メディア・リテラシー概論(「マス・コミュニケーション論2」と読替)2002年度秋期

 渡辺武達担当 twatanab@mail.doshisha.ac.jp 第7回 02年11月14日3p, S32教室463名
☆質問などは上記メールへ。このクラスのレジメは以下のホームページでも見られます。
http://www1.doshisha.ac.jp/~twatanab/watanabe/sonota/masscommunication22002.html

教科書:渡辺武達著『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社、1997年
    渡辺武達著『メディアと情報は誰のものか』潮出版社、2000年
参考書:渡辺武達他編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社、1999年
    渡辺武達著『メディア・トリックの社会学』世界思想社、1995年

☆このクラスでは聴覚障害学生が受講しておりますが、同志社大学では善意のヘルプの方にまだ頼らざるを得ない状態となっています。みなさんのご協力をお願いします
「ろう者とは:日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である」
(Deafの定義by木村晴美・市田泰弘、『現代思想』95年3月号)

1.受講生からの質問 (この講義の質問や感想は上記のメールアドレスまでどうぞ)

@ 授業でふれられた聴覚障害者の同志社大学における受講環境が不十分なことですが、私たちには具体的に何ができるのでしょうか(2回生男子)

A.聴覚障害者の権利保障の不足は同志社大学というよりも、現在の日本社会の抱えている大きな問題の一つです。だからそれだけが問題ではありませんが、それに限れば、手話を勉強して助けたり、聴覚障害者たちとのコミュニケーションを健聴者の側からはかることによって平等な立場でよりよい社会がつくっていけると思います。また授業でもいいましたが、両者の壁がなくなることが日本社会が弱者に優しい側面を強化することにつながると思います。私もこの9日午後にM21で開催された京都手話スピーチコンテストでそのことを深く考えさせられました。なお、授業で見ていただいたビデオ「アメリカのろう教育」が来週から今出川の総合情報センターで見られるようになりました。友達にも宣伝してください。教員は特別に借りだすことができますので、クラスで一緒に見てください。

Aメディア規制三法(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害社会環境対策基本法案)が有事関連三法案(02年4月16日閣議決定、武力攻撃事態法案・自衛隊法改正案・安保会議設置法改正案)と関係しているとは思いませんでしたがその関係をもうすこし説明してください(3回生男子)。それに渡辺先生はテレビでのしゃべり方が意外とうまいですね(4回生女子)。

A.みなさんが講義からいろいろ学んでくれてうれしいです。権力をもつものは古今東西いつでもどこでも情報を独占したがります。今の日本の場合は戦後ずっとつづいてアメリカ合衆国の支配下にあり、それをより確実にするための情報統制という目的がこれらの法案の提案の背景にはあります。指定のテキストや講義中の配布資料を読んでほしいです。テレビでの話し方については自信はありませんが、学外での講演を月に数回はやるのでそれが役立っているのかもしれません。11月23日には京大の学園祭でもしゃべりますよ。13:30〜、京大の時計台のある建物、法経館8番教室にて。

2.先週の授業の関連から→
A.ろう教育
@市民主権のメディア理論とは?→『市民社会と情報変革』のpp.11-39を読むこと Aろう教育の課題、ろう文化への理解
ろう者差別(たとえば看護士になれない)をどう解決していくか?
   ☆全体としての参考書:シャーマン・ウィルコックス編『アメリカのろう文化』(明石書店)、金澤貴之編『聾教育の脱構築』(明石書店)、現代思想編集部・編『ろう文化』(青土社)、亀和田香『自分探しのアメリカ留学』(随想舎)など。
参考:The Americans with Disabilities Act (米国障害者権利法、施行 1990.7.26)
☆詳しくはhttp://www.jan.wvu.edu/links/adalinks.htmを参照。
  Bビデオ『アメリカのろう教育』(JATV制作、「映像工房でじぼ」扱い)は来週より今出川中央図書館にて利用出来ますのでどうぞ。

B.意識化されない検閲体制の強化→メディア規制三法(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害社会環境対策基本法案)と現代社会の言論・表現の自由
    ☆ ビデオ 関西テレビ、渡辺武達出演「メディア規制法案と有事関連諸法」02.3.26
有事関連三法案(武力攻撃事態法案・自衛隊法改正案・安保会議設置法改正案)とメディア規制三法(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害社会環境対策基本法案)

3.今週の授業→政府のメディア規制の背後にあるもの→現代社会の言論・表現の自由

 お願い:今週はまた大阪で会議が重なっていますので、先週の講義で主題としたメディア規制三法と有事関連三法案関連の、私、渡辺武達が出演した新しいテレビ番組録画ビデオを見てもらい、次回に私、渡辺武達が補足することにします。
なおこの問題については新聞学専攻博士課程後期(博士)の三井愛子さんがビデオの解説を兼ねて10分ばかりの説明をしてくれますのでご期待ください。

☆テキスト『メディア・リテラシー』(ダイヤモンド社、1997年)pp.2-7を読むこと
☆ビデオ サンテレビ、渡辺武達出演「ニュースEYE」02.10.18(3分)を放映
☆サンテレビ番組「スペース2002、メディアが危ない」02.10.27(50分)を放映。

4.次週の予定: KBS京都放送 加藤社長の公開講演 地方放送局の課題と展望
         時間 2002年11月21日木曜日 13:15-14:45
場所 同志社大学今出川校地 至誠館32番教室

    # 12月5日(木曜日3講時、至誠館32教室)には毎日新聞東京本社高尾義彦副代表による公開講演「現代新聞の課題」も予定しています。ご期待ください。

  #また12月7日(土曜日13:30〜15:30)には日本マス・コミュニケーション学会理論部会主宰による次の研究会もあります。これからの放送に関心のある方はぜひ!
「パブリック・アクセスの理論と放送のあり方――メディアの市民化をめざして」
場所:同志社大学新町学舎 尋真館(じんしんかん)6番教室
   問題提起者:高橋孝之 中海テレビ放送常務取締役、米子市域のケーブルテレビSCN(サテライト・コミュニケーションズ・ネットワーク)社長
津田正夫(立命館大学教授)
司会:渡辺武達(同志社大学教授)


☆講義への質問、講義の感想等をメール:twatanab@mail.doshisha.ac.jp までお寄せください。私、渡辺武達がお答えしますし、意味のあるものは講義内で取り上げます。
                   (以上)

日本の言論統制と歴史的アナロジー
第一期(放送の開始と治安維持法)
 1925. 1.10社団法人名古屋放送局設立(理事長神野金之助)
1925. 3.19治安維持法成立 4.22 公布 5.12 施行
1925. 3.26逓信省,各省所管事項中放送差し止めを要する事項の処理方針につき陸軍・海軍・内務・外務・司法・宮内各省に意向を照会
1925. 5.22    逓信省,「放送事項取締に関する件」を東京・大阪・名古屋各逓信局に通達。治安および外交軍事機密等に関する放送禁止事項・事前検閲の関係官庁との協議・ニュース講演の内容の記録・中止命令の行使(遮断)など   
第二期(国家総動員法)
1938. 3. 3(昭和13年)衆議院国家総動員法案委員会で,陸軍中佐佐藤賢了が「だまれ」と議員を一喝
1938. 3.−内務省警保局,要注意執筆者リストを雑誌社に内示,原稿掲載自粛を要請
1938. 4. 1政府,国家総動員法第3条7項・第20条で,言論・出版に関する統制を規定(放送にも適用)
1938. 4. 3[R1]『八紘一宇の夕』編成。『ラヂオ風景−愛国行進曲』ほか放送
 1938. 6.−全国水平社が綱領を変更。「国体の本義」に徹し,国策への協力を決定
第三期(占領期)
 1945. 9.10 GHQ,「言論及新聞の自由」に関する覚書(ニュース頒布に関する覚書)  に基づき言論の自由を奨励する一方,連合国・軍に関する報道言論の制限,新聞・出版・放送の編集の基準,違反に対する規制などを指令
第四期
1997.5.14 情報公開法案(行政機関の保有する情報の公開に関する法律、平成11年5月14日、法律第42号)→天皇家の問題、外交・防衛事象を大部分除外
1998.8.18 通信傍受法案(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、平成11年8月18日・法律第137号)
2002.4.16 有事関連三法案(武力攻撃事態法案・自衛隊法改正案・安保会議設置法改案、日閣議決定)、「メディア規制三法」(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害社会環境対策基本法案)国会審議入り→02.9 審議一時延期に
2002年8月5日より施行、住民基本台帳法改正案(元の法案は昭和42年7月25日・法律第81号、平9法124・平11法87・法133により改正)→・・・住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う・・・
国民に10桁の住民票コードをつけた。
☆1987年、国家秘密法案(スパイ防止法案)の自局報道の姿勢について「国民     を無謀な戦争に駆り立てた誤りを繰り返してはならない」との遺稿をのこして、     元NHK社会部長が自殺。
☆1987. 5. 3朝日新聞阪神支局(西宮市)に覆面男侵入,散弾銃を発砲。記者1人死亡,1人重傷
(NHK『20世紀放送史』2001年刊、を基に渡辺武達が作成、2002.5)




メディア・リテラシー概論(「マス・コミュニケーション論2」と読替)2002年度秋期
 
渡辺武達担当 twatanab@mail.doshisha.ac.jp 第6回 02年11月7日3p, S32教室463名
☆質問などは上記メールへ。このクラスのレジメは以下のホームページでも見られます。
http://www1.doshisha.ac.jp/~twatanab/watanabe/sonota/masscommunication22002.html

教科書:渡辺武達著『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社、1997年
    渡辺武達著『メディアと情報は誰のものか』潮出版社、2000年
参考書:渡辺武達他編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社、1999年
    渡辺武達著『メディア・トリックの社会学』世界思想社、1995年

☆このクラスでは聴覚障害学生が受講しておりますが、同志社大学では善意のヘルプの方にまだ頼らざるを得ない状態となっています。みなさんのご協力をお願いします
「ろう者とは:日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である」
(Deafの定義by木村晴美・市田泰弘、『現代思想』95年3月号)

1.受講生からの質問 (この講義の質問や感想は上記のメールアドレスまでどうぞ)
@ 今週のおすすめとしてあった映画「チョムスキー 9.11」をさっそく見に行き、アメリカが必ずしも「愛国心一色」でないことを知りました。またノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)の講演にあれほどの学生や一般市民が集まること、そして日本の大学との差ににびっくりしました(2回生女子)

A.私も昨年、ハーバード大学に滞在していて、ほんの隣にあるMIT(マサチュウセッツ工科大学)の教授であるチョムスキーの講演を聴きに行きましたが、複数の教室をビデオでつなぐとほどに大変な吸引力でした。彼は、人間は発話以前の頭のなかの言語では共通であるという「世界普遍文法」(生成文法ともいう)を編みだすほどの天才ですし、平和活動の唱導者でもあり、アメリカの書店にも目立つところに著書が置いてあります。私はアメリカを代表する、力ある知識人として彼を尊敬していますが、映画のなかでの発言「アメリカ政府はメディアに干渉していない」には賛同できません。今度の映画とその内容的拡大である本『ノーム・チョムスキー』(リトル・モア、2002年、1000円)の監修者である鶴見俊輔は私の同志社大学大学院時代の教師であり、その点でも感慨深い。

A私は今までろう者は聴者に追いついてくる存在であると思っていたが、授業で「アメリカのろう教育」ビデオを見て、同等の権利で同等の条件を保障されるべきであることがよくわかりましたが、日本ではどうしてそういう法的整備がすすまないのか(3回生男子)。

A.日本の戦前は障害者は家族にとって恥ずべき存在でしたし、仏教や天理教などの宗教もある種の「たたり」で生まれたという解釈をしていました。戦後の憲法は誰もが文化的に生きる権利があることを定めましたがまだその精神は暮らしのレベルにまで根付いていません。こうしたことをボランティアの献身的努力だけに任せることは社会的怠慢です。

B アメリカには多くの市民運動の展開がありますが、ビデオに出てきた米国障害者権利法(The Americans with Disabilities Act)もそのような社会運動の中からでてきたのでしょうか(3回生女子)。

A.この法律は1990年7月26日に施行されましたが、もちろんその背後には奴隷解放から公民権にいたるまでの多くの権利獲得運動の歴史があります。権力を維持し、その構造で利権を得ているものが自発的に社会を弱者差別をなくす方向へ改善することはあり得ないわけで、権利はそうしてたたかって勝ち取るものです。「言論・表現の自由」もそうして勝ち取られてきた権利で、今その中味の充実が叫ばれています。
私は同志社大学の学生たちには人権擁護・拡大の運動と環境保全の運動のいずれかにかかわって欲しいと思っています。そうすれば私たちの社会が物質的・精神的により豊かな方向へ向かいますし、それこそ校祖、新島襄先生の同志社創立の精神なのです。

2.先週の授業の関連から→障害者とメディア環境
@社会哲学→すべての人間に何らかの障害があり、社会は相互の助け合いで維持される。参考:『市民社会と情報変革』(第三文明社刊)のpp.357-379を読むこと。
Aメディアは障害者をどう描くべきか? →社会的共生とは?
    マイナスの例→Nスペ『奇跡の詩人』(NHK、知能障害)と『アルジャーノンに花束を』(関西テレビ、知能障害)
    プラスの例→『アメリカのろう教育』(JATV制作、「映像工房でじぼ」取り扱い)
  B障害者にどう接するか?→同等な権利をもった仲間、隣人として
  C市民主権のメディア理論とは?→『市民社会と情報変革』のpp.11-39を読むこと
   Dろう教育の課題、ろう文化への理解
ろう者差別(たとえば看護士になれない)をどう解決していくか?
  ☆全体としての参考書:シャーマン・ウィルコックス編『アメリカのろう文化』(明石書店)、金澤貴之編『聾教育の脱構築』(明石書店)、現代思想編集部・編『ろう文化』(青土社)、亀和田香『自分探しのアメリカ留学』(随想舎)など。
参考:The Americans with Disabilities Act (施行 July 26, 1990)(米国障害者権利法)
☆詳しくはhttp://www.jan.wvu.edu/links/adalinks.htmを参照。

Purpose.
   (1) to provide a clear and comprehensive national mandate for the elimination of discrimination against individuals with disabilities;
   (2) to provide clear, strong, consistent, enforceable standards addressing discrimination against individuals with disabilities;
   (3) to ensure that the Federal Government plays a central role in enforcing the standards established in this chapter on behalf of individuals with disabilities; and
   (4) to invoke the sweep of congressional authority, including the power to enforce the fourteenth amendment and to regulate commerce, in order to address the major areas of discrimination faced day-to-day by people with disabilities.
Definitions.
    (1) Auxiliary aids and services. - The term ``auxiliary aids and services'' includes-
       (A) qualified interpreters or other effective methods of making aurally delivered materials available to individuals with hearing impairments;
       (B) qualified readers, taped texts, or other effective methods of making visually delivered materials available to individuals with visual impairments; (以下略)

3.今週の授業→
意識化されない検閲体制の強化→メディア規制三法(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害社会環境対策基本法案)と現代社会の言論・表現の自由
  ☆テキスト『メディア・リテラシー』(ダイヤモンド社、1997年)pp.2-7を読むこと。
  ☆ ビデオ 関西テレビ、渡辺武達出演「メディア規制法案と有事関連諸法」02.3.26
☆ ビデオ サンテレビ、渡辺武達出演「ニュースEYE」02.10.18
有事関連三法案(武力攻撃事態法案・自衛隊法改正案・安保会議設置法改正案)とメディア規制三法(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害社会環境対策基本法案)

4.次週の予定:政府のメディア規制の背後にあるもの→現代社会の言論・表現の自由
    ☆サンテレビ報道部制作番組「スペース2002、メディアが危ない」を放映。

☆講義への質問、講義の感想等をメール:twatanab@mail.doshisha.ac.jp までお寄せください。私、渡辺武達がお答えしますし、意味のあるものは講義内で取り上げます。



メディア・リテラシー概論(「マス・コミュニケーション論2」と読替)2002年度秋期
 
渡辺武達担当 twatanab@mail.doshisha.ac.jp 第4回 02年10月24日3p, S32教室463名


☆質問などは上記メールで。このクラスのレジメは以下のホームページでも見られます。
http://www1.doshisha.ac.jp/~twatanab/watanabe/sonota/masscommunication22002.html

教科書:渡辺武達著『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社、1997年
    渡辺武達著『メディアと情報は誰のものか』潮出版社、2000年
参考書:渡辺武達他編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社,1999年
    渡辺武達著『メディア・トリックの社会学』世界思想社、1995年

☆このクラスには聴覚障害学生が受講しておりますが、同志社大学では善意のヘルプの方にまだ頼らざるを得ない状態となっています。みなさんのご協力をお願いします!

「ろう者とは:日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である」
(Deafの定義by木村晴美・市田泰弘、『現代思想』95年3月号)

1.受講生からの質問
 (この講義の質問や感想は上記のメールアドレスまでどうぞ)

@講義で話された劇作家・つかこうへいさんについて、内田有紀さんや阿部寛さんなどの役者を育てているという点で、興味をもちました。どういう作品から読んだらいいのか教えてください(2回生女子)。

A.つかさんのところで訓練するとダイコン役者に磨きがかかり、ダイヤモンドの輝きを見せることは事実ですが、同時にすぐれた素材と想像を絶する本人の努力によるもので、だれでも本を読んだり、演劇を見たからといって、そうなるわけではありません。人間が生きるときの優しさ、「愛とは男と女が引き合う力のことだ、それがあるかぎり地球はほろびない」ということを知るためならば『娘に語る祖国』(光文社文庫)がいいよ。

A日本の原子力行政について話題にされましたし、京都新聞への寄稿原稿にもありましたが、どうしてそういうむちゃくちゃなことを日本(世界も)はやってきたのでしょうか?(4回生男子)

A.日本の原発問題とメディアの関係についてはテキストの『メディアと情報は誰のものか』(潮出版社、2000年)のpp.167-178を読んでください。この問題の背景にはアメリカ政府、およびそれと同じ構造をもつ旧・ソ連などが世界支配のために核兵器の開発をすることを原子力の平和利用といういい方でごまかしてきていることがあります。NHKや大新聞はこの点でみな日本人をだましており、共犯関係にあるといえます。

☆アイゼンハワー米大統領は53.12.8の国連総会演説「平和のための原子力」で次のように言っています。この年、日本のテレビ放送が開始されました。
The more important responsibility of this atomic energy agency would be to devise methods whereby this fissionable material would be allocated to serve the peaceful pursuits of mankind. Experts would be mobilized to apply atomic energy to the needs of agriculture, medicine and other peaceful activities. A special purpose would be to provide abundant electrical energy in the power-starved areas of the world. Thus the contributing powers would be dedicating some of their strength to serve the needs rather than the fears of mankind.

B関西テレビ系『アルジャーノンに花束を』の問題点にふれられましたが私も知的障害者の描写に違和感をもちました。どうしてテレビはああした描き方をするのでしょうか。(3回生女子)

A.人間にはすべて何らかの障害があり、誰もが助け合わないと地球社会の維持は不可能です。その見方をふくめて、早ければ次週に、「障害者とメディア」というテーマで講義を準備します。参考書『市民社会と情報変革』(第三文明社刊)のpp.357-379を読むこと。

C先週の講義に関してですが、ジャーナリズムの役目の一つを「世の中で隠されている状況を外へ出すこと」といわれましたが、私は「国家を形成する役目」、9.11自爆テロ事件を例にすれば、「国民の安全を守るための報道」ということです。(国文学科4回生)

A.現代のメディアの大きな課題はいかに国家利益の思考、行為を超えるかということです。メディアがこれまで政治・経済権力に利用され、その利益を代弁してきていることに間違いはありません。もっと一般的なメディアの社会的機能についてはテキストの『メディアと情報は誰のものか』(潮出版社、2000年)のpp.61-92を読んでください。

2.先週の授業の関連から

@現代社会の情報戦
 a)情報コンサルタントとしての電通や三菱総研、岡本行夫や岡崎久彦の役割
 b) 当該番組の内容だけではなく、放映時期に注目すること
 c) 社会情報環境の総体のなかに位置づけて考えること

☆広告代理店の役割 商品広告から思想宣伝と政治環境の形成まで
    ☆現代社会における「広告・宣伝の意味」
  ☆メディアで広報された「コソボ紛争」と、現実のユーゴ問題
   アメリカの国益→武器・弾薬の消費による軍事産業の利益、石油の安定需給

Aメディアによる世論形成←現代の世論は主としてテレビメディアによって形成
a)活字世論←新聞・雑誌等を読み、一呼吸置いてから意見形成をする社会層
b)テレビ世論←主たる情報源をテレビにたより、社会観を形成する層
a)ニュース型 b)ワイドショー型 c)ニュース・ステーション型
c)ネット世論←インターネット情報にたより、熟慮することなく情緒的に反応
    ☆今年の話題の言葉をインターネットや携帯のサイトで投票→一位「拉致」、二位「タマちゃん」、三位「ワールドカップ」(02.10.23.朝日新聞朝刊)
☆2チャンネル、同志社NAVI、など

B公共広告機構(AC)、広告審査機構(JARO)の社会的役割→『メディア・リテラシー』pp.147-160および『メディア用語を学ぶ人のために』p.235を読むこと。
 ☆「公共・・・」というが実態は? ☆その訴えの内容は?
    
3.今週の授業→日本の海外取材番組と日本人の世界観の形成

@日本の海外取材番組の特徴→『メディア・リテラシー』の関係部分(pp.22-28)を読んでおくこと。テレビ番組『世界ウルルン滞在記』『世界不思議発見』『生き物地球紀行』(のちに『地球・ふしぎ大自然』、01年4月から)などを検証。
Aグローバル社会・外部社会観の歪み→日本人に先進国幻想を与える?
Bアメリカ的文化戦略の影響→アメリカ的グローバルスタンダードの確立
  ☆ハリウッド映画の特徴から→アクション過剰で、物質主義、扇情的

4.次週の予定:障害者をどう描くか?市民主権のメディア理論とは?社会的共存とは?
     Nスペ『奇跡の詩人』、Japan-America TV 『ろう教育』(Japan News Magazine)
          『アルジャーノンに花束を』
参考:シャーマン・ウィルコックス編『アメリカのろう文化』(明石書店)、金澤貴之編『聾教育の脱構築』(明石書店)、現代思想編集部・編『ろう文化』(青土社)、亀和田香『自分探しのアメリカ留学』(随想舎)など。
☆ろう教育の課題、ろう者差別(たとえば看護士になれない)
 
☆講義への質問、講義の感想等をメール:twatanab@mail.doshisha.ac.jp までお寄せください。私、渡辺武達がお答えしますし、意味のあるものは講義内で取り上げます。
                 


メディア・リテラシー概論(「マス・コミュニケーション論2」と読替)2002年度秋期 


渡辺武達担当 twatanab@mail.doshisha.ac.jp 第3回 02年10月17日3p, S32教室463名


☆質問などは上記メールで。このクラスのレジメは以下のホームページでも見られます。
http://www1.doshisha.ac.jp/~twatanab/watanabe/sonota/masscommunication22002.html

教科書:渡辺武達著『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社、1997年  渡辺武達著『メディアと情報は誰のものか』潮出版社、2000年
参考書:渡辺武達他編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社,1999年  渡辺武達著『メディア・トリックの社会学』世界思想社、1995年

テスト:秋学期の定期試験期間内におこなう。テキスト・参考書および自筆ノートの持ち込みは可。講義内配布のパンフレット類は不可。


☆このクラスには聴覚障害学生が受講しておりますが、同志社大学では善意のヘルプの方いまだに頼らざるを得ない状態となっています。みなさんのご協力をお願いします!

☆京都大学コンソーシアムからの学生さんは各大学の案内間違いで第一回が受講できなかったようですが、講義レジメは上記ホームページにありますので、ご覧ください。

1.受講生からの質問 (この講義の質問や感想は上記のメールアドレスまでどうぞ)

@ビデオNHKスベシャル「民族浄化〜ユーゴ・情報戦の内幕」(00年10月、45分)に出てくる政治家などの会話シーンは「実録」でしょうか? またどうしてNHKはこのような放送ができるのでしょうか?

A.この番組の場合にかぎっていえばそのほとんどが「再現映像」ではなくて、「ホンモノ」だと思われます。NHKは総務省(旧・郵政省)の特殊法人で、予算や幹部人事を国会・与党ににぎられていて実質的な〈国営〉です。そのため制作上の多くの制約をもっていますが、同時にたくさんの貴重な歴史資料をもっていますし、いざというときにその力で全世界から集めることもできます。アメリカ政府などから〈意図的に〉提供されることもあります。それがNHKの強さでありますが、それをしばしば「民衆だまし」に使ってきているところに問題があります。さらには、NHKの要員には大手新聞社の政治部記者同様に、政界工作を専門におこなっているものがたくさんいます。ですが、NHK番組は大半の民放番組よりもすぐれていることは確かであることが日本のメディアの現実です。

A知人からNHKスペシャルを見る時は気をつけて見るようにといわれたのですが・・・

A.あらゆる報道番組がそうですが、「どういう内容か」ということだけではなく、「いつ放映されたか」を検討することが大事です。先の「民族浄化」でいえば、アメリカのユーゴでの軍事作業がすべて終わってからの放映であり、これではジャーナリズムの精神としての「アクチュアルな社会理解と民衆のあるべき社会参加を促すこと」ができないわけで、実質的な「現代社会への関与」は少ない、つまりNHKはそうしたものしか流さないか、今日時点で民衆によるユーゴ戦争への不満を解消し、アメリカの石油利権確保への道はできたので、つぎはイラクの問題にとりかかるということではないでしょうか。

Bレジメにある「南京戦」の本についてですが、その信憑性はどれほどでしょうか。A.

あなたは本をすでに読まれたのですよね。もしまだでしたら、まずその本を買うか、図書館で読むかして、そのどこに「疑問をもったのか」を自分なりにつかむことです。それが勉強する学生のあるべき姿ですが、テレビだけで新聞を読まないひとがほとんどであることもたしかなので、他の方にも役立つようなかたちでお答えしますと、例示した松岡環編『南京戦 元兵士102人の証言』(社会評論社、2002年)には、先述したような「少年殺害脳みそ食べ証言」(同書、295頁、上段)だけではなく、4年をかけて集められたその他の虐殺、強姦、略奪などが兵士の具体的証言として収録されています。若者の一部は小林よりのりなどのインチキ評論(マンガ)にだまされやすいですが、事実は事実として知っておいたほうがいいですよ、「真理はわれらを自由にする」のですから。また中国での強姦・略奪などの実際は日本政府作成資料の『陸海軍省法務局長巡察報告』(不二出版刊)にもあり、学問的な常識だといえます。

2.先週の授業の関連からビデオ鑑賞:NHKスベシャル「民族浄化〜ユーゴ・情報戦の内幕」(00年10月、45分)参考:『文藝春秋』2002年10月号「米国〈戦争広告代理店〉の威力」を、詳細については、高木徹『戦争広告代理店』講談社、2002年を読むこと。
☆国家の情報戦略とNHKの役割☆日本政府の情報コンサルタントとしての広告会社、評論家たち    

3.今週の授業→
世論形成の仕組み 
@現代社会の情報戦 
a)情報コンサルタントとしての電通や三菱総研、岡本行夫や岡崎久彦の役割    
☆選挙対策だけではなく、日常的にクライアントの立場を代弁する。    
☆NHK中継アメリカ制作ドラマ『ザ・ホワイトハウス』(02.10.11開始、毎週金曜日23:00から) 

b) 当該番組の内容だけではなく、放映時期に注目すること 

c) 社会情報環境の総体のなかに位置づけて考えること
☆広告代理店の役割 商品広告から思想宣伝と政治環境の形成まで    
☆現代社会における「広告・宣伝の意味」  
☆メディアで広報された「コソボ紛争」と、現実のユーゴ問題   
アメリカの国益→武器・弾薬の消費による軍事産業の利益、石油の安定需給
ニセの正義感と愛国心
ヨーロッパとの心理的統合とユーゴ空爆

Aメディアによる世論形成←現代の世論は主としてテレビメディアによって形成
a)活字世論←新聞・雑誌等を読み、一呼吸置いてから意見形成をする社会層
b)テレビ世論←主たる情報源をテレビにたより、社会観を形成する層
☆ニュース型
☆ワイドショー型
☆ニュース・ステーション型
c)ネット世論←インターネット情報にたより、ネットでの質問に熟慮することなくすぐ情緒的に反応する層      
☆「2チャンネル」、同志社NAVI、など

B公共広告機構(AC)、広告審査機構(JARO)の社会的役割→テキスト『メディア・リテラシー』pp.147-160および『メディア用語を学ぶ人のために』の関係部分を読んでおくこと。

次週の予定:
@日本の海外取材番組→テキスト『メディア・リテラシー』の関係部分(pp.22-28)を読んでおくこと。現在のテレビ番組では『世界ウルルン滞在記』『世界不思議発見』『生き物地球紀行』(のちに『地球・ふしぎ大自然』、01年4月から)などが参考になる。

☆講義への質問、講義の感想等をメール:twatanab@mail.doshisha.ac.jp までお寄せください。私、渡辺武達がお答えしますし、意味のあるものは講義内で取り上げます。                 

メディア・リテラシー概論(「マス・コミュニケーション論2」と読替)2002年度秋期 

渡辺武達担当 twatanab@mail.doshisha.ac.jp 第2回 02年10月10日3p, S32教室463名

☆質問などは上記メールで。このクラスのレジメは以下のホームページでも見られます。http//www1.doshisha.ac.jp/~twatanab/watanabe/sonota/masscommunication22002.html

教科書: 渡辺武達著『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社、1997年 渡辺武達著『メディアと情報は誰のものか』潮出版社、2000年
参考文献:渡辺武達他編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社,1999年  渡辺武達著『メデイア・トリックの社会学』世界思想社、1995年

テスト:秋学期の定期試験期間内におこなう。テキスト・参考書および自筆ノートの持ち込みは可。講義内配布のパンフレット類は不可。


☆このクラスには聴覚障害学生が受講しておりますが、同志社大学では善意のヘルプの方にまだ頼らざるを得ない状態となっています。みなさんのご協力をお願いします!


はじめに 

 今週(10日)は私、渡辺武達は大阪での会議のため、講義はできないので、新聞学専攻博士課程後期(博士)の三井愛子さんに依頼して、ビデオNHKスベシャル「民族浄化〜ユーゴ・情報戦の内幕」(00年10月、45分)を上映したあと、10~15分ほど、その内容について説明してもらいます。来週(17日)にはこのレジメ予告のテーマで私、渡辺武達が講義を継続します。
☆なお三井さんはこの問題で修士論文を書いており、十分な知識があります。

1.受講生からの質問 (質問などは上記のメールアドレスまでどうぞ)


@NHKが日朝首脳会談まで拉致問題をあまり報じなかったのは、拉致されたひとの生命の安全を優先したからではないでしょうか?

A.NHKというところは、とくに問題をこのような政治・社会・経問題にかぎったとき、それほど人道的な行動をするところではありません。それは、「人質」の生命とは関係のない原子力発電問題でも、問題がよそから発覚するまでまったく報道してこなかったことからも明らかです。拉致問題でも、朝日放送のドキュメンタリーを嚆矢に、多くの報道がなされ、被害者家族が行動を起こしても、そして証拠となる書類などを日本政府や警察、韓国政府から入手していても手をこまねいてきたのは、面倒なことに巻き込まれたくないという、「日和見主義」にあると私、渡辺武達は断言できます。その証拠に早く報道すれば多くの人が死ななくてもよかった血液製剤によるHIVウィルス問題でもNHKは最後まで積極的な報道はしておりません。海老沢NHK会長の具体的なウソについては、私、渡辺武達の著書『市民社会と情報変革』(第三文明社、2001年)のpp.91-95を参照。

2.先週の講義の補足

@先週のクラスで話した、アメリカの議会図書館スタッフが編集して出した本『テロリストについての99年米政府レポート』の原題は以下のようです。
 私は8月にボストンで入手しましたが、紀伊國屋書店などでも注文すれば購入できます。(Hudson, A. Rex and the Staff of the Federal Research Division of the Library of Congress. 2002. Who Becomes a Terrorists and Why, The 1999 Government Report on Profiling Terrorists. CT: The Lyons Press.) このような、国防の中枢にかかわり、国民が適切な判断をするための基礎資料を日本の国会図書館は用意して国民の判断に資するだけの用意はないということを私は批判しました。この本にはオサマ・ビンラーディンのグループが二年前にすでに旅客機ハイジャックによる自爆攻撃を計画している、つまり米政府は事前に9.11事件の可能性をつかんでいたのではないかといわれ(実際その可能性の記述がある)、全米で議論になっているもので、米議会図書館が編集して外へ出しました。

A先週の講義で安倍晋三官房副長官を批判しましたが、彼による「朝鮮人の強制連行はなかった」という発言記録が収録された本は「歴史教科書を考える超党派の会」(会長・中川昭一元農水相、事務局長・安倍晋三現官房副長官、 02年 6月発足)が編集した『歴史教科書への疑問』展転社、一九九七年の93頁にあります。こういうものは図書館の現物で確認してくださいね。その行為が勉強そのものですから・・・。講義内でふれたように、中国には日本軍に家族や知人、同胞を目の前で殺された人たち、レープや拉致された人たちが数百万もおり、朝鮮半島にも百万規模でそういう人たちがいる。松岡環編『南京戦 閉ざされた記憶を尋ねて 元兵士102人の証言』(社会評論社、2002)年には、「中国で性病にかかった皇軍兵士が人間の脳みそを食べるといいと聞いて、中国人の子どもを殺しては脳みそを飯ごうで炊いて食べていたものが多かった」という、実行者の証言さえある(同書、295頁、上段)。
 そうした残虐行為を実見した家族が今、日本の産経新聞グループ、新しい歴史教科書をつくる会(歴史欺瞞派集団)などが制作した〈自己満足的な教科書〉の登場問題などで怒っているわけだ。安倍晋三官房副長官は「強制連行は証拠がないから・・・」といって否定し、「北朝鮮の拉致」だけを攻撃する。そのような政治家をもつ日本国民ははたして幸せなのか。そういうレベルのあまりにも「感情的な対立」をどう脱するかが現代の私たちの課題ではないのか。グローバルな融和社会への構想をもたないで、日本も中国も韓国も北朝鮮もそうしたレベルの議論だけをしているようではさびしすぎる。☆参照→渡辺武達著『市民社会と情報変革』第三文明社、2001年    

3.今週の授業 

 広告代理店の役割 商品広告から思想宣伝と政治環境の形成までビデオ鑑賞:NHKスベシャル「民族浄化〜ユーゴ・情報戦の内幕」(00年10月、45分)参考:『文藝春秋』2002年10月号「米国〈戦争広告代理店〉の威力」を、詳細については、高木徹『戦争広告代理店』講談社、2002年を読むこと。

@現代社会における「広告・宣伝の意味」  現代政治における「情報コンサルタント会社」  「民族浄化」ということばの成立Aメディアで広報された「コソボ紛争」と、現実のユーゴ問題 ユーゴ空爆とアメリカの情報戦略  アメリカの国益とユーゴ空爆次週:@今週見たビデオ、NHKスペシャル「民族浄化〜ユーゴ・情報戦の内幕」(00年10月)から何を学ぶか?

A公共広告機構の社会的役割→テキスト『メデイア・リテラシー』および『メディア用語を学ぶ人のために』(世界思想社、1999年)の関係部分を読んでおくこと。☆講義への質問、講義の感想等をメール:twatanab@mail.doshisha.ac.jp までお寄せください。私、渡辺武達がお答えしますし、意味のあるものは講義内で取り上げます。

☆以下は三井愛子氏による、上記ビデオ「民族浄化」の解説です。
@現代社会における「広告・宣伝の意味」 現代政治における「情報コンサルタント会社」日本ではまだ耳慣れない企業ではあるがアメリカでは「情報コンサルタント企業」または「PR(Public Relations)企業」が数多くあり、一つの業界を構成している。これらの企業はクライアントと契約を結び、充分な勝算を立てた上で、あらゆる手段を使って情報を入手・管理・操作する。そうすることによってクライアントを確実に有利な立場におくように裏で表で活動し、社会的な位置づけ、世論形成を行うのである。ビデオからもわかるように、そのクライアントは国家であったり政府、政党であったりする。時には国際政治の公式の舞台にまで登場して仕事をするのだが、これらの企業の動きから明らかにわかることは、メディアをターゲットとしているということである。どのメディアにどう登場することで誰の目に触れるであろうということを把握し、ねらいを絞って有効な視覚的条件と情報を効果的に送出するということである。これはビデオからも明らかになったように一つの国を国際社会から追放し、そして国際的な世論の支持を背景に戦争を行うためのお膳立てをしてしまうということである。
 このように、現代政治における情報コンサルタント会社はクライアントのメッセージを最も効果的な方法を利用してのぞましい形で必要な相手に伝達するための重要な役割を担っているといえる。「民族浄化」ということばの成立これもビデオからわかるように、第二次世界大戦中にナチスの傀儡政権であるクロアチアから、セルビア人を追い出した行為を指して使われた言葉である。セルビア人を追い出す言葉に使われた「民族浄化」を今度はセルビア人の行為として使われることに意味があるということがいえる。様々な情報を流して詳細を伝えるよりも、「民族浄化」「ethnic cleansing」という言葉を使うことで伝えたいことの最も重要な部分を明確に印象づけることができる。NPR(アメリカの公共ラジオ放送 National Public Radio のこと)のポジオリ記者のコメントにもあったように、衝撃的な印象を与えるこのキーワードの使い方が明らかに効果を発したといえる。

Aメディアで広報された「コソボ紛争」と、現実のユーゴ問題ユーゴ空爆とアメリカの情報戦略特に湾岸戦争以降、アメリカはメディアを有効に使い、アメリカ世論を中心に国際社会の中においても軍事行使の正当性を確立している。その一つの方法としてあげられるのが「情報管理」能力である。ビデオにもあったように、片方がよい人で片方が極悪であるという事はあり得ない。双方ともになんらかの非道な行為を行っていると考えるのが妥当である。しかし、そうであるにもかかわらず、我々に届く情報は明らかにセルビア人が「悪者」であるという構図を描き出すものばかりである。管理された情報によってのみが放出されることで、我々がそこでなにが起こっているのかを直接知ることができないメディアの特性を充分に活用した情報戦略であるといえよう。
 そして、ボスニア紛争で形成されたミロセヴィッチという悪人の率いるセルビア人の「悪者」集団のイメージは、コソヴォ紛争から発展したNATOによるユーゴスラヴィ空爆にも利用されている。このときも先に利用された民族浄化という言葉が使われている。総じてユーゴスラヴィアに関する情報はアメリカ側からもたらされたものがそのほとんどであり、正しい判断が下されているように錯覚するように構成されていたということである。そして、軍事行使の終了と当該問題の終結にまで情報戦略は行われており、今回見たビデオも同様の役割を果たしていると考えることができる。アメリカの国益とユーゴ空爆これはアメリカという国に限定していえることではないかも知れないが、アメリカという国家の利益、「国益」に反映しないことに対して国民の生命を賭してまで軍事力を行使することはあり得ない。しかし、この番組からは「人道的な理由」によってのみアメリカ政府が動いたとみることはできても、その奥に隠れている国益がなんであるのか読みとれないというところに一つのポイントがあるように思われる。


メディア・リテラシー概論(「マス・コミュニケーション論2」と読替)2002年度秋期 


渡辺武達担当 twatanab@mail.doshisha.ac.jp 第1回 2002年10月3日 3p S32

教室教科書:渡辺武達著『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社、1997年    
             渡辺武達著『メディアと情報は誰のものか』潮出版社、2000年
参考文献:渡辺武達他編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社,1999年     
       渡辺武達著『メデイア・トリックの社会学』世界思想社

1995年テスト:秋学期の定期試験期間内におこなう。テキスト・参考書および自筆ノートの持ち込みは可。講義内配布のパンフレット類は不可。

はじめに
授業のねらい→基本的には田辺の「マス・コミュニケーション論」のつづき。 現代のマスメデイアは@大広告主優先の論理、A商業利益主義の論理、B国家支配の論理、の三つによって動き、Cジャーナリストの不勉強、Dメディア批評の未確立がそれに拍車をかけている。そこでは、メディアが社会をつくり、そのメディアがうそをつけば民主主義の根本がくずれるというもっとも重要なことが意識的に隠され、娯楽情報優先のメディア事情がつづいている。この講義では、現代を生き抜く賢いオーディエンス(読者・視聴者)になるための基礎的知識を身につけるとともに、日本のメディアの現状とメディアの社会的責任について考えていく。 

今年度講義概要(シラバスから) 
 現代のマスメデイアは@大広告主優先の論理、A商業利益主義の論理、B国家支配の論理、の三つによって動かされている。そこでは、メディアが社会をつくり、そのメディアがうそをつけば民主主義の根本がくずれるというもっとも重要なことが意識的に隠され、娯楽情報優先のメディア事情がつづいている。この講義では、グローバルに展開する現代社会の各種メディアの特質とその社会構造的位置づけをおこなう。また放送と新聞を中心として、どのようにメディアの提供する情報を読み解き、メディアをみずから使いこなしていけるのかをともに考えていきたい。アメリカやイギリスなどのメディア事情を紹介しながら、日本のメディアの現状とメディアの社会的責任について比較しながら考えていく。講義はそのときどきのメディアの話題をとりあげ、ビデオ映像なども教材として使用する。 今週の話題→メディア・リテラシーとは何か→以下を読んでおくこと。
テキスト:『メデイア・リテラシー』(ダイヤモンド社、1997年)pp.96ー 107  
参考書:『メディア用語を学ぶ人のために』(世界思想社、1999年)のp.99の「メディア・リテラシー」の項 

@概念説明 メディア・リテラシー media literacy  

 メディアのあり方を社会構造のなかにおいて理解し,メディアの提供する情報を正しく読み解き,メディアを使いこなす人びとの能力のこと。ある社会で文字を読み,書くことができる人の能力とその率をリテラシー(識字率)というが,メディア・リテラシーは表面的な情報の読み解き方だけではなく,メディアの構造・特徴・情報送出の仕組みから,その社会的機能や責任,その内包する諸問題までを人びとがどれほど知っているかということもふくんだものとして考えなければならない。それはたんに市民がメディア批判を行うということではなく,市民の側もまた現在のメディアが政治・経済権力の圧迫や広告主からの圧力など,いかなる困難に直面し,いかなる内部的闘いを強いられているのか,またメディアの論理と限界,紙面や番組などの制作過程やそれらの特徴を知り,その改革活動に従事しなければ,メディアの質は向上せず,市民・国民が主権者である社会の建設は簡単ではないという思想を背景としている。メディアがなければ地球大に展開する私たちの社会が成立しない今日,メディア・リテラシーの向上は社会の質の向上にきわめて大きな役割を果たす。そうした認識にたった社会教育の総体がメディア教育であり,イギリスやアメリカ,カナダなどではこうした視点からの,@情報の読み方,Aテレビでいえば,娯楽過剰番組の危険性,Bテレビ的事実と社会的真実の違い,さらにはC「権力への監視者=ウオッチドッグ」としてのメディア・ジャーナリズムにまで言及した子ども向けの教科書さえ出版されている。このメディア教育の充実がだれにでもメディアに接触し,情報を発信する権利が保障され,かつそうしたことへの義務があるという〈民衆のコミュニケーション権〉の確立を促進し,メディア・デモクラシーの基礎となる。 
 メディア・リテラシーとは,その第一義をメディアの提供する情報を市民主権主義の立場から読み解くことにおき,メディアを有効に使い,社会的プラス価値のある情報を発信するとともに,国家・自治体・共同事業体・企業などのメディア政策の立案と実行に参加することを目的とする能力のことである。そしてそういう立場からの訓練を〈メディア・トレイニング〉,そうした教育全体を〈メディア教育〉とよぶことができる。
【参考】渡辺武達『メディア・リテラシー』ダイヤモンド社,1997年 ; 鈴木みどり編『メディア・リテラシーを学ぶ人のために』世界思想社,1997年 ; 菅谷明子『メディアリテラシー』岩波新書,2000年。(渡辺武達・山口功二編『メディア用語を学ぶ人のために』世界思想社,1999年、から)  

Aメディアとコミュニケーション      
マルチメディア   
電波   テレビとラジオ   

活字    
新聞と雑誌、ミニコミ   

その他 

2.現代の世界のメデイア状況
  
@メディア統合の衝撃    
統合(convergence)の実体            
   技術面、情報内容面、社会的インパクト   

 Aデジタル情報社会論の問題点

3.日本のマスメデイアの特徴とメディアの社会的機能 
 

@地域性 Aテレビ新聞のネットワーク B二極分化したメディア情報    A放送メディア、印刷メディア、マルチメディア    B3S主義とパパラッチ依存型ジャーナリズムの行く末次週:広告代理店の役割 商品広告から思想宣伝と政治環境の形成までビデオ鑑賞:NHKスベシャル「民族浄化」参考:『文藝春秋』2002年10月号「米国〈戦争広告代理店〉の威力」を読んでおく。

☆講義への質問、講義の感想等をメール:twatanab@mail.doshisha.ac.jp までお寄せください。私、渡辺武達がお答えしますし、意味のあるものは講義内で取り上げます。