占領の直接の結果であるという事実からも,ここでは全く相手にされていない.イスラエルの非妥協性という真の問題を避け,それに取り組まないなら,パレスチナ人には仕事も正義もないのだ.」

土地を占領され,迫害され,逮捕・連行され,農地や住宅が破壊され,土地を奪われた人々が,武器を取って抵抗すれば,軍事的な報復に遭い,さらに入植が続き,追われた人々は難民となって,原理主義が広がり,自爆テロに及び,さらに土地を奪われ,防御壁が築かれ,経済封鎖に遭い,援助も受けられない,・・・ これは偏った左派の解説でしょうか?

ハマスが政権を取ってからの経済封鎖について,NYTが伝えます.イスラエルの企業と契約して夏物衣料を製造したガザ地区の工場は,夏が終わってしまうのに,封鎖によって取引ができません.労働者をすべて解雇しました.他の会社も,次第に,イスラエルとの取引をエジプトやヨルダンの業者に奪われています.農産物の輸出やガザ地区にあった共同の産業開発地区も壊滅的です.ハマスが武器を禁止したために,武器の製造や販売も不振です.

イスラエルの情報機関は,ハマスが武器を持ち込んでいると,経済封鎖を正当化しています.


Caroline Baum Fed Cuts Rates to Address Greater of Two Evils Sept. 19 (Bloomberg)

A little credit was due LAT September 19, 2007

DAVID LEONHARDT Will the Fed Reverse the Housing Slump? NYT September 19, 2007

Andy Mukherjee Few Asian Nations Will Celebrate `Bernanke Put' Sept. 20 (Bloomberg)

FLOYD NORRIS Inside the Mind of the Fed NYT September 21, 2007

(コメント) バーナンキ議長は住宅バブル破たんの衝撃を吸収しつつ,インフレ抑制には悪影響になる金利引き下げを行いました.将来,金融引き締めへ復帰する過程が難しいでしょう.しかし,ウォール街の意向には従わない,という姿勢を示そうとするはずです.

アジアの金融市場でも「バーナンキ・プット」は歓迎されましたが,各地の中央銀行は喜んでいません.世界はますます統合化して一つの金融市場に近づきましたが,望ましい金融政策は決して一つになりません.また,ますます弱くなるドルに対して,各国通貨は増価を抑えることができません.金利を下げればインフレが高進します.それゆえ投機家たちはアジア通貨を買いに集まります.

インフレを重視すると言ったバーナンキも,モラル・ハザードを説いたキングも,その主張を逆転させました.中央銀行はマイナスの効果を防ぐために政策を行使しています.しかし,ミシュキンは金融政策が資産バブルの後,その価格下落を止めるには効果的ではないし,バブル崩壊の実物経済への影響も大きくない,と考えています.


The Guardian Wednesday September 19, 2007

Thank you, Mr Bush

Soumaya Ghannoushi

(コメント) イラク戦争を頂点として,アメリカのパワーは衰えました.国際秩序にとっても,それは歴史的な転換です.アメリカの軍事力だけに依拠して秩序は再建できない,と主要国に理解されたわけです.こうして多くの大国による勢力均衡時代が再現します.

ネオコンとブッシュ政権以上に,世界の多極化を迅速に実現したものはなかった,とSoumaya Ghannoushiは考えます.「ブッシュさん,ありがとう!」

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The Economist September 8th 2007

Nuclear power’s new age

Belgium: Time to call it a day

Iraq Kurdistan: Does independence beckon?

(コメント) 原子力エネルギーの平和利用を積極的に主張するようになったのは,それが安全に管理され,処理できるような技術が開発されてきたからだ,と言います.そこで,ヨーロッパではエコロジストがグリーンと対立して,原発支持に方針転換しました.原発推進には,もちろん多くの利益が関わっています.業界だけでなく,急速に成長する中国などの政府も.

ロシアのエネルギーに頼ることが危険であると知ったドイツなど,EU諸国には,原発の政治的動機が明白です.被爆国の日本では,柏崎原発事故もあって,容易に積極推進を打ち出せないのではないか,と思います.・・・私も原発には反対したいですが.

ベルギーとクルディスタンの話に興味を覚えました.ベルギーは独立によって成長を遂げ,ドイツに2度も占領されたが,厳しい戦禍から復興し,チョコレートやフリッターだけでなく,優れた製品を輸出する力があり,今やEUの首都を兼ねています.

それにもかかわらず地区を占拠した「部族」は互いを隔離して,政治システムを分割しました.彼らにはベルギーなど存在せず,必要ないのです.「ベルギー人らしさ」や「王室」を惜しむ声もなく,一方はフランスへ,他方はオランダへと統合され,ブラッセルはどこにも属さないコスモポリタン都市になる.・・・

内戦状態のイラクでは,暴力から無縁でなくとも,明確な秩序と安定化への努力を続けるクルド人地区に,独立国家を与える夢の計画が当然なければなりません.まだ何もないけれど,オスマン帝国の崩壊から最も長く,民族独立の約束を果たされていない人々です.国家が誕生する過程を現実に模索している土地があるわけです.