『NOVARK』第13号(2001年12月号)

                             アナログの逆襲L デジタル化社会のこれから           

渡辺武達  同志社大学教授   


 本誌ではこれまで十二回、「アナログの逆襲」の逆襲と題した文章を書いてきたが、デジタルとアナログではどちらが優れているかということを検討してきたのではない。はっきりしていることは、情報処理に関連しては、処理速度と記憶力(蓄積要領)、そして編集では圧倒的にデジタルがすぐれているが、人間はアナログとして存在し、生活しているということである。 

 わかりやすいたとえでいえば、今でもケニヤの草原では現地住民の多くが歩いて移動しているが、モンゴルの平原では動物に乗り、ときには車が使われ、外国へは飛行機が使用される。一九六〇年代のソ連やアメリカはロケットで人間を月へ送った。そうした移動手段を進歩を呼ぶかどうかは別にして、普通の日本人には徒歩は最低限必要だが、通勤には車や電車、海外旅行には飛行機が一般的になっている。ソ連のロケットで宇宙空間の観光旅行をするひとが最近アメリカの金持ちから出たが、まだそれは特殊例である。 

 生活が衣食住と基本に、労働とその対価で支えられているのが一般人だから大阪から東京へいくのはやはり徒歩よりも新幹線が普通だろう。今のデジタル社会論、デジタルビジネス論(IT産業論)のまやかしは、新幹線で十分なのに世間に「通勤にはロケットで」という、必要のないというか、現実的ではない議論をしているところにある。もしくは市販車でいいのに、F1使用のレーシングカーを売り付け、その必要をビジネス利益のためだけに説いているところにあるわけだ。これほどばかばかしいことはあるまい。