IPEの果樹園2007

今週のReview

2/5-2/10

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* キー・ワード **********************

日本・安倍政権の衰退, 地域安全保障機構, アメリカ・ニューヨークの金融的衰退, ダヴォスとグローバリゼーション, 比較優位プラス1,2, タイのポピュリズム, ヒトの卵も売ります, グローバリゼーション・自由貿易と政策

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


The Guardian Friday January 26, 2007

No, a return to grammar schools would not increase social mobility

Peter Wilby

(コメント) ブレア政権が繰り返し教育政策を重視し,他方,ニューヨークのブルームバーグ市長が学校改革を行ったことは,グローバリゼーションにおける政府の最重要課題が何であるかを示しています.安倍政権も「教育再生会議」を開きましたが,多分,だれかがこうした流れを汲んで立ち上げたのでしょう.それにもかかわらず,政治的リーダーシップは「愛国心」です.

何も日本政府だけが現実と精神の分裂症を示しているのではないようです.イギリス労働党は,教育政策の目標として,一方では「能力主義」を掲げ,同時に,「社会的な上昇(貧困家庭から教育を通じて上昇するチャンス)」を強調しました.残念ながら,その結果は,前者のせいで後者がますます難しくなりました.


IHT Friday, January 26, 2007

The failure of an all-volunteer military

Andrew J. Bacevich, The Boston Globe

(コメント) 「戦争とは偉大な会計監査制度だ.」 というイギリスの歴史家Corelli Barnettの言葉で始まります.

しかし,アメリカがイラクで戦争に勝つためには,ブッシュ大統領が言うように,2万人,あるいは必要なら5万人でも10万人でも,増派するべきでした.3万人のアメリカ国民が,その程度の兵士を集めることもできないのは,アメリカが兵士を自発的な応募に頼っているからです.

アメリカは伝統的に「常備軍」を嫌い,市民軍を好んできました.しかし,ベトナム戦争で専門的な職業軍人の重要性を理解した,と言います.冷戦以後,戦争はますますハイテク装備に支出し,軍事技術が関心を集めています.しかし,アメリカが世界の指導的な地位を維持するには,より多くの常備軍と兵士が必要です.記事は,そのためにも,兵士たちが,どこで,誰と,何のために戦うのか,発言できなければならない,と考えます.

「ブッシュの戦争」では,勝てないのです.


FT January 26 2007

On Asia: Improved returns required from Japan Inc.

By Louise Lucas

FT January 30 2007

Yen weakness

LAT January 30, 2007

It's not the yen, it's the mileage

By Daniel Griswold

(コメント) 日本について.株式市場,低金利と円安,安倍政権の迷妄,・・・ 世界第二の経済国家が,政治的にも経済的にも重要な役割を果たせないのは,単に,主張が足りないのではないようです.

日本の株式市場は低迷し,上昇が見劣りするだけでなく,配当も無い,とLouise Lucasは指摘します.そして有り余る貨幣を国債に投資し,金利は低いままです.たとえば,新幹線を走らせる優れた技術を持ったJRなら,世界のM&Aに注目され,莫大な投資を招いても良いはずです.

しかし,日本の国内に向けた直接投資は50億ドルにとどまり,それは日本からの直接投資450億ドルに比べて小さすぎます.かつて貿易摩擦が議論されたように,今では投資摩擦が構造問題を批判される理由になります.未発達なデリバティブ市場,金融システム危機と銀行再建,敵対的買収とライブドア事件,その他,さまざまな規制やルールが企業の買収を妨げている,と.

日本自身のためになるのであれば,もっと株式市場や投資会社による企業の再編を受け入れるような条件整備を根本的に考えるほうが良い,と思います.ヨーロッパでも,フランスの農業保護,ドイツの工業地帯と労使協調,スウェーデンの福祉国家と優良企業の政府保有,オランダの移民政策,コーポラティズムの思想,などが,変化の中で,見直しを迫られています.

バブル後,多くの日本人が株式市場から逃避してしまったことをFTも懸念します.積極的な投資が生まれず,円安ばかりが日本の景気を支える現状を,世界の指導的な人々は冷淡な眼で見ているでしょう.日本は機関車ではなく,重荷です.

誰が悪いのか? 余りの低金利と円安水準の安定ぶりに,個人投資家はドイツ,オーストラリア,ニュージーランドなどへ投資しています.結局,日銀は金利を据え置きました.

アメリカのフォードなど,自動車会社は記録的な赤字を示しています.中間選挙後のアメリカ議会で,日本の自動車会社や円安が問題にされるわけです.すでにビッグ・スリーは,日銀の巨額の介入で円は1525%も安くなっている,と「不公正貿易」を批判しています.そして厳格な監視と,場合によっては経済制裁を求めます.

しかし,アメリカ財務省は為替介入を不当なものと考えておらず,自動車産業の苦境はもっぱら自分の責任である,と記事は指摘します.たとえ日本の政治家が円安を招く発言をしても,日本の対米輸出は増えていません.むしろこの10年間で半減し,2006年には,アメリカの輸入全体の僅か8%にすぎません.二国間で見て,1995年は日米貿易不均衡がアメリカの赤字の3分の1でしたが,2006年には11%に減少しています.輸入自動車のシェアでもそうです.

デトロイトのビッグ・スリーは,アメリカ国内の外国企業による自動車生産に負けているのです.労働組合との取り決めや規則,魅力的な新モデルの不足,などの問題は,円高によっても解決できません.他方,外国企業の現地生産は多くの雇用をもたらしています.

FT January 30 2007

Abe should focus on domestic issues that worry voters

By Jeffrey Kingston

Jan. 31 (Bloomberg)

Why Abe Won't Be Japan's Answer to Ronald Reagan

William Pesek

(コメント) 安倍政権が誕生したとき,私は「外交」よりも「構造改革」や「景気回復」を重視するべきだ,と考えました.Jeffrey Kingstonは最近の支持率低下を,安倍首相の政治姿勢や自民党の選挙に向けた思惑が,国民の関心とずれているからだ,と考えます.国民は,高齢化に向けて,年金・医療費・税制をどうするのか,関心をもっています.ところが政府は,こうした問題を避けているのです.国民が嫌う真実を語ろうとせず,もっぱら北朝鮮や中国,アメリカと,外交的な工作に関心を向けてしまいました.

そもそも,これまでの選挙で膨れ上がった自民党の新しい議員や支持層は,安倍首相の伝統的な保守主義のイデオロギーに賛同できません.それにもかかわらず次の選挙では,教育基本法改正や将来の憲法改正を争点にしたい,というのでは,ここでも支持を失い,政治的な分裂を深めるでしょう.それでも敗北しないほど,民主党が混乱している,というのが彼の救い(!)です.

William Pesekは,安倍首相が成功するためにはレーガン大統領の精神を体現することだ,と考えます.すなわちレーガンは,アメリカ衰退論を一蹴して国民に威信を回復させ,規制緩和によって経済の活力を引き出しました.

しかし,小泉構造改革(竹中・ホリエモン革命)を経ても景気回復の広がり方は遅く,「美しい国」や「新しい夜明け」を訴えても,政府の支持率は急落しました.

もちろん,レーガノミクスは日本の条件と合いません.軍備増強や莫大な財政赤字,所得格差や金融危機をもたらした改革が,今の日本にふさわしいわけはないのです.日本というのは一党支配の国家であり,その選挙はシンガポールの選挙よりも退屈だ,とPesekは指摘します.

問題は,安倍首相はレーガン大統領のような「グレイト・コミュニケーター」ではなかったし,愛国心を学校教育で高めることなどできない,ということです.景気回復を加速して,内外の自信を取り戻すことに集中するべきです.


The Japan Times: Saturday, Jan. 27, 2007

Europe's distant mirror?

By DOMINIQUE MOISI

(コメント) ヨーロッパ人はアジアを自分たちの歴史の再現と見る傾向がある.実際,ASEANは明白にEUのような統合を目指しています.するとアジアも,19世紀のヨーロッパのように,中国がドイツの台頭と同じように,勢力均衡のゲームを再現するのでしょうか?

しかし,21世紀の中国は,ビスマルクが指導する19世紀のドイツとまったく異なります.中国人はむしろ,18世紀の栄光ある地位を回復する,ルネサンスだと考えています.だからヴィルヘルム皇帝のように,その力を示すことに焦りはないだろう,とMOISIは考えます.・・・はたして,そんなものか?

中国政府が,経済の拡大と並行して,軍事費に予算を割り振るのは普通のことです.ことさらに軍備拡大ではありません.経済的な繁栄を重視している限り,エネルギーの確保や国際関係の安定化を外交の主要な目標にするでしょう.彼ら自身の経済的利益と,国際的に尊敬される地位を回復したいという情熱が,中国の行動を国際ルールに従わせます.

ヨーロッパに比べて,これまでアジアが経済共同体を形成できなかったのは,中国が法の支配を確立できず,日本がアジアの一員として積極的に役割を果たせなかったからです.ヨーロッパでは20世紀前半に,ナショナリズムの高まりが二度も戦争を引き起こしました.その後に,大陸規模の民主化が受け入れられたのです.アジアでは,法の支配と日本の関与によって,ヨーロッパのような共同体の形成が始まるでしょう.


NYT January 27, 2007

One NATO Is Not Enough

By JOSEPH NUNEZ the chairman of the art of war department at the Strategic Studies Institute, United States Army War College

国際関係において,しばしば,指導力とは,必要なことではあるがまだなされていないことを,友好国や同盟を募って成し遂げる力を意味する.たとえば,アメリカが直面している課題では,イギリス,カナダ,オランダ,アメリカの兵士たちがタリバンと戦っているアフガニスタンに,もっと多くのヨーロッパ諸国を参加させることだ.国際的に支持され,正当性を認められているアフガニスタンへの関与を,NATOが実行するためには,それが必要になる.

しかし,過度に広がった使命から生じる問題を解決するために,NATOの力では不十分だ.一頭の強い馬が荷物を続けて引くのと同じで,NATOは国連や脆弱な地域組織の身代わりになって疲れてしまった.もちろん,私は公式な立場で発言しているのではないが,自分の経験に基づいて,NATOの負担を減らす方法について考えている.

悲しいことではあるが,将来も長期の多角的介入が必要となる破綻国家は増えるだろう.どこでもNATOが介入することを期待してはいけない.21世紀にはヨーロッパを越えて新しい軍事介入を担うだろうが,兵士たちは無限に供給できない.

NATOの指導者たちは考えてほしい.スーダン,フィジー,コンゴ,ソマリア,ボリビア,北朝鮮,ネパールで,次の争乱が起きた場合,それを鎮静化する用意があるだろうか? そのような騒動に対して安定性を維持するために,われわれはもっと創造的なやり方を考えるべきだ.ダルフールに介入したアフリカ同盟のように,余りにも多くの介入が事後的で,底の浅いものであった.それらが失敗したのは当然である.

われわれが必要としているのは,もっと恒久的な,主な大国の支援する,地域安全保障・防衛機構,である.高尚な価値を持ち出さないのであれば,それは地域の諸国にとっても,大国にとっても,基本的な国益である.国家は主権のような事柄には正当な関心を持つが,建設的な強調を拒むことは,無政府状態の火災が国境を越えて広がり,余りにも多くの犠牲をもたらす.

強力な西側諸国が,人道支援,平和維持,国家の再建という地域機構の努力を助けることは,1990年代初めに国連がソマリアのような状況で,その能力の限界を示した後,増えたのだが,一貫した方針が欠けていた.傲慢な政策担当者が多く,小国の混乱を無視し,軍事衝突のみを重視した.そのような伝統的な紛争は減ってしまい,他方,破綻国家は増えている.

地域のグループを勝手に同盟させるのではなく,アメリカとその同盟諸国がNATOのパターンを見習って,最小6つの追加的安全保障・防衛機構を作るように働きかけるべきだ.すなわち,北米,南米,アフリカ,アジア・太平洋,南アジア,中東,である.こうした組織の本部は,それぞれ,コロラド・スプリング,ブラジリア,ヨハネスブルク,北京,ニュー・デリー,アンマン,ヨルダン,に置かれる.しかし軍隊は参加するすべての国で訓練される.

この新しい同盟のそれぞれが,最低でも旅団レベルの軍隊を,その影響圏内のどこでも緊急に展開する用意をしておく.それは陸・空・海軍のおよそ6000人を含む.それらの機構は外交と経済のチームを持ち,戦闘後に派遣して,影響を受けた諸国で政府と市場が再生するのを助ける.

6つの地域が広大な領域を含むことから,加盟諸国の負担はわずかなものでしかないだろう.裕福な国や人口の多い国は,それほどではない近隣諸国の示す条件よりも追加することが期待される.

こうした機構のそれぞれが,少なくとも一つの大国を含む必要がある.この経済的・軍事的な楔(くさび)は,この企画を始める際に,人材,装備,資金を提供することが期待される.明らかに,アメリカは北米グループでこの役割を担う.しかし,北米,ヨーロッパ,アジアの大国は,地理的に離れた連携を結ぶ役割を担うだろう.これは,NATOが大西洋を越えているように,安全保障の障害にはならない.

もちろん,これらすべての新しい同盟が国連事務総長の賛同を得るべきだ.地域機構は国連の平和維持活動を通じて互いに協力するだろう.事務総長はこうした仕組みを歓迎し,国連を戦闘停止後の介入負担から解放できると期待するだろう.

確かに,こうした新しい機構を設立するためには,多くの国がその国内の治安と防衛についての考え方を転換しなければならない.しかし,グローバリゼーションの時代には,各国が通商協定でそうしてきたように,安全保障に関しても弾力的で協力的な方法をとる必要がある.

結局,二つの事実が多くの国を地域安全保障に向かわせる.一つは,現行のシステムが概ね機能していないこと.そして,こうした地域機構に参加することは,各加盟国により大きな国際的立場を与えること,である.もはや,NATOでは不十分だ.


WP Saturday, January 27, 2007; A19

What North Korea Really Wants

By Robert Carlin and John W. Lewis

CSM January 30, 2007

What North Korea really wants

By Tony Hall

NYT January 30, 2007

To Ban the Bomb, Sign the Peace

By PAUL B. STARES

(コメント) 北朝鮮と交渉しようとすれば,彼らが何を望んでいるのか,知ることが重要です.そして,短期的な戦術と,長期的な戦略目標とを区別しなければなりません.

北朝鮮が求めているのは,エネルギーや食糧ではなく,資金でもありません.彼らはアメリカによる安全の保証を求めているのです.アメリカと長期的・戦略的な合意に達し,国際システムに明確な位置を占めたいわけです.その要求を,ブッシュ政権は無視してきました.

Tony Hallも,アメリカ政府はリビアのカダフィを非核化し,国際関係を回復させたのだから,北朝鮮の「カドカリ王国」も正常化できるはずだ,と主張します.


NYT January 28, 2007

The Hard Rain That’s Falling on Capitalism

By BEN STEIN

(コメント) ユダヤ人として,ヨーロッパからアメリカに来て,成功した一族の一人であるBEN STEINは「資本主義」を賞賛します.このシステムでは,自分が社会に追加した価値に応じて報酬が支払われる,と.それはすばらしいシステムです.

同時に,彼は「法の支配」を称賛します.誰であれ,どのような地位や富を得た者であれ,法の支配に服さねばなりません.そうであるからこそ,隣人を信頼し,彼が間違いを犯さないと信じて,富を蓄えることができます.

アメリカでは誰もが,このシステムの働きを良く知っており,法の支配を尊重している,と.


NYT January 28, 2007

The U.S. Is Losing Market Share. So What?

By DANIEL GROSS

先週,ニューヨーク市長のM.ブルームバーグとチャールズ・E・シューマン上院議員が,世界の金融センターとしてニューヨークが衰退することを警告する内容の報告書を発表した.その対策として,報告書はマッキンゼー社の助言により,公共事業に関する規制の緩和,投資銀行が外国の数学の天才を雇用するのに便利なビザ制度への変更,を提案している.

しかし,報告書は経済の主要な趨勢を見失っている.アメリカは世界市場におけるシェアを失いつつある.そして,それは必ずしも悪いことではない.

「ニューヨークのインテリたちがまたヒステリーに罹った.」と,ゴールドマン・サックスのロンドン支店,世界経済リサーチ部長のJim O’Neillは語る.ニューヨークが相対的に衰退していくのは,「その他の世界が急速に成長していることの単純な反映である.」

ゴールドマン・サックスによれば,世界のGDPに占めるアメリカのシェアは,2000年の31%から2006年の2707%に低下した.同じ時期,BRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)は7.8%から11%に増大している.

もちろん,ドル安はこの傾向を増幅している.しかし,通貨価値の差を考慮しても,この10年間,アメリカの成長は世界の成長より遅かった,とBrad Setserは話す.

この展開は驚くことではない.20世紀の大部分,中国,インド,ロシアは世界の経済システムから切り離されていた.彼らが近代化し,消費主導の市場を取り入れるなら,既存の経済よりも急速な成長を実現するだろう.その同じダイナミズムが,第二次世界大戦後,日本やヨーロッパと,アメリカとの経済パフォーマンスの違いをなくしていった.

エコノミストたちは,その深い市場と強力な銀行システムにより,この先も世界の金融サービスにおいて中心的な,そして支配的でさえある,役割を果たすだろう,と考える.この分野では,アメリカを脅かすのは上海ではなく,ヨーロッパである.そしてアメリカが衰退する理由は,規制ではなく,地理と地政学にある.

ユーロ圏は,さらに多くの国を加えて,近年,拡大してきた.それゆえ,通貨の力を増している.「世界の資産市場におけるドル建資産のシェアは減少しており,それは主に,ユーロが誕生し,拡大してきたからである.」と,Catherine L. Mannは述べた.

その一方で,アメリカが中国やロシア,インド,中東に輸出する資本は,ますます地元の金融市場を育てた.「金融活動の一定割合が,貯蓄の増加により,外国の地理的なセンターの移されるのは当然だ.」

それに加えて,アメリカはいまなお単独で世界最大のシェアを持つが,明らかにもはや唯一の超大国ではない.2002年から2005年まで,アメリカは世界の経済成長の3540%を占めた.しかし,昨年後半,初めてアメリカよりもBRICsの方が,若干,世界経済の成長に大きな貢献をした.2007年,アメリカは世界の成長の20%を占め,BRICsは30%を占める,とMr. O’Neillは推計する.

そのような趨勢にもかかわらず,アメリカの方が今後の20年間はシェアが大きい,とDiana Farrellは考える.世界企業の幹部の27%が,その収益を決めるのはアメリカだと答え,25%が中国だと答えた.中国,インド,その他のアジアのシェアが増大するのは,成長が減速し,高齢化している,日本とヨーロッパのシェアを奪うからだ.

結局,経済的な優位を失うのは,経済的な意味以上に,心理的に重要である.多くの人がその満足を所得の増大だけでなく,隣人との相対的な優位によって測る.「世界がますます豊かになる中で,われわれも国際貿易に関わって豊かになるが,多くの貧しい人々が急速に豊かになる.・・・そして心理的に,多くの人が較差の縮小をマイナスに感じるようになる.」

より広い意味で,一世代前には外からの投資を受け入れなかった経済が,今では市場資本主義のシステムを創り出している事実こそ,アメリカの勝利なのであり,決して敗北ではない.「好調な諸国の多くが,アメリカの代表する最善のものをまねており,グローバリゼーションとアメリカ的な資本市場文化を受け入れている.」とO’Neillは言う.「そのことについて,ニューヨークやアメリカが何も対策を練ることなどない.グローバリゼーションを逆転させたい,と言うのでないなら.」


FT January 28 2007

Globalisation, interdependence, China and power

John Plender

(コメント) ダヴォス(WEF)では「グローバル・パワー・シフト」がテーマでしたが,ロンドンの王立国際問題研究所(RIIA)では「グローバル・フィナンシャル・パワー」が議論されたそうです.中国とインドの台頭で,工業生産力が,技術開発力が,軍事バランスが変化し,ロンドン,ニューヨーク,上海などの金融バランスも変化します.

John Plenderは,グローバリゼーションがますます他者を,そして自分自身を害するように利用されるのではないか,と心配します.たとえば,中国政府は人民元を安く維持することで,国内の投資を諦め,低い収益で我慢し,金融政策を歪め,国際的な不均衡を拡大しています.多国籍企業が金融センターを利用することで,政府は税収を奪い合い,同時に,機関投資家による投資はガバナンスを軽視します.

Gideon Rachman が参加したのは,イスラエルで開かれた安全保障に関する会議Herzliya security conferenceです.イスラエルの参加者以外,アメリカのペンタゴン,国務省,そして大統領候補たちが出席しました.イランとアメリカ,あるいはイスラエルとの戦争が迫っている,という不安の中,会議の雰囲気は陰鬱だった,と言います.それはWEFがグローバリゼーションを称賛するのと対照的です.

LAT January 29, 2007

Independence isn't always beautiful

Niall Ferguson

(コメント) 沖縄や北海道は独立した方が良いのではないか? と私はときどき思います.スコットランドでは,それが真剣に議論されています.

Niall Fergusonは,「独立」を求めるスコットランド人たちに「トリレンマ」を指摘します.グローバリゼーションにより,市場が世界を結びつけ,情報や言語はますます国境を越えて利用され,戦争は起こりにくくなりました.人々は,自分たちだけの小さな母国を持ちたいと願う一方で,もっと大きな国へ移民したい,とも願います.イギリス,あるいはアメリカと統合するか,それとも,単独でスコットランドになるか?

20世紀に示された「民族自決」の原理は,人類に多くの独立国家をもたらしました.1913年に,人類の82%が,わずか14の帝国に分かれて住んでいました.しかし,1946年には74カ国,1995年には192カ国が存在します.

Fergusonは,人口規模と経済状態とを結ぶ関係は無い,と述べます.問題は,パワー・軍事力と言語です.スコットランドは英語を共有していますから,独立する理由はありません.もしスコットランドが戦争の危機に直面したら,独立運動は消えてしまうでしょう.逆に,人々が孤立し,軍事的な衝突や紛争が絶えない地域では,今でも帝国が盛んです.中国,ロシア,インド,中東のスンニー帝国,ラテンアメリカ統一,ヨーロッパ合衆国.

FT January 29 2007

The clash of globalisations that spells trouble for Davos man

By Gideon Rachman

イスラエルで行われたthe Herzliya security conferenceと,スイスのダヴォスで開かれたthe World Economic Forum(WEF)とは,まったく違う天体のことを話しているようだ.

Herzliyaには,イスラエルの政治家や軍事専門家が集まった.ゲストはペンタゴンやアメリカ国務省から来た.アメリカの大統領候補たちも.イランとイスラエル,もしくはアメリカとの軍事衝突が迫っているという予想があり,会議の雰囲気は暗かった.中東における核軍拡競争,レバノンにおける戦闘再発,イラクにおけるアメリカの敗北,中東地域全体への戦闘拡大,なども話し合った.

ダヴォスはHerzliyaよりも大規模で華美な,もっと広いテーマを扱う国際会議だ.中東に関する部会もあったが,WEFの主な流れはグローバリゼーションや新技術による機会を活かした国際ビジネスマンたちの楽観論が支配的だった.

週末になって,私はこの二つの会議がもたらした矛盾を考えた.これらは衝突するのではないか? そうなれば,どちらが強いのか? 紛争か,資本主義か?

ダヴォスの人々は,中東におけるカオスがビジネスに及ぼす影響を心配していなかった.17の部会が気候の変化に関するもので,グローバル・リスクに関してはひとつしかなかった.しかも世界経済を脅かす主要リスクとして,貿易自由化交渉の失敗,金融規制,世界的な不均衡,を指摘しただけで,誰も戦争に言及しなかった.

それは,多分,正しいのだろう.イスラエルでも,戦争とグローバリゼーションは共存している.昨年夏のレバノン戦争にもかかわらず,イスラエル経済は4.8%で成長した.イスラエルは世界的なハイテク経済の一部である.約100社の技術企業がニューヨークで株式を上場している.

しかし,イスラエルは紛争がその繁栄を脅かすことを強く心配している.最も基本的に,多くの人が恐れているのは,イランが核兵器を開発すれば,それをイスラエルに対して使用する,ということだ.またイスラエルは,彼らの最も有能な人材が世界のどこでも雇用されることを知っている.だから,もし2万人の技術者が,イランの核兵器に怯えて暮らすより,イスラエルから脱出することを決めれば,それがイスラエル経済に与える衝撃は取り返しがつかない.その意味で,安全保障はまさにグローバリゼーションを打ち負かす.

イスラエルは特別だ.バンガロールや上海はもちろん,カリフォルニアのビジネスが中東の流血事件を恐れる理由など無い.ダヴォスの自信は,ビッグ・ビジネスが世界化しているのに比べて,中東は地域に限られた問題だ,という感覚がある.国際ビジネスは,単に,紛争地帯を避けるだけだ.しかし,それは楽天的過ぎる.少なくとも二つの方法で,中東は世界経済を破壊する.一つは石油価格,もう一つは国際テロである.

ダヴォスでは,石油価格がばれるあたり80ドルではなく50ドルに下がったことを歓迎していた.しかし,イランと軍事衝突が起きれば,それは100ドル以上に跳ね上がるだろう.各施設が攻撃されれば,世界の石油輸出の20%が通過するホルムズ海峡をイランは封鎖し,あるいは機雷を敷設する.

中東における流血事件や戦闘が常に地域内にとどまると前提することは明らかに間違っている.衛星放送やインターネットは彼らの悲嘆を世界に広める.昨年ロンドンで起きた自爆テロはイギリス人によるものだった.犯人たちはパキスタンやカシミール,イラクの戦闘をニュースで観て,過激な思想に向かった.パキスタンの過激派と結びつき,世界的な規模でそのニュースやプロパガンダを吸収し,抑圧された世界コミュニティーの一員であると信じた.ロンドンの自爆犯たちは,ニューヨークからロンドンに飛ぶ国際銀行化と同じように,グローバリゼーションの産物である.

資本家とテロリスト,という二つの顕著なグローバリゼーションの実例が直接衝突するとしたら,アメリカやヨーロッパで大規模な新しいテロが起き,安全保障が強制されることだろう.昨年8月にロンドンでテロ容疑から空港の警備が厳しくなったとき,それは示された.アメリカでは移民がさらに抑制され,入国が難しくなる.ダヴォスでは,多くの経営者たちが外国人技術者の入国困難について不満を述べていた.

グローバリゼーションのいかなる衝突も,ただちにグローバルな資本主義を混乱させる.しかし長期的に見て,資本主義の方が強力であると思う理由がある.中東でさえ,多くの人々は殉教者になるより,裕福になることを願っている.

Herzliyaで聞いた楽観論の一つは,パレスチナでビジネスを助けるためにマイクロ・ファイナンスを行うSir Ronald Cohenの言葉だ.彼は,パレスチナ人の仲に,イスラエルがハイテク・ブームを迎えた1990年代以前に示したような,大きな経済的潜在力を見る,と言う.しかしダヴォスで会ったパレスチナ人のビジネスマンは,イスラエルの安全保障のために,彼は西岸の自宅からエルサレムまでの僅かな移動に,4時間もかかる,と言った.それはビジネスのできる環境ではない.

資本主義が中東の紛争地帯を救い出すのは,まだかなり先のことだ.それまで,ビジネスマンたちは,中東の紛争が彼らに及ばないことを願うだけだ.

FT January 30 2007

A divided world of economic success and political turmoil

By Martin Wolf

YaleGlobal, 30 January 2007

Questioning Milton Friedman’s Free Market and Freedom

Pranab Bardhan

(コメント) 同様に,Wolfは問います.世界経済が好調であるのに,なぜ政治は分裂し,混乱を深めているのか?

政治的分裂は保護主義や国際交渉の決裂を招き,世界経済の変調をもたらします.将来の可能性を,Wolfは三つ指摘します.1.経済を抑制してでも,政治的な安定化が求められるかもしれません.あるいは,2.グローバリゼーションというのは,そもそも経済的な論理が実現する中で,政治支配や領土が解体される過程である,と考えることもできます.そして,3.1914年から46年までの西側世界,共産圏,さらに長期に及んだ「第三世界」が示したように,政治が経済を支配します.

Wolfは,もちろん,そのいずれでもない可能性,経済が政治を支配する,を望みます.中国やインドでさえ,その優先順位を変えたことで急速に豊かになりつつあります.各国の政府は国民が望むものを提供しなければなりません.そのために,「政府は世界的な公共財の供給に協力します.すなわち,安定性,市場開放,核拡散の防止,世界的公共財の管理,開発促進,破綻国家の処理,世界的<バッズ>の抑制」です.

協調行動は確かに困難ですが,大国の一方的な行動が失望に変わり,世界中で協調的な解決を求める関心が高まるほど,それは信頼を得て,実行可能になるでしょう.すべては選択の問題です.


The Guardian Monday January 29, 2007

Xenophobes, not workers, are uniting across Europe

Yudit Kissa Hungarian economist based in Geneva

(コメント) 労働者たちが国際的に連帯することはますます難しくなる一方で,各国の移民排斥やナショナリズムは,互いを非難しながら,実際には広範な連携によって大陸規模の影響力を組織しています.これまで民族主義的な極右の運動がなかった地域でも介入を強めています.

彼らの政治運動を曖昧に忌避するだけでは,政治の舞台を人種差別で汚染し,彼らが論争を支配してしまうでしょう.彼らは人々の偏見や恐怖心を利用します.東欧圏には,共産主義政権下で蓄積された民主主義の不足,歴史的な迫害の記憶や遺産,が豊富に存在し,彼らに拡大する土壌を提供しています.明確に,体系的に反撃し,正当な主張であると偽る余地を微塵も与えないことが重要です.


FT January 29 2007

Tread lightly along the new Silk Road

By Dominic Barton and Kito de Boer

(コメント) 中東地域で起きていることの中で,半世紀後に最も重要だと回顧される事件は,米軍によるイラク占領でも,イランの核開発でも,パレスチナ和平の停滞でもなく,中東とアジアとの経済的連携であろう,と記事は指摘します.

中国やインドが中東から輸入する石油の量は増え続け,その取引額と資本移動は急増します.湾岸諸国と東アジアとの間の資本移動は,現在の150億ドルから,2020年には3000億ドルに増えると予想されています.それは,「新シルク・ロード」あるいは「チャイム“Chime”(中国・インド・中東)貿易圏」と呼ぶ者もいます.その発展のためには,各国が共通して生後改革に参加することです.


John Plender After the flood: how central banks fret once liquidity dries up FT January 29 2007

China right to worry about bubble trouble FT January 30 2007

Geoff Dyer in Shanghai China stocks tumble on policy worries FT January 31 2007

William Pesek Why Go to Las Vegas When Shanghai Has Stocks? Feb. 2 (Bloomberg)

(コメント) 1998年,LTCMが破綻に瀕したとき,NYFRBのBill McDonoughは主要金融機関を集めて鎮静化への協力を求めました.その後,さまざまな金融革新が破綻の影響を回避するために開発され,また,世界に流動性が溢れる過程で,金融システムに潜む脆弱性は無視されるようになった,とJohn Plenderは警戒します.

しかも,今,危機が予想されるのは中国の金融市場です.中国政府の規制や政策によって,国民の貯蓄は株式市場の上昇に吸収されるしかない,という事情が,バブルへの不安を高めています.中国の預金利子率は余りにも低く,また,資本流出は禁じられています.

William Pesekはもっと辛らつです.「ラスベガスからマカオ,モンテカルロやシドニーまで,賭け事が中国人を多く引き寄せる.もちろん,中国において賭けが禁止されているからだ.しかしまた,こうも言えるだろう.中国に株式市場があるのに,彼らがバカラ・テーブルやルーレットを必要なわけが無い,と.」

J.F.ケネディーの父,ジョセフ・ケネディーが,靴磨きの少年まで株の話を始めたことでバブルの危険に気づき,ただちに保有株式を売却して1929年の暴落を回避した,という逸話があります.中国もその時“Joe Kennedy moment”が来たのか,と問います.

Andy Mukherjee Sell Yuan, Buy Rupee? A New Carry Comes to Asia Jan. 30 (Bloomberg)

Jo Johnson in New Delhi India central bank warns of overheating FT January 31 2007

(コメント) インドへの投資やバブルも,中国の政策とともに,議論されています.中央銀行も引き締めを図りました.


NYT January 30, 2007

Economist Wants Business and Social Aims to Be in Sync

By LOUIS UCHITELLE

Asia Times Online, Jan 31, 2007

How a village went from rags to Rolls-Royces

By Pallavi Aiyar

(コメント) トルコ出身のハーヴァード大学ケネディー・スクールで教えるDani Rodrik,は,民間部門と政府の役割を折衷して柔軟な政策を好む経済学者です.単に関税を引き下げ,市場を開放するだけでなく,グローバリゼーションのマイナスの効果を抑えるように求めます.実際,貿易は不平等の原因にならない,という経済学者の合意はすでに崩れつつあります.

すなわち,一部の経済学者たちは,自由貿易やグローバリゼーションを維持し,成功させるためには,それにふさわしい社会保障制度を充実させる必要がある,という新しい合意を模索し始めています.

マンキューは「比較優位」を指摘して,アメリカが比較優位を持つ分野に資源を集中させることが社会保障制度よりも有効だ,と考えます.しかしRodrik,は,発展途上国では多くの政府が,貿易以前には行われていなかった経済活動を支援するために働いている,と反論します.たとえば,輸出を通じて成功している中国の姿を見て,それを説明できるだろうか? 比較優位が示す労働集約的な部門だけに資源を集中した方が,中国はもっと成功しただろうか? 「コスタリカが半導体の製造に適しているとは誰も思わないが,・・・政府はインテルを誘致して半導体を輸出している.」 成功をもたらすものには不確実さが満ちている,と.

Pallavi Aiyarは,中国で最も豊かな農村の来歴と,企業家精神に富んだ共産党書記長を紹介しています.襤褸をまとった暮らしから,ロールスロイスを乗り回すまで,彼が村民を指導しました.


BG January 31, 2007

Bush spaces out during Sputnik moment

By Derrick Z. Jackson

LAT January 31, 2007

The best way to save the planet? You decide

By Garrett Gruener and Daniel M. Kammen

(コメント) 1957104日に,人類最初の人工衛星が軌道に乗った.ソ連の成功を,当時のアイゼンハワー大統領は小さなことのように装いました.実際は,数日後に科学者を総動員する宇宙開発計画を発動しています.ブッシュ氏は地球温暖化に本気で取り組むでしょうか? ・・・科学者たちを無視したまま.「ブッシュ大統領は,人工衛星がホワイトハウスの芝生に墜落するまで,その姿勢を変えそうにない.」

日本でも自動車への税金を何に使うか,自民党の政治家たちは奪い合いを続けています.アメリカも同じだ,と分かりました.政府の力と市場の力を使って,何かを解決するために,政治は公的な権威を得ているはずですが.


IHT Wednesday, January 31, 2007

Thailand's lesson in populism

Stanley A. Weiss

(コメント) タクシンと,クーデタによって成立した軍事政権,そしてプミポン国王について,タイの政治が問われています.タクシンの権力を奪うために,クーデタを支持したインテリや市民たちが,軍事政権の振る舞いに失望し,後悔している,と言います.少なくともタクシンは選挙で決まりました.問題は,タクシンを選んでしまうタイ社会の内部にある分断状態です.

タクシンは,この極端に不平等な高度成長を支えたグローバリストの集団を代表しています.インフラ投資,債務免除,農民への低利融資,という「タクシノミクス」は,プミポン国王の唱えた仏教経済学による「自足の経済」を否定する,ポピュリスト的な対抗スローガンでした.農村や都市部の貧困層は,「民主主義とは,目的ではなく手段である」というタクシンの意見を支持したわけです.豊かになれるなら投票してやる,と.

他方,バンコクの中産層や活発な市民社会は,タクシンのクローにズムや,親族による政治支配,専制を,民主主義や法の支配,人権を否定するものとして嫌いました.農村が首相を決めるが,都市の抗議デモは彼を追放する,というタイ政治の法則が働いたのです.ところが,軍事政権の「平等主義」や「仏教精神」は口実に過ぎませんでした.

もはや高齢で病弱の国王は政治的仲裁を行えません.タイのすべての階層が苦しむでしょう.都市の中産回想は,経済的繁栄を農村の貧困解消にすすんで分配しなければ,タクシンの次のポピュリストが権力を握ることを阻止できません.


CSM January 31, 2007

Consequences of US commitment to Iraq

By John Hughes

IHT Thursday, February 1, 2007

China jumps in

Stephanie Kleine-Ahlbrahndt and Andrew Small

(コメント) イラク戦争は,イラク国内の政治的混乱,アメリカ国内の政治的対立を深めただけではありません.アメリカがイラクに手間取るほど,国際政治は中国やロシアの好き放題に再編されています.「猫がいない間に,ネズミたちはやり放題だ.」

他方,Stephanie Kleine-Ahlbrahndt and Andrew Smallは,スーダンや北朝鮮,ミャンマー,ザンビア,などについて,中国の外交政策に転換があった,と評価しています.それは中国政府が国際的な地位や政治的利益について(西側諸国と同じような意味で)意識し始めたからです.しかし,その限界も指摘しています.


Robert Farley Apocalypse How? The American Prospect 01.31.07

Jacob Weisberg Belligerence is not the answer on Iran FT January 31 2007

Jonah Goldberg The soft bigotry of blowhards LAT February 1, 2007

Bullying Iran NYT February 1, 2007

(コメント) 共和党のYossi Klein Halevi and Michael B. Orenは最新の報告書で,アメリカとイスラエルが合同でイランの核施設を軍事攻撃することを支持した,ということです.しかし,核兵器を持ったとしても,それでどうやって報告書が言うような「石油価格の引き上げ」や「ホルムズ海峡の管理」ができるのか? とRobert Farleyは反対します.アメリカやイスラエル,ロシアが,核兵器によって,石油価格や中東地域の政治事件を支配している,などと言えるだろうか?

核武装によって外交は何が変わるか? Farleyは,二つだけだと考えます.それは,核攻撃を抑止します.また,国家的内心を高めます.それ以外の,通常の外交的目標に核による威嚇を利用することは無意味です.なぜなら,それは報復による余りにも大きな犠牲を無視しており,実際に使用されると相手が信じないからです.

アメリカの好戦的威嚇外交も成果を上げないでしょう.それは,アメリカ人とアメリカの友好国を不安にしています.ブッシュ大統領はイランの国内政治を誤解しているし,イラクに関する経験を正しく評価していない,とNYTは批判します.


BG February 1, 2007

'Wal-Martization' of embryos

By Osagie K. Obasogie

(コメント) ヒトの卵子をスーパーマーケットでも買えるようにしてはどうか・・・? もちろん,そんな記事ではありませんが,テキサスで開業した自称「世界最初の卵子バンク」を運営するJENALEE RYANは,魅力的で知性に溢れる精子と卵子をマッチングして,完璧な赤ちゃんを提供できる,と宣伝します.つまり,ヒトの卵に適用された,ウォル・マート型のビジネス・モデル,というわけです.Gapがジーンズを提供し,スターバックが美味しいコーヒーを提供するように.

それはすでにアメリカで30億ドル産業となり,8組に1組のカップルが不妊に悩み,この産業が4万人の赤ちゃんを2001年に「生産」しました.すでに,デザイナー・ジーンズ(jeans)と同様,デザイナー・ジーンズ(genes遺伝子)の時代です.

産科の消滅する日本と反対に,アメリカではガソリンスタンドのように産科医院が次々開店し,激しく競争している,とOsagie K. Obasogieは伝えます.・・・ヒトの卵も他の商品と同じなのか? 規制がほとんどなく,散髪屋を開店するより容易だ,と懸念します.

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The Economist, January 20th 2007

Rich man, poor man

Trade’s victims: In the shadow of prosperity

Economics focus: The great unbundling

(コメント) 中国からの安価な輸入品が増えることで、アメリカの労働者は損失を強いられているのではないか? 自由貿易やグローバリゼーションを支持する経済学のテキストは正しいのか? という不満が高まっています。

生産性は上昇し、企業収益は伸びている。重役たちの報酬は上昇し、景気も良い。しかし、賃金は上がりません。工場は中国などの新興経済に移転され、事務職もインドなどへ、それに加えて労働者が移民として流入してくるからです。

世界の市場統合と技術革新が加速し、資本主義の黄金時代が再現されているにもかかわらず、政治的な不満が蓄積されています。議会は企業の収益や重役たちの報酬に上限を貸すべきでしょうか? 自由貿易は制限し、地域の雇用を守るべきでしょうか?

貿易論や国際収支論がそうであったように、経済の調整過程で損失を強いられる部門には、調整を支援するような補償や融資を与えることが考えられます。しかし、The Economistは、補償の対象となる失業者が特定できず、機能しないし政治的に悪用される、と否定的です。他方、市場の機能を強化し、教育やセーフティー・ネットを整備する、という線で合意を得られると考えます。

「比較優位」だけで本当に貿易を説明できるか、という新しい論争を、リカードが考えた最終生産物の間の貿易ではなく、個々の生産工程を国際的に配置する問題として紹介しています。自由貿易は確かに生産性を高めて利益をもたらします。しかし、賃金を下げるかもしれません。また、交易条件が悪化する可能性もあります。これらは従来から知られている議論です。しかし、グローバリゼーションが新しい質を示し始めたことで、何かを生み出すかもしれません。


The Economist, January 20th 2007

South-East Asia: Wandering workers

Migration: Europe’s huddled masses

Immigrants in Russia: Market forces

Microsoft: Peaks, valleys and vistas

(コメント) 移民について、東南アジア、ヨーロッパ、ロシアの事情と政策が示されています。この分野には、自由貿易以上に、合意が無く、まったく異なった政策が平気で?採られているわけです。

マイクロソフトの「年貢制度」を打破する可能性は、かつて議論されていたことが、急速に現実になりました。オープンソースのソフトが、インターネットを介して共有され、データの作成や処理、交換もパソコンのハードディスクを不要にするでしょう。つまり、PCではなく媒体が、携帯電話とキーボードがあればよいのです。・・・ウィンドウズ、ようやく、ご愁傷様です。